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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1274899
審判番号 不服2010-26840  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-29 
確定日 2013-06-03 
事件の表示 特願2006-541793「ゴム材料及びその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日国際公開、WO2005/056356、平成19年 6月28日国内公表、特表2007-517085〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成16年11月17日(パリ条約による優先権主張 2003年12月5日 ドイツ連邦共和国(DE))を国際出願日とする特許出願であって、平成20年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成21年6月10日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成22年7月23日付けで拒絶査定がなされ、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成23年1月19日付けで前置報告がなされ、当審で平成24年5月21日付けで審尋がなされ、同年11月20日に回答書が提出されたものである。



第2.平成22年11月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[結論]
平成22年11月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容

平成22年11月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、平成21年6月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容について、

【請求項1】
少なくとも1種のゴム種、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用のゴム材料であって、その際、充填剤が少なくとも2種の異なるカーボンブラック種の混合物を含み、かつその際、少なくとも1種のゴム種が第一及び第二の成分を有し、該成分は、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっているゴム材料において、粗製ゴム材料の全粘度が30?60ムーニーの範囲内であることを特徴とするゴム材料。」を、


【請求項1】
少なくとも1種のゴム、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、ウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用のゴム材料であって、その際、充填剤が少なくとも2種の異なるカーボンブラック種の混合物を含み、かつその際、少なくとも1種のゴムが第一及び第二の成分を有し、該成分は、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっているゴム材料において、粗製ゴム材料の全粘度が30?60ムーニーの範囲内であることを特徴とするゴム材料。」
とする、補正事項を含むものである。

2.本件補正の目的について
上記した特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「ゴム種」を「ゴム」とするとともに、「特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用」との用途限定を「ウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用」に限定する補正事項を含むものであり、請求項1についてする本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について

そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明1は、次のとおりのものである。
「少なくとも1種のゴム、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、ウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用のゴム材料であって、その際、充填剤が少なくとも2種の異なるカーボンブラック種の混合物を含み、かつその際、少なくとも1種のゴムが第一及び第二の成分を有し、該成分は、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっているゴム材料において、粗製ゴム材料の全粘度が30?60ムーニーの範囲内であることを特徴とするゴム材料。」

(2)刊行物の記載事項
以下、
国際公開第2003/50182号を「刊行物A」
特開平10-24803号公報を「刊行物B」という。

A.刊行物Aの記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物A(平成20年12月8日付け拒絶理由通知で引用した引用文献1。)には、以下の事項が記載されている。なお、下記摘示は、刊行物Aに対応する特許出願の公表公報である特表2005-511845号公報を援用し、下線は当審で付した。

A1「
【請求項17】
エラストマー配合物であって、少なくとも1種のエラストマー物質と配合されたエラストマー複合物を含み、しかも該エラストマー複合物が、第1エラストマーと、第1エラストマー中に分散された微粒子状充填剤とを含み、該微粒子状充填剤は、式CDBP≦(BET÷2.9)-Xを満たすストラクチャー値及び表面積値を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含むエラストマー配合物。
【請求項18】
エラストマー物質が、第1エラストマーとは異なるエラストマーを含む、請求項17に記載のエラストマー配合物。」

A2「
【0002】
微粒子状充填剤が様々な合成エラストマー、天然ゴム又はエラストマー配合物中に分散されているエラストマー組成物から、商業的に重要な数多くの製品が形成される。たとえば、カーボンブラックは、天然ゴム及び他のエラストマー中において、強化剤として広範に用いられる。或るグレードの商業的に入手できるカーボンブラックが用いられ、しかしてそれらは単位重量当たりの表面積及びストラクチャーの両方について変動するが、しかし慣用のゴム回分加工技法により制限されてきた。かかるエラストマー組成物から、たとえば自動車用タイヤ、エンジンマウントブッシュ、コンベヤーベルト、風防ガラス用ワイパー、等を含めて、商業的に重要な数多くの製品が形成される。現在利用できる物質及び製造技法を用いて広範な性能特性が達成され得るけれども、改善性質を有するエラストマー組成物、特に効率的にかつ経済的に製造され得るエラストマー組成物を開発すべき長年のニーズが、当業界に存在してきた。」

A3「
【0029】
上記に開示されたように、本発明のエラストマー複合物の或る好ましい具体例は、エラストマー複合物に有利な引裂き強さ特性を付与することが可能なカーボンブラックを含む。或る好ましい具体的態様によれば、本明細書に開示されたエラストマー複合物は、汎用ゴムと、エラストマー中に分散された微粒子状充填剤とを含み、しかも微粒子状充填剤は、ダイCを用いてのASTM-D624試験方法により測定される場合の少なくとも約160N/mmの引裂き強さを達成するために、エラストマー中の選択された濃度にて有効な又は十分な少なくとも1種のカーボンブラックを含む。汎用ゴムの例は、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム又はエチレン-プロピレンゴム(EPDMを含めて)を包含するが、しかしそれらに制限されない。好ましくは、かかる汎用ゴムは天然ゴムである。」

A4「
【0030】
上記に開示されたように、本明細書に開示されたエラストマー複合物の或る好ましい具体例は、エラストマー複合物に有利な硬度、引張り強さ及び破断点伸びを付与することの可能なカーボンブラックを含む。或る好ましい具体的態様によれば、本明細書に開示されたエラストマー複合物は、エラストマーと、該エラストマー中に分散された微粒子状充填剤とを含み、しかも該微粒子状充填剤は、
ASTM-D1415試験方法に従って測定して約65より大きいショアーA硬度、
ASTM-D412試験方法に従って測定して30メガパスカルより大きい引張り強さ、
及び
ASTM-D412試験方法に従って測定して少なくとも約600%の破断点伸び
を達成するために、エラストマー中の選択された濃度にて有効な又は十分な少なくとも1種のカーボンブラックを含む。」

A5「
【0032】
随意に、エラストマー複合物において用いられる充填剤は、上記のカーボンブラックに加えて、1種又はそれ以上の物質を含む。連続湿式混合及び凝固により製造される具体的態様において、並びに連続湿式混合及び凝固並びに後続乾式混合により製造されるところの本明細書に開示されたエラストマー配合物の具体例について、エラストマー複合物のカーボンブラック充填剤は、本明細書に開示された原理に従ってスラリー化されそして混合帯域に供給され得る他の物質も含み得る。適当な追加の物質は、たとえば、導電性充填剤、強化用充填剤、短繊維(典型的には、40未満のL/Dアスペクト比を有する)を含む充填剤、フレーク、等を包含する。かくして、本明細書に開示されたエラストマー複合物において用いられ得る例示的微粒子状充填剤は、たとえば、他のカーボンブラック、フュームドシリカ、沈降シリカ、シリカ被覆カーボンブラックのような被覆カーボンブラック、有機基が結合されているもののような変性カーボンブラック、及び金属処理カーボンブラック(たとえば、ケイ素処理カーボンブラック)を含めて処理カーボンブラックを単独で又は互いに組み合わせてのどちらかにて包含する。」

A6「
【0033】
本発明のゴム組成物は、随意に、エラストマー及び充填剤と共に、硬化剤、カップリング剤並びに場合により様々な加工助剤、油エキステンダー及び抗崩壊剤のような、様々な添加剤を含有し得る。添加剤の例は、オゾン亀裂防止剤、酸化防止剤、可塑剤、樹脂、難燃剤及び滑剤を包含するが、しかしそれらに制限されない。添加剤の組合わせもまた用いられ得る。それに関して、本発明のエラストマー複合物は加硫組成物(VR)、熱可塑性樹脂加硫物(TPV)、熱可塑性エラストマー(TPE)及び熱可塑性ポリオレフィン(TPO)を包含する、ということが理解されるべきである。TPV、TPE及びTPO物質は、性能特性の実質的損失なしに数回押し出され及び成形されるそれらの能力により更に分類される。かくして、エラストマー複合物配合物を作製する又は更に加工する際に、エラストマー組成物の加硫を遂行するために用いられる1種又はそれ以上の硬化剤(たとえば、硫黄、硫黄供与体、活性剤、促進剤、過酸化物及び他の系のような)が用いられ得る。」

B.刊行物Bの記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物B(平成20年12月8日付け拒絶理由通知で引用した引用文献2。)には、以下の事項が記載されている。

B1「
【請求項1】 先端部でウインドガラスを払拭する薄板状のリップ部と該リップ部の前記先端部とは反対側の基端部に一体的に設けられてその厚みが前記先端部から前記基端部に向かう方向に漸大するショルダ部とを有するワイパーブレードラバーであって、前記リップ部の前記払拭方向両側の側面に、前記ウインドガラスを払拭する前記先端部の内側から前記基端部に向かう方向に延びて前記ショルダ部に到達する突起部が当該突起部の長さ方向とは略直交する前記リップ部の幅方向に複数設けられていることを特徴とするワイパーブレードラバー。
【請求項6】 請求項1?5の何れかにおいて、前記ワイパーブレードラバーが、ポリプロピレン含有量が40?45重量%で、ヨウ素価が20?30で、ムーニー粘度がML_(1+4)(100℃)で40?70のエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)にカーボンブラックを混合して形成されたものであり、前記ワイパーブレードラバーの少なくともガラス表面を払拭する先端部の両側面に、接触角が100°以下の親水性材料を塗布して形成された摩擦係数が1.0以下のコーティング層を有することを特徴とするワイパーブレードラバー。」

B2「
【0021】
また、EPDMとして、ポリプロピレン含有量が40?45重量%のものを用いるのが好ましいのは、低温特性、耐ビビリ性を向上するためである。また、ヨウ素価が20?30のEPDMを用いるのが好ましいのは、耐へたり性を向上するためである。さらに、ムーニー粘度がML_(1+4)(100℃)で40?70のEPDMを用いるのが好ましいのは、耐摩耗性を向上するためである。」

(3)刊行物Aに記載された発明
摘示A1及びA2の記載からみて、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A発明」という。)が記載されている。

エラストマー配合物であって、少なくとも1種のエラストマー物質と配合されたエラストマー複合物を含み、しかも該エラストマー複合物が、第1エラストマーと、第1エラストマー中に分散された微粒子状充填剤とを含み、該微粒子状充填剤は、式CDBP≦(BET÷2.9)-Xを満たすストラクチャー値及び表面積値を有する少なくとも1種のカーボンブラックを含む、風防ガラス用ワイパー用のエラストマー配合物。


(4)対比・判断
本願補正発明1と刊行物A発明とを比較する。

刊行物A発明における「エラストマー配合物」「微粒子状充填剤」「風防ガラス用ワイパー用」「カーボンブラック」は、それぞれ本願補正発明1における「ゴム材料」「充填剤」「ウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用」「カーボンブラック」に相当する。

刊行物A発明における、「エラストマー複合物」は「第1エラストマー」を含んでいることから、刊行物A発明には、第1エラストマーとエラストマー物質とを含んでいるところ、刊行物A発明における、「第1エラストマー」「エラストマー物質」は、それぞれ本願補正発明1における、少なくとも1種のゴムの「第一の成分」「第二の成分」に相当する。

また、刊行物Aには、エラストマー物質が、第1エラストマーとは異なるエラストマーを含むとの記載(摘示A1参照。)があり、異なるエラストマーの粘度は通常相違すると解されることから、刊行物A発明は、本願補正発明1における「加硫されていない状態でその粘度に関して異なっている」との規定を備えていると認められる。

以上をまとめると、本願補正発明1と刊行物A発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
少なくとも1種のゴム、少なくとも1種の充填剤を含有する、ウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用のゴム材料であって、その際、充填剤がカーボンブラックを含み、かつその際、少なくとも1種のゴムが第一及び第二の成分を有し、該成分は、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっているゴム材料であることを特徴とするゴム材料。

〔相違点1〕
本願補正発明1において、加工助剤を含有すると特定しているのに対し、刊行物A発明においてそのような特定がない点。

〔相違点2〕
本願補正発明1において、充填剤であるカーボンブラックが「少なくとも2種の異なる混合物」と特定しているのに対し、刊行物A発明においてそのような特定がない点。

〔相違点3〕
本願補正発明1において、粗製ゴム材料の全粘度が30?60ムーニーの範囲内であると特定しているのに対し、刊行物A発明においてそのような特定がない点。

上記相違点について検討する。

〔相違点1〕について
刊行物Aには、加工助剤を配合可能の旨の記載(摘示A6)があることからすると、この点は実質的な相違点ではない。

〔相違点2〕について
刊行物Aには、刊行物A発明において特定しているカーボンブラックの他に、他のカーボンブラックを用いる旨の記載(摘示A5)があることからすると、この点も実質的な相違点ではない。

〔相違点3〕について
刊行物A発明及び刊行物Bに記載の技術的事項は、車両等のガラス表面を払拭するために使用されるワイパーブレードに用いるためのゴム組成物に関する点において一致しており、カーボンブラックを配合する点においても一致している。そして、刊行物Aには、エラストマー複合物を得る汎用のゴムとしてポリブタジエン等と同等にエチレン-プロピレン(EPDM)を用いることが記載(摘示A3参照。)されていることから、これら並列列記されているゴムは同様に使用可能なものと解されるところ、ワイパーブレードにおいて自明の課題である耐摩耗性の改良に関して、刊行物Bには、カーボンブラックを含有したEPDMゴムのムーニー粘度を40?70とすることで、耐摩耗性が改善される旨の記載(摘示B2参照。)があることからすると、上記技術的事項を刊行物A発明に採用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において容易になし得ることである。

よって、本願補正発明1は、刊行物A発明と刊行物Bに記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成24年11月20日付け回答書において、刊行物Aには、複数のエラストマーを用いることが記載されているにすぎず、同一のゴム種であるが、加硫されていない状態でその粘度に関して異なる2個の成分を有するゴムを使用することに関して何ら記載されていない旨の主張をしている。
しかし、本願補正発明1は、「少なくとも1種のゴムが第一及び第二の成分を有」するとしているが、「少なくとも1種のゴム」という、2種類以上のゴムを含むという概念をも包含する事項において、「第一及び第二の成分を有」することを規定するのみで、該ゴムが「同一の」ゴム種を用いることを意味するという請求人の主張を採用することはできないし、本願明細書を参酌しても、
「 【0018】
ゴム材料は複数のゴム種を含んでよい。この場合、ゴム種において2種又は2種を上回るフラクションが含有されていてよいが、ゴム材料中に含まれるゴム種の少なくとも2種において、2種又は2種を上回るフラクションを予定することも可能である。この場合、フラクションとは、常に、ベースとなるゴム種と構造が類似しているか又は同一である物質量であると理解される。」
と、ゴム種が異なることを許容している。
そして、本願明細書全体を通して「少なくとも1種のゴム」との記載が「同一の種類のゴム」のみを意味していると解する根拠もないことからすると、本願補正発明1の発明特定事項に基づかないこの点に関する請求人の主張を採用することはできない。

さらに、請求人は、上記回答書において、本願補正発明1の「少なくとも1種のゴム」「少なくとも1種の充填剤」をそれぞれ、「第1のフラクションが20?95ムーニーのムーニー粘度を有する」「ファーネスブラックとサーマルブラックとからなる混合物」に限定する用意がある旨の主張をしている。
しかし、ゴム成分の内の1成分のムーニー粘度を20?95とすることは、ワイパーブレードにおいて好適なムーニー粘度の範囲程度とするものであり、当業者において適宜なし得る事項である。また、異なるカーボンブラックを用いることに関しても、低硬度のゴムとする場合サーマルブラックを用いること、補強性のゴムとする場合ファーネスブラックを用いることは、例えば特開平9-48933号公報(【0002】?【0003】参照。)に記載のとおり、従来周知の技術的事項であることからすると、上記限定をしたとしても、刊行物A発明と刊行物Bに記載された事項及び上記周知技術により、本願補正発明1は進歩性を有さない。

(6)まとめ
したがって、本願補正発明1は、刊行物A発明と刊行物Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本件補正は特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成21年6月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。


【請求項1】
少なくとも1種のゴム種、少なくとも1種の充填剤並びに加工助剤を含有する、特にウインドスクリーンワイパーのワイパーブレード用の、又は自動車タイヤ用のゴム材料であって、その際、充填剤が少なくとも2種の異なるカーボンブラック種の混合物を含み、かつその際、少なくとも1種のゴム種が第一及び第二の成分を有し、該成分は、加硫されていない状態でその粘度に関して異なっているゴム材料において、粗製ゴム材料の全粘度が30?60ムーニーの範囲内であることを特徴とするゴム材料。」

2.原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由とされた平成20年12月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由2の概要は、

この出願の本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:国際公開2003/50182号
引用例2:特開平10-024803号公報

というものである。

3.当審の判断

(1)引用例の記載事項
A.引用例1の記載事項
引用例1は、前記第2.3(2)A.の刊行物Aと同じであるから、前記2.3(2)A.に記載した事項が記載されている。

B.引用例2の記載事項
引用例2は、前記第2.3(2)B.の刊行物Bと同じであるから、前記2.3(2)B.に記載した事項が記載されている。

(2)対比・判断
本願発明1は、本願補正発明1における用途に関して、さらに用途を付加したものである。

そうすると、本願発明1をさらに限定した本願補正発明1が前記第2.3に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明と刊行物Bに記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1もまた引用例1(刊行物Aと同じ)に記載された発明と引用例2(刊行物Bと同じ)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないという原査定の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-09 
結審通知日 2013-01-11 
審決日 2013-01-22 
出願番号 特願2006-541793(P2006-541793)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阪野 誠司中村 浩  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 田口 昌浩
加賀 直人
発明の名称 ゴム材料及びその製造法  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 篠 良一  

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