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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1274429
審判番号 不服2011-21595  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-06 
確定日 2013-05-21 
事件の表示 特願2007-523531号「腎神経ブロッキング方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月2日国際公開、WO2006/022790、平成20年3月21日国内公表、特表2008-508024号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.出願の経緯
本願は、平成16年11月17日(パリ条約による優先権主張 2004年7月28日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年10月6日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされ、さらに前置審査において平成24年3月5日付けで拒絶の理由が通知されたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、平成23年10月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものである。

「【請求項1】心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う装置であって、
a)腎神経に隣接した動脈周囲スペースに埋め込むようになった薬剤送達カテーテルと、
b)神経ブロッキング剤用の薬剤リザーバを備えた薬剤注入ポンプと、
c)使用時において、神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するように、
薬剤注入ポンプと薬剤送達カテーテルを結合する結合器と、
を有することを特徴とする装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
前置審査において通知した拒絶理由において引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物:米国特許出願公開第2003/0216792号明細書には、「腎神経の刺激方法と患者を治療する装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。なお、文末の( )内は当審による訳である。

ア.”[0002]This invention relates to methods and apparatus for treatment of congestive heart failure, chronic renal failure and hypertension by nerve stimulation. In particular, the invention relates to the improvement of these conditions of patients by blocking signals to the renal (kidney) nerve.”
(この発明は、神経刺激によって鬱血性心不全、慢性腎不全と高血圧の治療を行うための方法と装置に関するものである。特に、この発明は、腎神経への信号を遮断することによって患者のこれらの症状を改善するものである。)

イ.”[0095]FIG. 4 shows the use of a drug infusion pump 401 to block or partially block stimulation of the kidney 208 by infiltrating tissue proximal to the renal nerve 205 with a nerve-blocking drug. Pump 401 can be an implanted drug pump. The pump is equipped with a reservoir 403 and an access port (not shown) to refill the reservoir with the drug by puncturing the skin of the patient and the port septum with an infusion needle. The pump is connected to the infusion catheter 402 that is surgically implanted in the proximity of the renal nerve 205 . ”
(FIG.4は、薬物注入ポンプ401を使用して、腎神経205に近接した組織に神経を遮断する薬物を浸透させることによって、腎臓208への刺激を遮断、あるいは部分的に遮断することを示している。ポンプ401は、体内に埋め込まれた薬物ポンプであってよい。ポンプには、リザーバ403と注射針によって患者の皮膚とポートセプタムに穿孔してリサーバに薬物を補充するための図示されないアクセスポートが設けられている。ポンプは、腎神経205に近接して外科的に埋め込まれている注入カテーテル402に接続されている。)

ウ.FIG.4には、ポンプ401と注入カテーテル402が接続されており、ポンプ401から延びる注入カテーテル402は、腎臓208において、腎神経205に近接する部分に埋め込まれていることが記載されており、FIG.15において、腎動脈203と腎神経1501とが近接することが記載されていることを併せみると、カテーテル402は、腎神経205に近接する腎動脈に隣接する部分に設けられているといえる。
さらに、FIG.4には、これらのポンプ401、注入カテーテル402等の装置がヒトの患者に適用されることが記載されている。

以上のア.、イ.の記載、及びウ.のFIG.4及びFIG.15に記載された事項とを総合すると、刊行物には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「鬱血性心不全、慢性腎不全の治療を行うために、ヒトの患者の腎神経への信号を遮断あるいは部分的に遮断する装置であって、
腎神経205に近接する腎動脈に隣接する部分に埋め込まれているカテーテル402と、
神経を遮断する薬物用のリザーバ403を備えた薬物注入ポンプ401とを有し、
腎神経に近接する腎動脈に隣接する部分に神経を遮断する薬物を浸透させるように薬物注入ポンプ401とカテーテル402とを接続する装置。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「鬱血性心不全、慢性腎不全」は、本願発明の「心腎疾患」に、以下同様に、「治療」は、「処置」に、「腎神経への信号を遮断あるいは部分的に遮断する」ことは、「少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う」ことに、「腎神経205に近接する腎動脈に隣接する部分」は、「腎神経に隣接した動脈周囲スペース」に、「カテーテル402」は、「薬剤送達カテーテル」に、「神経を遮断する薬物用のリザーバ403」は、「神経ブロッキング剤用の薬剤リザーバ」に、「薬物注入ポンプ401」は、「薬剤注入ポンプ」に、「接続する」は、「結合する」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明は、腎神経205に近接する腎動脈に隣接する部分に神経を遮断する薬物を浸透させるようにするためのものであるから、少なくとも使用時において、薬物を薬物注入ポンプ401からカテーテル42に送るために、薬物注入ポンプ401とカテーテル402とが接続されることは自明である。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「心腎疾患を処置する目的でヒトの患者の少なくとも部分的な腎神経ブロッキングを行う装置であって、
腎神経に隣接した動脈周囲スペースに埋め込むようになった薬剤送達カテーテルと、神経ブロッキング剤用の薬剤リザーバを備えた薬剤注入ポンプと、を有し、
使用時において、神経ブロッキング剤を前記動脈周囲スペースに送達するように、薬剤注入ポンプと薬剤送達カテーテルを結合する装置。」

[相違点]
薬剤注入ポンプと薬剤送達カテーテルとの結合にあたって、本願発明においては「結合器」をもって結合するのに対して、引用発明においては、どのように結合するのか不明である点。

4.当審の判断
[相違点について]
引用発明において、薬剤注入ポンプ401とカテーテル402との結合の際、結合器をもって行う程度のことは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明の効果は、引用発明から当業者が容易に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-18 
結審通知日 2012-12-25 
審決日 2013-01-07 
出願番号 特願2007-523531(P2007-523531)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 高弘一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 松下 聡
関谷 一夫
発明の名称 腎神経ブロッキング方法及び装置  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 井野 砂里  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
代理人 渡邊 誠  
代理人 倉澤 伊知郎  

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