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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F41H
管理番号 1274366
審判番号 不服2012-1489  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-06 
確定日 2013-05-13 
事件の表示 特願2008- 96570号「水面が石をはじく様に、2個の複合装甲とバネで、敵弾をはじき返す新装甲。」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日出願公開、特開2009-198151号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成20年 2月25日の出願であって,平成23年9月27日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成24年1月10日(受付け)に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(平成24年1月6日付け)がなされた。
その後,当審において,平成24年1月6日付け手続補正が却下されるとともに平成24年11月7日付けで拒絶理由が通知されたところ,平成25年1月15日付けで意見書の提出がなされたものである。

第2.当審で通知した拒絶理由の概略
平成24年11月7日付けで通知した拒絶理由は,以下のとおりである。

<理由1>この出願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面についてした補正は,下記の点で特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

この出願の明細書,特許請求の範囲又は図面は,平成23年3月28日付けの手続補正により補正されたものであり,【請求項2】に係る「請求項1のカスタネット状の新装甲を2つ重ね合わせて,防弾鋼板(セラミックや炭素繊維板も含む)を4枚仕様にした構造の新装甲や,3つ重ね合わせて6枚仕様にした構造の新装甲」とする点,同じく【請求項3】に係る「防弾鋼板(セラミック板や炭素繊維板も含む)」とする点,【図3】,【図4】,【図5】を追加する点は,いずれも願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初の明細書等」という。)には何らの記載もないし,また,記載されているのと同視できるというような事由もみあたらないから,平成23年3月28日付けの手続補正は,出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でされたものとはいえないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものとはいえない。

<理由2>この出願は,発明の詳細な説明の記載に下記の点で不備があり,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

本願請求項1の記載の「敵弾をはじく」ことの実現可能性について音速をはるかに越える銃弾や砲弾を,石のような物体と同様に考えてもよいとする根拠が,本願の明細書には示されていない。
また「敵弾をはじく」ための具体的な手法についても当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。


第3.本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成24年1月6日付け手続補正が却下されたため,平成23年3月28日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものとみとめられ,そのうち請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
ブロック形の防弾鋼板もしくは複合装甲を2枚貝の様に2個をバネで止めて,トモエ投げの様に,水面が平べったい石をはじく様に敵弾をはじく構造の新装甲。」

第4.当審の判断
<理由1>に関して
1.平成23年3月28日付け補正により追加した事項
(1)特許請求の範囲(全文)について,
補正前の
「【請求項1】
ブロック形の防弾鋼板もしくは複合装甲を2枚貝の様に2個をバネで止めて,トモエ投げの様に,水面が平べったい石をはじく様に敵弾をはじく構造の新装甲。」という記載を,次のとおりに変更する。
「【請求項1】
ブロック形の防弾鋼板もしくは複合装甲を二枚貝の様に2個をバネで止めて,トモエ投げの様に,水面が平べったい石をはじく様に敵弾をはじく構造の新装甲。
【請求項2】
請求項1のカスタネット状の新装甲を2つ重ね合わせて,防弾鋼板(セラミックや炭素繊維板も含む)を4枚仕様にした構造の新装甲や,3つ重ね合わせて6枚仕様にした構造の新装甲。
【請求項3】
防弾強化が要求される構造面の表面側に,防弾鋼板(セラミック板や炭素繊維板も含む)を予想着弾方向から後ろに,カスタネットの様に,倒れる様に,リアクティブアーマーの様に敷設する事を特徴とする防弾強化工法。」
(2)明細書の【課題を解決するための手段】について,
補正前の
「【0003】
そこで,2個のブロック状の複合装甲に穴を開けて,つるまき状バネを3個,手前,中,奥にうめ込んでカスタネットの様に組み立て,さらに装甲表面にテフロン加工を施こし,敵弾が新装甲に当たると後に倒れて,トモエ投げの様にはじき飛ばす事で,あまり重量を増加させる事なく装甲を強化出来るのである。このブロックをリアクティブアーマーの様に戦車の表面に取り付ける。」という記載を,次のとおりに変更する。(下線部の記載を追加する。)
「【0003】
そこで,2個のブロック状の複合装甲に穴を開けて,つるまき状バネを3個,手前,中,奥にうめ込んでカスタネットの様に組み立て,さらに装甲表面にテフロン加工を施こし,敵弾が新装甲に当たると後に倒れて,トモエ投げの様にはじき飛ばす事で,あまり重量を増加させる事なく装甲を強化出来るのである。このブロックを,リアクティブアーマーの様に戦車の表面に取り付ける。つるまき状バネ以外にも,ステンレス板や高張力鋼板の板バネを使ってカスタネットの様に組み立てて,戦車の表面に取り付ける場合も有りです。板バネでも,つる巻きバネでもOKです。4枚・6枚仕様は板バネのみ。」

(3)【図3】,【図4】,【図5】を追加すると共に,明細書の【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】についても,当該追加に合わせて変更する。

2.補正により追加した事項の検討
上記補正後の【請求項2】に係る「請求項1のカスタネット状の新装甲を2つ重ね合わせて,防弾鋼板(セラミックや炭素繊維板も含む)を4枚仕様にした構造の新装甲や,3つ重ね合わせて6枚仕様にした構造の新装甲」とする点,同じく【請求項3】に係る「防弾鋼板(セラミック板や炭素繊維板も含む)」とする点,【図3】,【図4】,【図5】を追加する点は,いずれも願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初の明細書等」という。)には何らの記載もないし,また,記載されているのと同視できるというような事由もみあたらないから,平成23年3月28日付けの手続補正は,出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でされたものとはいえない。

3.以上のとおり,平成23年3月28日付けの手続補正は,出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内でされたものではないので,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものとはいえない。

<理由2>に関して
1.本願請求項1の「石をはじく様に敵弾をはじく構造」について
(1)「敵弾をはじく」ことの実現可能性について
上記の請求項1では,「トモエ投げの様に,水面が平べったい石をはじく様に敵弾をはじく」とし,また段落【0003】では「敵弾が新装甲に当たると後に倒れて,トモエ投げの様にはじき飛ばす」としているが,例えば,投石機から発射された石のように,日常生活での経験からある程度類推できるような物体であれば,上記の「トモエ投げの様にはじき飛ばす事」も,必ずしも想定できないことではないが,音速をはるかに越える銃弾や砲弾を,上記の石のような物体と同様に考えてもよいとする根拠が,本願の明細書には示されていない。
しかも,「敵弾が新装甲に当たる」ことについても,どのような形状や重量の敵弾が,どのような角度や速度で新装甲に当たることが想定されているのかが明らかにされていないし,また,一旦は敵弾をはじき飛ばせたとしても,当該はじき飛ばされた敵弾によって,上記の装甲を備えた戦車等に二次的な被害が生じることはないと考えるべき理由や根拠も,本願の明細書には示されていない。
そうすると,段落【0005】で「技本と三菱重工業からメンバーを選抜し,複合装甲の組み合わせと厚み,そしてバネの材質とバネ定数kの最適値を求め,速やかに実用化する」としているが,そのような実用化がそもそも理論的に可能であると考えること自体に疑問があるといわざるをえないが,本願明細書の記載はこのような基本的な疑問に答えるものとはいえない。

(2)「敵弾をはじく」ための具体的な手法について
次に,「トモエ投げの様に,水面が平べったい石をはじく様に敵弾をはじく」ことが,仮に,理論的には全く不可能ではないとしても,本願の明細書は,そのための具体的な手法を,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が実施できる程度に明確に開示したものとはいえない。
即ち,「ブロック形の防弾鋼板もしくは複合装甲」といっても,様々の形状や材質のものが考えられるが,本願の明細書(【0003】)では,「カスタネットの様に組み立て,さらに装甲表面にテフロン加工を施こし」とするのみで,防弾鋼板や複合装甲の具体的な態様が明らかにされているとはいえないし,また,「このブロックをリアクティブアーマーの様に戦車の表面に取り付ける。」としているが,上記のように,どのような形状や重量の敵弾が,どのような角度や速度で装甲に当たることが想定されているのかが明らかにされていないのであるから,ブロックをどのような態様で戦車の表面に取り付けるのが有効であるのかも明らかではない。

(3)したがって,本願明細書(発明の詳細な説明)の記載は,「敵弾が新装甲に当たると後に倒れて,トモエ投げの様にはじき飛ばす」などの希望的な事項を開示するにとどまるものであって,上記請求項1でいう「敵弾をはじく構造の新装甲」を,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。


第5.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第17条の2第3項及び特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たすものとはいえないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-13 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2008-96570(P2008-96570)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F41H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 悟史水野 治彦  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 丸山 英行
小関 峰夫
発明の名称 水面が石をはじく様に、2個の複合装甲とバネで、敵弾をはじき返す新装甲。  

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