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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60T 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60T |
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管理番号 | 1274969 |
審判番号 | 不服2012-16944 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-08-31 |
確定日 | 2013-06-06 |
事件の表示 | 特願2007-265914「制動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日出願公開、特開2009- 90933〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成19年10月11日の出願であって、平成24年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 2.平成24年8月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 操作子と、ブレーキシリンダと、 前記操作子の操作量または操作力に応じて、電気的に制動力を制御可能な電気的制動力制御装置と、 液圧を発生させるマスターシリンダと、 前記電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダとシミュレータとの間に設けられた反力許可弁が開弁されることによって連通されるとともに、前記電気的制動力制御装置が異常であるときには前記反力許可弁が閉弁され、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータと、 前記マスターシリンダに前記操作子を繋ぐ伝達部材とを備えた制動装置において、 前記電気的制動力制御装置は、この電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダと遮断されて制動力を制御可能であり、 前記伝達部材は、前記マスターシリンダに連結される出力部材の出力量と前記操作子の操作量との比を変化可能な機構であり、 前記操作子の操作量の後半領域においては、前記操作量の増加に応じて、前記出力部材の出力量に対する操作量の比が大きくなり、 前記シミュレータの油蓄積量を前記マスターシリンダから供給される最大供給油量よりも少なくしたことを特徴とする制動装置。 【請求項2】 前記伝達部材は、前記操作子の操作量の前半領域において、前記出力部材の出力量に対する操作量の比が、前記操作子の後半領域における比よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の制動装置。 【請求項3】 前記マスターシリンダおよび前記ブレーキシリンダのブレーキ液の連通を遮断する遮断部材を設け、 前記遮断部材が開いている状態において、前記操作子が所定の操作量だけ操作されて、前記シミュレータに油蓄積量のブレーキ液が満たされた後、前記操作子の操作量が前記所定の操作量よりさらに増大したとき、操作量の増加に応じて、前記出力部材の出力量に対する操作量の比が大きくなることを特徴とする請求項1記載の制動装置。」に補正された。 上記補正は、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記マスターシリンダに連通し、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータ」を、「前記電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダとシミュレータとの間に設けられた反力許可弁が開弁されることによって連通されるとともに、前記電気的制動力制御装置が異常であるときには前記反力許可弁が閉弁され、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータ」に限定するとともに、同じく、「電気的制動力制御装置」について、「前記電気的制動力制御装置は、この電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダと遮断されて制動力を制御可能であり、」という事項を追加して限定するものであって、これは、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記のとおりである。 (2)引用例 (2-1)引用例1 特開2007-230435号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (あ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、運転者のブレーキ操作に応じて出力される電気信号でモータシリンダを電気的に作動させ、モータシリンダが発生したブレーキ液圧でホイールシリンダを作動させて車輪を制動するブレーキ装置に関する。」 (い)「【0021】 上記構成を備えた本発明の実施の形態のBBW式ブレーキ装置の特徴を明確にするために、図5および図6に基づいて従来のBBW式ブレーキ装置の構造を説明する。 【0022】 図5および図1を比較すると明らかなように、従来のBBW式ブレーキ装置は、液路17g,17h間から分岐する液路17o,17pがマスタシリンダ10のリザーバ31に連通しており、その液路17o,17p間に常閉型電磁弁である大気弁32が配置される。また従来のBBW式ブレーキ装置は、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置のペダルストロークセンサSdを必要としない。従来のBBW式ブレーキ装置のその他の構成は、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置の構成と同じである。 【0023】 次に、従来のBBW式ブレーキ装置の作用を説明する。 【0024】 図5に示す正常時には、図示せぬBBW電子制御ユニットからの指令で遮断弁18、反力許可弁30および大気弁32のソレノイドが励磁され、遮断弁18が閉弁してマスタシリンダ10およびディスクブレーキ装置13,14間の連通を遮断し、反力許可弁30が開弁してマスタシリンダ10およびストロークシミュレータ25間を連通させ、かつ大気弁32が開弁する。この状態で運転者がブレーキペダル11を踏み込んでマスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生すると、遮断弁18で閉塞された液路17kのブレーキ液圧を液圧センサSaが検出する。BBW電子制御ユニットは、液圧センサSaが検出したブレーキ液圧に応じた液圧を液路17f,17jに発生させるべく、前輪および後輪のモータシリンダ19F,19Rを作動させる。 【0025】 その結果、前輪のモータシリンダ19Fの電動モータ22の駆動力が減速機構23を介してピストン21に伝達され、シリンダ20の液室24に発生したブレーキ液圧が液路17e,17fを介してディスクブレーキ装置13のホイールシリンダ15に伝達されて前輪が制動される。このとき、液路17fのブレーキ液圧を液圧センサSbで検出し、そのブレーキ液圧が液路17kの液圧センサSaで検出したブレーキ液圧に応じて変化するように電動モータ22の作動がフィードバック制御される。 【0026】 同様に、後輪のモータシリンダ19Rの電動モータ22の駆動力が減速機構23を介してピストン21に伝達され、シリンダ20の液室24に発生したブレーキ液圧が液路17i,17jを介してディスクブレーキ装置14のホイールシリンダ16に伝達されて後輪が制動される。このとき、液路17jのブレーキ液圧を液圧センサScで検出し、そのブレーキ液圧が液路17kの液圧センサSaで検出したブレーキ液圧に応じて変化するように電動モータ22の作動がフィードバック制御される。 【0027】 尚、シリンダ20内のピストン21が電動モータ22によって僅かに前進すると、第1ポートP1が閉塞されて液室24と液路17d(あるいは液路17h)との連通が絶たれるため、シリンダ20が発生したブレーキ液圧が液路17o,17p間に設けた大気弁32を介してリザーバ31に逃げる虞はない。 【0028】 ところで、上述した正常時には、電源の失陥のような異常状態が発生しない限り遮断弁18は閉弁状態に保持されるため、ディスクブレーキ装置13,14のブレーキパッドが摩耗してシリンダ20,20およびディスクブレーキ装置13,14間の液路17e,17fあるいは液路17i,17jの容積が増加しても、その分のブレーキ液をリザーバ31から補給することができず、しかもホイールシリンダ15,16の引きずりを低減することができないという問題が発生する可能性がある。 【0029】 しかしながら、シリンダ20,20内でピストン21,21が後退すると、液室24,24が開弁した大気弁32を介してリザーバ31に連通するため、ディスクブレーキ装置13,14のブレーキパッドの摩耗により不足するブレーキ液をリザーバ31から補給するとともに、制動力の解放時におけるホイールシリンダ15,16の引きずりを低減することができる。 【0030】 また正常時に運転者がブレーキペダル11を踏んでマスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生すると、そのブレーキ液圧がストロークシミュレータ25の液室29に伝達されてピストン28がスプリング27の弾発力に抗して移動することで、ブレーキペダル11の踏込みに対する反力を発生させることができる。これにより、実際には電動モータ22,22の駆動力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているにも関わらず、運転者の踏力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているのと同等の操作フィーリングを得ることができる。 【0031】 一方、バッテリ外れ等により電源が失陥したような異常時には、図6に示すように遮断弁18が開弁してマスタシリンダ10およびディスクブレーキ装置13,14間が連通し、反力許可弁30が閉弁してマスタシリンダ10およびストロークシミュレータ25間の連通が遮断され、かつ大気弁32が閉弁してマスタシリンダ10およびリザーバ31間の連通が遮断される。その結果、運転者がブレーキペダル11を踏み込んでマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧は、開弁した遮断弁18およびモータシリンダ19Fを介して前輪のディスクブレーキ装置13のホイールシリンダ15に伝達され、また開弁した遮断弁18およびモータシリンダ19Rを介して後輪のディスクブレーキ装置14のホイールシリンダ16に伝達され、前輪および後輪が制動される。 【0032】 これと同時に、反力許可弁30の閉弁によりストロークシミュレータ25とマスタシリンダ10との連通が遮断されるため、ストロークシミュレータ25は機能を停止する。その結果、ブレーキペダル11のストロークが不必要に増加して運転者に違和感を与えるのを防止することができ、しかもマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧はストロークシミュレータ25に吸収されることなくホイールシリンダ15,16に伝達され、高い応答性で制動力を発生させることができる。 【0033】 しかして、電源が失陥して遮断弁18、反力許可弁30、大気弁32およびモータシリンダ19F,19Rが作動不能になっても、運転者がブレーキペダル11を踏んでマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧で前輪および後輪のホイールシリンダ15,16を支障なく作動させることができ、これにより異常時に前輪および後輪を制動して車両をより安全に停止させることができる。 【0034】 次に、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置の作用を、図5および図6で説明した従来のBBW式ブレーキ装置の作用と対比させながら説明する。 【0035】 従来のBBW式ブレーキ装置の遮断弁18は、正常時に閉弁して異常時に開弁するようになっているが、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置の遮断弁18は、後述するABS作動時を除き、図1に示す正常時にも図2に示す異常時にも開弁状態に維持される。従って、マスタシリンダ10もモータシリンダ19F,19Rも作動しない非制動時(図4(A)参照)には、モータシリンダ19F,19Rの第1ポートP1,P1が開弁した遮断弁18、マスタシリンダ10の液室34aおよびマスタシリンダ10のサプライポートPaを介してリザーバ31に連通するため、マスタシリンダ10のリザーバ31をモータシリンダ19F,19Rのリザーバに兼用することが可能になり、従来のBBW式ブレーキ装置が必要とした、モータシリンダ19F,19Rおよびリザーバ31を連通する液路17o,17p(図5および図6参照)が不要になる。 【0036】 また従来のBBW式ブレーキ装置は、マスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生してから、そのブレーキ液圧に応じたブレーキ液圧を発生すべくモータシリンダ19F,19Rが作動するものであったが、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置は、運転者がブレーキペダル11を踏んだことをペダルストロークセンサSdが検出するやいなや、モータシリンダ19F,19Rが作動するようになっている。従って、マスタシリンダ10のピストン33aが補給ポートPaを通過して液室34aにブレーキ液圧が発生する前に、モータシリンダ19F,19Rのピストン21が第1ポートP1を通過して液室24にブレーキ液圧が発生する(図4(B)参照)。そのため、従来のBBW式ブレーキ装置は、図5に示すように、正常時に遮断弁18を閉弁してマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧がホイールシリンダ15,16に伝達されるのを阻止する必要があった。 【0037】 しかしながら、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置では、図1に示す正常時に遮断弁18を閉弁することなく開弁状態に維持しても、マスタシリンダ10がブレーキ液圧を発生する前にモータシリンダ19F,19Rの第1ポートP1,P1が閉じるため、マスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧がホイールシリンダ15,16に伝達されることはない。 【0038】 また従来のBBW式ブレーキ装置は、図6に示すように、異常時に遮断弁18が開弁するために大気弁32を閉弁しないとマスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧がリザーバ31に逃げてしまい、ホイールシリンダ15,16を作動させられなかった。それに対し、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置は、モータシリンダ19F,19Rおよびリザーバ31を連通する液路17o,17pを持たないため、異常時に前記液路17o,17pを閉塞する大気弁32が不要になり、部品点数の節減および構造の簡素化が可能になる。 【0039】 ところで、本実施の形態のBBW式ブレーキ装置の遮断弁18は正常時にも異常時にも開弁状態に維持されるが、図4(C)に示すように、ABSの作動時にのみ閉弁する。その理由は次のとおりである。ABSの作動時には、モータシリンダ19F,19Rのピストン21,21が繰り返し後退、停止および前進することで、ホイールシリンダ15,16のブレーキ液圧を減圧、保持および増圧して車輪のロックを抑制するが、そのとき遮断弁18が開弁していると、ピストン21,21が第1ポートP1,P1を超えて後退しても、液室24,24がマスタシリンダ10やストロークシミュレータ25に連通するために充分な減圧が行えなくなる問題がある。 【0040】 しかしながら、図4(C)に示すように、ABSの作動時に遮断弁18を閉弁すれば、ピストン21,21が第1ポートP1,P1を超えて後退しても、ピストン21,21の後退量に見合った減圧を液室24,24に発生させることが可能となり、ABS制御を支障なく行うことができる。」 以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ブレーキペダル11と、ホイールシリンダ15、16と、 前記ブレーキペダル11のペダルストロークに応じて、BBW制御ユニットの指令により制動力を制御する制動力制御装置と、 液圧を発生させるマスタシリンダ10と、 前記電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスタシリンダ10とストロークシミュレータ25との間に設けられた反力許可弁30が開弁されることによって連通されるとともに、前記制動力制御装置が異常であるときには前記反力許可弁30が閉弁され、シリンダ26内にスプリング27で付勢されたピストン28が移動可能に設けられ、前記マスタシリンダ10から供給されたブレーキ液を前記シリンダ26内に蓄えて、前記ピストン28を前記スプリング27に抗して移動させることで、運転者の踏力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているのと同等の操作フィーリングを発生させるストロークシミュレータ25と、 前記マスタシリンダ10に前記ブレーキペダル11を繋ぐ伝達部材とを備えたBBW式ブレーキ装置において、 前記制動力制御装置は、この制動力制御装置が正常であるときには、マスタシリンダ10のピストン33aが補給ポートPaを通過して液室34aにブレーキ液圧が発生する前に、モータシリンダ19F,19Rのピストン21が第1ポートP1を通過して液室24にブレーキ液圧を発生させるBBW式ブレーキ装置。」 (2-2)引用例2 特開2007-196726号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (か)「【技術分野】 【0001】 本発明はブレーキペダル装置に係り、特に、踏力に応じてレバー比特性が切り替えられるブレーキペダル装置の改良に関するものである。 【背景技術】 【0002】 (a) 第1軸心まわりに回動可能に支持部材に配設されて運転者により踏込み操作される操作ペダルと、(b) 前記第1軸心と平行な第2軸心まわりに回動可能に支持部材に配設されるとともに、連動機構を介して前記操作ペダルに機械的に連結され、その操作ペダルの踏込み操作に連動してその第2軸心まわりに回動させられる回動部材と、(c) その回動部材の回動に伴って機械的に押圧または引張させられる出力部材と、を有するブレーキペダル装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、連動機構としてカムが用いられており、そのカムによりレバー比特性の設定に際して高い自由度が得られる。レバー比特性は、モーメント長さの比(レバー比)が操作ペダルの踏込み操作量に応じて変化する変化特性で、言い換えれば操作ペダルの踏込み力(踏力)に対する出力の比率(レバー比に相当)の変化特性である。 【0003】 また、(a) 運転者によって踏込み操作される操作ペダルと、(b) 第1軸心まわりに回動可能に支持部材に配設されるとともに、前記操作ペダルをその第1軸心と平行な第2軸心まわりに相対回動可能に支持している切替レバーと、(c) その切替レバーを前記第1軸心まわりにおける一定の基準位置に機械的に位置決めするとともに、前記操作ペダルの踏込み操作時に前記第2軸心に作用する反力が所定値以上になると、その切替レバーが前記基準位置からその第1軸心まわりに回動することを許容する位置決め装置と、(d) 前記切替レバーの回動に伴って前記第2軸心まわりに相対回動させられる前記操作ペダルを所定の相対位置でその切替レバーと係合させ、その操作ペダルを切替レバーと一体的に前記第1軸心まわりに回動させる係合部材と、を有するブレーキペダル装置が提案されている。特許文献2に記載の装置はその一例で、このようなブレーキペダル装置によれば、ブレーキブースター等の倍力装置の故障などで操作ペダルが強く踏込み操作された場合に、操作ペダルの回動中心が第2軸心から第1軸心へ変化するため、これによりレバー比特性が切り替えられ、レバー比が大きくなるように上記第1軸心および第2軸心の位置関係等を設定することにより、踏力に対する出力の比率が大きくされて一層大きなブレーキ力を発生させることができる。この場合は、レバー比特性そのものが切り替えられるため、前記特許文献1に比較してレバー比を大きく変化させることができる。 【特許文献1】特開平5-185912号公報 【特許文献2】特開2002-347590号公報」 (き)「【0009】 すなわち、前記特許文献2と同様に、踏力が比較的小さい通常の踏込み操作時には、その踏込み操作量(ペダルストローク)に応じてレバー比特性1でレバー比が変化させられ、ブレーキブースター等の倍力装置の故障などで大きな踏力で操作ペダルが踏込み操作された場合には、踏込み操作量に応じてレバー比特性2でレバー比が変化させられるのであり、例えばレバー比特性2で大きなレバー比が得られるように第2軸心および第3軸心の位置関係等を設定することにより、踏力に対する出力の比率が大きくなって大きなブレーキ力を発生させることができる。」 (く)「【0021】 回動部材36は、連動機構として機能する連結リンク38を介して操作ペダル26の上端部に連結されており、操作ペダル26が第1軸20の右まわりに踏込み操作されると、回動部材36は第3軸34の左まわりに機械的に回動させられる。回動部材36の上端部には、第3軸34と平行な連結ピン40の軸心まわりに相対回動可能に前記ブレーキブースター14のオペレーティングロッド42が連結されており、回動部材36の回動に伴って機械的に図の左方向へ押圧されることにより、図示しないマスターシリンダのプッシュロッドを押し込んでブレーキ油圧を発生させる。上記連結リンク38は、その両端部においてそれぞれ操作ペダル26、回動部材36に相対回動可能に連結されており、それ等の連結位置は、回動部材36が図1(a) に示す第3軸34の軸心まわりに回動させられることにより所定のレバー比特性1(図3の実線)が得られるように定められている。また、ブレーキブースター14は倍力装置として機能するもので、例えば負圧等によって助勢することにより、小さな踏力で大きなブレーキ力を発生させることができる。オペレーティングロッド42は、ブレーキブースター16から突き出すように付勢されており、操作ペダル26の踏込み操作が解除されると、その付勢力によって回動部材36は第3軸34の右まわりに戻り回動させられるとともに、操作ペダル26は第1軸20の左まわりに戻り回動させられて図1(a) に示す原位置に保持される。上記オペレーティングロッド42は出力部材に相当する。 【0022】 前記位置決めレバー30にはV字状の係合凹部44が設けられており、切替レバー28の先端部に設けられた係合ピン46と係合させられることにより、その切替レバー28を、前記第2軸22の軸心まわりにおいて図1(a) に示す基準位置に位置決めするようになっている。位置決めレバー30の先端部には、他端部が前記側板18に掛け止められているスプリング(実施例では引張コイルスプリング)48の一端部が掛け止められており、このスプリング48の付勢力で係合凹部44と係合ピン46との係合状態が維持され、切替レバー28が基準位置に節度を持って位置決めされる。 【0023】 しかし、操作ペダル26の踏込み操作に伴って第3軸34に作用する反力が所定の切替荷重以上になると、その荷重により切替レバー28に作用する第2軸22の左まわり方向のモーメントにより、係合ピン46は、係合凹部44との係合でスプリング48の付勢力に抗して位置決めレバー30を支持ピン24の右まわりに回動させつつ、その係合凹部44から抜け出し、切替レバー28が基準位置から左まわりに回動させられるようになる。そして、このように切替レバー28が第2軸22の左まわりに回動させられると、回動部材36は第3軸34の軸心まわりに相対回動させられ、所定の相対位置で図2に示すように第2軸22に当接させられ、それ以後は、操作ペダル26の踏込み操作に伴って切替レバー28と一体的に第2軸22の左まわりに回動させられるようになり、オペレーティングロッド42を左方向へ押圧してブレーキ力を増大させる。このように回動部材36が第2軸22の軸心まわりに回動させられるようになると、前記レバー比特性1とは異なるレバー比特性2(図3の一点鎖線)でレバー比が変化させられるようになる。本実施例では、第2軸22が係合部材としても機能するのである。 【0024】 上記レバー比特性2は、第2軸22の位置や前記連結リンク38の連結位置等によって調整され、本実施例では、図3から明らかなように前記レバー比特性1よりも大きなレバー比が得られるように定められている。連結リンク38の連結位置や、第2軸22、第3軸34の位置等は、レバー比特性1およびレバー比特性2の両方を考慮して設定される。図3の実線および一点鎖線で示すレバー比特性1、レバー比特性2はあくまでも一例で、適宜変更され得るとともに、必ずしも図1?図2に示すブレーキペダル装置10に正確に対応するものではない。」 (2-3)引用例3 再公表特許第2005/051736号(以下、「引用例3」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。なお、全角半角等の文字の大きさ、字体、促音、拗音、句読点などは記載内容を損なわない限りで適宜表記した。 (さ)「【背景技術】 本発明は、ブレーキ装置によりブレーキをかけるために操作者の操作力をペダルで入力するためのブレーキペダル装置の技術分野に関し、特に、ペダル比が変更可能となっているブレーキペダル装置の技術分野に関するものである。 自動車等の車両のブレーキ装置においては、一般にブレーキペダルを踏み込むペダル踏力でブレーキを作動させる場合が多い。 図5は、このようなブレーキペダルによる従来の一般的なブレーキ装置の基本的構成を模式的に示す図である。図5中、1はブレーキ装置、2はブレーキ操作を行うブレーキペダル、2aはレバー、3はブレーキペダル2のペダル踏力を液圧、負圧、あるいは空気圧(正圧)等の動力で倍力して出力する倍力装置、3aは倍力装置3の入力軸、4は倍力装置3の出力で作動してマスタシリンダ圧を発生するタンデム型のマスタシリンダ(以下、MCYともいう)、5、6はMCY4のMCY圧がブレーキ圧として供給されてブレーキ力を発生する第1ブレーキ系統のホイールシリンダ(以下、WCYともいう)、7、8はMCY4のMCY圧がブレーキ圧として供給されてブレーキ力を発生する第2ブレーキ系統のWCY、9はMCY4のリザーバである。 このブレーキ装置1においては、ブレーキペダル2の踏込で倍力装置3の入力軸3aが前進(図5において左行)するとともに倍力装置3がペダル踏力を倍力して出力する。そして、この倍力装置3の出力でMCY4がMCY圧を発生し、このMCY圧が各WCY5、6、7、8にそれぞれ供給されてペダル踏力が倍力された大きな力でブレーキが作動する。 ところで、前述のようなブレーキ装置1においては、一般に、ブレーキペダル2のレバー2aのペダル比(L1+L2)/L1が一定である場合が多い。ここで、L1は、レバー2aの回転中心点と倍力装置3の入力軸3aがレバー2aに連結される連結点との間の距離であり、また、L2は、この連結点とブレーキペダル2の中心点との間の距離である。 このようにペダル比が一定であると、次のような問題がある。 (1) 倍力装置3の倍力失陥時(例えば、動力源の失陥等)にペダル踏力が大きくなってしまう。 (2) 状況によってはペダルストロークが大きくなってフィーリングがよくない場合がある。 (3) 緊急ブレーキ時に、初心者等によっては大きなブレーキ力を発生させることができない場合がある。 (4) 車両衝突時にブレーキペダルが運転者側に大きく移動する場合がある。 (5) W/Cの引きずりを防止して燃費向上を図ろうとすると、ブレーキパッドをブレーキディスクやブレーキドラムから大きく離間させようとする(ブレーキペダル2のロスストロークを考慮する必要があるので、それほど大きく離間させることはできないが)と、その分、ペダルストロークが大きくなってしまう。 そこで、ペダル比を簡単に変えられるようにして、前述の諸問題を解決できるブレーキペダル装置が、特開2002-347590号公報において提案されている。図6は、この特開2002-347590号公報に開示されているブレーキペダル装置を模式的に示し、(a)は図5と同様の正面図、(b)はペダル比変更直後の状態を部分的に示す部分拡大図である。なお、図5に示すブレーキ装置1も特開2002-347590号公報に開示されており、図6(a)および(b)に示すブレーキペダル装置50を備えたブレーキ装置1において図5に示すブレーキ装置1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図6(a)には、図5に示すブレーキ装置1の構成の一部、つまり、MCY4、WCY5、6、7、8、リザーバ9が図示されていないが、これらの構成要素は図6(a)に示すブレーキ装置1も備えていることは言うまでもない。」(第2ページ第33行?第3ページ第29行。なお、行数はページ右側の数字によった。以下同様。) (し)「このように構成された図6(a)および(b)に示すブレーキペダル装置50においては、非作動時は、スプリング40のばね力で係合手段15が被係合部41に係合した状態に保持され、かつストッパ部2a_(8)が第1回動軸11に当接した図6(a)に示す状態になっている。 この非作動状態から、ブレーキペダル2が通常の踏込みで踏み込まれたときは、そのペダル踏力F_(p)が設定値F_(p0)までは到達しない、つまりペダル比変更条件が成立しない。このため、(…略…) 例えば、急ブレーキ等でブレーキペダル2が通常ブレーキ作動時より強く踏み込まれたときは、ペダル踏力F_(p)が設定値F_(p0)以上である、つまりペダル比変更条件が成立する。すると、前述の第2レバー部材2a_(2)による第1レバー部材2a_(1)の回動力が大きいため、図6(b)に示すように係合手段15が被係合部41から脱出して第1レバー部材2a_(1)が第1回動軸11を中心として図6(b)において時計方向に回動するとともに、第2レバー部材2a_(2)が連結軸2a_(7)を中心として同方向に回動する。 このとき、係合手段15は被係合部41のV字状溝の当接面から円弧状部材39の円弧状面39aの当接面へと接触角(具体的には、第1レバー部材2a_(1)と円弧状部材39との接触角)が連続的に変化せず急変する当接面に当接しながら移動する。また、第1レバー部材2a_(1)の回動量が第2レバー部材2a_(2)の回動量より大きいので、ペダル踏み込み開始時に第1回動軸11から若干離れた第2レバー部材2a_(2)のストッパ部2a_(8)に第1回動軸11がすぐに当接し、第1および第2レバー部材2a_(1),2a_(2)が互いにバランス位置となる。その後、第1および第2レバー部材2a_(1),2a_(2)が第1回動軸11を中心に一体に回動する。したがって、ペダル比が変更され、通常時のペダル踏込時より大きなペダル比となる。すなわち、MCY圧はペダル踏力F_(p)が増大するにつれて従来の倍力比より大きな倍力比で増大する、いわゆる逆2段特性を有する。 また、倍力装置3による倍力失陥時にも、ペダル踏力F_(p)が設定値F_(p0)以上であると、同様にペダル比が変更されて大きくなる。したがって、MCY圧がこのペダル比の増大に応じて従来に比べてかなり大きな値で直線的に増大し、ブレーキ力が助勢される。 更に、このブレーキペダル装置50のペダルストローク-ペダル比特性は、係合手段15が被係合部41に係合している状態では、図7(a)に示すように、ペダルストロークの増加に対してペダル比は最初微減した後微増するが、ほぼ一定であるとみなせる特性を呈し、また、係合手段15が被係合部41から離脱した状態では、図7(b)に示すように、ペダルストロークの増加に対してペダル比は増大する特性を呈する。」(第3ページ第46行?第4ページ第36行) (3)対比 本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、後者の「ブレーキペダル11」は前者の「操作子」に相当し、以下同様に、「ホイールシリンダ15、16」は「ブレーキシリンダ」に、「ブレーキペダル11のペダルストローク」は「操作子の操作量または操作力」に、「BBW制御ユニットの指令により制動力を制御する制動力制御装置」は「電気的に制動力を制御可能な電気的制動力制御装置」に、「マスタシリンダ10」は「マスターシリンダ」に、「ピストン28が移動可能に設けられ」は「ピストンが摺動自在に嵌合され」に、「運転者の踏力でディスクブレーキ装置13,14を作動させているのと同等の操作フィーリングを発生させる」は「前記操作子に擬似的な反力を発生させる」に、「ストロークシミュレータ25」は「シミュレータ」に、「BBW式ブレーキ装置」は「制動装置」に、「この制動力制御装置が正常であるときには、マスタシリンダ10のピストン33aが補給ポートPaを通過して液室34aにブレーキ液圧が発生する前に、モータシリンダ19F,19Rのピストン21が第1ポートP1を通過して液室24にブレーキ液圧を発生させる」は「この電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダと遮断されて制動力を制御可能であり」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、 「操作子と、ブレーキシリンダと、 前記操作子の操作量または操作力に応じて、電気的に制動力を制御可能な電気的制動力制御装置と、 液圧を発生させるマスターシリンダと、 前記電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダとシミュレータとの間に設けられた反力許可弁が開弁されることによって連通されるとともに、前記電気的制動力制御装置が異常であるときには前記反力許可弁が閉弁され、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータと、 前記マスターシリンダに前記操作子を繋ぐ伝達部材とを備えた制動装置において、 前記電気的制動力制御装置は、この電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダと遮断されて制動力を制御可能である制動装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明の「伝達部材」は、「前記マスターシリンダに連結される出力部材の出力量と前記操作子の操作量との比を変化可能な機構であり、 前記操作子の操作量の後半領域においては、前記操作量の増加に応じて、前記出力部材の出力量に対する操作量の比が大きくな」るものであるのに対し、 引用例1発明の「伝達部材」は、そのような事項を備えていない点。 「相違点2」 本願補正発明は「前記シミュレータの油蓄積量を前記マスターシリンダから供給される最大供給油量よりも少なくした」のに対し、引用例1発明の「ストロークシミュレータ25」はそのような事項を備えるかどうか、不明である点。 (4)判断 (4-1)相違点1について 引用例2(特に【0003】、【0009】)には、ブレーキブースター等の倍力装置の故障などで操作ペダルが強く踏込み操作された場合に、レバー比特性(操作ペダルの踏込み力に対する出力の比率(レバー比に相当)の変化特性)が切り替えられ、踏力に対する出力の比率が大きくされて一層大きなブレーキ力を発生させることができることが示されている。なお、引用例2の図3のレバー比特性2(一点鎖線)も、若干ではあるが、同様のレバー比特性を示すように描かれている。また、引用例3(特に(さ)(し))には、ペダル比が一定であると、倍力装置3の倍力失陥時(例えば、動力源の失陥等)にペダル踏力が大きくなってしまうという問題があること、及び、倍力装置による倍力失陥時にペダルストロークの増加に対してペダル比が増大する特性を呈するブレーキペダル装置50が示されている。これらは、特に倍力装置の失陥時に、ペダル操作に伴うレバー比特性を大きくして大きな制動力を発生させるものであるが、引用例3に「倍力装置3の倍力失陥時(例えば、動力源の失陥等)に」と記載されていることからも了解されるように、引用例2、3の上記事項ないし技術思想は、各種ブレーキ装置の駆動源の失陥の場合に等しく妥当するものであって、電源の失陥時においても格別異なるところはない。一方、引用例1(特に【0032】)にも、電源の失陥時には、ブレーキペダル11のストロークが不必要に増加して運転者に違和感を与えるのを防止し、マスタシリンダ10が発生したブレーキ液圧がストロークシミュレータ25に吸収されることなくホイールシリンダ15,16に伝達され、高い応答性で制動力を発生させるべきことが示されており、これは、特にレバー比特性を想定したものではないものの、電源失陥時にブレーキペダル11のストロークが不必要に増加するのは好ましくなく、比較的短いストロークで速やかに所要の制動力を発生させるという点で、引用例2、3の上記事項と関連しているということができる。以上を合わせ考えると、引用例1発明に、引用例2、3の上記事項を適用して、相違点1に係る本願補正発明の上記事項に想到することは当業者が容易になし得たものと認められる。 (4-2)相違点2について 引用例1発明の「ストロークシミュレータ25」の油蓄積量をどの程度とするかは、運転者の操作フィーリングについての所要特性、シリンダ26等の形状・寸法にかかる構成の簡素性等を考慮して、適宜設計する事項にすぎず、ストロークシミュレータ25の油蓄積量をマスターシリンダ10から供給される最大の供給油量よりも少なくすることに格別の困難性はない。また、例えば、特開平7-215206号公報(これは、平成24年3月5日付け拒絶理由の引用文献4である。)の「【0055】…この値はストロークシミュレータ9が一杯となるとき、またはその付近の前後のマスターシリンダ圧に相当する。…ここで、ストロークシミュレータ9が既に一杯の油を蓄えているときにはストローク変化は少ないため…」、「【0066】…既にストロークシミュレータ手段が一杯まで液体が満たされているときには…」等の記載からみると、一般に、ストロークシミュレータの油蓄積量をマスターシリンダから供給される最大の供給油量よりも少なくすることは、普通に採用されている構成であって、格別のものではないということもできる。 そして、本願補正発明の効果は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が予測し得たものであって、格別のものではない。 したがって、本願補正発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、平成25年2月15日付け回答書において補正案が提示されているが、レバー比特性については、例えば、引用例3(特に図7(b))に示されている。シミュレータが擬似的な反力を発生させる点は引用例1に記載されているように自明である。上記補正案による補正は格別のものではなく、審決の結論に影響を及ぼすようなものではない。 (5)むすび 本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成24年8月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成24年5月11日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】 操作子と、 ブレーキシリンダと、 前記操作子の操作量または操作力に応じて、電気的に制動力を制御可能な電気的制動力制御装置と、 液圧を発生させるマスターシリンダと、 前記マスターシリンダに連通し、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータと、 前記マスターシリンダに前記操作子を繋ぐ伝達部材とを備えた制動装置において、 前記伝達部材は、前記マスターシリンダに連結される出力部材の出力量と前記操作子の操作量との比を変化可能な機構であり、 前記操作子の操作量の後半領域においては、前記操作量の増加に応じて、前記出力部材の出力量に対する操作量の比が大きくなり、 前記シミュレータの油蓄積量を前記マスターシリンダから供給される最大供給油量よりも少なくしたことを特徴とする制動装置。」 3-1.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について (1)本願発明1 本願発明1は上記のとおりである。 (2)引用例 引用例1?3、及び、その記載事項は上記2.に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1は実質的に、上記2.で検討した本願補正発明の「前記電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダとシミュレータとの間に設けられた反力許可弁が開弁されることによって連通されるとともに、前記電気的制動力制御装置が異常であるときには前記反力許可弁が閉弁され、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータ」を「前記マスターシリンダに連通し、シリンダ内にスプリングで付勢されたピストンが摺動自在に嵌合され、前記マスターシリンダから供給されたブレーキ液を前記シリンダ内に蓄えて、前記ピストンを前記スプリングに抗して移動させることで、前記操作子に擬似的な反力を発生させるシミュレータ」に拡張するとともに、「前記電気的制動力制御装置は、この電気的制動力制御装置が正常であるときには前記マスターシリンダと遮断されて制動力を制御可能であり、」という事項を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、実質的に同様の理由により、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび したがって、本願発明1は引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.結語 以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-04-01 |
結審通知日 | 2013-04-02 |
審決日 | 2013-04-15 |
出願番号 | 特願2007-265914(P2007-265914) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60T)
P 1 8・ 121- Z (B60T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩澤 正和、鶴江 陽介 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 窪田 治彦 |
発明の名称 | 制動装置 |
代理人 | 下田 容一郎 |
代理人 | 野崎 俊剛 |
代理人 | 下田 憲雅 |
代理人 | 瀧澤 匡則 |
代理人 | 住吉 勝彦 |