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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1275102
審判番号 不服2012-11750  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-22 
確定日 2013-06-05 
事件の表示 特願2006- 69587「パネルへのテープパッケージの取付け構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 1日出願公開、特開2007- 53331〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成18年3月14日(パリ条約による優先権主張2005年8月12日,韓国)の出願であって,平成24年3月1日付で拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由の一つは,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開平11-271795号公報
2.特開平4-342148号公報
3.実願平3-003671号(実開平4-99835号)のマイクロフィルム
4.特開平4-196555号公報」

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成24年6月22日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「角を面取りした箇所を有するパネルに取り付けられるテープパッケージの取付け構造であって,
活性面に電極バンプが形成された半導体チップと,
前記半導体チップが前記電極バンプを介して一面にボンディングされるテープ配線基板と,
前記半導体チップと前記テープ配線基板とのボンディングされた部分を保護する成形樹脂と,を備え,
前記テープ配線基板は,
チップ実装領域及び屈曲部を有するベースフィルムと,
前記ベースフィルムに形成された配線パターンであって,前記ベースフィルムの一側から前記チップ実装領域に延びている入力配線パターンと,ベースフィルムの他側から前記チップ実装領域に延びている出力配線パターンとを有する配線パターンと,
前記配線パターン上に形成され,前記入出力配線パターンの各々の端部を露出させる保護層と,
前記屈曲部に加えられる機械的ストレスを分散させるために,前記ベースフィルムの屈曲部に形成される孔と,を備え,
前記テープ配線基板に形成された前記屈曲部の孔は,被取付部材となるパネルの角を面取りした箇所に対応して配置されることを特徴とするパネルへのテープパッケージの取付け構造。」

なお,平成24年6月22日付けでなされた補正は,明細書(発明の名称)及び特許請求の範囲を対象とするもので,各請求項について,「テープパッケージ」に関する発明から「パネルへのテープパッケージの取付け構造」に関する発明に変更するものであるが,請求人が平成24年10月30日付け回答書において「この補正は,拒絶査定の〔備考〕に示される“本願発明は『テープキャリアパッケージ』の発明であって,パネルがどのような構造を有しているのか,当該テープキャリアパッケージを見ても不明である”とのご指摘に基づき行ったものであり,特許法第17条の2第4項第4号の『明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)』に該当し」と主張していることにかんがみ,特許請求の範囲の補正は,明りようでない記載の釈明を目的とするものであると解することとする。

2.刊行物記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-342148号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0007】次に,このTAB法による半導体素子である集積回路12の接続を図8を参照して説明する。
【0008】まず,ILB(Inner Lead Bonding)による接続を説明する。この集積回路12は,電極端子13上にチタン(Ti),ニッケル(Ni),パラジウム(Pd),金(Au)が順次積層されている。そして,リード2の表面層9と,電極端子13とを当接させ,450?500℃に加熱し,200?1000kg/cm^(2),すなわち100μm×100μmの1電極端子13当たり20?100gの圧力を加えて,金錫共晶により接合するものである。
【0009】次に,OLB(Outer Lead Bonding)による接続を説明する。このOLBは,集積回路12を接合したテープキャリアを,液晶テレビなどの電化製品や,各種機器の基板15に組み込むために適当な大きさに切断し,液晶の注入されたセルなどに,異方性導電フィルム16を用いて接続する。すなわち,50℃?150℃に加熱し,1?10kg/cm^(2)の圧力を加え,異方性導電フィルム16を仮圧着し,さらに,液晶セルとテープキャリアの電極端子の位置合わせをして,50?200℃に加熱し,10?30kg/cm^(2)の圧力を15?30秒間加えて圧着する。
【0010】また,通常,回路基板は液晶セルより3?5cm程度大きいが,近年額縁を狭くするために,図7および図8に示すように,テープキャリアを途中で折り曲げて,より小さな回路基板に接続する,いわゆる折曲げTAB法が用いられるようになってきている。このように,折曲げTAB法を用いれば,小形化,高密度化が図れる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記折曲げTAB法の場合,図5に示すように折曲部6の折り曲げ用の開口7を形成し,図8に示すようにリード2のみで折り曲げるので,リード2には,開口7の両側部で応力が集中して破損しやすく,一方,リード2は,はだかの状態にあるので,断線または短絡のおそれがある問題を有している。
【0012】また,折曲部6のベースフィルム1にハーフエッチング処理や研磨処理を施すことにより,折曲部6のベースフィルム1の厚さを薄くして折り曲げ性を向上させることも考えられるが,折曲部6全体を均一に薄くすることは,非常に難しい。
【0013】本発明は,上記問題点に鑑みなされたもので,断線,短絡を生じにくく高信頼性の,折曲げが容易なテープキャリアを提供することを目的とする。」
・「【0016】
【作用】本発明は,折曲部にて折り曲げられるテープキャリアの折曲部に,リードが形成されていない部分のベースフィルムに開口を形成したため,ベースキャリアの折り曲げは容易になり,また,リードはベースフィルムによって補強された構造となっているため,断線しにくいとともに,短絡しにくい。」
・「【0019】図1および図2に示すTAB用テープキャリアは接着層を有さない2層タイプで,ポリイミドやポリエステルなどのプラスティックフィルムのベースフィルム1上には,錫(Sn)メッキされた箔状の銅(Cu)のリード2のパターンが形成されている。また,このベースフィルム1には,送り用のパーフォレーション3,半導体素子が取り付けられるデバイスホール4,位置合わせ用の開口5,折曲部6に形成する折曲用の開口21などの必要な開口が形成されている。
【0020】この折曲用の開口21は,折曲部6のリード2の長手方向に沿って平行に,リード2が形成されていない部分にリード2を露出しないように,リード2の両側にスリット状に形成されている。」
・「【0023】また,図3および図4は,他の実施例で,図1および図2に示すスリット状の開口21に代えて,円形の開口22を折曲部6のリード2の周囲に多数形成したものである。」
・従来例の平面図である図5を参照すると,テープキャリアは,一端(右端)からデバイスホール4に向けて延びる複数のリード2と,他端(左端)からデバイスホール4に向けて延びる複数のリード2をベースフィルム1上に有することが看てとれる。
・従来例の断面図である図8を参照すると,ベースフィルム1の右端からまっすぐに延びるリード2は,その左端側において集積回路12の一つの電極端子13に接合されるとともに,その右端側において異方性導電フィルム16により基板15に接続されることが看てとれ,また,ベースフィルム1とともにU字状に折り曲げられたリード2は,一端側において集積回路12の他の一つの電極端子13に接合されるとともに,他端側において異方性導電フィルム16により基板15に接続されることが看てとれる。さらに,U字状に折り曲げられたリード2は,折曲部の内側が基板15の端縁に対向していることが看てとれる。

図1ないし図4に示される実施例は,折曲部6におけるリード2が形成されていない部分のベースフィルム1にスリットまたは円形の開口が形成されている点を除けば,図5ないし図8に示される従来例と比較して特に異なるところはないものと解される。
以上を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「ベースフィルム1上にリード2のパターンが形成されたテープキャリアをU字状に折り曲げて集積回路12を基板15に接続した構造であって,ベースフィルム1の一端から集積回路12に向かってまっすぐに延びるリード2と,ベースフィルム1の他端から集積回路12に向かって延び,かつ,テープキャリアの折曲部6においてベースフィルム1とともにU字状に折り曲げられたリード2とを有し,まっすぐに延びるリード2は,一端側において集積回路12の一つの電極端子13に接合されるとともに,他端側において異方性導電フィルム16を介して基板15に接続され,U字状に折り曲げられたリード2は,一端側において集積回路12の他の一つの電極端子13に接合されるとともに,他端側において異方性導電フィルム16を介して基板15に接続され,折曲部6の内側が基板15の端縁に対向しており,折曲部6におけるリード2が形成されていない部分のベースフィルム1にスリットまたは円形の開口が形成されている構造。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-271795号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0004】上述した液晶表示装置においては,電極パターンとして利用される導体箔(主として銅箔)を絶縁フィルムに接着したシート状配線媒体であるキャリアテープを用いるTCP(テープ・キャリア・パッケージ)手法により実装された駆動回路素子(一般には,集積回路であり以下駆動ICと示す)と液晶パネルのTFTとが接続されることで,TCP(TCP手法により駆動ICとキャリアテープとが接続された)部分の外部の回路系から,液晶パネルの駆動に要求される信号の受け渡しが可能となる。なお,駆動ICは,TCP部分の導体箔を所定の形状に折り曲げることにより,ガラス基板の所定位置あるいは液晶表示装置を構成する筐体の所定位置に固定される。
【0005】詳細には,駆動IC1101は,図9に示すように,絶縁性のフィルム(ベースフィルム)1111の一方の面であって,接着層1112を介して導体(銅箔)パターン1113が接着されている側の面に,固定される。このとき,駆動IC1101の所定の位置(背面側)に設けられたバンプ1102と銅箔パターン1113とを接続することにより,駆動IC1101は,図示しない外部の回路系と接続される。なお,導体パターン1113の背面(ベースフィルム1111と反対の側)には,ソルダーレジスト層1114が形成される。また,駆動IC1101の周りは,封止樹脂1115によりモールドされる。」
・「【0021】図3は,図1に示した液晶表示装置のパネル駆動回路部の駆動ICのマウントの様子を説明する概略図である。図3に示されるように,駆動IC11は,絶縁性のベースフィルム21の一方の面であって,接着層22を介して導体(銅箔)パターン23が接着されている側の面にマウントされる。このとき,駆動IC11の所定の位置(背面側)に設けられたバンプ12と銅箔パターン23とを接続することにより,駆動IC11は,図示しない外部の回路系と接続される。なお,導体パターン23の背面すなわちベースフィルム21と反対の側の面には,ソルダーレジスト層24が形成される。また,駆動IC11の周りは,封止樹脂25によりモールドされる。」
・図9を参照すると,ソルダーレジスト層1114は導体パターン1113の端部を露出させていることが看てとれる。

(3)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平3-3671号(実開平4-99835号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0003】
即ち,従来のTAB方式のICは,図3に示すように構成され,フィルム1の一面にICチップ2が設けられ,他面にこのICチップ2が接続される複数のインナーリード(図では見えない)が形成され,更にフィルム1の両端にそれぞれインナーリードが接続される入力側アウターリード3と出力側アウターリード4が設けられており,折り曲げ可能となっている。使用時には入力側アウターリード3にPCB(Printed Circuit Board)から電源電圧,ブロック信号,データ信号が入力される。出力側アウターリード4には,液晶セルの電源端子にACF(Anisotropic Conductive Film)等で接続され,液晶セルに駆動信号を供給する。」
・「【0011】
この考案によるTAB方式のICは図1及び図2に示すように構成され,図2は図1の要部を拡大して裏面側から見たもので,従来例(図3及び図5)と同一箇所は同一符号を付すことにする。
【0012】
即ち,フィルム1の一面にICチップ2が設けられ,他面にこのICチップ2が接続される複数のインナーリード9が形成され,フィルム1の両端にそれぞれインナーリード9が接続される入力側アウターリード3と出力側アウターリード4が設けられており,折り曲げ可能となっている。そして,この実施例では,更にフィルム1の折り曲げ予定箇所のうちインナーリード9が存在しない部分に,ミシン目状の円形の孔10が設けられている。」

(4)原査定において周知技術を示す例として提示され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-302914号公報(以下「引用例4」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0007】図7および図8に,従来の液晶表示装置600Aおよび600Bにおける液晶パネルとフレキシブル配線板620との接続構造を模式的に示す。図7および図8に示したように,液晶パネルのガラス基板610上の配線パターン(配線層)612と,フレキシブル配線板620の配線パターン(配線層)622とは,ガラス基板610の端部とフレキシブル配線板620の端部との間に設けられたACF630によって電気的に接続されている。
【0008】ガラス基板610の端部(分断面)には,フレキシブル配線板620がガラス基板610の端部に接触することによる配線パターン622の断線を防ぐため,面取りが施されている(Cカット形状)。フラットパネルディスプレイのモジュールサイズの小型化に伴い,フレキシブル配線板620はガラス基板610の分断面近傍で折り曲げられて配置されることが多く,ガラス基板610の面取り工程を省略すると,フレキシブル配線板620の配線パターン622の断線が多発する。
【0009】図9を参照しながら,従来の液晶表示装置600Aおよび600Bにおける面取り工程およびフレキシブル配線板620の接続工程を説明する。
【0010】まず,液晶パネルの完成後,液晶パネルのガラス基板610を分断し,次に,ガラス基板610の面取りを行う。続いて,ガラス基板610の面取り後洗浄を行い,面取り検査を行う。その後,フレキシブル配線板620にACF630を仮接着し,最後に,液晶パネルとフレキシブル配線板620とをACF630を用いて接続する。」

(5)同じく原査定において周知技術を示す例として提示され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-358026号公報(以下「引用例5」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
・「【0099】本実施の形態の液晶モジュール30は,図7に示すように,前記実施の形態1における図2に示した液晶モジュール10において,前記端部角2bに面取り部32bが施された下ガラス基板32を有する液晶パネル11Aを液晶パネル11に代えて用いたものとなっている。
【0100】そして,本実施の形態においても,フレキシブル配線板20におけるソルダーレジスト23は,下ガラス基板32の上面の内側(面取り部32bより内側)にまで乗り上げている。なお,異方性導電接着剤12Aは,異方性導電接着剤12と異なり,パネル電極端子3だけでなく,この面取り部32bの上端縁まで塗布されている点を除いて異方性導電接着剤12と同一の構成を有している。
【0101】上記の構成の液晶モジュール30では,フレキシブル配線板20をこの下ガラス基板32の面取り部32bの部分で折曲しても,基材21のCu(銅)箔パターン22が面取り部32bに直接当接することがなく,ソルダーレジスト23を介してCu(銅)箔パターン22が当接する。したがって,Cu(銅)箔パターン22の断線を防止することができる。」
・「【0103】このように,本実施の形態の液晶モジュール30では,フレキシブル配線板20が折曲された場合の折曲内側に対向する液晶パネル11の下ガラス基板32における端部角には面取り部32bが形成されている。このため,フレキシブル配線板20の液晶パネル11への当接面が広範囲となり,フレキシブル配線板20の折り曲げ時に,Cu(銅)箔パターン22に局所的に力が作用することを防止することができる。そして,本実施の形態では,さらに,ソルダーレジスト23面取り部32bよりも液晶パネル11内側にまで延びて形成されているので,広範囲の面取り部32bに当接するのが,ソルダーレジスト23となる。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「基板15」,「集積回路12」,「テープキャリア」,「折曲部6」,「ベースフィルム1」,「リード2」,「スリットまたは円形の開口」は,それぞれ本願発明の「パネル」,「半導体チップ」,「テープ配線基板」,「屈曲部」,「ベースフィルム」,「配線パターン」,「屈曲部の孔」に相当し,引用発明における,集積回路12が接合されたテープキャリアは,本願発明の「テープパッケージ」に相当する。
引用発明の「電極端子13」と本願発明の「電極バンプ」は,電極である点で共通する。
引用発明は,折曲部6にスリットまたは円形の開口を形成することによって,折曲部6に加えられる機械的ストレスが分散されるものであることは明らかである。
したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「パネルに取り付けられるテープパッケージの取付け構造であって,活性面に電極が形成された半導体チップと,前記半導体チップが前記電極を介して一面にボンディングされるテープ配線基板とを備え,前記テープ配線基板は,チップ実装領域及び屈曲部を有するベースフィルムと,前記ベースフィルムに形成された配線パターンであって,前記ベースフィルムの一側から前記チップ実装領域に延びている配線パターンと,ベースフィルムの他側から前記チップ実装領域に延びている配線パターンとを有する配線パターンと,前記屈曲部に加えられる機械的ストレスを分散させるために,前記ベースフィルムの屈曲部に形成される孔とを備えた,パネルへのテープパッケージの取付け構造。」
の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の半導体チップは,電極バンプを介してテープ配線基板にボンディングされるのに対して,引用発明の集積回路12は,電極端子13を介してテープキャリアに接合される点。
[相違点2]
本願発明は,半導体チップとテープ配線基板とのボンディングされた部分を保護する成形樹脂を備えるのに対して,引用発明は,集積回路12とテープキャリアの接合部分を保護する成形樹脂を備えることは明らかでない点。
[相違点3]
本願発明は,配線パターン上に形成され,配線パターンの各々の端部を露出させる保護層を備えるのに対して,引用発明は,リード2上に保護層を備えていない点。
[相違点4]
本願発明は,配線パターンが入力配線パターンと出力配線パターンを備えるのに対して,引用発明は,ベースフィルム1の一端から集積回路12に向かって延びるリード2と,ベースフィルム1の他端から集積回路12に向かって延びるリード2とを備えるが,それらは「入力配線パターン」及び「出力配線パターン」に相当するものであるか明らかでない点。
[相違点5]
本願発明は,屈曲部の孔がパネルの角を面取りした箇所に対応して配置されるのに対して,引用発明は,スリットまたは円形の開口が形成された折曲部6の内側が基板15の端縁に対向するものではあるが,基板15の角には面取りが施されていない点。

相違点1ないし相違点3について検討する。引用例2には,キャリアテープを用いたテープキャリアパッケージにおいて,駆動ICの背面側に設けたバンプと導体パターンを接続すること,駆動ICの周りを封止樹脂によりモールドすること及び導体パターンの端部は露出させるようにして導体パターン上にソルダーレジスト層を形成することが記載されている。引用例2の「駆動IC」,「バンプ」,「キャリアテープ」,「封止樹脂」,「導体パターン」,「ソルダーレジスト層」は,それぞれ本願発明の「半導体チップ」,「電極バンプ」,「テープ配線基板」,「成形樹脂」,「配線パターン」,「保護層」に相当するものである。相違点1ないし相違点3に係る本願発明の構成は,いずれも引用例2を参照することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点4について検討する。引用例3には,フィルム上にICチップが配置されるTAB方式の集積回路において,フィルムの両端にそれぞれ設けた入力側アウターリードと出力側アウターリードが,ICチップが接続されるインナーリードと接続されることが記載されている。引用発明において,ベースフィルム1の一端から集積回路12に向かって延びるリード2及びベースフィルム1の他端から集積回路12に向かって延びるリード2の一方を入力用とし,他方を出力用とすることは,引用例3を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点5について検討する。フレキシブル配線板(テープ配線基板)の折曲内側に対向する基板端部角に面取り部を形成し,該基板端部の外形に沿うようにフレキシブル配線板を折り曲げ,配線パターンの断線を防止することは,引用例4及び引用例5に示されるように,本願の優先日前において周知技術であったことが認められる。引用発明も,リード(配線パターン)の断線防止を課題としたものであり,折曲部6の内側に対向する基板15の端縁に面取り部を形成し,該基板端縁の外形に沿うようにテープキャリアを折り曲げること,すなわち相違点5に係る本願発明の構成とすることは,上記周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,本願発明は,その優先日前に,引用発明,引用例2と引用例3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,その優先日前に,引用発明,引用例2と引用例3に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-26 
結審通知日 2013-01-08 
審決日 2013-01-21 
出願番号 特願2006-69587(P2006-69587)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越本 秀幸日比野 隆治  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 パネルへのテープパッケージの取付け構造  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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