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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1274188
審判番号 不服2012-6700  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-13 
確定日 2013-05-16 
事件の表示 特願2009- 22095「自動車用内燃機関制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日出願公開、特開2010-180702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年2月3日の出願であって、平成23年10月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年1月11日付けで拒絶査定がなされ、同年4月13日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、さらに、同年8月28日付けで当審において書面による審尋がなされ、それに対して、同年11月5日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成24年4月13日付けの明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成24年4月13日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年12月8日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
自動車用内燃機関を制御するための電子回路を電子部品及び基板上のパターンにより形成された基板と、
前記基板と外部の機器とを接続するためのコネクタと、
前記基板が固定されるケースと、
前記基板を覆うカバーとを有する自動車用内燃機関用制御装置において、
前記カバー及び/又は前記ケースは前記コネクタと前記基板とを接続する端子部に近接して対抗するように凸面を備え、
前記端子部と、前記凸面とが絶縁性を確保できる熱伝導部材により接続されていることを特徴とする自動車用内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記ケースに放熱用フィンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車用内燃機関制御装置。」

B 本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
自動車用内燃機関を制御するための電子回路を電子部品及び基板上のパターンにより形成された基板と、
前記基板と外部の機器とを接続するためのコネクタと、
前記基板が固定されるケースと、
前記基板を覆うカバーとを有する自動車用内燃機関用制御装置において、
前記カバー及び/又は前記ケースは前記コネクタと前記基板とを接続する端子部に近接して対抗するように凸面を備え、
前記端子部と、前記凸面とが絶縁性を確保できる熱伝導部材により放熱性向上のため接続されていることを特徴とする自動車用内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記ケースに放熱用フィンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車用内燃機関制御装置。」(アンダーラインは補正箇所を示すもので、請求人が付したものである。)

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正後の請求項1については、「接続」に関して、「放熱性向上のため」とその機能を限定するものであるから、本件補正後の請求項1に関する補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下 、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-340698号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
この発明は、電子部品が実装されたプリント基板(以下、電子基板と称す)を収納した外装ケースに熱伝導性樹脂を充填して電子基板の両面全体を気密封鎖した電子機器の密閉筐体において、例えば自動車の車室外に設置して使用される車載電子機器のように、温度、振動、衝撃、被水、浸水等の悪環境で使用される電子機器の密閉筐体に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0002】
電子基板を収納した外装ケースに樹脂を充填した従来の電子機器の密閉筐体としての内燃機関用制御ユニットは、内燃機関の制御を行う制御回路で使用する電子部品がプリント基板に接続され、この制御回路が外部の接続対象物に接続されるように構成された制御回路構成体を備える。そして、この制御回路構成体はケース内にプリント基板がケースの底部側に位置するようにして配置され、ケース内には制御回路構成体の各構成要素の電位の異なる部分の間を電気的に絶縁するようにして樹脂が充填されている。また、制御回路構成体は、その構成要素の電位の異なる部分のうちプリント基板よりの高さの一番高い部分をプリント基板の周縁部の一部側に偏って存在するように配置し、樹脂表面の高さは、上記構成要素の一番高い部分が存在する側でこれを埋め込むように高くその反対側で低くなるようにしてケース内に樹脂表面が傾斜面になるようにして樹脂が充填される(例えば、特許文献1参照)。」(段落【0002】)

ウ.「【0007】
この発明によると、電子基板の第1面上の背高部品および薄型部品の高さに応じた段差を外装ケースの壁面に設けるため、薄型部品上を不要に厚い樹脂で覆うことが防止され、熱伝導性樹脂の樹脂量を効果的に低減でき、低コスト化、小型化、軽量化が促進できる。また、外装ケース壁面外側の上記段差による凹部に放熱フィンを設けるため、発熱を伴う電子部品の放熱性の良好な電子機器の密閉筐体が得られる。」(段落【0007】)

エ.「【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
図1?図5は、この発明の実施の形態1による電子機器の密閉筐体の断面図、底面図、上面図、側面図、および断面部分拡大図であり、主に図1に基づいて説明する。
図に示すように、電子機器の密閉筐体100(以下、密閉電子機器100と称す)は、プリント基板に電子部品を実装して成る電子基板110を収納した外装ケース130に、熱伝導性樹脂から成る充填材101を充填して電子基板110の両面全体を気密封鎖して構成する。外装ケース130の内壁面側(図中上面側)に対向する電子基板110の第1面111aには、電子部品のうち所定の高さを超える背高部品としての外部接続コネクタ120や電解コンデンサ等の背高部品112と、マイクロプロセッサ等、上記所定の高さ以下の薄型部品113との双方が実装される。また、外装ケース130の開口面側(図中底面側)に対向する電子基板110の第2面111bには、少なくとも背高部品112は実装されない、即ち、電子部品が実装されないか薄型部品113のみが実装され、このような電子基板110は、四隅の取付けねじ114で外装ケース130の内壁に固定されている。
【0009】
また、背高部品112は電子基板110の第1面111aの外部接続コネクタ120側の端部に集約して実装され、外装ケース130は、該第1面111aと対向する外装ケース130壁面(以下、ケース上面131と称す)に段差を設けて、外部接続コネクタ120の一部を含む集約された背高部品112を内部に収納すると共に充填材101が厚く充填された大深度部132aと、薄型部品113のみを内部に収納すると共に充填材101が薄く充填された小深度部132bとで構成される。また、電子基板110を取り巻く輪郭周縁部134と、該輪郭周縁部134の3方に設けられた取付足部135とを備える。
【0010】
充填材101は、熱安定性、柔軟性および熱伝導性を備えた電気的絶縁体で、電子部品に加わるストレスを低減するのに適した、例えば電気絶縁用耐熱ウレタン樹脂が使用され、電子基板110の両面111a、111bに実装された全ての電子部品を覆って外装ケース130内を埋め込むように充填されている。図2の底面図に示すように、大深度部132aに位置する電子基板110の角部に切欠部115が設けられ、この切欠部115から充填材101を外装ケース130内に注入することにより充填する。
【0011】
また、外装ケース130の小深度部132bにおけるケース上面131外側に放熱フィン133が設けられ、大深度部132aのケース上面131には充填材101の膨張収縮に伴う内圧の変化を吸収するための所定の大きさの減圧窓穴136が設けられている。放熱フィン133は、図3の上面図に示すように、大深度部132aと直交する方向に所定の間隔で複数個設けられる。
【0012】
外部接続コネクタ120は、図示しない外部の接続先コネクタの接続ピンと圧接接続される接続ピン121と、該接続ピン121が圧入固定され、外装ケース130の側面に係合設置された樹脂製のコネクタハウジング122と、該コネクタハウジング122の端部に設けられた鍔部123と、該鍔部123の外周3面に設けられた係合溝124とによって構成され、接続ピン121の一端は直角方向に折り曲げられて電子基板110に半田付けにて実装される。
図4の側面図に示すように、外装ケース130の側面に設けられた側面開口部139に外部接続コネクタ120のコネクタハウジング122が取付けられ、接続ピン121はコネクタハウジング122を貫通して外装ケース130から突出される。また、側面開口部139には外装ケース130の金型の抜き勾配による斜面が形成されている。さらに、図4の断面による部分拡大図である図5に示すように、コネクタハウジング122端部の鍔部123に設けられた係合溝124は、側面開口部139の周縁部に圧入係合されるようになっている。なお、係合溝124の幅や側面開口部139の周縁部は金型の抜き勾配による傾斜を一致させるように構成されている。
【0013】
以上のように構成される密閉電子機器100を形成するには、電子基板110に外部接続コネクタ120を含む全ての電子部品を実装した後、まず電気的な性能検査を行ない、必要に応じて手直し修理等を施した後、電子基板110を外装ケース130内に固定する。外装ケース130の減圧窓穴136の外面には図示しない耐熱シートを接着しておき、電子基板110の切欠部115から外装ケース130内に充填材101を注入し、自然放置又は加熱によって充填材101が羊羹状に固化した時点で減圧窓穴136に接着されていた耐熱シートをはがして完成する。
なお、外装ケース130はアルミダイキャストで成型されたものであって、小深度部132bにおけるケース上面131外側には放熱フィン133が一体成型される。また、外装ケース130の開口面を密閉電子機器100の被取付面と隣接対向して設置する。」(段落【0008】ないし【0013】)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしエ.及び図面から、次のことが分かる。
カ.上記(1)ア.ないしエ.並びに図1から、自動車用の内燃機関を制御するための装置は、自動車用の内燃機関を制御するための制御回路をマイクロプロセッサ等の薄型部品113及びプリント基板により形成された電子基板110と、外部接続コネクタ120と、電子基板110が固定される外装ケース130とを有することが分かり、外部接続コネクタ120は、電子基板110と外部の機器とを接続するためのものであることは明らかである。

キ.上記(1)エ.及び図1から、外装ケース130の電子基板110が固定された側の開口面が密閉電子機器100の被取付面と隣接対向して設置されること、すなわち、電子基板110が密閉電子機器100の被取付面で覆われることが分かる。

ク.上記(1)エ.ないし図1及び図5から、図5における121の引き出し線が描かれている側の接続ピン121(以下、「電子基板110側の接続ピン121」という。)は、外部接続コネクタ120と電子基板110とを接続することが分かり、また、外装ケース130の上面131は、電子基板110側の接続ピン121に対向することが分かる。

ケ.上記(1)エ.及び図1から、電子基板110側の接続ピン121と、外装ケース130の上面131とが熱伝導性を備えた電気的絶縁体からなる充填材101により接続されていることが分かり、また、充填材101は、熱伝導性を備えるものであるから、放熱性向上のために設けられていることは明らかである。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「自動車用の内燃機関を制御するための制御回路をマイクロプロセッサ等の薄型部品113及びプリント基板により形成された電子基板110と、
前記電子基板110と外部の機器とを接続するための外部接続コネクタ120と、
前記電子基板110が固定される外装ケース130と、
前記電子基板110を覆う密閉電子機器100の被取付面とを有する自動車用の内燃機関を制御するための装置において、
前記外装ケース130は前記外部接続コネクタ120と前記電子基板110とを接続する電子基板110側の接続ピン121に対抗する上面131を備え、
前記電子基板110側の接続ピン121と、前記外装ケース130の上面131とが熱伝導性を備えた電気的絶縁体からなる充填材101により放熱性向上のため接続されている自動車用の内燃機関を制御するための装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3-2.本件補正発明と引用文献記載の発明との対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「自動車用の内燃機関」、「制御回路」、「マイクロプロセッサ等の薄型部品113」、「プリント基板」、「電子基板110」、「外装ケース130」、「外部接続コネクタ120」、「電子基板110側の接続ピン121」及び「熱伝導性を備えた電気的絶縁体からなる充填材101」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本件補正発明における「自動車用内燃機関」、「電子回路」、「電子部品」、「基板上のパターン」、「基板」、「ケース」、「コネクタ」、「端子部」及び「絶縁性を確保できる熱伝導部材」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における密閉電子機器100の被取付面は、電子基板110を覆うように設けられるものであるから、本件補正発明における「カバー」に相当する。
そして、引用文献記載の発明における「上面131」は、「面」という限りにおいて、本件補正発明における「凸面」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、
「自動車用内燃機関を制御するための電子回路を電子部品及び基板上のパターンにより形成された基板と、
前記基板と外部の機器とを接続するためのコネクタと、
前記基板が固定されるケースと、
前記基板を覆うカバーとを有する自動車用内燃機関用制御装置において、
前記ケースは前記コネクタと前記基板とを接続する端子部に対抗する面を備え、
前記端子部と、前記面とが絶縁性を確保できる熱伝導部材により放熱性向上のため接続されている自動車用内燃機関用制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

本件補正発明においては、コネクタと基板とを接続する端子部に近接して対抗するようにケースが凸面を備えているのに対して、引用文献記載の発明においては、外部接続コネクタ120(本件補正発明の[コネクタ]に相当。)と電気基板110(本件補正発明の[基板]に相当。)とを接続する電子基板110側の接続ピン121(本件補正発明の[端子部]に相当。)に近接して対抗するように外装ケース130(本件補正発明の[ケース]に相当。)が凸面を備えるものでない点(以下、「相違点」という。)。

3-3.当審の判断
上記相違点について検討する。
放熱性の向上を目的として、放熱性向上の対象となる部材に近接させるためにケースに凸面を設けることは周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2002-280776号公報の段落【0002】及び図9並びに特開2007-42863号公報の段落【0046】及び図6等参照。)である。
また、コネクタの端子部を放熱性向上の対象として用いて、コネクタの端子部から外部へ熱を放熱することも周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平7-245361号公報の段落【0010】及び図1並びに特開2005-304163号公報の段落【0005】、【0027】及び図1等参照。)である。
そして、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2はいずれも、基板が搭載された部材の放熱に関する技術であることを考慮すれば、引用文献記載の発明における「電子基板110側の接続ピン121」に対して、周知技術2を参酌しつつ、周知技術1を適用することにより相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を想到することは、当業者が適宜なし得ることである。

また、本件補正発明は、全体としても、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するとも認められない。

以上から、本件補正発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成24年4月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成23年12月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.[理由]1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開2005-340698号公報)の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記第2.[理由]3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正発明は、前記第2.[理由]2.で検討したように、本願発明における発明特定事項の「接続」の機能を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明における発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2.[理由]3-3.に記載したとおり、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-05 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-29 
出願番号 特願2009-22095(P2009-22095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 達也  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 藤原 直欣
中川 隆司
発明の名称 自動車用内燃機関制御装置  
代理人 井上 学  

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