• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1274436
審判番号 不服2012-18865  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-07 
確定日 2013-05-20 
事件の表示 特願2011-168754「自動停止源発の原子炉冷却方式」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 19879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月13日の出願であって、平成24年4月17日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年5月2日付けで手続補正がなされたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年9月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年5月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「原発の自動停止のプログラムの中から、蒸気開閉弁を閉じるの部分を削除する。自動停止原発の原子炉冷却方式」(以下「本願発明」という。)

1.引用刊行物及び該刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平1-267495号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)第3頁右上欄2?13行
「本発明は原子炉の非常炉心冷却系(ECCS)に関するものである。特に、本発明は簡易沸騰水型原子炉(SBWR)として知られる進んだ沸騰水型原子炉(BWR)の設計を補完するように設計されることが好ましい。本発明をSBWRに適用した場合、冷却材喪失事故発生後間もなく、安全級非常炉心冷却系に対する支援様式で、原子炉冷却インベントリーが補給される。主タービン発電機の減速エネルギーを用いて復水ポンプのような選択されたポンプを駆動することにより原子炉内への初期の非常冷却材噴射を所望に応じて達成する。」
(2)第3頁左下欄16行?右下欄18行
「正常運転中、これらのポンプは発電所主電源からの電力で働く電動機によって駆動され、給水ポンプは可変速度駆動手段により原子炉に対する給水調整をなす。しかし、幾種かの冷却材喪失事故(LOCA)中、原子炉は追加冷却材の供給を受け冷却されなければならない、すなわち、原子炉冷却材水位は原子炉核燃料集合体のすべてを覆うように十分高く維持されなければならない。このような追加冷却材は、信頼し得る代替電源から電力を受ける信頼し得る非常冷却系によって供給されなければならない。
冷却材インベントリー喪失状態は、管の破損(すなわちLOCA)または給水喪失により、あるいは安全弁が開いたままになって過渡状態後に再閉不可能になったために起こり得る。このような事故状態中の冷却材喪失後、炉心を冷却材供給状態に保って炉心崩壊発熱を抑制するように冷却材を維持するかまたは急速に補給する必要がある。炉心温度限度の超過を防ぐように機能しなければならないこのような系統は、「非常炉心冷却系」(ECCS)からなる。炉心崩壊発熱は核分裂生成物の放射性崩壊から起こりそして核分裂そのものが停止した後でも持続する。」
(3)第4頁左下欄9?15行
「発電所の主発電機を或LOCA中ECCSポンプ用電源として用いることができる。しかし、ある重要な仮想事故では、主発電機からの電力は利用できないと仮定される。例えば、主発電機自体が短絡状態(例えば短絡巻線状態)にあるかも知れず、あるいは主発電機が他の理由でLOCA中使用されなくなっているかも知れない。」
(4)第5頁右下欄8行?19行
「本発明では、発電所の主発電機に比べて寸法と発電能力が小さい1個以上の専用補助発電機が主タービン発電機に機械的に直結される。正常な発電装置の稼動中、これらの補助発電機は発電所の復水ポンプ電動機の好適電源として電力を供給する。事故状態中、タービン発電機が過渡的な減速状態にある間、これらの復水ポンプはそれぞれの補助発電機に連結したまま復水を原子炉内に圧送し続ける。復水のこの連続ポンプ圧送は、炉内の減圧状態が復水ポンプ電動機の回転数に対応する電流遮断ヘッド能力を超えた瞬間から復水の非常導入を始める。」
(5)第6頁左下欄12行?右下欄15行
「第2図は本発明の一実施例による改良非常炉心冷却系を示す図である。第2図は本発明の一実施例による非常炉心冷却系を有する従来の沸騰水型原子炉2を示し、この非常炉心冷却系は低圧冷却材注入能力を特徴とするものである。タービン発電機24から出た蒸気は復水器44に入る。復水貯蔵タンク41が復水器44内の復水の貯蔵量を補充し、原子炉蒸気供給が隔離された時はいつでも復水器44内に水インベントリーを補給する。
復水器44の出口は復水ポンプ18に連結されている。復水ポンプ18の出口は二つの別々の行く先に通じている。第1の行く先は従来のもので給水ポンプ16の吸入口である。第2の行く先はバイパス管路22の逆止め弁120の上流側である。逆止め弁120の出口は原子炉容器4の内部に通じている。バイパス管路22と逆止め弁120は給水管路38にまたは容器4の専用注入口に連通するように構成され得る。
正常運転中、原子炉容器4内の圧力は復水ポンプ18の出口圧力より高い。バイパス管路22の逆止め弁120は原子炉容器4から復水ポンプ18への逆流を阻止する。この復水ポンプ18と給水ポンプ16は通常直列に機能して従来の給水流を圧送する。」
(6)第6頁右下欄16行?第7頁左上欄18行
「第2図にさらに示すように、補助発電機34が、タービン24に連結された主発電機30の主軸に連結されている。補助発電機34の出力は電源36の入力になる。電源36はポンプ電動機28の駆動に用いられる。復水ポンプ18は専ら補助発電機34から給電される。
ポンプ電動機28は、補助発電機34より発電する電力を用いて復水ポンプ18を駆動する。電源36は通常電動機28に直接接続され、なんらの仲介的なスイッチ操作も母線切換えも要しない。補助発電機34は復水ポンプ18が正常な初期炉心冷却中に用いられる時、電動機28用の正常な短期応答電力を供給する。補助発電機34は主タービンと主連結発電機の回転エネルギーを電力に変換し、この変換は、冷却材インベントリー喪失事故中の減速運動量の変換を含む。
冷却材インベントリー喪失事故中の復水ポンプ18とバイパス管路22と逆止め弁120の作用は理解し得よう。詳述すると、主発電機30が働かずそして発電所主電源50から完全に切り離されても、補助発電機34は主軸との連結により利用可能な減速運動量から電力を発生し続け、従って、復水ポンプ18は働き続ける。」
(7)第7頁左上欄19行?右上欄9行
「復水ポンプ18の吐出しは一時的に遮断されるであろう。このような遮断が起こるのは、主給水ポンプ16が停電のため働かなくなる可能性があるからである。従って、復水ポンプ18はその吐出しヘッドを逆止め弁120に送り出す。冷却材喪失事故のため、原子炉内の圧力は低下する。
原子炉内の圧力が復水ポンプの遮断ヘッドより低い圧力に達すると、冷却材の炉内への流入が再び始まる。このような流れは復水ポンプ18の出口から管路22と逆止め弁120を経て直接原子炉容器内に入る。」
(8)「第2図



これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「原子炉からタービン(24)に送り込まれ、当該タービンから出た蒸気は復水器(44)に入り、復水器の出口は復水ポンプ(18)に連結され、復水ポンプの出口はバイパス管路(22)の逆止め弁(120)の上流側に連結され、逆止め弁の出口は原子炉容器(4)の内部に通じており、
補助発電機(34)が、タービンに連結された主発電機(30)の主軸に連結されており、補助発電機の出力は電源(36)の入力になり、電源は復水ポンプに接続されたポンプ電動機(28)の駆動に用いられ、復水ポンプは専ら補助発電機から給電されるよう構成された原子炉の非常炉心冷却系であって、
事故状態中、補助発電機は主軸との連結によりタービンの減速エネルギーを用いて電力を発生し続け、復水ポンプは働き続け、復水を原子炉内に圧送し続ける、
原子炉の非常炉心冷却系。」(以下「引用発明」という。)

2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)原子炉システムにおいて、冷却材インベントリー喪失事故が起こった場合に自動停止プログラムに基づいて停止制御を行うことは当業者の技術常識であることから、引用発明が「自動停止のプログラム」を有すること、及び「自動停止原発」であることは明らかである。
(2)当業者の技術常識に照らして引用発明が蒸気開閉弁を備えていることは明らかであり、引用発明は、事故状態中にもタービンから出た蒸気は復水器に入り、復水ポンプが働き続けることにより復水を原子炉内に圧送し続けることにより冷却を行うものであるから、引用発明が原子炉冷却方式を有し、冷却用の復水を確保するために事故状態中においても蒸気開閉弁が閉じられていないことは自明である。

そうすると、両者は、
「原発の自動停止のプログラムを有し、蒸気開閉弁を閉じない、自動停止原発の原子炉冷却方式」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
蒸気開閉弁を閉じないために、本願発明は「自動停止のプログラムの中から、蒸気開閉弁を閉じるの部分を削除する」のに対して、引用発明がどのようにしているのか不明な点。

3.判断
上記相違点について検討する。
システムに所定の処理を行わせない場合に、制御プログラムが「当該所定の処理を行う」という命令(プログラム)を含まないようにして、当該所定の処理を行わせないようにすることは、ごく普通に行われている周知技術である。
そして、引用発明において、蒸気開閉弁を閉じない(すなわち閉じるという所定の処理を行わせない)ために「蒸気開閉弁を閉じる」という命令(プログラム)が自動停止のプログラムに含まれないようにすることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用し、「自動停止のプログラムの中から、蒸気開閉弁を閉じるの部分を削除する」ことは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-19 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-08 
出願番号 特願2011-168754(P2011-168754)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 樋口 信宏
村田 尚英
発明の名称 自動停止源発の原子炉冷却方式  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ