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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1274172
審判番号 不服2011-27791  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-26 
確定日 2013-05-16 
事件の表示 特願2010-168082「架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年2月16日出願公開、特開2012-31219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年7月27日に出願され、平成23年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、それに対して、同年12月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成24年3月28日付けで前置審査の結果が報告され、当審において同年11月13日付けで審尋がされ、平成25年1月21日に回答書が提出されたものである。

第2.補正の却下の決定
[結論]
平成23年12月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成23年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成23年6月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載について、

「【請求項1】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部を混合し、少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤を添加した後、加圧下において加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し、発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得、その独立気泡体を連続気泡化して発泡倍率が20?60倍で、かつ圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPaである連続気泡発泡体を得ることを特徴とするリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項2】
圧縮により連続気泡化する請求項1記載のリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法により製造されたリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体からなることを特徴とするマスク用緩衝材。」

を、

「【請求項1】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部を混合し、少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤を添加した後、加圧下において加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し、発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得、その独立気泡体を連続気泡化して発泡倍率が20?60倍で、かつ圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPaである連続気泡発泡体を得るリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体を二軸押出機を用いて再生する架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法であって、
二軸押出機が、材料供給ゾーンと、この材料供給ゾーンに連続する前混練ゾーンである第一混練ゾーンと、この第一混練ゾーンに連続する温度平準化用送りゾーンと、この温度平準化用送りゾーンに連続する第二混練ゾーンと、この第二混練ゾーンに連続する押出ゾーンとを備えるものであり、
二軸押出機に連続気泡発泡体を投入し得られた再生樹脂、アゾジカルボンアミド、ジクミルパーオキサイドからなる組成物を混練し練和物を得て、加熱されたプレス内の金型に練和物を充填し、加圧下で加熱後、除圧して発泡体を得ることを特徴とする架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法。
【請求項2】
リサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体が、圧縮により連続気泡化したものである請求項1記載の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法により製造されたリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体からなるマスク用緩衝材を再生する架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法。」

と補正する補正事項を含むものである。

(2)補正の適否
本件補正の目的が、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号の掲げる事項に該当するか否かについて、以下に検討する。

本件補正は、補正前の請求項1の「リサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法」を、補正後の請求項1の「リサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体を二軸押出機を用いて再生する架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法」に変更する補正事項を含むものである。
そして、補正後の請求項1の「連続気泡発泡体の再生方法」は、実質的にみて、連続気泡発泡体を「製造」した後に、当該発泡体を二軸押出機を用いて「再生」するという、2段階の工程から構成されるものであって、いわば補正前の請求項1の「連続気泡発泡体の製造」工程の後段に「再生」工程を新たに追加したものに相当するものであるところ、新たに追加した「再生」工程は、あくまで「製造」工程の後の工程であり、「製造」工程そのものではないことは明らかであるから、「製造」工程の一部を限定したものであるとはいえないし、上記の補正事項は、物を製造する方法の発明を、製造した物を再生する方法の発明に変更するものであって、補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるとはいえないから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるとは認められない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号のいずれにも該当しない。

(3)むすび
以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成23年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成23年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部を混合し、少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤を添加した後、加圧下において加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し、発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得、その独立気泡体を連続気泡化して発泡倍率が20?60倍で、かつ圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPaである連続気泡発泡体を得ることを特徴とするリサイクル性に優れた架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法。」

第4.原査定の拒絶の理由の概要
これに対して、原審において拒絶査定の理由とされた平成23年5月16日付けで通知された拒絶理由の概要は、以下の理由を含むものである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平11-302430号公報
2.特開平11-315161号公報」

第5.当審の判断
(1)刊行物の記載事項
刊行物1(特開平11-302430号公報)には、次の事項が記載されている。

1a.「本発明では、上記エチレン系樹脂(a)又はエチレン系樹脂(b)に熱分解型発泡剤及び架橋剤を添加してニーダーミキサー等で溶融混練し、プレス等の従来公知の任意の方法により、無架橋の状態に保持しながら所望の形状に加熱成型する。所望の形状に加熱成型した後に、常圧下で熱分解型発泡剤の分解開始温度以上、かつ、架橋剤の分解開始温度以上に加熱して、(架橋度/熱分解型発泡剤の分解率)の最大値が20以下になるように架橋及び発泡して架橋発泡体とし、得られた架橋発泡体の気泡を機械的変形を加えることにより連通する。」(段落【0023】)

1b.「【実施例】実施例及び比較例では以下に示した樹脂を使用した。LLDPE1;四価の遷移金属を含有するメタロセン触媒を用いて重合した、密度が0.870g/cm^(3) 、融点が60℃の、1-オクテンが共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製、商品名「EG8200」)LLDPE2:四価の遷移金属を含有するメタロセン触媒を用いて重合した、密度が0.902g/cm^(3) 、融点が98℃の、1-オクテンが共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製、「商品名FW1650」)
LDPE1:密度が0.895g/cm^(3) 、融点が113℃の低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「EUL400」)
LDPE2;密度が0.918g/cm^(3) 、融点が106℃の低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「G807」)
LDPE3:密度が0.920g/cm^(3) 、融点が118℃の低密度ポリエチレン(三菱化学社製、商品名「LE520H」)
LDPE4:密度が0.932g/cm^(3) 、融点が120℃の低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「F203-0」)
EVA1:酢酸ビニル含有量が15重量%、融点が93℃のエチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学社製、商品名「H2021」)
EVA2:酢酸ビニル含有量が20重量%、融点が83℃のエチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、商品名「ウルトラセン2233」)
(実施例1?3)表1に示した所定量の樹脂成分(LLDPE1及び2、LDPE1?4並びにEVA1及び2)、アゾジカルボンアミド、ジクミルペルオキシド、トリアリルイソシアヌレート及び酸化亜鉛をニーダーミキサーにより110℃で溶融混練した後、縦30cm×横30cm×深さ5cmの凹部を有する金型内に導入し、該凹部を別の平滑面を有する金型にて密閉し、135℃で25分間加熱して成型した。成型後の架橋度は0%であり、樹脂成分の135℃、10Hzでの動的粘弾性は、表1に示した通りであった。さらに、175℃のオーブン中で60分間加熱して架橋及び発泡し、架橋発泡体を得た。該加熱工程での(架橋度/熱分解型発泡剤の分解率)の最大値は20以下であり、得られた架橋発泡体は独立気泡性であった。尚、樹脂成分を2mmのシートに成形し、該シートに加速電圧750kvの電子線を3.5Mrad照射して架橋度30%になるように架橋した際の175℃、1Hzでの動的粘弾性は、表1に示した通りであった。
次に、得られた架橋発泡体を厚さ5cmにスライスし、回転速度5rpm、直径100mmの2本の等速ロールを用いて厚さ2mmに圧縮して気泡を連通し、連続気泡性架橋発泡体を得た。得られた連続気泡性架橋発泡体の発泡倍率及び連続気泡率は表1に示した通りであった。
尚、本発明でいう連続気泡率は、ASTM D 1940 62Tに準拠して測定した独立気泡率から、以下の式により算出した。
連続気泡率(%)=100-独立気泡率(%)」(段落【0042】?【0047】)

1c.「【表1】

」(段落【0052】)

また、刊行物2(特開平11-315161号公報)には、次の事項が記載されている。

2a.「実施例1
メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂(商品名:カーネルKS340,密度(D)0.88 g/cm^(3)、MFR: 3.5 g/10分、日本ポリケム株式会社製)50重量部と低密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックLD YF-30 密度 0.92g/cm^(3)、MFR 1.1g/10min.、三菱化学株式会社製)50重量部にアゾジカルボンアミド18重量部、活性亜鉛華0.07重量部、ジクミルパーオキサイド0.7重量部から成る組成物を85℃のミキシングロールにて練和して得られた組成物を、135℃に加熱されたプレス内の金型(460x230x38mm)に充填し、上記温度で50分間加圧下で加熱し、発泡性架橋性シートを整形した。該架橋性発泡性シートのゲル分率は0であった。次いで、得られた発泡性架橋性シートを、既に170℃に加熱されている気密でない開閉式の金型(1000x500x100mm)に入れ、ジャケット式により170℃の蒸気で70分間加熱し、冷却後取り出し、発泡体を得た。得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を3回通過させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行なった。得られた連通後の連続気泡体は、見掛け密度0.026g/cm^(3)、連続気泡率100%であり、回復性に優れていた。」(段落【0007】)

(2)刊行物に記載された発明
刊行物1には、摘示事項1b、及び、摘示事項1cの実施例1の記載からみて、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「LLDPE1;四価の遷移金属を含有するメタロセン触媒を用いて重合した、密度が0.870g/cm^(3) 、融点が60℃の、1-オクテンが共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製、商品名「EG8200」) 50重量部、
LDPE4:密度が0.932g/cm^(3) 、融点が120℃の低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「F203-0」) 50重量部、
アゾジカルボンアミド 20重量部、
ジクミルペルオキシド 0.7重量部、
トリアリルイソシアヌレート 1.0重量部、及び、
酸化亜鉛 0.1重量部
をニーダーミキサーにより110℃で溶融混練した後、縦30cm×横30cm×深さ5cmの凹部を有する金型内に導入し、該凹部を別の平滑面を有する金型にて密閉し、135℃で25分間加熱して成型し、さらに、175℃のオーブン中で60分間加熱して架橋及び発泡し、架橋発泡体を得、得られた架橋発泡体は独立気泡性であり、得られた架橋発泡体を厚さ5cmにスライスし、回転速度5rpm、直径100mmの2本の等速ロールを用いて厚さ2mmに圧縮して気泡を連通し、発泡倍率30.0倍(cc/g)の連続気泡性架橋発泡体を得る方法。」

また、刊行物2には、摘示事項2aの記載からみて、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。

「メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂(商品名:カーネルKS340,密度(D)0.88 g/cm^(3)、MFR: 3.5 g/10分、日本ポリケム株式会社製) 50重量部、
低密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックLD YF-30 密度 0.92g/cm^(3)、MFR 1.1g/10min.、三菱化学株式会社製) 50重量部、
アゾジカルボンアミド 18重量部、
活性亜鉛華 0.07重量部、
ジクミルパーオキサイド 0.7重量部
から成る組成物を85℃のミキシングロールにて練和して得られた組成物を、135℃に加熱されたプレス内の金型(460x230x38mm)に充填し、上記温度で50分間加圧下で加熱し、発泡性架橋性シートを整形し、得られた発泡性架橋性シートを、既に170℃に加熱されている気密でない開閉式の金型(1000x500x100mm)に入れ、ジャケット式により170℃の蒸気で70分間加熱し、冷却後取り出し、発泡体を得、得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を3回通過させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行なう、見掛け密度0.026g/cm^(3)、連続気泡率100%の連続気泡体の製造方法。」

(3)対比・判断
(3-1)
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「LLDPE1;四価の遷移金属を含有するメタロセン触媒を用いて重合した、密度が0.870g/cm^(3) 、融点が60℃の、1-オクテンが共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製、商品名「EG8200」)」及び「LDPE4:密度が0.932g/cm^(3) 、融点が120℃の低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「F203-0」)」は、本願発明の「エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂」に相当する。
また、刊行物1発明の2種類のポリオレフィン樹脂のうち、「LLDPE1;四価の遷移金属を含有するメタロセン触媒を用いて重合した、密度が0.870g/cm^(3) 、融点が60℃の、1-オクテンが共重合された直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル社製、商品名「EG8200」)」は、本願発明の「メタロセン系触媒により製造されたポリエチレン」に相当するものであり、その配合割合は、ポリオレフィン樹脂全体の100重量部に対して「50重量部」であるから、本願発明の「ポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部」と重複一致している。
さらに、刊行物1発明の「アゾジカルボンアミド」及び「ジクミルペルオキシド」は、それぞれ発泡剤及び架橋剤として添加される剤であることは明らかであるから、本願発明の「少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤」に相当する。
そして、刊行物1発明の「135℃で25分間加熱して成型し」は、本願発明の「加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し」に相当し、刊行物1発明の「175℃のオーブン中で60分間加熱して架橋及び発泡し、架橋発泡体を得、得られた架橋発泡体は独立気泡性であり」は、本願発明の「発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得」に相当し、刊行物1発明の「得られた架橋発泡体を厚さ5cmにスライスし、回転速度5rpm、直径100mmの2本の等速ロールを用いて厚さ2mmに圧縮して気泡を連通し」は、本願発明の「独立気泡体を連続気泡化し」に相当し、刊行物1発明の「連続気泡性架橋発泡体を得る方法」は、本願発明の「架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法」に相当し、刊行物1発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の発泡倍率は「30.0倍(cc/g)」であるから、本願発明の「発泡倍率が20?60倍」と重複一致している。

そうすると、両発明は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部を混合し、少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤を添加した後、加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し、発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得、その独立気泡体を連続気泡化して発泡倍率が20?60倍である連続気泡発泡体を得る、架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点1:
発泡性架橋性組成物を成形するための加熱成型について、本願発明は「加圧下において」行うのに対して、刊行物1発明は「縦30cm×横30cm×深さ5cmの凹部を有する金型内に導入し、該凹部を別の平滑面を有する金型にて密閉し」て行う点

相違点2:
架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の性質について、本願発明は「圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPa」であるのに対して、刊行物1発明にはそのような特定はない点

相違点3:
架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の性質について、本願発明は「リサイクル性に優れた」ものであるのに対して、刊行物1発明にはそのような特定はない点

以下、相違点1?3について検討する。

・相違点1について
刊行物1の摘示事項1aには、「プレス等の従来公知の任意の方法により、無架橋の状態に保持しながら所望の形状に加熱成型する」と記載されていることからみて、刊行物1発明の加熱成型は、実質的には「プレス」された状態、すなわち、加圧下で行われていると解されるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

なお、刊行物1の摘示事項1aには、「無架橋の状態に保持しながら」と記載されており、刊行物1発明の組成物は、加熱成型の段階において、無架橋の状態に保持されているものであるが、同様に本願発明の組成物も、本願明細書の「金型に仕込み、プレスにて加圧し、その加圧下において115°C?155°C、好ましくは120°C?140°Cに加熱して整形する。この加熱整形工程において、練和物をゲル分率ゼロの状態に維持して整形することが、連続気泡率100%に近い連続気泡体を得る条件である。」(段落【0025】)との記載からみて、加熱成型の段階において、「ゲル分率ゼロの状態」、すなわち、無架橋の状態に保持されていることは明らかである(本願明細書の段落【0027】には、「従来の気泡体と同程度の架橋度(ゲル分率95%程度まで)」と記載されており、「ゲル分率」は、「架橋度」を表す指標である。)。

・相違点2について
「圧縮応力-ひずみ」は、発泡前の原料組成物の組成(例えば、本願明細書の段落【0009】には、メタロセン系触媒により製造されたポリエチレンの含有量と圧縮応力-ひずみ特性の関係についての記載がある。)や発泡工程などに影響されるパラメーターであると解されるところ、刊行物1発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体は、本願発明と同様の原料組成物から同様の発泡工程を経て製造されるものであるから、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様に、「圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPa」という条件を満足している蓋然性が高い。
したがって、相違点2も実質的な相違点ではない。

・相違点3について
上記相違点2で検討したように、刊行物1発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体は、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様の性質を具備している蓋然性が高いから、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様に、「リサイクル性に優れた」という条件を満足している蓋然性が高いから、相違点3も実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

(3-2)
本願発明と刊行物2発明とを対比する。

刊行物2発明の「メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂(商品名:カーネルKS340,密度(D)0.88 g/cm^(3)、MFR: 3.5 g/10分、日本ポリケム株式会社製)」及び「低密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックLD YF-30 密度 0.92g/cm^(3)、MFR 1.1g/10min.、三菱化学株式会社製)」は、本願発明の「エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂」に相当する。
また、刊行物2発明の2種類のポリオレフィン樹脂のうち、「メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂(商品名:カーネルKS340,密度(D)0.88 g/cm^(3)、MFR: 3.5 g/10分、日本ポリケム株式会社製)」は、本願発明の「メタロセン系触媒により製造されたポリエチレン」に相当するものであり、その配合割合は、ポリオレフィン樹脂全体の100重量部に対して「50重量部」であるから、本願発明の「ポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部」と重複一致している。
さらに、刊行物2発明の「アゾジカルボンアミド」及び「ジクミルパーオキサイド」は、それぞれ発泡剤及び架橋剤として添加される剤であることは明らかであるから、本願発明の「少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤」に相当する。
そして、刊行物2発明の「135℃に加熱されたプレス内の金型(460x230x38mm)に充填し、上記温度で50分間加圧下で加熱し、発泡性架橋性シートを整形し」は、本願発明の「加圧下において加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し」に相当し、刊行物2発明の「既に170℃に加熱されている気密でない開閉式の金型(1000x500x100mm)に入れ、ジャケット式により170℃の蒸気で70分間加熱し、冷却後取り出し、発泡体を得」は、「気密でない開閉式の金型」すなわち「常圧下」で加熱を行うものであるから、本願発明の「発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得」に相当し、刊行物2発明の「得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を3回通過させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行なう」は、本願発明の「独立気泡体を連続気泡化し」に相当し、刊行物2発明の「連続気泡体の製造方法」は、本願発明の「架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法」に相当する。

そうすると、両発明は、「エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を除くポリオレフィン樹脂100重量部中にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレン10?60重量部を混合し、少なくとも発泡剤、架橋剤の添加剤を添加した後、加圧下において加熱成型して発泡性架橋性組成物を成形し、発泡性架橋組成物を常圧下にて加熱して発泡させて独立気泡体を得、その独立気泡体を連続気泡化して、連続気泡発泡体を得る、架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の製造方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点4:
架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の性質について、本願発明は「発泡倍率が20?60倍」であるのに対して、刊行物2発明にはそのような特定はない点

相違点5:
架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の性質について、本願発明は「圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPa」であるのに対して、刊行物2発明にはそのような特定はない点

相違点6:
架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の性質について、本願発明は「リサイクル性に優れた」ものであるのに対して、刊行物2発明にはそのような特定はない点

以下、相違点4?6について検討する。

・相違点4について
刊行物2発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体は、(1)発泡前の原料組成物を構成する「メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン系樹脂」の密度が「0.88 g/cm^(3)」であり、「低密度ポリエチレン樹脂」の密度が「0.92g/cm^(3)」であること、及び、(2)発泡後の見掛け密度が「0.026g/cm^(3) 」であること、から計算すると、その発泡倍率は、およそ34倍(=0.90÷0.026。審決の便宜上、発泡前の原料組成物の密度を0.90と仮定した。)であるから、本願発明の「発泡倍率が20?60倍」という条件を満足している蓋然性が高い。
したがって、相違点4は、実質的な相違点ではない。

・相違点5について
「圧縮応力-ひずみ」は、発泡前の原料組成物の組成(例えば、本願明細書の段落【0009】には、メタロセン系触媒により製造されたポリエチレンの含有量と圧縮応力-ひずみ特性の関係についての記載がある。)や発泡工程などに影響されるパラメーターであると解されるところ、刊行物2発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体は、本願発明と同様の原料組成物から同様の発泡工程を経て製造されるものであるから、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様に、「圧縮応力-ひずみ(50%時)が4?10kPa」という条件を満足している蓋然性が高い。
したがって、相違点5も実質的な相違点ではない。

・相違点6について
上記相違点5で検討したように、刊行物2発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体は、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様の性質を具備している蓋然性が高いから、本願発明の架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体と同様に、「リサイクル性に優れた」という条件を満足している蓋然性が高いから、相違点6も実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明は、刊行物2に記載された発明である。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する発明であり、特許を受けることができないから、原査定の拒絶の理由は妥当であり、他の請求項に係る発明について
検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-12 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-02 
出願番号 特願2010-168082(P2010-168082)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08J)
P 1 8・ 57- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 里枝福井 美穂  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 須藤 康洋
近藤 政克
発明の名称 架橋ポリオレフィン連続気泡発泡体の再生方法  
代理人 赤澤 一博  

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