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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1274191
審判番号 不服2012-7967  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-01 
確定日 2013-05-16 
事件の表示 特願2005-202904「余剰汚泥減容化方法及び余剰汚泥減容化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 1日出願公開、特開2007- 21285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年7月12日の特許出願であって、平成23年9月22日付けで拒絶理由の起案がなされ、その指定期間内に意見書及び手続補正書の提出はなされず、平成24年2月7日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正が提出され、平成24年9月21日付けで特許法第164条第3項に基づく報告書を引用した審尋の起案がなされ、同年11月22日に回答書が提出されたものである。

第2.平成24年5月1日付けの手続補正について
1.補正却下の決定の結論
平成24年5月1日付けの手続補正を却下する。

2.理由
(1)平成24年5月1日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)は、本件補正前の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項2である、
「 【請求項2】
有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽と、脱窒槽及び硝化槽にて生成した汚泥の少なくとも一部を破砕する汚泥破砕機と、汚泥破砕機で破砕された汚泥を前記脱窒槽及び/又は硝化槽に返送する破砕汚泥返送管とを具備する余剰汚泥減容化装置において、
汚泥破砕機が、回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成されたスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備することを特徴とする余剰汚泥減容化装置。」を、
「 【請求項2】
有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽と、脱窒槽及び硝化槽にて生成した汚泥の少なくとも一部を破砕する汚泥破砕機と、汚泥破砕機で破砕された汚泥を前記脱窒槽及び/又は硝化槽に返送する破砕汚泥返送管とを具備する余剰汚泥減容化装置において、
汚泥破砕機が、ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備することを特徴とする余剰汚泥減容化装置。」
と補正することを含むものである。
(2)この請求項2に係る補正は、本件補正前の請求項2における「汚泥破砕機が、回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成されたスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」を「汚泥破砕機が、ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」と補正するものであって、汚泥破砕機における回転軸及びスクリーンの態様を限定したものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定を目的とするものである。
(3)そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下、「補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかについて検討する。
(3-1)引用例の記載事項
(3-1-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-24698号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項2】生物反応槽内で廃水を活性汚泥により生物学的に処理し、前記処理された処理水から前記活性汚泥を固液分離槽で分離してその一部を返送汚泥経路を介して前記生物反応槽に返送すると共に、残りが余剰汚泥となる廃水の生物学的処理装置において、前記余剰汚泥を高速攪拌処理、超音波処理等の物理的手段でホモジナイズ処理するホモジナイズ装置を設け、ホモジナイズ処理した余剰汚泥を前記生物反応槽に戻すことを特徴とする廃水の生物学的処理装置。」(特許請求の範囲の請求項2)
(イ)「本発明は・・・・・・余剰汚泥の発生を減少さらには無くすことができる廃水の生物学的処理方法及び装置を提供することを目的とする。」(【0005】)
(ウ)「【発明の実施の形態】以下添付図面に従って本発明に係る廃水の生物学的処理方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。図1は、本発明に係る廃水の生物学的処理装置の第1の実施の形態を説明する断面図で、活性汚泥循環変法に適用した例である。
図1に示すように、本発明の生物学的処理装置10は、主として、廃水の原水配管12と、生物反応槽14と、固液分離槽16と、返送汚泥経路18と、ホモジナイズ装置21とで構成される。尚、ポンプ等の送り手段は図から省略してある。原水配管12は、有機性廃水や無機性廃水を生物反応槽14の後記する脱窒槽20に供給する。
生物反応槽14は、内部に活性汚泥が存在すると共に、前段側に設けられた脱窒槽20、後段側に設けられた硝化槽22の2つの槽から構成される。・・・・・・。
脱窒槽20では嫌気性状態下において活性汚泥中の脱窒菌により廃水中のBOD成分の分解と脱窒処理が行われる。・・・・・・。そして、硝化槽22で硝化処理された硝化液が消化液循環路24を介して脱窒槽20に循環されることにより廃水中の窒素成分は窒素ガスとして大気に放出されて除去される。この循環される液の一部が処理水として引き抜かれ固液分離槽16に送られる。
固液分離槽16では、処理水に同伴される活性汚泥を重力により槽低に沈降させることにより処理水から活性汚泥を分離する。・・・・・。返送汚泥経路18は、固液分離槽16の低部と生物反応槽14の脱窒槽20入口側とを繋ぐ経路として形成される。
ホモジナイズ装置21は、返送汚泥経路18の途中に設けられ、物理的手段で活性汚泥をホモジナイズ処理し、活性汚泥中の微生物を分散させ細胞壁を傷つけるか破壊して細胞内体液を溶出させることにより、微生物を溶融状態で死滅させることができる機器で構成される。物理的手段で活性汚泥をホモジナイズ処理する機器としては、高速攪拌機、超音波処理機等を使用することができる。・・・・・・。」(【0008】?【0013】)
(エ)「本発明に係る廃水の生物学的処理装置の第1の実施の形態を説明する断面図」とされる図1をみると上記(ウ)に記載された事項を窺うことができる。
(3-1-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-219376号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(カ)「【請求項1】 有機物を含有する汚泥を、圧力を加えて狭い間隙から高速で吐出し、前記間隙を通過する際に生じる剪断力によって汚泥を粉砕することを特徴とする汚泥の粉砕方法。
【請求項2】 回転羽根と該回転羽根を包囲するスリットを有するスクリーンとの間で、前記回転羽根の高速回転により汚泥に圧力を加え、前記スリットを通して汚泥を高速で吐出する請求項1記載の汚泥の粉砕方法。」(特許請求の範囲の請求項1?2)
(キ)「【従来の技術】・・・・・・汚泥の減容化が必要である。
・・・・・・
・・・・・・ホモジナイザー及びミキサーによる粉砕では、現実問題として微細粒子(1μm未満)までの粉砕が困難であり、有機物を含有する汚泥の粉砕方法として実用的とは言い難い。・・・・・・。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題点を解消し、有機物を含有する汚泥の、実用的で且つ安価な粉砕方法の提供を課題とする。」(【0002】?【0006】)
(ク)「【発明の実施の形態】本発明の処理対象となる有機物を含有する汚泥としては、排水処理施設より排出される生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥の他、それらの混合汚泥及び濃縮汚泥等が挙げられる。・・・・・・。」(【0008】)
(ケ)「(実施例1)化学工場の活性汚泥処理施設の余剰汚泥を・・・・・・攪拌機により均一に分散させた。次いで、ステンレス製の1.0リットル容器に、先に調整した汚泥を0.6リットル充填し、エム・テクニック社製のCLM-0.8S(回転羽根と、それを包囲するスリットを有するスクリーンを設けた粉砕装置)により、回転羽根の回転数12,000(rpm)にて30秒間粉砕した。粉砕した汚泥の含水率を測定したところ、75.9(%)であった。比較のため、粉砕する前の汚泥の含水率を測定したところ、84.9%であった。この結果、汚泥の粉砕により汚泥を構成する微生物や有機性の粒子が粉砕されていることが確認できた。」(【0014】)
(3-1-3)周知例1
本願出願前の技術常識を記載した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-250527号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載され、視認される。
(サ)「図1に、本発明に好ましく用いられる高速攪拌型の乳化装置の1例を示す。乳化装置10はベセル1と攪拌機部2からなり、攪拌機部2には攪拌機M1を有し、回転軸の先端にはロータ3を有し、該ロータ3の外側には固定されたスクリーン4を有する。
図2には、ロータ3およびスクリーン4の幾つかの形状の例を示す。同図中、(a)、(b)はロータの形状を示すものであり、ブレードの数やそのひねりの形状を目的に応じて種々選択することができる。また、(c)、(d)はスクリーンの形状を示すものであり、スリット5の数や長さなど目的に応じて種々選択することができる。
本発明に用いられる高速攪拌型の乳化装置10においては、図1に示す如く、ロータ近傍に液を注入し、図中矢印で示され液流により、高速に回転するロータとステータ間での剪断により乳化分散され、乳化液は乳化装置の上部より押し出される形で排出され、乳化装置の上部に気液界面を形成し得ない形状とすることを特徴とする。
このような高速攪拌型の乳化装置として好ましく用いられる攪拌機としては、エムテクニック(株)社製クレアミックスが挙げられる。」(【0084】?【0087】)
(シ)「・・・・・・高速攪拌型の乳化装置(クレアミックスCLM-0.8S、エムテクニック(株)社製)を用い・・・・・・。」(【0093】)
(ス)「本発明に好ましく用いられる高速攪拌型の乳化装置の1例を示す」図1及び「ロータおよびスクリーンの幾つかの形状の例を示す」図2をみると、高速攪拌型の乳化装置(クレアミックスCLM-0.8S、エムテクニック(株)社製)がケーシングを有すること、スクリーンは貫通孔が多数形成された円錐形状であることが見て取れる。
(3-1-4)周知例2
本願出願前の技術常識を記載した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-211155号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載され、視認される。
(タ)「【発明の実態の形態】・・・・・・・・金属の微粒子として、その超微粒子を製造するのに用いられる装置としては、図1に示すように、液中アトマイズ装置A・・・・・・が設けられている。液中アトマイズ装置Aは・・・・・・いわゆるプレ分散を行なって溶融金属微粒子分散液(被処理液)を得るための装置である。この装置は、不活性ガス導入管を備えた攪拌処理槽1にジェネレーター2がモータ3と連結して設けられ、ジェネレーター2は図2、3に示すように、倒立した截頭円錐状筒体の周壁に放射状に切り溝4、4・・を有する固定子5に対して回転子6(軸の両側の2枚翼)をモータ3により高速回転させ、被処理液を吸い込ませ、固定子5と回転子6との間で働く高剪断作用によりその被処理液中の金属の溶融体を分断して微粒子化し、その溶融金属微粒子の分散液を切り溝4、4・・から排出させるものである。・・・・・・。」(【0008】)
(チ)「・・・・・・実施例1・・・・・・図1に示す液中アトマイズ装置Aとしての分散機(装置名:クレアミックスCLM-0.8S、エム・テクニック社製)の攪拌槽内に仕込み、190℃まで加熱して攪拌速度20000rpm(毎分の回転速度)で10分間攪拌した。・・・・・・。」(【0014】)
(ツ)図2及び図3をみると、上記(タ)に記載された事項を窺うことができ、ジェネレータ2がケーシングを有することが見て取れる。
(3-1-5)周知例3
本願出願前の技術常識を記載した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-24269号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の事項が記載され、視認される。
(ナ)「この実施例に用いる使用機器について説明しておくと、図1に示すように、高速回転型分散機1を、加圧槽2に装着する。高速回転型分散機1は、エム・テクニック株式会社製クリアミックス CLM-0.8Sを使用する。この高速回転型分散機1は、上部に電動機11を有し、その回転軸(図示せず)が下方に垂下され、その下端の回転羽根(図示せず)の回転により、分散がなされるものである。回転軸の外周には、筒状部12が装着され、筒状部12の下端にスクリーン13が設けられている。処理物は、回転羽根の回転によって、回転羽根とスクリーン13との間にて分散処理がなされるものである。
」(【0027】)
(ニ)「実施例の製造装置の内部構造説明図である」図1をみると、上記(ナ)の事項を窺うことができ、スクリーン13が円錐形状であることが見て取れる。
(3-2)引用例1に記載された発明
ア 引用例1の(ア)には、「生物反応槽内で廃水を活性汚泥により生物学的に処理し、前記処理された処理水から前記活性汚泥を固液分離槽で分離してその一部を返送汚泥経路を介して前記生物反応槽に返送すると共に、残りが余剰汚泥となる廃水の生物学的処理装置において、前記余剰汚泥を高速攪拌処理、超音波処理等の物理的手段でホモジナイズ処理するホモジナイズ装置を設け、ホモジナイズ処理した余剰汚泥を前記生物反応槽に戻す・・・・・・廃水の生物学的処理装置」が記載されている。
イ このアの「廃水の生物学的処理装置」は、「生物反応槽」、「返送汚泥経路」を設けており、これらについて詳述している引用例1の(ウ)の記載を順にみていくことにする。
イ-1 「生物反応槽」について
引用例1の(ウ)には、「生物反応槽14は・・・・・・前段側に設けられた脱窒槽20、後段側に設けられた硝化槽22の2つの槽から構成される・・・・・・脱窒槽20では・・・・・・脱窒処理が行われる。・・・・・・硝化槽22で硝化処理され」と記載されているから、「生物反応槽」は、「前段側に設けられた脱窒処理を行う脱窒槽と後段側に設けられた硝化処理を行う硝化槽の2つの槽から構成され」ているといえ、また、同(ウ)の「原水配管12は、有機性廃水や無機性廃水を生物反応槽14の後記する脱窒槽20に供給する。」との記載から、原水配管から脱窒槽に有機性廃水や無機性廃水を供給しているといえる。
さらに、同(ウ)には、「硝化槽22で硝化処理された硝化液が消化液循環路24を介して脱窒槽20に循環される」ことも記載されている。
イ-2 「返送汚泥経路」について
同(ウ)には、「返送汚泥経路18は、固液分離槽16の低部と生物反応槽14の脱窒槽20入口側とを繋ぐ経路として形成される」と記載されており、返送汚泥経路は固液分離槽の低部と生物反応槽の脱窒槽入口側とを繋ぐものということができる。
ウ そうすると、引用例には、
「前段側に設けられ、原水配管から有機性廃水や無機性廃水を供給される脱窒処理を行う脱窒槽と後段側に設けられた硝化処理を行う硝化槽の2つの槽から構成された生物反応槽内で廃水を活性汚泥により生物学的に処理し、
前記硝化槽で硝化処理された硝化液が消化液循環路を介して前記脱窒槽に循環され、
前記処理された処理水から前記活性汚泥を固液分離槽で分離してその一部を返送汚泥経路を介して前記固液分離槽の低部から前記生物反応槽の前記脱窒槽入口側に返送すると共に、残りが余剰汚泥となる廃水の生物学的処理装置において、
前記余剰汚泥を高速攪拌処理、超音波処理等の物理的手段でホモジナイズ処理するホモジナイズ装置を設け、ホモジナイズ処理した余剰汚泥を前記生物反応槽戻す廃水の生物学的処理装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(3-3)補正後発明との対比・判断
ア 補正後発明における「有機性排水」についてみてみると、本願明細書の【0012】に「有機性排水とは、有機物を含有する排水のことであり、例えば、下水、農村集落排水、有機系の産業排水等が挙げられる。」と記載されている。ここで、「下水」とは、「病院、家庭、工場などの衛生設備から放出される廃水」(「マグローヒル 科学技術用語大辞典 改訂第3版」 株式会社日刊工業新聞社(2001年5月31日) 502頁 「下水」の項)のことであるから、下水は「有機性廃水」ということができ、補正後発明における「有機性排水」とは引用発明の「有機性廃水」を含むといえる。
そうすると、引用発明の「有機性廃水」は、補正後発明の「有機性排水」に含まれる。
イ 補正後発明における「有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽」についてみてみると、本願明細書の【0009】には「排水供給管11を介して供給された有機性排水を無酸素状態で生物学的処理して脱窒する脱窒槽10と、第1の移送管21を介して脱窒槽10から移送された排水を好気性状態で生物学的処理して硝化する硝化槽20」との記載があるから、
補正後発明の「有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽」とは、「排水供給管を介して供給された有機性排水を生物学的処理して脱窒する脱窒槽と、脱窒槽から移送された排水を好気性状態で生物学的処理して硝化する硝化槽」と言い換えることができる。
そうすると、引用発明の「前段側に設けられ、原水配管から有機性廃水や無機性廃水を供給される脱窒処理を行う脱窒槽と後段側に設けられた硝化処理を行う硝化槽の2つの槽から構成された生物反応槽」の「脱窒槽」及び「硝化層」は、補正後発明の「有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽」に相当し、引用発明の「生物反応槽」は補正後発明の「有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽」を総称するものということができる。
ウ 引用発明の「前記硝化槽で硝化処理された硝化液が消化液循環路を介して前記脱窒槽に循環され」ることについてみてみる。
本願明細書の【0010】に「硝化槽20中の硝化液を脱窒槽10に戻すための循環硝化液移送管23と循環硝化液移送ポンプ24が設けられている。」と記載されているから、補正後発明は、発明特定事項としての明記はないものの、引用発明の「前記硝化槽で硝化処理された硝化液が消化液循環路を介して前記脱窒槽に循環され」ることに相当する事項を有しているといえる。
エ 引用発明の「前記処理された処理水から前記活性汚泥を固液分離槽で分離」することについてみてみる。
エ-1 「活性汚泥」は、引用発明の生物反応槽で「廃水を活性汚泥により生物学的に処理」するとの記載をみると、補正後発明の「汚泥」に他ならなず、脱窒槽および硝化槽にて生成するものでもある。
エ-2 また、引用発明の生物反応槽で「廃水を活性汚泥により生物学的に処理」したものが「前記処理された処理水」であるから、この処理水は、生物反応槽の後段側に設けられた硝化槽からもたらされることは明らかである。
エ-3 補正後発明では、「脱窒槽及び硝化槽にて生成した汚泥の少なくとも一部を破砕」しているから、同発明では発明特定事項として明記されてはいないが、汚泥を取り出す手段が存在するといえ、現に、本願明細書の【0009】には「硝化槽20から移送された硝化液中の汚泥を沈降分離させる沈殿槽30」との記載がなされている。
オ 引用発明の「前記活性汚泥・・・・・・の一部を返送汚泥経路を介して前記固液分離槽の低部から前記生物反応槽の前記脱窒槽入口側に返送すると共に、残りが余剰汚泥となる・・・・・・前記余剰汚泥を高速攪拌処理、超音波処理等の物理的手段でホモジナイズ処理するホモジナイズ装置を設け、ホモジナイズ処理した余剰汚泥を前記生物反応槽戻す」ことについてみてみる。
オ-1 引用発明において、活性汚泥の一部は返送汚泥経路を介して脱窒槽入口側に返送され、残りの余剰汚泥がホモジナイズ処理され生物反応槽に戻されているといえる。
ここで、引用例1の(ウ)には、「返送汚泥経路18は、固液分離槽16の低部と生物反応槽14の脱窒槽20入口側とを繋ぐ経路として形成される。
ホモジナイズ装置21は、返送汚泥経路18の途中に設けられ、物理的手段で活性汚泥をホモジナイズ処理し」と記載されているから、余剰汚泥も返送汚泥経路を介して脱窒槽の入口側に返送されているとみることができる。
オ-2 引用発明の「ホモジナイズ装置」は、引用例1の(ウ)の記載によれば、「活性汚泥中の微生物を分散させ細胞壁を傷つけるか破壊して細胞内体液を溶出させることにより、微生物を溶融状態で死滅させることができる機器」であるから、活性汚泥を破壊、すなわち、破砕するものといえ、補正後発明の「汚泥破砕機」と「汚泥を破砕する装置」である点で共通する。
オ-3 また、引用発明の「返送汚泥経路」は、管路であることは明らかであり、「前記活性汚泥・・・・・・の一部を返送汚泥経路を介して前記生物反応槽の前記脱窒槽入口側に返送」され、また、上記オ-1及びオ-2でみたように、返送汚泥経路には、活性汚泥とホモジナイズ装置で破壊された余剰汚泥、すなわち、破壊された活性汚泥が返送されるといえる。
そうすると、引用発明の「返送汚泥経路」は補正後発明の「破砕汚泥返送管」に含まれ、引用発明も補正後発明と同じく活性汚泥、すなわち、汚泥の一部が破砕されているということができる。
カ 補正後発明の「具備する」とは、「必要なものが十分に備わっていること。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であるから、「備わっている」の意に解する。
キ 引用発明の「汚水の生物学的処理装置」は、引用例1の(イ)の記載によれば、「余剰汚泥の発生を減少さらには無くすことができる廃水の生物学的処理装置」ということができるから、補正後発明の「余剰汚泥減容化装置」に相当する。
ク 以上の検討を踏まえると、補正後発明と引用発明とは、
「有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽と、脱窒槽及び硝化槽にて生成した汚泥の一部を破砕する汚泥を破砕する装置と、汚泥を破砕する装置で破砕された汚泥を前記脱窒槽に返送する破砕汚泥返送管とを具備する余剰汚泥減容化装置」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点:「汚泥を破砕する装置」につき、補正後発明は、「ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」ものであるのに対し、引用発明は、「高速攪拌処理、超音波処理等の物理的手段でホモジナイズ処理するホモジナイズ装置」である点。
ケ そこで、この相違点について検討する。
コ まず、引用例2の記載をみてみる。
コ-1 引用例2の(カ)の請求項1を引用する請求項2の記載を独立形式で記載すると、「回転羽根と該回転羽根を包囲するスリットを有するスクリーンとの間で、前記回転羽根の高速回転により汚泥に圧力を加え、前記スリットを通して汚泥を高速で吐出し、有機物を含有する汚泥を、圧力を加えて狭い間隙から高速で吐出し、前記間隙を通過する際に生じる剪断力によって汚泥を粉砕することを特徴とする汚泥の粉砕方法」ということできる。
コ-2 このコ-1の「汚泥の粉砕方法」は、引用例2の(キ)の記載によれば、「汚泥の減容化に当たり、ホモジナイザーによる粉砕では有機物を含有する汚泥の粉砕方法として実用的とは言い難い点を解消し、有機物を含有する汚泥の、実用的で且つ安価な粉砕方法の提供」するものであって、同(ク)の記載によれば、「排水処理施設より排出される生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥の他、それらの混合汚泥及び濃縮汚泥等」を対象とするものである。
コ-3 そして、同(ケ)の記載によれば、上記コ-1の「汚泥の粉砕方法」に使用する機器として「エム・テクニック社製のCLM-0.8S(回転羽根と、それを包囲するスリットを有するスクリーンを設けた粉砕装置)」が例示されているということができる。
コ-4 そうすると、引用例2には、汚泥の減容化に当たり、排水処理施設より排出される生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥の他、それらの混合汚泥及び濃縮汚泥等を粉砕する手段として、ホモジナイザーによる粉砕に代えて、回転羽根と該回転羽根を包囲するスリットを有するスクリーンとの間で、前記回転羽根の高速回転により汚泥に圧力を加え、前記スリットを通して汚泥を高速で吐出し、有機物を含有する汚泥を、圧力を加えて狭い間隙から高速で吐出し、前記間隙を通過する際に生じる剪断力によって汚泥を粉砕すること、この粉砕のための具体的な装置名として、エム・テクニック社製のCLM-0.8S(回転羽根と、それを包囲するスリットを有するスクリーンを設けた粉砕装置)が教示されているといえる。
サ そうすると、引用発明は、引用例1の(イ)に記載されているように「余剰汚泥の発生を減少さらには無くすことができる廃水の生物学的処理方法及び装置を提供することを目的とする」ものであるから、引用例2に接した当業者は、この引用例2の教示に従い、ホモジナイズ装置、すなわち、ホモジナイザーに代えて、回転羽根と該回転羽根を包囲するスリットを有するスクリーンとの間で、前記回転羽根の高速回転により汚泥に圧力を加え、前記スリットを通して汚泥を高速で吐出し、有機物を含有する汚泥を、圧力を加えて狭い間隙から高速で吐出し、前記間隙を通過する際に生じる剪断力によって汚泥を粉砕することの動機付けを得るものといえ、かかる粉砕のための具体的装置として、エム・テクニック社製のCLM-0.8Sを使用をまず試みることが自然である。
シ そこで、「エム・テクニック社製のCLM-0.8S」なる装置についてみてみると、周知例1?3に記載され、視認されるように、この装置は「ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段」を有するものといえる。
なお、本願明細書の【0030】には、「沈殿槽30で分離した汚泥の一部を、そのまま返送汚泥管71を介して脱窒槽10に連続的に返送し、汚泥の残りの一部を汚泥移送手段50により図2及び図3に示す汚泥破砕機40(エム・テクニック株式会社製のCLM-0.8S)に連続的に移送した。」と記載されるように、補正後発明の「ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」「汚泥破砕機」として、「エム・テクニック株式会社製のCLM-0.8S」が含まれるから、上記判断は妥当なものである。
ス そうすると、上記相違点2に係る本願発明の特定事項は、引用例2の教示に従って、引用発明の「汚泥を破砕する装置」として「エム・テクニック社製のCLM-0.8S」なる装置を用いることにより、容易になし得ることである。
セ したがって、補正後発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)補正却下のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
上記第2.のとおり平成24年5月1日付け手続補正は却下されたから、本願の請求項1?2に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであって、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項2】
有機性排水を生物学的硝化脱窒処理する脱窒槽及び硝化槽と、脱窒槽及び硝化槽にて生成した汚泥の少なくとも一部を破砕する汚泥破砕機と、汚泥破砕機で破砕された汚泥を前記脱窒槽及び/又は硝化槽に返送する破砕汚泥返送管とを具備する余剰汚泥減容化装置において、
汚泥破砕機が、回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成されたスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備することを特徴とする余剰汚泥減容化装置。」
(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用例1、2及びその記載事項は、上記第2.(3)に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明2は、上記第2.で検討した補正後発明に関し、「汚泥破砕機が、ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」を「汚泥破砕機が、回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成されたスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」に拡張したものである。
してみると、本願発明の発明特定事項のうち「汚泥破砕機が、回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成されたスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」を「汚泥破砕機が、ケーシング内に配された回転軸と、回転軸に取り付けられ、汚泥を攪拌する回転羽根と、回転羽根の近傍に配置され、貫通孔が多数形成された円錐形状のスクリーンと、回転軸を回転駆動させる駆動手段とを具備する」に限定したものに相当する補正後発明が、上記第2.(3)に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正補発明と同様の理由により、本願発明も、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-14 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2005-202904(P2005-202904)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
P 1 8・ 575- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 紀史  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 中澤 登
國方 恭子
発明の名称 余剰汚泥減容化方法及び余剰汚泥減容化装置  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  

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