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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01F
管理番号 1274701
審判番号 不服2012-16285  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2013-05-30 
事件の表示 特願2008-182981「携帯型気泡発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月28日出願公開、特開2010- 17692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年7月14日を出願日とする出願であって、平成23年9月8日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年11月14日に手続補正がなされたが、平成24年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成24年8月22日になされた手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
1.補正の内容
本件手続補正は、明細書及び特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
……
【請求項2】
水槽内の水に浸けられる吸水部及び吐水部と、吸水部から水を吸い込むと共にこの水を吐水部から吐出する吐出用ポンプと、吸水部から吸い込んだ水に気体を混入するエジェクターと、吸水部から吸い込んだ水に前記気体を溶解させる溶解タンクと、前記気体を溶解させた水を減圧して気泡を発生させる減圧手段を備えた携帯型気泡発生装置において、前記吐出用ポンプを、吸水部を構成する水中ポンプと、水槽外の気中に配置される気中ポンプとで構成し、前記エジェクターを気中ポンプよりも上流側且つ水中ポンプよりも下流側に設けて成ることを特徴とする携帯型気泡発生装置。」

(2)補正後
「【請求項1】
水槽内の水に浸けられる吸水部及び吐水部と、吸水部から水を吸い込むと共にこの水を吐水部から吐出する吐出用ポンプと、吸水部から吸い込んだ水に気体を混入するエジェクターと、吸水部から吸い込んだ水に前記気体を溶解させる溶解タンクと、前記気体を溶解させた水を減圧して気泡を発生させる減圧手段を備えた携帯型気泡発生装置において、前記吐出用ポンプを、吸水部を構成する水中ポンプと、水槽外の気中に配置される気中ポンプとで構成し、気中ポンプを溶解タンクよりも上流側に設け、前記エジェクターを気中ポンプよりも上流側且つ水中ポンプよりも下流側に設けて成ることを特徴とする携帯型気泡発生装置。」

2.補正の適否
上記の特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2に記載された発明を特定する事項である気中ポンプについて、溶解タンクよりも上流側に設けるとする限定事項を追加して、補正後の請求項1とするものである。
そして、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項2に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記の補正後の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-239573号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の記載がある。
a「【0001】
本発明は、気泡発生装置に関するものである。」
b「【0029】
本実施例は、貯留部5としての浴槽内に配設され浴槽内の浴水を吸入する吸入口3と、この吸入口3から吸入した前記浴水に空気を加圧溶解せしめる溶解タンク12と、この空気が溶解せしめられた浴水を貯留部5内に噴射する噴射口4とを備え、この空気が溶解せしめられた浴水を噴射口4から噴射することで浴槽内に無数の気泡を発生させる気泡発生装置であって、前記吸入口3と溶解タンク12との間に開閉自在な気体取入口6を設けると共に、前記溶解タンク12にこの溶解タンク12内の余剰気体を自動的に排出するように構成した気体抜き部13を設け、前記溶解タンク12と噴射口4との間には、前記液体に溶解せしめられた空気を微細気泡化する微細気泡化ノズル7を設けたものである。
【0030】
具体的には、図2に図示したように吸入口3と循環ポンプ1の液体導入側、循環ポンプ1の液体導出側と溶解タンク12の液体導入側、溶解タンク12の液体導出側と噴射口4とを夫々循環路2で連結している。尚、循環ポンプ1としては、公知のポンプを採用している。」
c「【0032】
また、本実施例においては、前記循環ポンプ1と吸入口3との間に気体取入口6を設け、この気体取入口6を開放状態としておくことで、循環ポンプ1により吸入口3から浴水を吸入する際に、この吸入される浴水に引き込まれることで自動的に循環路2内に取り入れることができるように構成している。」
d「【0034】
循環ポンプ1の下流側の溶解タンク12には、吸入口3から吸入された浴水と前記気体取入口6から取り入れた空気とが導入され、加圧されることで空気が浴水に溶解せしめられるように構成している。溶解タンク12としては公知の溶解タンクを採用する。」
e「【0039】
また、このように可及的に多くの空気を溶解せしめた場合、後記する微細気泡化ノズル7において浴水を減圧することで多量の微細気泡が生じることになり、極めて効率良く多くの微細気泡を発生させることができる。
【0040】
本実施例の微細気泡化ノズル7は、一般的なノズルのような単に絞りをかけたものではなく、図3に図示したようにこの微細気泡化ノズル7の液体導入側に液体導入孔8を複数穿設すると共に、液体導出側に液体導出孔9を複数穿設し、この液体導入孔8と液体導出孔9とは夫々、この孔を通過する前記液体が減圧されて微細気泡が生じる(即ち所謂キャビテーションが生じる)ような長さ及び径に設定し、前記液体導入孔8から導入される液体により前記微細気泡化ノズル7内で乱流が生じるようにこの液体導入孔8を構成したものである。」
f「【0052】
また、本実施例は、図1に図示したように、方形状の浴槽の角部を閉塞するバスカバー14であって、三角形状の基部15に浴槽の縁に載置される載置部16を連設した載置板17と、この載置板17に組み合わされるものであって、該載置板17と組み合わせた際平面視において方形状となり少なくとも一側に浴槽の縁に載置される載置部18を連設した組み合わせ板19とから成る出願人が取得した特許第2733648号に係るバスカバー14に設けるのが望ましい。この場合には、省スペースにして浴槽への取り付けが極めて簡易に行えるものとなる。」

上記f及び図1の記載から、引用文献1に記載の気泡発生装置は、バスカバー14とともに、あるいは、バスカバー14から取り外して移動可能であると認められること、並びに、本願明細書の【0005】及び【0006】に、携帯型の気泡発生装置に関する文献として挙げられている特許文献1が引用文献1であることから、引用文献1に記載の気泡発生装置は、携帯型気泡発生装置であると認められる。

以上の記載及び図1?図3によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「浴槽内に配設される吸入口3及び噴射口4と、吸入口3から浴水を吸入すると共にこの浴水を噴射口4から噴射する循環ポンプ1と、吸入口3から吸入した浴水に空気を取り入れる気体取入口6と、吸入口3から吸入した浴水に空気を溶解させる溶解タンク12と、空気を溶解させた浴水を減圧して微細気泡を生じさせる微細気泡化ノズル7を備えた携帯型気泡発生装置において、循環ポンプ1を溶解タンク12よりも上流側に設けて成る携帯型気泡発生装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「浴槽内に配設される吸入口3及び噴射口4」、「吸入口3から浴水を吸入すると共にこの浴水を噴射口4から噴射する循環ポンプ1」、「吸入口3から吸入した浴水に空気を溶解させる溶解タンク12」、「空気を溶解させた浴水を減圧して微細気泡を生じさせる微細気泡化ノズル7」は、それぞれ本願補正発明の「水槽内の水に浸けられる吸水部及び吐水部」、「吸水部から水を吸い込むと共にこの水を吐水部から吐出する吐出用ポンプ」、「吸水部から吸い込んだ水に気体を溶解させる溶解タンク」、「気体を溶解させた水を減圧して気泡を発生させる減圧手段」に相当する。
引用文献1に記載された発明の「吸入口3から吸入した浴水に空気を取り入れる気体取入口6」は、本願発明1の「吸水部から吸い込んだ水に気体を混入するエジェクター」と、吸水部から吸い込んだ水に気体を混入する手段である限りにおいて共通する。
また、本願補正発明においては、吐出用ポンプの一部を構成する気中ポンプは溶解タンクよりも上流側に設けられ、同じく吐出用ポンプの一部を構成する水中ポンプは、吸水部を構成する以上、明らかに気中ポンプよりも上流側に設けられるので、結局、吐出用ポンプは溶解タンクよりも上流側に設けられることとなる。したがって、本願補正発明の「気中ポンプを溶解タンクよりも上流側に設け」「て成る」と、引用文献1に記載された発明の「循環ポンプ1を溶解タンク12よりも上流側に設けて成る」とは、吐出用ポンプを溶解タンクよりも上流側に設けて成る限りにおいて共通する。

そうすると、両者は、
「水槽内の水に浸けられる吸水部及び吐水部と、吸水部から水を吸い込むと共にこの水を吐水部から吐出する吐出用ポンプと、吸水部から吸い込んだ水に気体を混入する手段と、吸水部から吸い込んだ水に前記気体を溶解させる溶解タンクと、前記気体を溶解させた水を減圧して気泡を発生させる減圧手段を備えた携帯型気泡発生装置において、前記吐出用ポンプを溶解タンクよりも上流側に設けて成る携帯型気泡発生装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

《相違点》
本願補正発明では、吐出用ポンプを、吸水部を構成する水中ポンプと、水槽外の気中に配置される気中ポンプとで構成し、エジェクターを気中ポンプよりも上流側且つ水中ポンプよりも下流側に設けて成るのに対し、引用文献1に記載された発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点の検討
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-14655号公報(以下、「引用文献2」という。)には、水槽内の水を循環させるポンプを、吸水部を構成する水中ポンプ(第1の循環ポンプ)と、水槽外の気中に配置される気中ポンプ(第2の循環ポンプ)とで構成することにより、ポンプの空転を防ぐ浴用水保温装置の発明が記載されている(特に、【0007】、【0032】、図1参照)。
引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された発明とは、ともに水槽内の水を循環させるポンプを有する装置である点で共通し、また、水槽内の水を循環させるポンプを有する装置において、ポンプの空転を防ぐことは周知の課題であるので(例えば、原査定において示された、特開2000-107055号公報の【0004】、特開平5-91951号公報の【0003】参照)、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された発明を適用して、吐出用ポンプを、吸水部を構成する水中ポンプと、水槽外の気中に配置される気中ポンプとで構成して、吐出用ポンプの空転を防ぐことは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、水に気体を混入する手段としてのエジェクターは周知であるので(例えば、特公平7-73593号公報の第5欄第37行?第42行、特許第2669917号公報の第3欄第2行?第10行参照)、吸水部から吸い込んだ水に気体を混入する手段としてエジェクターを用いることは当業者が容易になし得たことである。
また、エジェクターの設置箇所は当業者が適宜選択し得た事項であるところ、気中ポンプよりも上流側に設けることについては、引用文献1に記載された発明において、水に気体を混入する手段が吐出用ポンプよりも上流側に設けられていることから(上記2.(2)c及び図2参照)、当業者が適宜なし得たことである。
エジェクターを水中ポンプよりも下流側に設けることについては、引用文献1に記載された発明において、水に気体を混入する手段は水中には設けられておらず、エジェクターを水中ポンプよりも上流側に設ける方が望ましいという特段の事情もないことから、当業者が適宜なし得たことである。
さらに、本願補正発明が奏する効果は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成23年11月14日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、上記第2.1.(1)のとおりのものである。

2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・検討
本願発明2は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、気中ポンプを溶解タンクよりも上流側に設けるとする限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明2を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.(4)に記載したとおり、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2も、同様の理由により、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.補正案について
請求人は平成25年2月18日付け回答書において補正案を提示している。回答書の補正案には法的根拠はないが、一応検討しておく。
補正案における請求項1に係る発明(以下、「本願補正案発明」という。)は、本願補正発明に、溶解タンクが加圧式である事項を追加するものである。
しかしながら、溶解タンクが加圧式である点は上記第2.2.(2)b及びdにあるように、引用文献1に記載された事項である。
したがって、本願補正案発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-27 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-15 
出願番号 特願2008-182981(P2008-182981)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B01F)
P 1 8・ 121- Z (B01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤崎 詔夫鈴木 充  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
河原 英雄
発明の名称 携帯型気泡発生装置  
代理人 木村 豊  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 北出 英敏  

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