• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1274255
審判番号 不服2012-237  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-06 
確定日 2013-05-15 
事件の表示 特願2009-518374「フォトルミネッセンスカラー液晶ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日国際公開、WO2008/005508、平成21年12月 3日国内公表、特表2009-543130〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2007年7月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年7月6日、米国、2007年7月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月5日付けで国際出願翻訳文提出書が提出され、平成22年11月5日付けで手続補正がなされ、平成23年9月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年6月14日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年11月15日に回答書が提出された。

2 平成24年1月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についての補正であり、本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含み、
青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み、
蛍光体材料が背面プレートの下面に提供され、
前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層をさらに含み、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイ。
【請求項2】
赤色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg,Al)_(3)SiO_(5):Eu^(2+),Fを有し、緑色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg)_(2)SiO_(4):Eu^(2+),Fを有し、放射源が400?480nmの範囲の波長を有する青色光を放出する光放出ダイオードである、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項3】
赤色蛍光体が(Sr,Ba,Mg,Al)_(3)SiO_(5):Eu^(2+),F、Ca_(2)NaMg_(2)V_(3)O_(12):Eu^(3+)およびYVO_(4):Euからなる群より選択され、緑色蛍光体が(Sr,Ba,Mg)_(2)SiO_(4):Eu^(2+),Fおよび(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)からなる群より選択され、青色蛍光体がBaMgAl_(10)O_(17):Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)、Sr_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Euおよび(Ba,Eu)MgAl_(10)O_(17)からなる群より選択され、放射源が360?400nmの範囲の波長を有する光を放出するUV放出光放出ダイオードである、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項4】
赤色蛍光体がY_(2)O_(3):EuおよびYVO_(4):Euからなる群より選択され、緑色蛍光体がLaPO_(4):Ce,Tb、(Ce,Tb)(Mg)Al_(11)O_(19)および(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)からなる群より選択され、青色蛍光体が(SrCaBaMg)_(5)(PO4)_(3)Cl:Eu、(Ba,Eu)Mg_(2)Al_(16)O_(27)、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)、Sr_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu、(Ba,Eu)MgAl_(10)O_(17)からなる群より選択され、励起放射が254nmオーダーの波長を有するUV光を含む、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項5】
赤色蛍光体が式(Y,Gd)BO_(3):Euを有し、緑色蛍光体が式Zn_(2)SiO_(4):Mnを有し、青色蛍光体が式BaMgAl_(10)O_(17):Euを有し、放射源が147?190nmの範囲の波長を有するプラズマ放出光である、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項6】
電極のマトリクスが薄膜トランジスタのアレイを含み、一つの薄膜トランジスタが各ピクセルに対応する、請求項1?5のいずれか1項記載の液晶ディスプレイ。
【請求項7】
薄膜トランジスタが前面プレートに提供される、請求項6記載の液晶ディスプレイ。
【請求項8】
薄膜トランジスタが背面プレートに提供される、請求項6記載の液晶ディスプレイ。
【請求項9】
放射源が単色励起源および準単色励起源からなる群より選択されるバックライティングユニットを含む、請求項1?5のいずれか1項記載の液晶ディスプレイ。
【請求項10】
蛍光体材料が背面プレートの上面に提供される、請求項1?5のいずれか1項記載の液晶ディスプレイ。」
から
「【請求項1】
ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含み、
青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み、
蛍光体材料が背面プレートの下面に提供され、
蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成され、
前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層をさらに含み、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイ。
【請求項2】
赤色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg,Al)_(3)SiO_(5):Eu^(2+),Fを有し、緑色蛍光体が式(Sr,Ba,Mg)_(2)SiO_(4):Eu^(2+),Fを有する、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項3】
赤色蛍光体が(Sr,Ba,Mg,Al)_(3)SiO_(5):Eu^(2+),F、Ca_(2)NaMg_(2)V_(3)O_(12):Eu^(3+)およびYVO_(4):Euからなる群より選択され、緑色蛍光体が(Sr,Ba,Mg)_(2)SiO_(4):Eu^(2+),Fおよび(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)からなる群より選択され、青色蛍光体がBaMgAl_(10)O_(17):Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)、Sr_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Euおよび(Ba,Eu)MgAl_(10)O_(17)からなる群より選択され、放射源が360?400nmの範囲の波長を有する光を放出するUV放出光放出ダイオードである、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項4】
赤色蛍光体がY_(2)O_(3):EuおよびYVO_(4):Euからなる群より選択され、緑色蛍光体がLaPO_(4):Ce,Tb、(Ce,Tb)(Mg)Al_(11)O_(19)および(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)からなる群より選択され、青色蛍光体が(SrCaBaMg)_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu、(Ba,Eu)Mg_(2)Al_(16)O_(27)、(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)、Sr_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu、(Ba,Eu)MgAl_(10)O_(17)からなる群より選択され、励起放射が254nmオーダーの波長を有するUV光を含む、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項5】
赤色蛍光体が式(Y,Gd)BO_(3):Euを有し、緑色蛍光体が式Zn_(2)SiO_(4):Mnを有し、青色蛍光体が式BaMgAl_(10)O_(17):Euを有し、放射源が147?190nmの範囲の波長を有するプラズマ放出光である、請求項1記載の液晶ディスプレイ。
【請求項6】
電極のマトリクスが薄膜トランジスタのアレイを含み、一つの薄膜トランジスタが各ピクセルに対応する、請求項1?5のいずれか1項記載の液晶ディスプレイ。
【請求項7】
薄膜トランジスタが前面プレートに提供される、請求項6記載の液晶ディスプレイ。
【請求項8】
薄膜トランジスタが背面プレートに提供される、請求項6記載の液晶ディスプレイ。
【請求項9】
放射源が単色励起源および準単色励起源からなる群より選択されるバックライティングユニットを含む、請求項1?5のいずれか1項記載の液晶ディスプレイ。」
と補正された。(下線は、審決で付した。以下、同様。)

補正後の請求項1が補正前の請求項1に対応していることは明らかである。
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「蛍光体材料」について、「蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成され」と限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開昭60-61725号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「本発明は液晶セルの内部にカラー螢光体を内設したカラー液晶表示装置に関するものである。」(第1頁左下欄第11?12行)
イ 「まず、ガラス基板1とカラー螢光体層4との接着性を改善するためにアミノシラン化合物で処理を行なった。具体的には、アミノシラン化合物としてC600(トーレシリコーン製)を用い、約0.01Vol%の割合でエチルアルコールに溶かし、この溶液中にガラス基板1を浸漬し、その後、オーブン中で120℃に昇温し30分間加熱した。この基板処理の後、上記螢光材科を混入した樹脂を一方のガラス基板1の上に印刷した。印刷法としては、従来から用いているスクリーン印刷法で行なった。スクリーン印刷法以外に、オフセット印刷による方法も考えられる。螢光材料を混入した3色からなる樹脂を印刷した後、焼成する。この上に偏光層11が設けられる。偏光層11は一方向に延伸したポリビニルアルコール(PVA)膜を沃素または染科により染色したものやポリエン系フィルムからなる。これをPVA系接着剤等を用いて螢光体層4の上に接着する。さらにその上に低温スパッタ法あるいはイオンプレーティング法により、酸化スズ-酸化インジウム(ITO)透明導電膜2を層設する。透明導電膜2は必要に応じて周知のフォトリソグラフィーによりパターン化する。後述する他方の基板1’上に薄膜トランジスター(TFT)等のスイッチング素子が付加されている場合には透明導電膜2はパターン化する必要はない。スイッチング素子を付加しない単純XYマトリックス方式の場合には透明導電膜2はストライプ状にパターン化しなければならない。またこの場合には螢光体層4のパターンと透明導電膜2との位置関係は規制されていなければならない。さらにこの上にスピンナー法またはディッピング法によりPVAもしくはポリイミドの膜を形成し、ラビングすることにより配向層3とする。
一方、この基板に対向するもう1枚の基板1’では透明電極2’のパターン化を行なった後、配向層3と同様な工程で配向層3’を設ける。これら2枚の基板の一方の基板上に約15μmのガラス微粉末を散布し、エポキシ系接着剤NXD24(住友スリーエム社製)を用いて両基板を貼合せ、硬化させた。この時の硬化条件は90℃-1時間,130℃-2時間である。接着剤硬化後ネマティック液晶を注入する。ここで用いる液晶の表示モードはツィステッドネマティック型が望ましく、正の誘電異方性を有するネマティック液晶材料として例えばメルク社製ZLI-I957(商品名)その他がある。」(第2頁右下欄第2行?第3頁右上欄第7行)
ウ 「上記工程により製作したカラー液晶セルの後面に紫外光を発するブラックライトや螢光灯などの光源8を置いて前面から観察する場合の動作説明を添附図面に示す。液晶セルとしては、ツィステッドネマティック(TN)液晶セルを使用した。ガラス基板1’の内面に透明電極2’が形成され、その上には液晶分子配向層3’が設けられている。また背面側基板1の内面には前述したカラー螢光体層4が層設されている。このカラー螢光体層4は赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”を含有している。両ガラス基板1,1’間には液晶6が介在しており、電源7からの電圧印加に応答して液晶分子6が配向変換され背面側からの光源8の透過によりカラー表示が行なわれる。この時光源8の励起光9がカラー螢光体層4に含有されている螢光材料5’,5”,5’”を励起するため、カラー螢光体層4より螢光10が発せられ、観測者13にこの螢光10が所定の輝度をもって到達することとなる。即ち、液晶セル内の透明電極2,2’間に電界が印加されない状態では、螢光10は偏光層11により偏光され、液晶層6に入射する。液晶層6はツィステッドネマティック状態に配向しているので入射光は偏波面が90度回転させられた後液晶層6を出射して偏光板12に入射する。偏光層11と偏光板12は直交状態(クロスニコル)に配置されているが、液晶層を通過した光は偏光面が90度回転しているので偏光板12も通過し観測者13に達する。」(第3頁右上欄第8行?左下欄第15行)
エ 「上記実施例以外に、一方の基板上に螢光体層、透明導電膜、偏光膜、配向膜をこの順に積層した構成とすることもでき、偏光膜で配向膜を兼ねるようにしても良い。また偏光膜を螢光体層と基板の間に層設することもできるが、この場合には偏光膜は励起光に対して偏光能を有すること及び螢光体層中の螢光分子を配向させ、螢光が一定方向の偏光となるようにすることが必要条件となる。」(第3頁右下欄第12?19行)
オ 図から、ガラス基板1の後面に光源8が配置されていること、ガラス基板1’の上に偏光板12が設けられていることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「螢光材科を混入した3色からなる樹脂を一方のガラス基板1の上に印刷し、この上に偏光層11を設け、その上に透明導電膜2を層設し、単純XYマトリックス方式の場合、前記透明導電膜2は螢光体層4のパターンとの位置関係が規制されてストライプ状にパターン化され、さらにこの上に配向層3を形成し、
もう1枚の基板1’に透明電極2’をパターン化し、配向層3’を設け、一方の基板上にガラス微粉末を散布し、両基板を貼合せ、硬化させ、ツィステッドネマティック型のネマティック液晶を注入してカラー液晶セルを作成し、
前記カラー液晶セルのガラス基板1の後面に紫外光を発するブラックライトや螢光灯などの光源8を置いて前面から観察するカラー液晶表示装置であって、
前記カラー液晶セルのガラス基板1’の内面に透明電極2’が形成され、その上には液晶分子配向層3’が設けられ、背面側基板1の内面には、赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”を含有しているカラー螢光体層4が層設され、両ガラス基板1,1’間には液晶6が介在しており、電源7からの電圧印加に応答して液晶分子6が配向変換され背面側からの光源8の透過によりカラー表示が行なわれ、光源8の励起光9がカラー螢光体層4に含有されている螢光材料5’,5”,5’”を励起するため、カラー螢光体層4より螢光10が発せられ、
液晶セル内の透明電極2,2’間に電界が印加されない状態では、螢光10は偏光層11により偏光され、液晶層6に入射し、液晶層6はツィステッドネマティック状態に配向しているので入射光は偏波面が90度回転させられた後液晶層6を出射してガラス基板1’の上に設けられた偏光板12に入射し、偏光層11と偏光板12は直交状態(クロスニコル)に配置されているが、液晶層を通過した光は偏光面が90度回転しているので偏光板12も通過し観測者13に達するカラー液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「カラー液晶セル」、「光源8」、「ガラス基板1’」、「『ガラス基板1』あるいは『背面側基板1』」、「ツィステッドネマティック型のネマティック液晶」、「電界」、「『赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”』から励起される『螢光10』」、「赤の螢光材料5’」、「緑の螢光材料5”」、「青の螢光材料5’”」、「偏光板12」及び「偏光層11」は、それぞれ本願補正発明の「ディスプレイパネル」、「放射源」、「前面プレート」、「背面プレート」、「液晶」、「電界」、「『励起放射に反応して』『放出』される『赤色光』、『緑色光』及び『青色光』」、「赤色蛍光体材料」、「緑色蛍光体材料」、「青色蛍光体材料」、「第一偏光フィルター層」及び「第二偏光フィルター層」に相当する。
イ 引用発明の「光源8」は、「カラー螢光体層4が層設され」た「カラー液晶セルのガラス基板1の後面に紫外光を発する」もので「光源8の励起光9がカラー螢光体層4に含有されている螢光材料5’,5”,5’”を励起するため、カラー螢光体層4より螢光10が発せられ」るからディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源といえ、引用発明の「カラー螢光体層4」は、「紫外光」が照射されると「螢光10」が励起されるから、引用発明の「カラー液晶表示装置」は、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイといえる。
ウ 引用発明の「透明電極2,2’」は「単純XYマトリックス方式」が採用され、「透明導電膜2」は「螢光体層4のパターンとの位置関係が規制されてストライプ状にパターン化され」、「透明電極2’」も「パターン化」され、「カラー螢光体層4」は「赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”」からなり、「背面側基板1の内面」に「層設」され、「液晶セル内の透明電極2,2’間に電界が印加」され、「液晶分子6が配向変換され」、「螢光10」を「通過」させるから、引用発明の「透明電極2,2’」は、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスといえる。
エ 上記ウから、引用発明の「赤の螢光材料5’」は、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供されているといえ、励起放射に反応して赤色光を放出していることは明らかである。また、引用発明の「緑の螢光材料5”」及び「青の螢光材料5’”」も同様である。
よって、引用発明は、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含み、青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含むものといえる。
オ 本願補正発明の「蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成され」がどのような構成を意味しているのか必ずしも明確ではないが、本願明細書の段落【0042】の「本発明のLCDの効果は、蛍光体色要素プレートをLCのバックライティングユニット側に提供することでUV活性化光がLCに到達して引き起こす低下を防ぐことによる、LC寿命の延長である。」という記載から、液晶に対して蛍光体材料を放射源側に配置することを包含しているものと認められる。
引用発明は「カラー液晶セルのガラス基板1の後面に紫外光を発するブラックライトや螢光灯などの光源8を置いて」おり、「螢光材科を混入した3色からなる樹脂を一方のガラス基板1の上に印刷」しているから、液晶に対して蛍光体材料が光源8(放射源)側に配置されている。
よって、引用発明は、蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成されているものといえる。
カ 引用発明の「偏光板12」は「ガラス基板1’の上に設けられ」ており、「偏光層11」は「螢光材科を混入した3色からなる樹脂」を「印刷」した「一方のガラス基板1」の上に設けられているから、引用発明は、前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層を含んでいるものといえ、引用発明は「偏光層11と偏光板12は直交状態(クロスニコル)に配置されている」から、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直であるといえる。
キ 上記アないしカから、本願補正発明と引用発明は、
「ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含み、
青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み、
蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成され、
前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層をさらに含み、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]蛍光体材料の位置に関し、本願補正発明は「蛍光体材料が背面プレートの下面に提供され」と特定されているのに対し、引用発明の「赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”」(蛍光体材料)は、背面側基板1(背面プレート)の内面に設けられており、背面プレートの下面に提供されるとはいえない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
本願明細書には以下の記載がある。
「【0048】
本発明が記載される特有の態様に限られず、変形態様を本発明の範囲内で作製できることが認識される。例として、製作の容易さのために、蛍光体色要素プレートを背面プレートの下側に製作できる一方で、他の配置では、背面プレートの上表面および色要素プレートの上部に提供される第一偏光フィルター上に提供できる。」
上記記載によると、製作の容易さのために蛍光体色要素プレートを背面プレートの下側に製作しているものといえるが、製作を容易にすることは、制作物において自明の課題であり、引用発明において、製作の容易のために蛍光体材料の位置をガラス基板1(背面プレート)の下面にすることは、設計事項程度のことに過ぎない。
また、刊行物1の上記エの記載から、引用発明の「赤,緑,青の螢光材料5’,5”,5’”」(蛍光体材料)の位置は変更可能であることが示唆され、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開2003-43483号公報(以下「刊行物2」という。特に【図2】及び【図8】参照。)には、素子基板101と対向基板102を有する液晶光変調部120のバックライト部400側に蛍光体層450を配置することが記載されているから、引用発明に上記刊行物2に記載された事項を適用し、蛍光体材料の位置をガラス基板1(背面プレート)の光源8側、即ち、下面にすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
よって、本願補正発明の上記相違点に係る構成となすことは、設計事項に過ぎないものであるか、当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のとおりであるから、本願補正発明の相違点に係る構成は、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)回答書の補正案について
請求人は、平成24年11月15日付け回答書で、本願請求項1の「放射源」を、「400?480nmの範囲の波長を有する青色光を放出する光放出ダイオードである放射源」との記載に変更し、「青色ピクセル区域に対応する背面プレートの区域が、放射源からの青色光の透過を許容するために、蛍光体材料を含まず」との記載を加え、「青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み」との記載を削除する補正案を提示しているが、「青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み」との記載を削除することは、特許請求の範囲の減縮にも誤記の訂正にも明瞭でない記載の釈明にも請求項の削除にも該当しない。
また、青色光の波長が400?480nm程度の範囲であることは、技術常識であるから、請求人が補正しようとしている事項は、刊行物2に記載されており、補正案が進歩性を有するとはいえない。
よって、請求人の補正案を採用することはできない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
平成24年1月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成22年11月5日付け手続補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「ディスプレイパネルと、ディスプレイを動作させる励起放射を生成するための放射源とを含む、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイであって、ディスプレイパネルが、透明な前面および背面プレートと、前面および背面プレートの間に配設される液晶と、ディスプレイの赤色、緑色および青色ピクセル区域を画定し、光のピクセル区域透過を制御するため、液晶にわたって電界を選定的に誘起するようにピクセル区域で動作可能な電極のマトリクスと、赤色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して赤色光を放出する赤色蛍光体材料と、緑色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して緑色光を放出する緑色蛍光体材料とを含み、
青色ピクセル区域に対応する背面プレートに提供される、励起放射に反応して青色光を放出する青色蛍光体材料をさらに含み、
蛍光体材料が背面プレートの下面に提供され、
前面プレートに第一偏光フィルター層および背面プレートに第二偏光フィルター層をさらに含み、第一偏光フィルター層の偏光方向の向きが第二偏光フィルター層の偏光方向に対して垂直である、フォトルミネッセンス液晶ディスプレイ。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「蛍光体材料」についての限定事項である「蛍光体材料が、放射源によって生成された励起放射が液晶に到達して液晶の低下を引き起こすことを防ぐように構成され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらなる限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-07 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-25 
出願番号 特願2009-518374(P2009-518374)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯野 光司  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 鈴木 秀幹
東 治企
発明の名称 フォトルミネッセンスカラー液晶ディスプレイ  
代理人 津国 肇  
代理人 柳橋 泰雄  
代理人 柴田 明夫  
代理人 生川 芳徳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ