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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01T
管理番号 1274537
審判番号 不服2012-9313  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-21 
確定日 2013-05-23 
事件の表示 特願2009-501645「プラズマジェット点火プラグおよびその点火装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月24日国際公開、WO2008/156035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2008年6月13日(優先権主張2007年6月19日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
中心電極と、
軸線方向に延びる軸孔を有し、当該軸孔内に、前記中心電極の先端面を収容しつつ前記中心電極を保持すると共に、前記軸孔の先端側に、前記軸孔の内周面と前記中心電極の先端面とを壁面とし、容積が15mm^(3)未満のキャビティとしての凹部が形成された絶縁碍子と、
前記絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、
前記主体金具と電気的に接続され、前記絶縁碍子よりも先端側に設けられた接地電極と
を備え、
前記中心電極と前記接地電極との間で行う放電に伴い前記凹部内にてプラズマを生ずるプラズマジェット点火プラグにおいて、
前記絶縁碍子の前記凹部は、
少なくとも前記軸線方向に同径で延びる部位を有し、前記絶縁碍子の先端側の開口に連続する絞り部と、
前記絞り部に連続し、前記絞り部よりも拡径されるとともに、前記中心電極の先端面が自身の内部に露出された拡径部と
から構成され、
前記軸線方向において、前記拡径部の長さをX、前記絞り部の長さをYとしたときに、
X≦Yを満たし、
前記凹部は、
前記拡径部における内径で最も大きな部位の内径をAとしたときに、A≦φ4.0(mm)を満たすとともに、
前記絞り部における内径で最も小さな部位の内径をBとしたときに、φ0.5≦B≦φ1.5(mm)を満たし、
前記接地電極は、板状の電極で、前記凹部と外気とを連通する連通孔を有し、
前記軸線方向において、前記接地電極の厚みをZとしたときに、
Z<X+Y≦3.0(mm)を満たし、
X≦Aを満たし、
前記接地電極の前記連通孔の内径をCとしたときに、
B≦Cを満たし、
前記中心電極の先端部の外径をDとしたときに、
0≦D-B≦2(mm)を満たし、
さらに、プラズマジェット点火プラグの点火のために供給される供給エネルギーをE(mJ)とし、前記凹部の容積をV(mm^(3))としたときに、6.79≦E/V≦200を満たすように前記供給エネルギーが供給されること
を特徴とするプラズマジェット点火プラグ。」

2.引用刊行物記載の発明

(1)これに対して、当審における、平成25年1月30日付けで通知した拒絶の理由に引用した米国特許第4388549号明細書(1983年6月14日公開、以下「引用例1」という。)には、「PLASMA PLUG」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「Referring now in more detail to the drawings, and, in particular, to FIG. 1, a plasma plug indicated generally at 10 comprises a threaded shell 11 for engagement with the head of a cylinder in an internal combustion engine, an annular ground electrode 12 supported by an inwardly directed flange 13 of the shell 11, and an insulator assembly 14 mounted within the shell 11 against the ground electrode 12.The insulator assembly 14 comprises an insulator 15 having firing and terminal ends 16 and 17, respectively, and a bore 18 extending longitudinally therethrough.A center electrode 19 and a terminal assembly 20 are seated in the bore 18, the latter at the terminal end 17 of the insulator 15.The center electrode 19 terminates, at one end, short of the firing end 16 of the insulator 15 in a firing end 21 which is in spark gap relationship with the ground electrode 12, and at the opposite end in terminal electrical contact with an electrode 22.The terminal assembly 20 comprises a sparking contact 23 seated on a step 24 of the bore 18 of the insulator 15 and in spark gap relationship with the electrode 22, the distance therebetween constituting an auxiliary spark gap 25.The assembly 20 also comprises an electrical terminal 26 mounted in the end 17 of the insulator 15 for receiving current from a plasma jet ignition system (not shown in FIG. 1), and a spring 27 interposed between the terminal 26 and the sparking contact 23 to urge the latter yieldingly against the step 24 of the bore 18.The insulator 15 also has a stepped cavity including a cavity 28 of relatively large cross-section adjacent the firing end 21 of the center electrode 19 and of a cavity 29 of smaller cross-section extending through the firing end 16 of the insulator 15.」(第2欄第7行から第38行)
(「図、特に図1を詳細に参照すると、10で示されるプラズマ・プラグは、内燃機関のシリンダーヘッドに取り付けられるシェル、シェル11の内部に設けられたフランジ13に支持された環状の接地電極12、および接地電極12に対してシェル11内に設けられた絶縁体部14を含む。
絶縁体部14は、放電端部16および端子端部17を有する絶縁体15、貫通孔18を含む。
中心電極19および端子部20は、後者が絶縁体15の端子端部17に配置されるように、貫通孔18内に、配置される。
中心電極19は、一端で、接地電極12と放電ギャップを形成する放電端部21が絶縁体15の放電端部よりも短く形成され、他端において、電極22と電気的に接続されている。
端子部20は、軸方向放電ギャップ25を構成する距離だけ電極22から離して、絶縁体15の貫通孔18の階段部24に配置された放電電極23を含む。
端子部20は、さらに、プラズマジェット点火システム(図1に示されない)から電流を受けるための、絶縁体15の端部17に設けられた電極端子26、および、端子26と放電電極23の間に、後者を貫通孔18の階段部24に押し付けるために設けられたスプリング27を含む。
絶縁体15は、さらに、中心電極19の放電端部21に隣接する比較的大きな断面積の凹部28と、絶縁体15の放電端部16につながる比較的小さな断面積の凹部29、を含む階段状の凹部を含む。」)

・「For example, the stepped cavity of the insulator 15 is composed of a cavity 28 is 0.100 inch in diameter and a cavity 29 which is 0.040 inch in diameter, while the lengths of the cavities 28 and 29 are 0.050 inch and 0.100 inch, respectively. The electrical characteristics of the ignition system 36 are matched to these dimensions, a volume ratio of the large cavity 28 to the smaller cavity 29 being 12.5:1 and a length ratio of the larger cavity 28 to the smaller cavity 29 being 1:2, to optimize combustive effectiveness. Adequate matching is accomplished when the capacitor 43 has a value of 0.25 microfarads and is charged to three kilovolts for a maximum stored input energy of 1.125 joules.」(第3欄第41行から第53行)
(「例えば、絶縁体15の階段状の凹部は、直径0.100インチの凹部28と直径0.040インチの凹部29からなり、凹部28および29の長さは0.050インチおよび0.100インチである。
点火システム36の電気的な特性は、燃焼の有効性を最適化するために、大きな凹部28の小さな凹部29に対する容積比は12.5:1であり、大きな凹部28の小さな凹部29に対する長さの比は、1:2の場合に合わせてある。
コンデンサー43が0.25マイクロファラドであり、最大1.125ジュールを蓄えるために3キロボルトまで充電することが最適である。」)

・また、Fig.1を参照すると、接地電極12の厚みは、凹部28及び29の長さの和よりも小さく、接地電極の連通孔の内径は凹部29の直径よりも大きく、中心電極の放電端部21の外径は凹部28の直径にほぼ等しいものが記載されている。

これらの記載事項によると、引用例1には、

「中心電極19と、
貫通孔18を含み、中心電極19および端子部20が、後者が絶縁体15の端子端部17に配置されるように、貫通孔18内に、配置される絶縁体部14と、
内部に絶縁体部14が設けられたシェル11と、
シェル11の内部に設けられたフランジ13に支持された環状の接地電極12とを備え、
中心電極19は、一端で、接地電極12と放電ギャップを形成する放電端部21が絶縁体15の放電端部よりも短く形成され、
絶縁体15は、さらに、中心電極19の放電端部21に隣接する比較的大きな断面積の凹部28と、絶縁体15の放電端部16につながる比較的小さな断面積の凹部29、を含む階段状の凹部を含み、
絶縁体15の階段状の凹部は、直径0.100インチの凹部28と直径0.040インチの凹部29からなり、凹部28および29の長さは0.050インチおよび0.100インチであり、
接地電極12の厚みは、凹部28及び29の長さの和よりも小さく、接地電極の連通孔の内径は凹部29の直径よりも大きく、中心電極の放電端部21の外径は凹部28の直径にほぼ等しく、
コンデンサー43に最大1.125ジュールを蓄える
プラズマ・プラグ。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)同じく、当審における、平成25年1月30日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平2-72577号公報(平成2年3月12日公開、以下「引用例2」という。)には、「内燃機関の点火プラグ」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「(実施例)
以下、図面を参照して実施例を説明する。第1図、第2図において1は点火プラグ、2は中心電極、3は中心電極2に接続する端子、4は絶縁体、5は外側電極、5aは外側電極と一体の底部で中心にオリフィス6を備え、両電極2、5間にはギャップGを有する。絶縁体4の端部には底壁4aが連設されてその中心にオリフィス6と略等しい径の出口7が設けられ、ギャップGの間で放電空間8が形成されている。
このギャップGと放電空間8の容積は、電圧及び必要とするプラズマガス発生量より決まる一定の値にしなければならないから、絶縁体4の底壁4aを張出したことにより、放電空間8の形状は、従来のものに比べて扁平かつ大径になり、中心電極2として大径のものが使用できる。」(第(2)頁左上欄第11行から同頁右上欄第6行)

・また、第2図には、外側電極と一体の底部5aが板状であることが記載されている。

(3)同じく、当審における、平成25年1月30日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2000-331771号公報(平成12年11月30日公開、以下「引用例3」という。)には、「点火プラグ」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0049】したがって、キャビティ216内の空気を加熱膨張させ噴出させるには、プラズマを生成するときのような高電位は必要がなく、結果的に必要エネルギも小さくて済むこととなる。ここで、点火コイルとしては、具体的に、通常の点火プラグに対する点火エネルギ70?100〔mJ〕の2倍程度の点火エネルギ140?200〔mJ〕を出力するものが必要であるが、プラズマ生成による点火プラグに対する点火エネルギ0.5?1.0〔J〕に比べると非常に小さいものでよいこととなる。なお、直噴エンジンの吸気行程での燃料噴射においては、キャビティ216内に混合気が侵入され点火タイミングで混合気に着火され火炎噴出が生じることで着火性が向上、かつ燃焼期間短縮により出力向上されるのは言うまでもない。」

(4)同じく、当審における、平成25年1月30日付けで通知した拒絶の理由に引用した特表平10-502721号公報(平成10年3月10日公開、以下「引用例4」という。)には、「内燃機関の点火制御回路」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。

・「 エンジンテスト作業によれば、一定の速度、空燃比、及び(一定負荷)のもとでの所定のエンジン運転に対して、適正な燃焼を保証にするのに必要な最小、固定スパーク持続時間が存在するということを示している。所定のスパークプラグ電極ギャップに対し、固定された最小スパーク持続時間は供給されるべき所定の最小電気点火エネルギーを要求する。この最小レベルを越える供給電気エネルギーの増加は何ら利点をもたらさず、一方、その減少は失火を引き起こす。スパークプラグギャップが増加するにつれて、前記必要な最小エネルギーレベルも増加する。」(第(6)頁第4行から第11行)

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「中心電極19」、「貫通孔18」は、それぞれ、前者における「中心電極」、「軸孔」に相当する。
また、後者における絶縁体15の「中心電極19の放電端部21に隣接する比較的大きな断面積の凹部28」、「絶縁体15の放電端部16につながる比較的小さな断面積の凹部29」は、前者における「絞り部に連続し、絞り部よりも拡径されるとともに、中心電極の先端面が自身の内部に露出された拡径部」、「少なくとも軸線方向に同径で延びる部位を有し、絶縁碍子の先端側の開口に連続する絞り部」に相当し、後者における「貫通孔18を含み、中心電極19および端子部20が、後者が絶縁体15の端子端部17に配置されるように、貫通孔18内に、配置され」た「絶縁体部14」は、前者における「軸線方向に延びる軸孔を有し、当該軸孔内に、前記中心電極の先端面を収容しつつ前記中心電極を保持すると共に、前記軸孔の先端側に、前記軸孔の内周面と前記中心電極の先端面とを壁面とし、キャビティとしての凹部が形成された絶縁碍子」に相当する。
また、後者における「内部に絶縁体部14が設けられたシェル11」は、前者における「絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具」に相当する。
また、後者における「シェル11の内部に設けられたフランジ13に支持された環状の接地電極12」は、前者における「主体金具と電気的に接続され、絶縁碍子よりも先端側に設けられた接地電極」に相当し、「接地電極は、凹部と外気とを連通する連通孔を有し」ているといえる。
また、後者における「中心電極19は、一端で、接地電極12と放電ギャップを形成する放電端部21が絶縁体15の放電端部よりも短く形成され」た「プラズマ・プラグ」は、前者における「中心電極と接地電極との間で行う放電に伴い凹部内にてプラズマを生ずるプラズマジェット点火プラグ」に相当する。
また、後者における凹部28の「直径」、「長さ」、凹部29の「直径」、「長さ」は、前者における「拡径部における内径で最も大きな部位の内径A」、「拡径部の長さX」、「絞り部における内径で最も小さな部位の内径B」、「絞り部の長さY」に相当する。
したがって、後者においては、前者における「A」、「B」、「X」、「Y」に相当する値は、それぞれ、「0.1インチ(=2.54mm)」、「0.04インチ(=1.02mm)」、「0.05インチ(=1.27mm)」、「0.1インチ(=2.54mm)」であり、「凹部の容積V」に相当する値は、3.14*(2.54/2)^(2)*1.3+3.14*(1.02/2)^(2)*2.5=8.51mm^(3)であるといえ、前者における、凹部は「容積が15mm^(3)未満」であり、「軸線方向において、前記拡径部の長さをX、前記絞り部の長さをYとしたときに、X≦Yを満たし、凹部は、拡径部における内径で最も大きな部位の内径をAとしたときに、A≦φ4.0(mm)を満たすとともに、絞り部における内径で最も小さな部位の内径をBとしたときに、φ0.5≦B≦φ1.5(mm)を満たし、X≦Aを満たし、」に相当する構成を有しているといえる。
また、後者における「接地電極12の厚みは、凹部28及び29の長さの和よりも小さ」いことは、前者における「軸線方向において、接地電極の厚みをZとしたときに、Z<X+Yを満た」すことに相当する。
また、後者における「接地電極の連通孔の内径は凹部29の直径よりも大き」いことは、前者における「接地電極の連通孔の内径をCとしたときに、B≦Cを満た」すことに相当する。
また、後者において「中心電極の放電端部21の外径は凹部28の直径にほぼ等しい」から、前者における「中心電極の先端部の外径をDとしたときに、0≦D-B≦2(mm)を満た」すといえる。
また、後者において「コンデンサー43に最大1.125ジュールを蓄える」から、E/V=135であり、前者における「プラズマジェット点火プラグの点火のために供給される供給エネルギーをE(mJ)とし、凹部の容積をV(mm^(3))としたときに、6.79≦E/V≦200を満たすように供給エネルギーが供給されること」を満たしているといえる。

したがって、両者は、
「中心電極と、
軸線方向に延びる軸孔を有し、当該軸孔内に、前記中心電極の先端面を収容しつつ前記中心電極を保持すると共に、前記軸孔の先端側に、前記軸孔の内周面と前記中心電極の先端面とを壁面とし、容積が15mm^(3)未満のキャビティとしての凹部が形成された絶縁碍子と、
前記絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、
前記主体金具と電気的に接続され、前記絶縁碍子よりも先端側に設けられた接地電極とを備え、
前記中心電極と前記接地電極との間で行う放電に伴い前記凹部内にてプラズマを生ずるプラズマジェット点火プラグにおいて、
前記絶縁碍子の前記凹部は、
少なくとも前記軸線方向に同径で延びる部位を有し、前記絶縁碍子の先端側の開口に連続する絞り部と、
前記絞り部に連続し、前記絞り部よりも拡径されるとともに、前記中心電極の先端面が自身の内部に露出された拡径部と
から構成され、
前記軸線方向において、前記拡径部の長さをX、前記絞り部の長さをYとしたときに、
X≦Yを満たし、
前記凹部は、
前記拡径部における内径で最も大きな部位の内径をAとしたときに、A≦φ4.0(mm)を満たすとともに、
前記絞り部における内径で最も小さな部位の内径をBとしたときに、φ0.5≦B≦φ1.5(mm)を満たし、
前記接地電極は、前記凹部と外気とを連通する連通孔を有し、
前記軸線方向において、前記接地電極の厚みをZとしたときに、
Z<X+Yを満たし、
X≦Aを満たし、
前記接地電極の前記連通孔の内径をCとしたときに、
B≦Cを満たし、
前記中心電極の先端部の外径をDとしたときに、
0≦D-B≦2(mm)を満たし、
さらに、プラズマジェット点火プラグの点火のために供給される供給エネルギーをE(mJ)とし、前記凹部の容積をV(mm^(3))としたときに、6.79≦E/V≦200を満たすように前記供給エネルギーが供給される
プラズマジェット点火プラグ。」である点で一致し、次の各点において相違する。

[相違点1]
「接地電極」について、本願発明においては、「板状の電極」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、板状でない点。

[相違点2]
本願発明においては、「X+Y≦3.0(mm)を満たし」ているのに対し、引用例1記載の発明においては、「X+Y=3.81mm」である点。

4.判断
相違点1について検討すると、引用例2には、接地電極に相当する外側電極と一体の底部5aを板状としたものが記載されており、接地電極を板状とすることが、当業者にとって格別な差異であるとは認められない。

相違点2について検討すると、引用例3の記載によれば、プラズマジェット点火プラグにおいて、供給エネルギーを、引用例1記載の発明における1.125ジュールよりも小さい、0.5?1.0ジュールとすることは、当業者にとって、適宜選択し得る設計上の事項にすぎないと認められる。供給エネルギーが変われば各部の適切な寸法も変わるものと認められるところ、引用例2の、「このギャップGと放電空間8の容積は、電圧及び必要とするプラズマガス発生量より決まる一定の値にしなければならない?」との記載、プラグのタイプは異なるものの、引用例4の、「エンジンテスト作業によれば、?この最小レベルを超える供給電気エネルギーの増加は何ら利点をもたらさず、一方、その減少は失火を引き起こす。スパークプラグギャップが増加するにつれて、前記必要な最小エネルギーレベルも増加する。」との記載を参照すれば、引用例1記載の発明において、供給エネルギーを小さくしたときに、放電ギャップである中心電極と接地電極間の距離に関係するX+Yの値を、3.81mmよりもさらに小さいものとすることは、当業者にとって、容易に想到し得る事項であるといわざるを得ず、相違点2に係る構成が、当業者にとって格別に差異のある特別な構成であるとは認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1記載の発明、および引用例2?4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-21 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-09 
出願番号 特願2009-501645(P2009-501645)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 プラズマジェット点火プラグおよびその点火装置  
代理人 山本 尚  

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