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審決分類 審判 査定不服 その他 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1274898
審判番号 不服2010-26296  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-22 
確定日 2013-06-03 
事件の表示 特願2006-505490「ポリウレタンの製造において有用な連鎖延長剤、および対応するポリウレタン」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日国際公開、WO2004/090009、平成18年10月 5日国内公表、特表2006-522847〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成16年3月25日(パリ条約による優先権主張,平成15年4月11日,欧州特許庁)を出願日とする特許出願であって,平成22年7月22日付けで拒絶査定がされたところ,これに対して,同年11月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正され,平成24年9月28日付けで平成23年法律63号改正附則2条8項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という場合がある。)39条7項で定める協議をさせるための指令書(以下「本件指令書」という。)が発送され,同日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知され,同年11月16日に意見書(以下「本件意見書」という。)が提出され,同年12月6日に上申書が提出され,平成25年1月10日付けで特許法156条1項の通知(以下「審理終結通知」という。)がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明(以下,順に「本願発明1」?「本願発明11」という。)は,平成22年11月22日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお,式Iで示される構造式は,その記載を省略し,以下単に「【化1】」という。)
「【請求項1】
硬質ブロック含量が5?60%である熱可塑性の弾性ポリウレタンポリマーを溶媒を使用せずに製造する方法であって,
a)少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
c)少なくとも1種の以下の式Iで示される連鎖延長剤
【化1】
[式中,
XとYは,互いに独立的にNまたはCであって,このときXとYの少なくとも一方が窒素であり;
Rは,水素,ヒドロキシル,直鎖もしくは分岐鎖のC1-C36アルキル,直鎖もしくは分岐鎖のC2-C24アルケニル,C3-C6シクロアルキル,C6-C10アリール,アラルキル,アルカリール,ポリエーテルまたはペルフルオロアルキルであるか;あるいは-OR’,-C(O)R’,-CO(O)R’または-C(O)OR’であって,このときR’は,R,C1-C36オリゴオキシアルキレンまたはペルフルオロアルキルの意味を有し;
R’とR”は,互いに独立的に水素またはC1-C6アルキルである]
を反応させることを含む上記方法。
【請求項2】
連鎖延長剤において,XとYが窒素である,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連鎖延長剤において,R’とR”が水素である,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
連鎖延長剤において,Rが直鎖のC1-C30アルキル基またはC2-C30アルキル基である,請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
イソシアネート反応性化合物がポリエーテルポリオールである,請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
イソシアネート反応性化合物がポリエステルポリオールである,請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
イソシアネートが,芳香族ポリイソシアネート,脂肪族ポリイソシアネート,脂環式ポリイソシアネート,および芳香族脂肪族ポリイソシアネートから選択される,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
0.5?20重量%の範囲の連鎖延長剤含量を有する,請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物中に予め溶解する工程を含む,請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
粉末形態の少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤と,少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物および少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させる工程を含む,請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応押出を含む,請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。」

第3 本件拒絶理由
本件拒絶理由は,要するに,本願発明1?11は本願と同一の出願人による特許法44条2項の規定により本願と同日にされたとみなされる出願(特願2010-260225号。以下「子出願」という。)に係る発明と同一と認められるから,本件指令書に記載した届出がないときは,本願発明1?11は,同法39条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

第4 本願が拒絶されるべき理由
1 子出願に係る発明
審理終結通知時における子出願に係る発明の内容は,職権で取り調べたところによれば,子出願についての平成24年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上申書に添付された手続補正書の写しの内容と同じである。)。
「【請求項1】
熱可塑性の弾性ポリウレタンポリマーを溶媒を使用せずに製造する方法であって,
a)少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物;
b)少なくとも1種のポリイソシアネート;および
c)少なくとも1種の以下の式Iで示される連鎖延長剤
【化1】
[式中,XとYが窒素であり;Rが,直鎖もしくは分岐鎖のC1-C12アルキルであり;R’とR”が水素である]
を反応させることを含む上記方法。
【請求項2】
連鎖延長剤が2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジンである,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イソシアネート反応性化合物がポリエーテルポリオールである,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
イソシアネート反応性化合物がポリエステルポリオールである,請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
イソシアネートが,芳香族ポリイソシアネート,脂肪族ポリイソシアネート,脂環式ポリイソシアネート,および芳香族脂肪族ポリイソシアネートから選択される,請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
10?50%の範囲の硬質ブロック含量を有する,請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
0.5?20重量%の範囲の連鎖延長剤含量を有する,請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤を少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物中に予め溶解する工程を含む,請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
粉末形態の少なくとも1種の式Iの連鎖延長剤と,少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物および少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させる工程を含む,請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応押出を含む,請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。」

2 本願発明が特許を受けることができない具体的理由(本願発明1と子出願に係る発明との対比・判断)

(1) 本願発明1について
ア 子出願の請求項6に係る発明(子出願発明6。ここでは,とりあえず請求項1を引用する場合のものとする。)と本願発明1とを対比すると,両者は,以下の点で一応の相違が認められる。
・ 相違点
【化1】の「XとY」について,本願発明1は「互いに独立的にNまたはCであって,このときXとYの少なくとも一方が窒素」であるのに対し,子出願発明6は「窒素」であり,
「R」について,前者は「水素,ヒドロキシル,直鎖もしくは分岐鎖のC1-C36アルキル,直鎖もしくは分岐鎖のC2-C24アルケニル,C3-C6シクロアルキル,C6-C10アリール,アラルキル,アルカリール,ポリエーテルまたはペルフルオロアルキルであるか;あるいは-OR’,-C(O)R’,-CO(O)R’または-C(O)OR’であって,このときR’は,R,C1-C36オリゴオキシアルキレンまたはペルフルオロアルキルの意味を有し」ているのに対し,後者は「直鎖もしくは分岐鎖のC1-C12アルキル」であり,
「R’とR”」について,前者は「互いに独立的に水素またはC1-C6アルキル」であるのに対し,後者は「水素」であり,
硬質ブロック含量について,前者は「5?60%」であるのに対し,後者は「10?50%」である点
イ 上記相違点について,検討する。
(ア) 本願発明1は,XとYがともに窒素である場合を排除していない。このことは,請求項1を引用する請求項2の記載から明らかである。
また,本願発明1は,Rが「直鎖もしくは分岐鎖のC1-C36アルキル」を選択肢の一つとしているところ,この特定はRが「直鎖もしくは分岐鎖のC1-C12アルキル」である場合を包含するものである。
また,本願発明1は,R’とR”がともに水素である場合を排除していない。このことは,請求項1を引用する請求項3の記載から明らかである。
さらに,本願発明1は,硬質ブロック含量が「10?50%」の範囲を有する点を包含するものである。この点,請求人は,本願発明1と子出願発明6とは上位下位の関係になっており,審査基準に照らし特許法39条2項の問題はない旨主張するが(上申書1頁),両発明の関係は単なる数値範囲の選択の関係にすぎないものであるから,請求人の主張は採用できない。
(イ) そうすると,本願発明1は,XとYがともに「窒素」であり,Rが「直鎖もしくは分岐鎖のC1-C12アルキル」であり,R’とR”がともに「水素」であり,硬質ブロック含量が「10?50%」である部分で,子出願発明6と同一であるといえる。

(2) 本願発明2?11について
本願発明2?11は,いずれも上記(1)で検討したことと同様の理由により,子出願に係る発明と同一である。すなわち,
ア 本願発明2?4については,子出願の請求項1を引用する請求項6に係る発明と同一である。
イ 本願発明5については,子出願の請求項3を引用する請求項6に係る発明と同一である。
ウ 本願発明6については,子出願の請求項4を引用する請求項6に係る発明と同一である。
エ 本願発明7については,子出願の請求項5を引用する請求項6に係る発明と同一である。
オ 本願発明8については,子出願の請求項6を引用する請求項7に係る発明と同一である。
カ 本願発明9については,子出願の請求項6を引用する請求項8に係る発明と同一である。
キ 本願発明10については,子出願の請求項6を引用する請求項9に係る発明と同一である。
ク 本願発明11については,子出願の請求項6を引用する請求項10に係る発明と同一である。

(3) 特許法39条2項の協議の成否について
請求人は,本件意見書において,本件意見書をもって本件指令書の協議指令に対する届出とする旨,具体的には,子出願ではなく本願によって権利化をはかりたい旨主張する。
そこで検討するに,請求人は,本件拒絶理由に対し,本件意見書を提出するのみで,その指定期間満了までに本願の特許請求の範囲を補正をしていない。また,子出願について,請求人は,平成24年12月5日に特許請求の範囲を補正したが(補正後の特許請求の範囲の記載は上記1のとおりであって,補正の内容は請求項6の数値範囲を「5?60%」から「10?50%」に変更するものである。),それ以降,本件に係る審理終結通知までの間,特許請求の範囲などの補正をしていない事実が認められる。
そうすると,本件意見書が提出され,子出願について上記の如く補正がされたとはいえ,審理終結通知時において,同一の発明(例えば,本願発明1と子出願発明6)について同日に2つの特許出願があるという事実に変わりがないのは上記(1)?(2)で検討のとおりであるから,特許法39条2項の協議は未だ成立していないと判断される。実体の伴わない届出(本件意見書)は,これを特許法39条7項の届出とみることはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本件拒絶理由は妥当なものであって,これを覆すに足りる根拠が見いだせないから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-10 
結審通知日 2013-01-11 
審決日 2013-01-22 
出願番号 特願2006-505490(P2006-505490)
審決分類 P 1 8・ 5- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 須藤 康洋
近藤 政克
発明の名称 ポリウレタンの製造において有用な連鎖延長剤、および対応するポリウレタン  
代理人 中村 充利  
代理人 小野 新次郎  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  

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