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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60L |
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管理番号 | 1275096 |
審判番号 | 不服2012-2013 |
総通号数 | 163 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-02 |
確定日 | 2013-06-05 |
事件の表示 | 特願2005-223147「車両におけるバッテリー環境の制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月16日出願公開、特開2006- 50892〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年8月1日(パリ条約による優先権主張2004年7月30日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年9月15日付けで拒絶理由が通知され、平成22年12月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年6月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成23年8月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年10月7日付けで上記平成23年8月3日付けの手続補正書による手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、平成24年2月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年5月8日付けで書面による審尋がなされたものである。 第2.平成24年2月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年2月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「 【請求項1】 車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、 車両外部環境から直接空気を受ける空気吸入部と、 上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の空気の移動を推進する第1位置と、空気吸入部とバッテリーとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な切換ドアと、 上記ダクト・システムから車両外部環境への空気流を推進する空気導出部と、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリーを通過させて空気を移動させるファンと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記バッテリーから上記空気導出部への空気の移動を推進する第1位置と、上記バッテリーと上記空気導出部との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な第2ドアと、 上記ダクトシステム内における、上記切換ドアと上記バッテリーとの間に設けられ、該ダクトシステムと協働するバッテリー空調システムと、 少なくとも一つの制御器を含み、上記ファンと上記切換ドアの作動を制御し、バッテリー環境が該バッテリーの温度と関係なく換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記切換ドアを第1位置となるように命令し、上記ファンを作動させ、それにより、上記空気吸入部を通し、上記バッテリーを通過させて、上記空気導出部を通し、空気を移動させる新気モードを行ない、バッテリー環境が換気を必要としていないと判定されるときに、上記切換ドア及び第2ドアをそれぞれ上記第2位置に移動させると共に、上記バッテリー空調システムを通った空気で上記バッテリーを冷却すると共に、バッテリーからの空気を直接上記バッテリー空調システムに戻す、循環モードを行なう制御部とを有する ことを特徴とする車両のバッテリーのための環境制御システム。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) と補正された。 上記補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「環境制御システム」について「ダクト・システムに設けられ、バッテリーから空気導出部への空気の移動を推進する第1位置と、バッテリーと空気導出部との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な第2ドアと、ダクトシステム内における、切換ドアとバッテリーとの間に設けられ、ダクトシステムと協働するバッテリー空調システムとを有する」との限定を付加し、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定する」点について「バッテリーの温度と関係なく」との限定を付加し、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「制御部」について「バッテリー環境が換気を必要としていないと判定されるときに、切換ドア及び第2ドアをそれぞれ第2位置に移動させると共に、バッテリー空調システムを通った空気で上記バッテリーを冷却すると共に、バッテリーからの空気を直接バッテリー空調システムに戻す、循環モードを行なう」との限定を付加する補正を含むものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.-1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-146237号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、車両に搭載されたバッテリの温度を管理するバッテリ温度管理装置に関するもので、走行用の駆動源として内燃機関と電動モータとを備えるハイブリッド自動車に適用して有効である。」(段落【0001】) (イ)「【0018】 【発明の実施の形態】 図1は本実施形態に係るバッテリ温度管理装置の模式図であり、図1中、一点鎖線で囲まれた機器がバッテリ温度管理装置1であり、二点差線で囲まれた部位が車両用空調装置20である。 【0019】 バッテリ温度管理装置1は、走行用電動モータに電力を供給するバッテリ2、バッテリ2を収納するバッテリケース3、バッテリケース3内のうちバッテリ2より空気流れ上流側に配置された冷却器4、バッテリ冷却用空気をバッテリ2に循環させるポンプ手段をなす送風機5、バッテリ2と熱交換を終えた空気を冷却器4の空気流れ上流側に戻す還流ダクト6等からなるものである。 【0020】 また、冷却器4は、低圧冷媒を蒸発させることにより吸熱能力(冷凍能力)を発生させる蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器であり、本実施形態では、車両用空調装置20用の圧縮機21で圧縮された冷媒を減圧器7にて減圧した後、冷却器4に導いて蒸発させ、吸熱した熱を車両用空調装置20用の放熱器22にて車室外空気(大気)中に放熱する。 【0021】 なお、本実施形態では、減圧器7として開度が固定されたキャピラリーチューブやオリフィス等の固定絞りを採用しているが、温度式膨脹弁等のように、冷却器4出口側の冷媒過熱度が所定値となるように絞り開度を可変制御するものであってもよい。 【0022】 電磁弁8は車両用空調装置20から冷却器4に供給される冷媒の通路の連通状態を制御するバルブであり、第1温度センサ9は冷却器4を通過直後の空気温度、つまり冷却器4の温度を検出する温度検出手段であり、第2温度センサ10はバッテリ2と熱交換を終えた空気の温度を検出する温度検出手段である。 【0023】 また、外気導入口11は、バッテリ冷却用空気の循環経路、つまりバッテリケース3に車出外空気を導入する取込口であり、排出口12はバッテリ2と熱交換を終えた空気を車室外(本実施形態では、トランクルーム)に排出するための開口部である。 【0024】 冷却空気切替ドア13は、外気導入口11から車室外空気を取り込んでバッテリ2に供給する場合と外気導入口11を閉じてバッテリケース3及び還流ダクト6からなる循環経路を閉回路として空気を循環させる場合とを切り替える切替手段であり、排出ドア14は排出口12を開閉して、バッテリ2と熱交換を終えた空気を車室外に排出する場合とバッテリ2と熱交換を終えた空気を送風機5の吸入側に戻す場合とを切り替えるものである。 【0025】 そして、第1、2温度センサ9、10の検出温度は電子制御装置に入力されており、送風機5、電磁弁8、冷却空気切替ドア13及び排出ドア14の作動は電子制御装置により制御されている。 【0026】 なお、蒸発器23は、空調ケーシング24内に配置されて車室内に吹き出す空気を冷却する蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器であり、ヒータ25はエンジン等の車両で発生する廃熱を熱源として車室内に吹き出す空気を加熱するものである。 【0027】 また、エアミックスドア26はヒータ25を迂回して流れる冷風とヒータ25を通過する温風との風量割合を調節して室内に吹き出す空気の温度を調節するもので、送風機27は室内に吹き出す空気を送風するものである。 【0028】 減圧器28は蒸発器23に流入する冷媒を減圧するもので、本実施形態では、蒸発器23出口側の冷媒過熱度が所定値となるように絞り開度を可変制御する温度式膨脹弁を採用している。電磁弁29は蒸発器23に供給する冷媒の通路の連通状態を制御するバルブである。 【0029】 なお、本実施形態では、車両用空調措置20は車両前方側に搭載され、バッテリ温度管理装置1は後席側に搭載されており、圧縮機21は走行用電動モータとは別の電動モータにより駆動されている。 【0030】 次に、本実施形態に係るバッテリ温度管理装置の特徴的作動をバッテリ2を冷却する場合を例に述べる。 【0031】 1.再循環冷却モード(図1参照) この冷却モードは、第2温度センサ10の検出温度、つまりバッテリ2と熱交換を終えた空気の温度が車室外空気温度より低い場合に実行されるものである。 【0032】 具体的には、冷却空気切替ドア13にて外気導入口11を閉じ、かつ、排出ドア14にて排出口12を閉じてバッテリケース3及び還流ダクト6からなる循環経路を閉回路として空気を循環させるとともに、電磁弁8を開いて冷却器4で冷凍能力を発生させる。 【0033】 なお、電磁弁8の開度(本実施形態では、ON-OFFのデューティ比)及び送風機5は、第1温度センサ9の検出温度、つまり冷却器4を通過直後の空気温度がバッテリ2を所定温度(例えば、40℃)に保持する必要な温度であって、最悪、フロスト現象が発生しない温度以上となるように制御される。 【0034】 また、図示しない電子制御装置によて必要な冷却風温度を計算し、平均温度が前記所定温度となるように制御してもよい。 【0035】 2.外気循環冷却モード(図2参照) この冷却モードは、第2温度センサ10の検出温度が車室外空気温度より以上の場合に実行されるものである。 【0036】 具体的には、冷却空気切替ドア13にて外気導入口11を開き、かつ、排出ドア14にて排出口12を開いて外気導入口11から車室外空気を取り込んでバッテリ2に供給し、バッテリ2と熱交換を終えた空気を車室外に排出する。 【0037】 なお、電磁弁8の開度、つまり冷却器4の冷却能力は、バッテリ2の発熱量を考量して決定される。すなわち、車出外空気の温度にて十分にバッテリ2を冷却することができるときは電磁弁8を閉じ、車出外空気の温度にてバッテリ2を十分に冷却できないときは、バッテリ2の発熱量に応じて電磁弁8の開度を制御する。 【0038】 因みに、本実施形態では、バッテリ2から放電される電流とバッテリ2の内部抵抗とからバッテリ2の発熱量を推定する。」(段落【0018】ないし【0038】) (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)、(イ)、及び図面の記載から、以下の事項が分かる。 (ウ)外気導入口11から車室外空気を取り込んでいるから、 外気導入口11は、車室外から直接空気を受けることが分かる。 (エ)外気導入口11とバッテリ2との間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムを有することが分かる。 (オ)ダクト・システムに設けられ、外気導入口11とバッテリ2との間の空気の移動を推進する第1位置と、外気導入口11とバッテリ2との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な冷却空気切替ドア13を有することが分かる。 (カ)ダクト・システムから車室外への空気流を推進する排出口12を有することが分かる。 (キ)ダクト・システムと協働し、ダクト・システムの少なくとも一部を通し、バッテリ2を通過させて空気を移動させる送風機5を有することが分かる。 (ク)ダクト・システムに設けられ、バッテリ2から排出口12への空気の移動を推進する第1位置と、バッテリ2と排出口12との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な排出ドア14を有することがわかる。 (ケ)ダクトシステム内における、冷却空気切替ドア13とバッテリ2との間に設けられ、ダクトシステムと協働する冷却器4を有することが分かる。 (コ)バッテリ温度管理装置1において、送風機5、電磁弁8、冷却空気切替ドア13及び排出ドア14の作動は電子制御装置により制御されており、電子制御装置により、バッテリ2と熱交換を終えた空気の温度が車室外空気温度より低い場合には、冷却空気切替ドア13にて外気導入口11を閉じ、かつ、排出ドア14にて排出口12を閉じてバッテリケース3及び還流ダクト6からなる循環経路を閉回路として空気を循環させるとともに、電磁弁8を開いて冷却器4で冷凍能力を発生させる再循環冷却モードが実行され、バッテリ2と熱交換を終えた空気の温度が車室外空気温度より高い場合には、冷却空気切替ドア13にて外気導入口11を開き、かつ、排出ドア14にて排出口12を開いて外気導入口11から車室外空気を取り込んでバッテリ2に供給し、バッテリ2と熱交換を終えた空気を車室外に排出する外気循環冷却モードが実行されるから、 バッテリ温度管理装置1は、少なくとも一つの電子制御装置を含み、送風機5と冷却空気切替ドア13の作動を制御し、バッテリ環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、冷却空気切替ドア13を第1位置となるように命令し、送風機5を作動させ、それにより、外気導入口11を通し、バッテリ2を通過させて、排出口12を通し、空気を移動させる外気循環冷却モードを行ない、バッテリー環境が換気を必要としていないと判定されるときに、冷却空気切替ドア13及び排出ドア14をそれぞれ第2位置に移動させると共に、冷却器4を通った空気でバッテリ2を冷却すると共に、バッテリ2からの空気を直接冷却器4に戻す、再循環冷却モードを行なう電子制御装置とを有することが分かる。 (3)引用発明 上記(1)(ア)(イ)及び図面の記載、並びに、(2)(ウ)ないし(コ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 車両のバッテリ2のためのバッテリ温度管理装置1において、 車室外から直接空気を受ける外気導入口11と、 上記外気導入口11と上記バッテリ2との間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記外気導入口11と上記バッテリ2との間の空気の移動を推進する第1位置と、外気導入口11とバッテリ2との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な冷却空気切替ドア13と、 上記ダクト・システムから車室外への空気流を推進する排出口12と、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリーを通過させて空気を移動させる送風機5と、 上記ダクト・システムに設けられ、上記バッテリ2から上記排出口12への空気の移動を推進する第1位置と、上記バッテリ2と上記排出口12との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な排出ドア14と、 上記ダクトシステム内における、上記冷却空気切替ドア13と上記バッテリ2との間に設けられ、該ダクトシステムと協働する冷却器4と、 少なくとも一つの電子制御装置を含み、上記送風機5と上記冷却空気切替ドア13の作動を制御し、バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記冷却空気切替ドア13を第1位置となるように命令し、上記送風機5を作動させ、それにより、上記外気導入口11を通し、上記バッテリ2を通過させて、上記排出口12を通し、空気を移動させる外気循環冷却モードを行ない、バッテリー環境が換気を必要としていないと判定されるときに、上記冷却空気切替ドア13及び排出ドア14をそれぞれ上記第2位置に移動させると共に、上記冷却器4を通った空気で上記バッテリ2を冷却すると共に、バッテリ2からの空気を直接上記冷却器4に戻す、再循環冷却モードを行なう電子制御装置とを有する 車両のバッテリ2のためのバッテリ温度管理装置1。」 2.-2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-102100号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「【0037】 【発明の実施の形態】(第1実施の形態)以下、本発明による電気自動車用バッテリ温度制御装置の第1実施の形態を図1乃至図8によって説明する。 【0038】図1は本実施の形態によるバッテリ温度制御装置1の概要を模擬的に示す説明図であり、図中符号10は、例えば車体の中央部乃至後部に配設されて複数のバッテリセルからなるバッテリ集合体Bを収納するバッテリケースである。 【0039】バッテリケース10は、遮熱材料によって形成されたボックス状であって、このバッテリケース10のバッテリ集合体Bより上流側にはバッテリケース10内に外気或いは車室内の空気を導入する吸気通路20が設けられる一方、バッテリケース10のバッテリ集合体Bより下流側にはバッテリケース10内の空気を車外或いは車室内に導く排気通路30が設けられている。 【0040】吸気通路20は、主吸通通路21と、車外吸気通路22と、車内吸気通路23を有する一方、排気通路30は主排気通路31と、車外排気通路32と、車内供給通路33を有し、バッテリケース10のバッテリ集合体Bより上流側に主吸気通路21の下流端が接続され、バッテリ集合体Bより下流側に主排気通路31の上流端が接続されている。 【0041】吸気通路20を形成する主吸気通路21の上流端は車外吸気通路22と車内吸気通路23に分岐すると共に、車外吸気通路22の外気吸気口22aは、例えばフレームを有する車体ではサイドフレーム、モノコックの車体ではサイドシル等の閉断面形状の車体部材(図示せず)を介して車両走行に伴う走行風による正圧発生部位でしかも、走行時に塵埃や雨水等の影響が比較的少ない例えば車体前部に開口し、車内吸気通路23の内気吸気口23aは車室内に開口している。 【0042】一方、排気通路30を形成する主排気通路31の下流端は車外排気通路32と車内供給通路33に分岐すると共に、車外排気通路32の車外排気口32aは、車両走行に伴う走行風による負圧発生部位、例えば車体後部において車外に開放されている。また、車内供給通路33の車内供給口33aは車室内に開口している。 【0043】また、車外吸気通路22或いは車内吸気通路23からの空気を選択的に切り換えて主吸気通路21に導入すると共に、主排気通路31からの空気を車外排気通路32或いは車内供給通路33に選択的に切り換える吸排気切換機構40が配設されると共に、主吸気通路21或いは主排気通路31の一方、本実施の形態では主排気通路31にファン49が配設されている。 【0044】吸排気切換機構40は、図2に概要を示すように吸気切換手段である吸気切換シャッタ41と、排気切換手段である排気切換シャッタ42と、これら吸気切換シャッタ41及び排気切換シャッタ42を作動させるシャッタ駆動アクチュエータ44を有している。 【0045】吸気切換シャッタ41は、図2に示すように、主吸気通路21と対向配置される車外吸気通路22と車内吸気通路23との分岐部に、支軸41cによって破線41aで示すように車外吸気通路22を閉鎖して車内吸気通路23を開放する内気導入位置と、実線41bで示すように車外吸気通路22を開放して車内吸気通路23を閉鎖する外気導入位置との間で揺動自在に支持されている。 【0046】排気切換シャッタ42は、主排出通路31と対向配置する車外排出通路32と車内供給通路33との分岐部に上記支軸41cと平行配置された支軸42cによって実線42aで示すように車外排気通路32を閉鎖して車内供給通路33を開放する車内供給位置と、破線42bで示すように車外排気通路32を開放して車内供給通路33を閉鎖する車外排気位置との間で揺動自在に支持されている。 【0047】シャッタ駆動アクチュエータ44は、例えばステップモータ45等のアクチュエータによって等回転角で正逆回転駆動される板状のカム46を有し、カム46には吸気切換シャッタ41に突設されたアーム41dの先端に形成された係合部41eに摺動可能に嵌合する第1スリット47と、排気切換シャッタ42に突設されたアーム42dの先端42eに摺動可能に嵌合する第2スリット48がカム46の回転中心Oを介して略対向して形成されている。 【0048】第1スリット47は、その一端に第1位置47a、該第1位置47aから順に回転中心Oを中心に上記等回転角と略等角で第2位置47b、第3位置47c、及び他端に第4位置47dを有し、第1位置47aと第2位置47bとの間は上記回転中心Oを中心とする円弧状に、第2位置47bと第3位置47cとの間は第2位置43bから第3位置47cに移行するに従って回転中心Oから離間する直線状に、第3位置47cと第4位置47dとの間は上記回転中心Oを中心とする円弧状に各々連続形成されている。 【0049】一方、第2スリット48は、その一端に第1位置48a、該第1位置48aから順に回転中心Oを中心に上記等回転角と略等角で第2位置48b、第3位置48c、及び他端に第4位置48dを有し、第1位置48aと第2位置48bとの間は第1位置48aから第2位置48bに移行するに従って上記回転中心Oに接近する直線状に、第2位置48bと第3位置48cとの間は回転中心Oを中心とする円弧状に、第3位置48bから第3位置48cに移行するに従って回転中心Oから離間する直線状に各々連続形成されている。 【0050】そして、図1に示す外気導入車内供給モードにおいて、吸気切換シャッタ41に突設された係合部41eが第1スリット47の第1位置47aに位置して吸気切換シャッタ41が車内吸気通路23を閉鎖する外気導入位置41bでかつ、排気切換シャッタ42に突設された係合部42eが第2スリット48の第1位置48aに位置して排気切換シャッタ42が車外排出通路32を閉鎖する車内供給位置42aに設定される。 【0051】従って、この外気導入車内供給モードでは、車外吸気通路22から外気が導入されて主吸気通路21を介してバッテリケース10内に供給され、バッテリ集合体Bの各バッテリセル間を通気してバッテリケース10から主排気通路31及び車内供給通路33を介して車室内に導かれる通気経路が形成される。 【0052】図3に示すように、カム46が外気導入車内供給モード位置から上記等角回転した外気導入車外排出モードにおいて、吸気切換シャッタ41に突設された係合部41eが第1スリット47の第2位置47bに位置して吸気切換シャッタ41が車内吸気通路23を閉鎖する外気導入位置42bでかつ、排気切換シャッタ42に突設された係合部42eが第2スリット48の第2位置48bに位置して排気切換シャッタ42が車内供給通路33を閉鎖する車外排出位置42bに設定される。 【0053】この外気導入車外排出モードでは、車外吸気通路22から外気が導入されて主吸気通路21を介してバッテリケース10内に供給され、バッテリ集合体B内を通気してバッテリケース10の下流端から主排気通路31及び車外排出通路32を介して車外に排出される空気通路が形成される。」(段落【0037】ないし【0053】) (イ)「【0058】図6は、上記吸排気切換機構40のシャッタ駆動アクチュエータ44及びファン49を制御する制御回路50の概要を示す制御回路図である。 【0059】符号51は外気温度センサ52、車室内温度センサ53、バッテリ温度センサ54、バッテリ集合体Bからのガスの放出を検出するガスセンサ等のバッテリ異常検出センサ55及びイグニッションスイッチON・OFF検出センサ56等からの各検出信号に基づいて上記シャッタ駆動アクチュエータ44及びファン49の作動を制御するアクチュエータ制御装置であり、シャッタ駆動アクチュエータ44の作動状態はアクチュエータポテンシャルメータ57によって検知されてアクチュエータ制御装置51にフィドバックされる。 【0060】次に、このように構成されたバッテリ温度制御装置1の作動について図7に示すシャッタ制御フローチャート及び図8に示す給排状態説明図に従って説明する。なお、給排状態説明図において○印が対応する通路が開放状態であることを示し、×印は対応する通路が閉鎖状態であることを示している。 【0061】先ず、イグニッションスイッチON・OFF検出センサ56によりイグニッションスイッチ(図示せず)のON・OFFを検出する(ステップS1)。ステップS1でイグニッションスイッチがOFFであると検出される場合、換言すると車両の使用が停止せしめられた際には、アクチュエータ制御装置51によって吸排気切換機構40のステップモータ45の作動によって、カム46を所定量回転させて図3に示す外気導入車外排出モードに切り換えられて吸気切換シャッタ41によって車内吸気通路23を閉鎖し、かつ排気切換シャッタ42によって車内供給通路33を閉鎖した状態に保持し(ステップS2)、開放された車外吸気通路22及び車外排出通路32を介してバッテリケース10内を車外に連通せしめて、車両停止後の熱気や、日射等によるバッテリケース10内の温度上昇による熱気を車外に排出させてバッテリ集合体Bの高温化を防止する。 【0062】一方、ステップS1において、イグニッションスイッチON・OFF検出センサ56によりイグニッションスイッチがONであると検出されるとバッテリ異常検出センサ55によってバッテリ集合体Bの異常の有無が検出される(ステップS3)。 【0063】ステップS3において、異常が検出された場合には、アクチュエータ制御装置51によってステップモータ45を作動させて図3に示す外気導入車外排出モードに切り換えられて吸気切換シャッタ41によって車内吸気通路23を閉鎖し、かつ排気切換シャッタ42によって車内供給通路33を閉鎖し、更にファン49を最大駆動し(ステップS4)、積極的に車外吸気通路32から外気を導入し、かつバッテリケース10内の空気を車外排気通路32から車外に排出してバッテリケース10内を強制的に掃気すると共に、バッテリ集合体Bを冷却せしめてバッテリ集合体Bからのガスの放出を抑制する。 【0064】このバッテリケース10内の強制的な掃気に際し、車室内とバッテリケース10とを連通する車内吸気通路23及び車内供給通路33が、各々吸気切換シャッタ41及び排気切換シャッタ42によって閉鎖されてバッテリ集合体Bから放出されたガスの車室内侵入が阻止されて、車室内の居住環境が維持される。 【0065】一方、ステップS3においてバッテリ異常検出センサ55によるバッテリ集合体Bの異常が検出されない場合、即ちバッテリ集合体Bが正常な状態で作動している場合には、外気温度センサ52及び車室内温度センサ53によって外気温度及び車室内温度が検出されてアクチュエータ制御装置51で外気温度が車室内温度より低いか否かを判断する(ステップS5)。 【0066】ステップS5で外気温度が車室内温度より低いと判断された場合には、バッテリ温度センサ54によって検出されたバッテリ集合体Bのバッテリ温度が基準値より高いか否かを判断する(ステップS6)。 【0067】ステップS6でバッテリ温度が基準値より高いと判断された場合には、バッテリ集合体Bの異常発生の前段階或いは異常発生が懸念されるとして、アクチュエータ制御装置51によってカム46を図3に示す外気導入車外排出モードに切り換えて吸気切換シャッタ41によって車内吸気通路23を閉鎖し、かつ排気切換シャッタ42によって車内供給通路33を閉鎖し(ステップS7)、比較的温度の低い外気を車外吸気通路32から導入してバッテリケース10内のバッテリ集合体Bを冷却し、かつ車外排気通路32から車外に排出する。」(段落【0058】ないし【0067】) (ウ)「【0118】更に、図21に示すバッテリ保温モードでは、主吸気通路遮蔽シャッタ61に突設された係合部61eが第3スリット65の第3位置65cに保持されて、主吸気通路遮蔽シャッタ61が主吸気通路遮蔽位置61aに位置して主吸気通路21を閉鎖すると共にバイパス通路38の開口端部38aを開放し、かつ主排気通路遮蔽シャッタ62に突設された係合部62eが第4スリット66の第3位置66cに保持されて主排気通路遮蔽シャッタ62が主排気通路遮蔽位置62aに位置して主排気通路31を閉鎖すると共にバイパス通路38の開口端部38bを開放する。 【0119】次にこのように構成されたバッテリ温度制御装置1の作動について図22に示す遮蔽シャッタ制御フローチャートに従って説明する。 【0120】本実施の形態において、イグニッションスイッチがONである車両使用状態における各モードにおいてはバイパス通路38の各開口端部38a及び38bは各々主吸気通路遮蔽シャッタ61及び主排気通路遮蔽シャッタ62によって閉鎖され、各部の作動は上記第2実施の形態と同一であるのでその作動及び作用についての説明は省略し、イグニッションスイッチがOFF、換言すると車両が不使用状態について説明する。 【0121】先ず、イグニッションスイッチスイッチON・OFF検出センサ56によりイグニッションスイッチのON・OFFを状態検出し(ステップS31)、イグニッションスイッチのOFFを検出した際、バッテリ温度センサ54によりバッテリ集合体Bのバッテリ温度が適温以下か否か検出される(ステップS32)。 【0122】ステップS32でバッテリ温度が適温より高い場合には、図18に示す外気導入車外排出モードに切り換えて、吸気切換シャッタ41により車内吸気通路23を閉鎖する外気導入位置41bに切り換えると共に、排気切換シャッタ42により車内供給通路33を閉鎖する車外排出位置42bに切り換えて、バッテリケース10内を開放された車外吸気通路22及び車外排出通路32によって車外に連通せしめる(ステップS33)。 【0123】この外気導入車外排出モードにおいて、バッテリケース10内を開放された車外吸気通路22及び車外排出通路32によって車外に連通せしめられて、車両停止後の熱気や、日射等によるバッテリケース10内の温度上昇による熱気の車外排出を促進させてバッテリケース10内のバッテリ集合体Bが高温化するのを防止する。 【0124】一方、ステップS32でバッテリ温度が略適温以下の場合には、図21に示すようにアクチュエータ制御装置51によって吸排気切換機構30のステップモータ45を作動させて図22に示すバッテリ保温モードに切り換えて、主吸気通路遮蔽シャッタ61によって主吸気通路21を閉鎖すると共にバイパス通路38の開口端部38aを開放し、一方、主排気通路遮蔽シャッタ62によって主排気通路31を閉鎖すると共にバイパス通路38の開口端部38bを開放し、更にファン49を作動せしめす(ステップS34)。 【0125】このバッテリ保温モードにおいては、主吸入通路21の上流端近傍及び主排気通路31の下流端近傍が各々主吸気通路遮蔽シャッタ61及び主排気通路遮蔽シャッタ62によって閉鎖されると共に、バイパス通路38によって主吸気通路21と主排気通路31が連通せしめられることによって、バッテリケース10から主排気通路31、バイパス通路38、主吸気通路21を経由して再びバッテリケース10至る循環通路が形成されて、ファン49によって循環通路を循環する空気流によってバッテリケース10内の温度ムラを低減させてバッテリ集合体Bの各バッテリ本体間の温度ムラを低減させ、しかる後、ファン49を停止せしめる。 【0126】この状態では主吸入通路21及び主排気通路31の各上流端及び下流端が各々主吸気通路遮蔽シャッタ61及び主排気通路遮蔽シャッタ62によって閉鎖され、かつ車外吸気通路22及び車外排気通路33が各々吸気切換シャッタ41及び排気切換シャッタ42によって閉鎖されて、上記第2実施の形態と同様に、バッテリ集合体Bを収納するバッテリケース10の通気が遮断されてバッテリ保温状態となる。 【0127】従って、本実施の形態によると、上記第2実施の形態に加え、バッテリ集合体Bが略適温時において、バッテリケース10から主排気通路31、バイパス通路38、主吸気通路21を経由して再びバッテリケース10至る循環経路が形成され、ファン49によって循環経路を循環する空気流によってバッテリケース10内の温度ムラを低減が得られ、複数のバッテリセルが集合するバッテリ集合体Bの各バッテリセル間の温度ムラ、特に主吸気通路21や主排気通路31近傍に発生するバッテリセル間の温度ムラの低減が得られて各バッテリセル相互の劣化が均一になる。 【0128】この結果、特定のバッテリセルだけの劣化が進むことによる、バッテリ集合体B全体の性能低下や機能損失に伴うバッテリ集合体B全体の交換等の損失が回避され、かつ各バッテリセルの温度差が回避されることから、少ない数のバッテリ温度センサでも正確なバッテリ温度測定が可能になり、全体としての性能向上及びバッテリ集合体の寿命向上が得られる。」(段落【0118】ないし【0128】) (2)引用文献2記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)、及び図面の記載から、以下の事項が分かる。 (エ)図21を参照すると、バッテリ集合体Bの上流側には、外気吸気口22aから外気を導入する主吸気通路21が設けられ、バッテリ集合体Bの下流側には、車両走行に伴う走行風による負圧発生部位、例えば車体後部において車外に開放されている車外排気口32aから空気を車外に導く主排気通路31及び車外排気通路32が設けられ、主吸気通路21と主排気通路31とを連通するバイパス通路38が設けられているから、 外気吸気口22aとバッテリ集合体Bとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムを有することが分かる。 (オ)ダクト・システムに設けられ、外気吸気口22aとバッテリ集合体Bとの間の空気の移動を推進する第1位置と、外気吸気口22aとバッテリ集合体Bとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な吸気切替シャッタ41を有することが分かる。 (カ)ダクト・システムから車外への空気流を推進する車外排気口32aを有することが分かる。 (キ)ダクト・システムと協働し、ダクト・システムの少なくとも一部を通し、バッテリ集合体Bを通過させて空気を移動させるファン49を有することが分かる。 (ク)バッテリ温度制御装置において、バッテリ異常検出センサ55によってバッテリ集合体Bの異常が検出された場合には、アクチュエータ制御装置51が吸気切換シャッタ41により外気導入車外排出モードに切り換え、更にファン49を最大駆動し、積極的に車外から外気を導入し、かつバッテリケース内の空気を車外に排出してバッテリケース内を強制的に掃気すると共に、バッテリ集合体Bを冷却せしめてバッテリ集合体Bからのガスの放出を抑制するから、 バッテリ温度制御装置は、少なくとも一つのアクチュエータ制御装置51を含み、ファン49と吸気切替シャッタ41の作動を制御し、バッテリー環境がバッテリ集合体Bの温度に関係なく換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、吸気切替シャッタ41を第1位置となるように命令し、ファン49を作動させ、それにより、外気吸気口22aを通し、バッテリ集合体Bを通過させて、車外排気口32aを通し、空気を移動させる外気導入車外排出モードを行なうアクチュエータ制御装置51とを有することが分かる。 (3)引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術 上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図面の記載、並びに、(2)(エ)ないし(ク)から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された発明」という。)が記載されているといえる。 「 車両のバッテリ集合体Bのためのバッテリ温度制御装置において、 車外から直接空気を受ける外気吸気口22aと、 上記外気吸気口22aと上記バッテリ集合体Bとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システム と、 上記ダクト・システムに設けられ、上記外気吸気口22aと上記バッテリ集合体Bとの間の空気の移動を推進する第1位置と、外気吸気口22aとバッテリ集合体Bとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な吸気切替シャッタ41と、 上記ダクト・システムから車外への空気流を推進する車外排気口32aと、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリ集合体Bを通過させて空気を移動させるファン49と、 少なくとも一つのアクチュエータ制御装置51を含み、上記ファン49と上記吸気切替シャッタ41の作動を制御し、バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記吸気切替シャッタ41を第1位置となるように命令し、上記ファン49を作動させ、それにより、上記外気吸気口22aを通し、上記バッテリ集合体Bを通過させて、上記車外排気口32aを通し、空気を移動させる外気導入車外排出モードを行なうアクチュエータ制御装置51とを有する 車両のバッテリ集合体Bのためのバッテリ温度制御装置。」 また、引用文献2には、以下の技術が記載されている。 「車両のバッテリ集合体Bのためのバッテリ温度制御装置において、車外から直接空気を受ける外気吸気口22aと、ダクト・システムから車外への空気流を推進する車外排気口32aとを有する技術。」(以下、「引用文献2に記載された技術1」という。) 「車両のバッテリ集合体Bのためのバッテリ温度制御装置において、バッテリー環境がバッテリ集合体Bの温度と関係なく換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、外気吸気口22aを通し、バッテリ集合体Bを通過させて、車外排気口32aを通し、空気を移動させる外気導入車外排出モードを行なうという技術。」(以下、「引用文献2に記載された技術2」という。) 2.-3 対比・判断 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明における「バッテリ2」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「バッテリー」に相当し、以下同様に、「バッテリ温度管理装置1」は「環境制御システム」に、「外気導入口11」は「空気吸入部」に、「冷却空気切替ドア13」は「切換ドア」に、「排出口12」は「空気導出部」に、「送風機5」は「ファン」に、「排出ドア14」は「第2ドア」に、「冷却器4」は「バッテリー空調システム」に、「電子制御装置」は「制御器」及び「制御部」のそれぞれに、「外気循環冷却モード」は「新気モード」に、「再循環冷却モード」は「循環モード」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「車室外」と本願補正発明における「車両外部環境」とは、「車室の外」という概念において共通する。 したがって、両者は、 「 車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、 車室の外から直接空気を受ける空気吸入部と、 上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の空気の移動を推進する第1位置と、空気吸入部とバッテリーとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な切換ドアと、 上記ダクト・システムから車室の外への空気流を推進する空気導出部と、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリーを通過させて空気を移動させるファンと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記バッテリーから上記空気導出部への空気の移動を推進する第1位置と、上記バッテリーと上記空気導出部との間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な第2ドアと、 上記ダクトシステム内における、上記切換ドアと上記バッテリーとの間に設けられ、該ダクトシステムと協働するバッテリー空調システムと、 少なくとも一つの制御器を含み、上記ファンと上記切換ドアの作動を制御し、バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記切換ドアを第1位置となるように命令し、上記ファンを作動させ、それにより、上記空気吸入部を通し、上記バッテリーを通過させて、上記空気導出部を通し、空気を移動させる新気モードを行ない、バッテリー環境が換気を必要としていないと判定されるときに、上記切換ドア及び第2ドアをそれぞれ上記第2位置に移動させると共に、上記バッテリー空調システムを通った空気で上記バッテリーを冷却すると共に、バッテリーからの空気を直接上記バッテリー空調システムに戻す、循環モードを行なう制御部とを有する 車両のバッテリーのための環境制御システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)空気吸入部及び空気導出部について、本願補正発明においては、車両外部環境から直接空気を受け、車両外部環境へ導出するのに対して、引用発明においては、車室外から直接空気を受け、車室外へ導出するものの、車室外が車両外部環境であるか否かが不明な点(以下、相違点1という。)。 (2)バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定するに際し、本願補正発明においては、バッテリーの温度と関係なく換気を必要としているか否かを判定するのに対して、引用発明においては、バッテリーの温度を直接測定して換気の必要性を判断しているものではないものの、バッテリーの温度と全く関係なく換気の必要性を判定していることは特定されていない点(以下、相違点2という。)。 相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用文献2に記載された技術1における「バッテリ集合体B」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「バッテリー」に相当し、以下同様に「バッテリ温度制御装置」は「環境制御システム」に、「車外」は「車両外部環境」に、「外気吸気口22a」は「空気吸入部」に、「車外排気口32a」は「空気導出部」に、それぞれ相当するから、引用文献2に記載された技術1を本願補正発明の用語を用いて言い換えれば、「車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、車両外部環境から直接空気を受ける空気吸入部と、ダクト・システムから車両外部環境への空気流を推進する空気導出部とを有する技術。」となる。 そして、引用発明と引用文献2に記載された技術1は、いずれも車両のバッテリーのための環境制御システムという同一の技術分野に属しているとともに、引用発明のバッテリーにおいても、バッテリーからのガスの放出等のバッテリー異常が発生すること及び、その際にバッテリー周辺の空気を車両外部環境に排出することは当然に考慮されることであるので、引用発明に引用文献2に記載された技術1を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 (2)相違点2について 引用文献2に記載された技術2における「バッテリ集合体B」は、その機能及び構成からみて、本願補正発明における「バッテリー」に相当し、以下同様に「バッテリ温度制御装置」は「環境制御システム」に、「外気吸気口22a」は「空気吸入部」に、「車外排気口32a」は「空気導出部」に、「外気導入車外排出モード」は「新気モード」に、それぞれ相当するから、引用文献2に記載された技術2を本願補正発明の用語を用いて言い換えれば、「車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、バッテリー環境がバッテリーの温度と関係なく換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、空気吸入部を通し、バッテリーを通過させて、空気導出部を通し、空気を移動させる新気モードを行なうという技術。」となる。 そして、引用発明と引用文献2に記載された技術2は、いずれも車両のバッテリーのための環境制御システムという同一の技術分野に属しているとともに、引用発明のバッテリーにおいても、バッテリーからのガスの放出等のバッテリー異常が発生すること及び、その際にバッテリー周辺の空気を車両外部環境に排出することは当然に考慮されることであるので、引用発明に引用文献2に記載された技術2を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用発明、引用文献2に記載された技術1及び引用文献2に記載された技術2から予想される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上から、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術1及び引用文献2に記載された技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2.-4 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成24年2月2日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月15日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書、並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、 車両外部環境から直接空気を受ける空気吸入部と、 上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の空気の移動を推進する第1位置と、空気吸入部とバッテリーとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な切換ドアと、 上記ダクト・システムから車両外部環境への空気流を推進する空気導出部と、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリーを通過させて空気を移動させるファンと、 少なくとも一つの制御器を含み、上記ファンと上記切換ドアの作動を制御し、バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記切換ドアを第1位置となるように命令し、上記ファンを作動させ、それにより、上記空気吸入部を通し、上記バッテリーを通過させて、上記空気導出部を通し、空気を移動させる新気モードを行なう制御部とを有する ことを特徴とする車両のバッテリーのための環境制御システム。」 2.引用文献の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2001-102100号公報)記載の発明(引用文献2に記載された発明)は、第2.の[理由]2.-2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明と引用文献2に記載された発明とを比較すると、引用文献2に記載された発明における「バッテリ集合体B」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「バッテリー」に相当し、以下同様に、「バッテリ温度制御装置」は「環境制御システム」に、「車外」は「車両外部環境」に、「外気吸気口22a」は「空気吸入部」に、「吸気切替シャッタ41」は「切換ドア」に、「車外排気口32a」は「空気導出部」に、「ファン49」は「ファン」に、「アクチュエータ制御装置51」は「制御器」及び「制御部」のそれぞれに、「外気導入車外排出モード」は「新気モード」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は、 「 車両のバッテリーのための環境制御システムにおいて、 車両外部環境から直接空気を受ける空気吸入部と、 上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の連通を車室内を経由せずに行なうダクト・システムと、 上記ダクト・システムに設けられ、上記空気吸入部と上記バッテリーとの間の空気の移動を推進する第1位置と、空気吸入部とバッテリーとの間の空気の移動を禁止する第2位置との間で移動可能な切換ドアと、 上記ダクト・システムから車両外部環境への空気流を推進する空気導出部と、 上記ダクト・システムと協働し、該ダクト・システムの少なくとも一部を通し、上記バッテリーを通過させて空気を移動させるファンと、 少なくとも一つの制御器を含み、上記ファンと上記切換ドアの作動を制御し、バッテリー環境が換気を必要としているか否かを判定すると共に、バッテリー環境が換気を必要としていると判定されるとき、上記切換ドアを第1位置となるように命令し、上記ファンを作動させ、それにより、上記空気吸入部を通し、上記バッテリーを通過させて、上記空気導出部を通し、空気を移動させる新気モードを行なう制御部とを有する 車両のバッテリーのための環境制御システム。」 で一致し、両者の間に構成上の差異は存在しない。 したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるといわざるを得ない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-12-18 |
結審通知日 | 2012-12-25 |
審決日 | 2013-01-22 |
出願番号 | 特願2005-223147(P2005-223147) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60L)
P 1 8・ 575- Z (B60L) P 1 8・ 113- Z (B60L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊地 牧子 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
川口 真一 藤井 昇 |
発明の名称 | 車両におけるバッテリー環境の制御システム |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |