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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1274910 |
審判番号 | 不服2011-26767 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-12-12 |
確定日 | 2013-06-03 |
事件の表示 | 特願2003-550289「へテロ接合トランジスタ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月12日国際公開、WO03/49193、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-512327〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2002年11月20日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理2001年12月3日、アメリカ合衆国、2002年7月19日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成21年9月24日付けの拒絶理由通知に対して同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、平成22年6月1日付けの最後の拒絶理由通知に対して同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年8月4日付けで、平成22年10月4日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定がなされた。 それに対して、同年12月12日に、拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、平成24年4月23日付けで審尋がなされ、それに対する回答書は提出されなかった。 第2.補正の却下の決定 【結論】 平成23年12月12日に提出された手続補正書による補正を却下する。 【理由】 1.補正の内容 平成23年12月12日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?41を、補正後の特許請求の範囲の請求項1と補正するものであり、補正前後の請求項1は各々以下のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、 基板と、 該基板上に設けられ、歪みのない第1のAlGaNベース層と、 該第1のAlGaNベース層上に設けられ、該第1のAlGaNベース層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1のAlGaNベース層の中の歪みの大きさよりも大きな大きさの第1の歪みを有するGaNベース層と、 前記第1のAlGaNベース層の反対側で、前記GaNベース層上に設けられ、該GaNベース層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みと逆の歪みの型である第2の歪みを有する第2のAlGaNベース層と を備え、前記第2のAlGaNベース層は、前記GaNベース層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有するが、ひび割れまたは欠陥形成が生じる厚さよりも薄いものであることを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。」 (補正後) 「【請求項1】 第1のAlGaNベース層とGaNベース層を含む窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、 基板と、 該基板上に設けられ、前記GaNベース層よりも小さな歪みエネルギーを有した前記第1のAlGaNベース層と、 前記第1のAlGaNベース層上に設けられ、前記第1のAlGaNベース層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1のAlGaNベース層の中の歪みの大きさよりも大きな大きさの第1の歪みを有する前記GaNベース層と、 前記第1のAlGaNベース層の反対側に前記GaNベース層上に設けられ、前記GaNベース層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みと逆の歪みの型である第2の歪みを有する第2のAlGaNベース層と を備え、前記第2のAlGaNベース層は、前記GaNベース層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有するが、ひび割れまたは欠陥形成が生じる厚さよりも薄いものであることを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。」 2.補正事項の整理 本件補正による補正事項を整理すると、次のとおりである。 (1)補正事項1 補正前の請求項1の「窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、」を、「第1のAlGaNベース層とGaNベース層を含む窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、」と補正して、補正後の請求項1とすること。 (2)補正事項2 補正前の請求項1の「該基板上に設けられ、歪みのない第1のAlGaNベース層と、」を、「該基板上に設けられ、前記GaNベース層よりも小さな歪みエネルギーを有した前記第1のAlGaNベース層と、」と補正して、補正後の請求項1とすること。 (3)補正事項3 補正前の請求項1の「該第1のAlGaNベース層上に設けられ、該第1のAlGaNベース層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1のAlGaNベース層の中の歪みの大きさよりも大きな大きさの第1の歪みを有するGaNベース層と、」を、「前記第1のAlGaNベース層上に設けられ、前記第1のAlGaNベース層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1のAlGaNベース層の中の歪みの大きさよりも大きな大きさの第1の歪みを有する前記GaNベース層と、」と補正して、補正後の請求項1とすること。 (4)補正事項4 補正前の請求項1の「前記第1のAlGaNベース層の反対側で、前記GaNベース層上に設けられ、該GaNベース層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みと逆の歪みの型である第2の歪みを有する第2のAlGaNベース層と」を、「前記第1のAlGaNベース層の反対側に前記GaNベース層上に設けられ、前記GaNベース層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みと逆の歪みの型である第2の歪みを有する第2のAlGaNベース層と」と補正して、補正後の請求項1とすること。 (5)補正事項5 補正前の請求項2?41を削除すること。 3.新規事項追加の有無及び補正の目的についての検討 (1)補正事項1について 補正事項1は、補正前の請求項1の「窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタ」が、その発明特定事項として存在していた「第1のAlGaNベース層」と「GaNベース層」を含むものであることを、冒頭部分で明瞭に記載する補正であるから、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、補正事項1が、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)、特許請求の範囲、又は図面(以下、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面を「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第3項(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たす。 (2)補正事項2について 補正事項2により補正された部分は、当初明細書の0031段落等に記載されているものと認められるから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 一方、補正事項2により、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「第1のAlGaNベース層」が「歪みのない」ものであるという技術的限定が削除され、「前記GaNベース層よりも小さな歪みエネルギーを有した」ものであるという異なる技術的限定に変更された。結果として、補正後の請求項1に係る発明には、「第1のAlGaNベース層」が「歪み」を有し、「前記GaNベース層」よりは「小さな歪みエネルギーを有」するという、補正前の請求項1に係る発明には含まれないものを含むことになった。 よって、補正事項2は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 また、補正事項2が、特許法第17条の2第4項のその他のいずれの号に掲げる事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。 したがって、補正事項1は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 (3)補正事項3について 補正事項3は、補正前の請求項1の「該第1のAlGaNベース層」を「前記第1のAlGaNベース層」と補正し、また、「GaNベース層」を「前記GaNベース層」と補正することで、指示関係を明瞭にするものであるから、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、補正事項3が、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 (4)補正事項4について 補正事項4は、補正前の請求項1の「前記第1のAlGaNベース層の反対側で、前記GaNベース層上に設けられ、」を「前記第1のAlGaNベース層の反対側に前記GaNベース層上に設けられ、」と補正し、また、「該GaNベース層」を「前記GaNベース層」と補正することで、実質的に内容を変更することなく明瞭にするものであるから、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、補正事項4が、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 (5)補正事項5について 補正事項5は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。 したがって、補正事項5は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。 また、補正事項5が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。 (6)新規事項追加の有無及び補正の目的についてのまとめ 以上検討したとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものの、同法同条第4項に規定する要件を満たさない。 4.補正の却下の決定のむすび 以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものではないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成23年12月12日に提出された手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?41に係る発明は、平成21年12月24日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?41に記載されている事項により特定されるとおりのものである。そのうちの請求項18に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1、及び請求項18に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 窒化物をベースにしたヘテロ接合トランジスタであって、 基板と、 該基板上に設けられ、歪みのない第1のAlGaNベース層と、 該第1のAlGaNベース層上に設けられ、該第1のAlGaNベース層のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを有し、かつ前記第1のAlGaNベース層の中の歪みの大きさよりも大きな大きさの第1の歪みを有するGaNベース層と、 前記第1のAlGaNベース層の反対側で、前記GaNベース層上に設けられ、該GaNベース層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有し、かつ前記第1の歪みと逆の歪みの型である第2の歪みを有する第2のAlGaNベース層と を備え、前記第2のAlGaNベース層は、前記GaNベース層との界面に2D電子ガスの形成を誘起するのに十分な大きさの厚さ及びアルミニウム濃度を有するが、ひび割れまたは欠陥形成が生じる厚さよりも薄いものであることを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。」 「【請求項18】 前記第1のAlGaNベース層は、AlInGaN層であることを特徴とする請求項1に記載のヘテロ接合トランジスタ。」 2.原審における拒絶の理由の概要 原審における拒絶の理由は、平成22年6月1日付けの最後の拒絶理由通知書に記載されたとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。 「(A)略 (B)請求項17には、「前記第1のAlGaNベース層は、AlGaN層である」と、請求項18には、「前記第1のAlGaNベース層は、AlInGaN層である」と記載されているが、両者とも意味不明であるので、請求項17,18に係る発明は、請求項1に係る発明に対し、どのような構成を特定した発明であるのか理解できない。 同様な理由により、請求項30に係る発明は不明りょうである。 (C)略 (D)略 ・・・ よって、請求項16?18,27?30に係る発明は明確でない。」 3.特許法第36条第6項第2号に規定する要件について (1)そこで、本願の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているか否かについて検討する。 請求項18には、「前記第1のAlGaNベース層は、AlInGaN層である」と記載されている。しかしながら、「AlGaN」と「AlInGaN」とは材料が異なるから、請求項18の上記記載は明らかに矛盾する記載である。 したがって、請求項18に係る発明は明確でない。 (2)以上検討したとおり、請求項18に係る発明は明確でないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4.むすび 以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-07 |
結審通知日 | 2013-01-08 |
審決日 | 2013-01-21 |
出願番号 | 特願2003-550289(P2003-550289) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L) P 1 8・ 57- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 恩田 春香、瀧内 健夫 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
早川 朋一 池渕 立 |
発明の名称 | へテロ接合トランジスタ及びその製造方法 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 清水 邦明 |
代理人 | 林 鉐三 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |