• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1275481
審判番号 不服2010-3909  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-23 
確定日 2013-06-12 
事件の表示 特願2006-535472「プロバイオティクス菌を含む安定化された組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/047489、平成19年 4月 5日国内公表、特表2007-508035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年11月8日(パリ条約による優先権主張2003年11月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月26日付け拒絶理由通知に対し、同年9月29日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされた後、同年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで特許請求の範囲の全文についての手続補正がなされたものである。

第2 平成22年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年2月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】
細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を総細菌組成物の少なくとも10重量%含む細菌組成物を含む包装容器であって、前記細菌組成物が0.5未満の水分活性を有し、前記細菌組成物が、20%未満の総水分含有量を有し、安定剤をさらに含み、前記安定剤が、10%の水分含有量での-0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有し、前記包装容器が密封されている、包装容器。」
を、
「【請求項1】
細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を総細菌組成物の少なくとも10重量%含む細菌組成物を含む包装容器であって、前記細菌組成物が0.5未満の水分活性を有し、前記細菌組成物が、20%未満の総水分含有量を有し、前記乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせをさらに含み、前記安定剤が、10%の水分含有量での-0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有し、前記安定剤が、10%未満の水分含有量および10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有し、前記包装容器が密封されている、包装容器。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「細菌組成物」が「乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせ」で安定剤をさらに含むこと、また「安定剤」が「10%未満の水分含有量および10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有し」たものであることに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるか、(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について、以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された本願の優先日前に頒布された刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(1)刊行物1:特表2002-513559号公報の記載事項

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも1種の微生物種を担持した形で含む乾燥微生物カルチャーにおいて、該カルチャーがa)少なくとも約0.1mmの粒径を有し、かつb)緻密化されている粒子の形で存在することを特徴とする微生物カルチャー。
【請求項2】緻密化した粒子が、約0.1mmから約2mmの直径を有するコンパクト化された破砕物を含む、請求項1に記載の微生物カルチャー。
【請求項3】緻密化した粒子が、直径約2から50mmおよび直径対厚さの比約1:0.1から約10:1を有する錠剤を含む、請求項1に記載の微生物カルチャー。
【請求項4】追加の成分として発泡添加物を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の微生物カルチャー。
【請求項5】担体として、微生物細胞の埋め込みのための少なくとも1種のマトリックス材料および場合により少なくとも1種の細胞を安定化する追加の添加剤を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の微生物カルチャー。
【請求項6】少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の微生物カルチャー。
【請求項7】少なくとも1種の乳酸産生細菌種を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の微生物カルチャー。
【請求項8】細菌種がラクトバシラス属の細菌から選択されている、請求項7に記載の微生物カルチャー。
【請求項9】 少なくとも1種の微生物種を担持した形で含む乾燥微生物カルチャーの製造方法において、
a)少なくとも1種の微生物種を含む液体内に、担体の形成に適する少なくとも1種の物質を溶かすかまたは懸濁し、
b)このようにして得られた混合物を噴霧乾燥機内で乾燥させ、その際、噴霧乾燥のために条件調整し、乾燥させ、かつ約80℃以上の範囲内の温度に加熱した気体を用い、かつ
c)乾燥物を噴霧乾燥機から取り出し、その際、これが約45から75℃の出口温度を有することを特徴とする、乾燥微生物カルチャーの製造方法。
【請求項10】 工程b)において使用した乾燥気体が、約+5℃より低い露点を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】 別の工程d)において、乾燥物を約15から50℃の範囲内の温度において、気体雰囲気内または真空下に置くかおよび/または少なくとも1種の乾燥剤と混合させる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】 乾燥物として、約5×10^(8)から1×10^(12)cfu/gの生存能力がある微生物含有量を有する粉末濃縮物が得られる、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】 請求項1から8までのいずれか1項に記載の乾燥微生物カルチャーの製造方法において、
i)担体結合噴霧乾燥、担体結合凍結乾燥または担体結合流動層乾燥により、微生物カルチャーの粉末濃縮物を製造し、
ii)粉末濃縮物を、場合により1種またはそれ以上の共配合物と混合させ、かつ
iii)この混合物をコンパクト化または錠剤化する
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の乾燥微生物カルチャーの製造方法。
【請求項14】 工程iii)からのコンパクト化粉末濃縮物を破砕し、かつ場合により分級する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】 乾燥し、凝集した微生物カルチャーの製造方法において、i)担体結合噴霧乾燥、担体結合凍結乾燥または担体結合流動層乾燥により、微生物カルチャーの粉末濃縮物を製造し、
ii)粉末濃縮物を場合により1種またはそれ以上の共配合物と混合させ、かつiii)この混合物を凝集させる
ことを特徴とする、乾燥し、凝集した微生物カルチャーの製造方法。
【請求項16】 噴霧乾燥を請求項9から12のいずれか1項の記載により行う、請求項13または15に記載の方法。
【請求項17】 請求項1から8の記載によるか、または請求項9から16により製造される微生物カルチャーの食料および飼料のためのスターターカルチャーとしての使用。
【請求項18】 請求項1から8の記載によるか、または請求項9から16により製造された微生物カルチャーをスターターとして使用して得られる食料および飼料。」

(1b)「【0001】本発明は、殊には食料および飼料の製造に使用できる新規の乾燥微生物カルチャー、ならびに乾燥微生物カルチャーの製造方法に関する。
【0002】微生物、例えば細菌および酵母の主要な使用分野は、食料および飼料の製造である。すなわち、例えば乳酸菌、例えばストレプトコッカス属(Streptococcus sp.) またはラクトバシラス属(Lactobacillus sp. )の乳酸菌は、乳製品、例えばサワークリーム、脱脂乳、ヨーグルト、ケフィル酒、馬乳酒、カードの製造の際ならびにパン種の製造の際および生ソーセージ、例えばサラミの保存のために使用される。飼料、例えばサイレージの製造の際にも、同様に乳酸菌、例えばラクトバシラス属の乳酸菌が使用される。
【0003】食料および飼料の製造のために必要な微生物調製剤は、通常、いわゆるスターターカルチャー(Starterkultur)の形で使用される。これは、多くの場合に新しく製造された液状カルチャーではなく、通常は液状窒素中に深冷されたかるまたは乾燥調製剤である。乾燥調製剤が一般的には有利であり、それというのもその輸送および貯蔵が深冷調製剤よりも技術的にコストが低いからである。」

(1c)「【0006】これまで従来技術から公知の乾燥微生物調製剤、殊には食料または飼料の製造のために使用される調製剤は、下記の欠点の少なくとも一項は有している:
1)乾燥材料の単位重量あたりの生存能力がある菌の含有量は、その製造方法のために著しく少なく、大量の乾燥調製剤が最終使用の際に使用しなればならない。
【0007】2)貯蔵安定性が低すぎて、乾燥調製剤は、技術的にコストがかかる条件下での貯蔵が不可能な場合には、数週間以内に消費してしまわなくてはならない。
【0008】3)乾燥調製剤は高い微粉含有量を有し、このためにその加工が困難となる。
【0009】4)機械的な安定性が著しく低く、調製剤と無機質添加剤との混合の際に、微粉状の破砕物が形成され、固体調製剤の分離が観察される。
【0010】5)乾燥調製剤の溶解速度が不満足であり、食料または飼料の製造のための望ましい微生物的プロセスが緩徐にしか開始せず、著しい品質低下となりうる望ましくない微生物に増殖の可能性を与える。
【0011】また、従来技術からこれまで公知の製造方法、殊にはこれまで記載されている噴霧乾燥法は、下記の理由の少なくとも1点から不満足である。
【0012】1)方法が技術的に著しくコストがかかる。
【0013】2)乾燥の際の微生物の生存率が低すぎる。
【0014】3)乾燥製品の水分が高すぎる。
【0015】従って、本発明の第一の課題は、上記の従来技術から公知の欠点をほとんどすべて有していない改善された乾燥微生物カルチャーの提供である。殊には、従来技術に対して改善されたスターターカルチャーを提供しなければならない。本発明によるスターターカルチャーは、なかでも改善されたサイレージの製造を可能としなければならない。
【0016】本発明の第二の課題は、乾燥微生物カルチャーの改善された製造方法の提供である。殊には、生存能力がある細菌の含有量が高く、かつ高い貯蔵安定性を有する乾燥調製剤の製造を可能とする微生物カルチャーの噴霧乾燥のための改善された方法を提供しなければならない。」

(1d)「【0025】有利には、本発明により緻密化された乾燥カルチャーは、担体として少なくとも1種のマトリックス材料を微生物細胞に埋め込むのため、および場合により少なくとも1種の別の細胞を安定させる添加剤を含む。
【0026】本発明による乾燥カルチャー中で使用する担体は、少なくとも1種で、通常は新しく培養した微生物を乾燥前に共配合物として加えた、単糖類、オリゴ糖類および多糖類、ポリオール、ポリエーテル、ポリマー、例えばCMCまたはPVP、オリゴペプチドおよびポリペプチド、天然由来のもの、例えば牛乳、肉類または穀類から誘導された物質または物質混合物、例えば甘味乳精粉(Suessmolkepulver)、小麦ふすま(Weizengriesskleie) 、ペプトン、アルギン酸塩、無機化合物から選ばれたマトリックス成分、またはこれらのマトリックス成分の混合物を含む。さらに、安定化作用がある添加剤、例えば抗酸化剤、例えばα-トコフェロールまたはアスコルビン酸またはこれらの混合物をマトリックス成分と同時にまたは後に添加できる。その上、無機塩、例えばアルカリ金属塩化物およびアルカリ土類金属塩化物、無機または有機緩衝液、例えばアルカリ金属リン酸塩緩衝液、アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸およびこれらの塩、有機カルボン酸、例えばクエン酸、有機の非揮発性溶剤、例えばDMSOおよびその他の化合物、例えばβ-カロチンおよびこれらの添加剤の混合物から選ばれている他の物質が安定化に作用できる。」

(1e)「【0027】本発明による微生物カルチャーは、有利には生存能力がある微生物を濃度10^(8)?10^(12)cfu(コロニー形成単位)/g(乾燥カルチャー)で含む。本発明により製造された粉体濃縮物は、約5×10^(8)?1×10^(12)cfu/g、有利には約4×10^(11)?8×10^(11)cfu/gを含む。本発明により緻密化したカルチャーは、約1×10^(11)?4×10^(11)、殊には約3×10^(11)cfu/gを含む、サイレージ製造のためのスターターカルチャーは、約1?7×10^(10)、殊には約3×10^(10)cfu/gを含む。
【0028】その際、微生物は、1種またはそれ以上の微生物種から誘導されることができる。殊に有利な種は、乳酸を産生する細菌、例えばサイレージ製造に好適なもの、例えばラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) である。」

(1f)「【0033】その設計に応じて、本発明による噴霧乾燥法は、意外にも100%までの生存率を有する微生物懸濁液の乾燥を可能とする。噴霧乾燥の際の条件調整した気体の使用ならびに最適化した追加乾燥工程により、意外にも、水分活性awが0.03?0.15に相当する極端に低い水分(約2?3質量%の水分)を有する乾燥調製剤が提供される。これは直ちに、本発明による噴霧乾燥し、かつ場合により追加乾燥した微生物カルチャーが、周辺温度および大気中で1年間の貯蔵の後でも60%までの生存率を有するという結果となる。
【0034】上記の噴霧乾燥の意外に高い生存率に基づいて、生存能力がある微生物の収量は著しく高い。従って、得られた噴霧乾燥製品は、また粉体濃縮物とも呼ばれ、生存能力がある細胞の濃度の低下のために、使用分野に応じてさらに薄めることができる。粉体濃縮物は、殊に上記の本発明による緻密化した粒子状カルチャーの製造のために特に好適である。」

(1g)「【0045】使用できる微生物
本発明は、基本的に特定の微生物カルチャーには制限されない。かえって、専門家は、本発明がいかなる微生物、殊には細菌および酵母にも適用でき、これらは本明細書中に記載の条件下で、乾燥した微生物調製剤に転換されることを認めている。本発明により適用できる好適な微生物の群は、乳酸産生細菌の群である。殊には、これらは、同種発酵的乳酸発酵のために好適な細菌であり、すなわちグルコースをフルクトース・二リン酸経路を介して乳酸に分解する。この群の典型的な代表は、ラクトバシラス属、ストレプトコッカス属、ならびにペディオコッカス属(Pediococcus sp.) の属の細菌である。ラクトバシラス属の具体的な例は、ラクトバシラス・ブルガリクス(L. bulgaricus) 、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバシラス・ヘルベティクス(L. helveticus) 、ラクトバシラス・ビフィデュス(L. bifidus)、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)、ラクトバシラス・ラクチス(L. lactis) 、ラクトバシラス・デルブルエッキ(L. delbrueckii)、ラクトバシラス・テルモフィリルス(L. thermophilus) 、ラクトバシラス・フェルメントム(L. fermentum)、ラクトバシラス・ブレヴィス(L. brevis) およびラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)である。好適なストレプトコッカス属の例は、ストレプトコッカス・ラクティス(S. lactis) 、ストレプトコッカス・クレモリス(S. cremoris) 、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス(S. diacetilactis)、ストレプトコッカス・テルモフィルス(S. thermophilis) 、ストレプトコッカス・ピロゲネス(S. pyrogenes)、ストレプトコッカス・サリヴァリウス(S. salivarius) 、ストレプトコッカス・ファエカリス(S. faecalis) 、ストレプトコッカス・ファエシウム(S. faecium)であり、また好適なペディオコッカス属の例は、ペディオコッカス・セレヴィシアエ(P. cerevisiae) およびペディオコッカス・アシジラクチシ(P. acidilactici) である。」

(1h)「【0046】 微生物の発酵
本発明の実施のためには、有利には新しく製造した微生物懸濁液を使用する。それぞれの微生物に対して最適な発酵培地ならびに発酵条件は、従来技術から公知であるか、または微生物の培養を委託されている専門家から、数回の通常の試験を行って決定できる。
・・・略・・・
【0055】
増殖終了後に、発酵内容物を希望する細胞密度とする。希望する場合には、実際的に乳酸分がなくなるまで細胞懸濁液を洗浄できる。本発明により使用できる微生物懸濁液の細胞数は、通常、約1×10^(10)?約5×10^(12)cfu/g(懸濁液)の範囲内にある。」

(1i)「【0056】担体物質
本発明により製造した乾燥微生物カルチャーは、場合により、それぞれの発酵内容物、例えば物質代謝生成物からの非揮発性成分の他に、少なくとも1種のマトリックス物質および場合により別の安定化物質を含む。これらの共配合物は、有利には、無機塩または緩衝液、単糖類、オリゴ糖類および多糖類、ポリオール、ポリエーテル、アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドから選ばれている少なくとも1種の他の化合物、牛乳から誘導される化合物、有機カルボン酸、無機化合物、有機担体材料、例えば小麦ふすま、アルギン酸塩、DMSO、PVP(ポリビニルピロリドン)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、α-トコフェロール、β-カロチンおよびこれらの混合物から選ばれる。
【0057】好適な糖類担体成分の例としては、サッカロース、フルクトース、マルトース、デキストロース、ラクトースおよびマルトデキストリンが挙げられる。好適なポリオールの例としては、グリセリンが挙げられる。好適なアミノ酸の例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸およびこれらの塩が挙げられる。好適なペプチド担体の例としては、ペプトンが挙げられる。牛乳から誘導される化合物の例としては、上記のマルトデキストリンの他に甘味乳精粉が挙げられる。好適な有機カルボン酸は、例えばクエン酸、リンゴ酸およびl-アスコルビン酸である。好適な無機担体の例は、モンモリロ石ならびにパリゴルスカイトである。
【0058】しかし有利には、本発明による乾燥微生物調製剤の担体として、上記の種類の物質の混合物を使用する。このような混合物は、有利には主成分としてマトリックス材料、例えば上記の糖類成分または例えば甘味乳精粉、および場合により、少なくとも1種の別の成分、例えば緩衝成分(例えばクエン酸)または抗酸化剤(例えばl-アスコルビン酸またはα-トコフェロール)の副成分を含む。別の安定化成分、例えばグルタミン酸ナトリウムおよび/またはペプトンの添加は、同様に有利であることが証明されている。
【0059】マトリックス成分は、本発明により使用できる担体混合物中に、通常は他の担体成分の約5倍?30倍の量で使用される。殊に好適な担体組み合わせの例は、下記である。
【0060】a)甘味乳精粉/クエン酸/l-アスコルビン酸(質量比約40:1:1)。
【0061】b)マルトデキストリン/ラクトース/クエン酸/l-アスコルビン酸(質量比160:20:1:1)、場合によりβ-カロチン約1.5部およびα-トコフェロール0.5部をクエン酸1部に対して補充。【0062】c)マルトデキストリン/グルタミン酸ナトリウム/l-アスコルビン酸(質量比約10:1.5:1)。
【0063】d)ラクトース/グルコース/ペプトン/クエン酸(質量比約6:6:1.2:1)。
【0064】本発明による担体物質は、微生物懸濁液に固体としてまたは溶解した形のいずれかで加えることができる。しかし有利には、担体の滅菌溶液を製造し、これを温度4?10℃に冷却し、これを同様に冷却した微生物懸濁液と軽く攪拌しながら混合させる。均質な懸濁液を製造するためには、このようにして得られた混合物をさらに冷却しながら約10分間?1時間攪拌する。」

(1j)「【0065】乾燥微生物調製剤の製造
上記のようにして担体と混合した微生物懸濁液は、種々の方法で乾燥できる。乾燥方法としては、原理的には凍結乾燥、流動層乾燥ならびに有利には噴霧乾燥が適する。本発明の範囲内の噴霧乾燥として、変形した噴霧乾燥法、例えば噴霧凝集または凝集噴霧乾燥も考慮に入れる。後者の方法は、FSD(流動噴霧乾燥)法としても知られている。
・・・中略・・・
【0072】本発明による乾燥法は、乾燥物内にできるだけ低い残留水分が存在するように実施する。有利には、乾燥物内の水分活性awは、0.4以下でなければならない。しかし、長期貯蔵安定性のこれ以上の改善のためには、本発明により水分活性値0.15以下、有利には約0.03?0.1の範囲内となるように努力する。含水率は、有利には2?3質量%である。これは最も有利には、噴霧乾燥工程に続いて追加乾燥工程を設置することにより到達される。乾燥物は、このために例えば流動層内で、有利には15?50℃の範囲内の温度において例えば15分間から20時間の間、追加乾燥される。乾燥気体として、この場合にも有利には条件調整した加圧空気ならびに条件調整した窒素を用いる。しかし、追加乾燥は、有利には約1?50トルの真空の約15分間から20時間および温度約15?50℃の適用で行うことができる。その際、乾燥物の攪拌に、例えばインペラー型攪拌機を用いると有利である。
【0073】上記の物理的追加乾燥法の代わりに、噴霧乾燥の際に得られる乾燥物に特別の乾燥剤を加えることも考えられる。このような乾燥剤は、それ自体が非常に低い水分活性、例えば0.01またはこれ以下のaw値を有していなければならない。好適な乾燥剤の例としては、無機塩、例えば塩化カルシウムおよび炭酸ナトリウム、有機ポリマー、例えば商標コリディオン(Kollidion) 90Fとして入手できる製品、ならびに二酸化ケイ素を含む乾燥剤、例えばケイソウド、ゼオライト、ならびに商標ティクソシル(Tixosil) 38、シペルナート(Sipernat)22S、またはアエロジル(Aerosil) 200として入手できる乾燥剤である。
【0074】本発明により、意外にも、比較的高い乾燥温度にもかかわらず、本発明による乾燥調製剤の生存率は優れた値、すなわち75%±25%を示すことを確認した。
【0075】生存能力がある微生物の含有量は、約5×10^(8)?1×10^(12)cfu/g(乾燥物質)の範囲内にある。これらの調製剤は、本発明によりまた粉末濃縮物とも呼ばれる。個別の最終使用に対しては生存能力がある微生物のより低い含有量でも全く十分であるので、従ってこのような粉末濃縮物は、場合により別の不活性担体材料との混合により生存能力がある細菌の最終数となるまで混和できる。
【0076】緻密化した乾燥微生物カルチャーの製造
以上に記載した方法により得られた粉末濃縮物は、通常比較的高い微粉の割合を有し、そのためにその利用に対してまだ満足できるようには取り扱いができない。さらに、種々の利用においては、乾燥カルチャーの高い機械的安定性が要求される。従って、上記の粉末濃縮物の性質を引き続く緻密化により改善する必要がある。
【0077】本発明による粉末濃縮物の微粉の割合を低下させるために、これを従来の方法で顆粒に凝集させるか、または外力を加えてコンパクト化または錠剤化する可能性がある。」

(1k)「【0095】c)貯蔵安定性の測定:
乾燥試料の貯蔵安定性を測定するために、乾燥直後の乾燥試料の比細胞数を測定した(Tag_(0))。乾燥した細胞材料を空気中で透明で緊密に密閉した容器中、室温(21℃±2℃)で長期間にわたって貯蔵した。一定の間隔で比細胞数を新たに測定した(Tag_(N))。貯蔵安定性は、比細胞数Tag_(N)/比細胞数Tag_(0)の比から算出した。
・・・略・・・
【0099】f)ガラス転移温度Tg決定のためのDSC測定メットラー社の装置TA4000
秤量約15mg、加熱速度20℃/分で、試料を測定の間は窒素流を用いてパージした。
【0100】DSC=示差走査熱量測定法。」

(1l)「【0108】実施例K4:連続発酵
下記の組成を有する発酵培地10lを14l発酵槽中に満たし、30分間、121℃において滅菌した(製造発酵槽):
グルコース一水和物 400 .0g
50%酵母抽出懸濁液(リン酸を用いてpH4.5)500.0g
KH_(2)PO_(4) 30.0g
クエン酸一水和物 21.0g
トゥイーン80^((R) ) 10.0g
MgSO_(4)・7H_(2)O 5.0g
MnSO_(4)・1H_(2)O 1.7g
(NH_(4))_(2)Fe(SO_(4))_(2)・6H_(2)O 0.4g
全体積3000lを有する第二発酵槽中に、同じ培地2000lを満たし、滅菌した(貯蔵発酵槽)。両方の発酵槽を滅菌した配管で連結した。次いで秤に乗っている中間槽を経由して、自動調節を用いて時間あたり3lの新しい培地を製造発酵槽内にポンプ供給した。製造発酵槽の温度は、37℃に調節した。pH値は25%NaOHを用いて5.8に調節した。発酵槽を150回転/分で攪拌し、0.1VVM窒素を用いて上からシールした。
【0109】第二ポンプを経由して時間あたりに培地3lを連続的に取り出し、0?4℃にあらかじめ冷却してある特殊鋼製の集合槽内に集めた。バイオマスの濃度は、濁度法で測定し、3.5g/lであった。製造発酵槽からの流出物内のグルコース濃度は、当初の増殖フェーズの後では常に0g/lであった。発酵液中の細胞数は、1.48×10^(10)cfu/g(発酵液)であった。発酵液の乾燥物の割合は、6.89%であり、これは217g(TS)に相当する。比細胞数は2.15×10^(11)cfu/g(TS)であった。
【0110】実施例K5:乳酸ナトリウム除去のための洗浄工程を用いる細胞の採取
実施例K4からの発酵流出液72lを連続的に市販の分離器を用いて8℃において採取した。細胞懸濁液7kgが得られた。これに、VE-水40l、NaCl450gおよびKH_(2)PO_(4) 136gを含む洗浄溶液を加えた。洗浄溶液のpH値は、あらかじめ25%カセイソーダを用いて7.0に調節してあった。再懸濁した細胞約50lをあらためて分離した。濃縮した洗浄細胞懸濁液3160gが得られた。懸濁液の固体含有量は9.97%であった。細胞数は2.49×10^(11)(懸濁液)であった。比細胞数は、2.5×10^(12)cfu/g(TS)であった。
【0111】この洗浄した細胞懸濁液は、実際的に乳酸ナトリウムを含んでいなかった。バイオマス濃度は、濁度測定法により測定した。これは80g/lであった。
【0112】噴霧乾燥による本発明による粉末濃縮物の製造例
以下に記載の本発明による粉末濃縮物製造のための噴霧乾燥試験は、ナイロ社(Fa. Niro, Kopenhagen、デンマーク)の実験室用噴霧乾燥機タイプ・ナイロ・マイナー(Type Niro Minor)内で実施した。噴霧可能な細菌懸濁液を二物質ノズルを介して予め条件調整して加熱した圧縮空気と一緒に並流で装置の乾燥塔内に噴霧し、乾燥した製品をサイクロンを用いて空気から分離して集めた。
・・・略・・・
【0117】実施例S2 共配合物溶液の製造のために、VE水200mlを70℃に加温した。その中にマルトデキストリン(グルシデックス(Glucidex)IT6、ロケット(Roquette)社)75g、ラクトース75g、NaCl7.5g、KH_(2)PO_(4) 3.8g、クエン酸3.8gおよびl-アスコルビン酸3.8gを溶かし、40%NaOH水溶液を用いてpH7に調整し、全量400gとなるまでVE水を満たした。この溶液を5℃に冷却した。
【0118】洗浄、すなわち実質的に乳酸ナトリウムを含まない発酵-遠心分離物(F.G.16.5%;実施例K5と同様にして製造)200mlを温度5℃で攪拌しながら5℃に冷却した共配合物溶液400gと混合させた。混合物を30分間、250回転/分でマグネットスターラーを用いて氷浴冷却下で攪拌した。その後、欧州特許出願公開(EP-A)第0479066号(BASF)明細書に従って製造した、トゥイーン80 25%、βカロチン5%およびα-トコフェロール2%から成る可溶化剤101mlを加え、氷浴冷却しながら追加して攪拌した。引き続いて、実施例S1記載のようにしてこの混合物を噴霧乾燥して粉末濃縮物Aに転換した(入口温度105℃、出口温度54?55℃)。粉末濃縮物Aは、追加乾燥しなかった。
【0119】特性:
噴霧乾燥できる混合物:F.G.29%、3.84×10^(11)cfu/g(乾燥物質)
粉末濃縮物A:水分活性aw=0.065
含水率 2.8%
DSC測定からのTg:61℃
2.22×10^(11)cfu/g(乾燥物質)(乾燥の間の生存率 58%に相当)
粉末濃縮物Aの貯蔵試験:大気内で閉じた容器内の室温貯蔵の際のcfu値:1.9×10^(11)cfu/g(乾燥物質)(86%)30日後。」

(1m)「【0137】配合例
以下に記載の処方に従って、本発明による粉末濃縮物の乾燥混合物を製造し、コンパクト化したスターターカルチャー調製剤に加工した。
【0138】別途に断らない限り、分離剤としてロイシンおよび流動助剤としてシペルナート50S(噴霧乾燥した二酸化ケイ素)を用いた。
【0139】調製剤の個別の成分を最初に互いに混合した。このために例えばスキ型混合機(レディゲ(Loedige) 社のタイプ・レー(Loe) 20)を用いた。この方法で得られた乾燥混合物をコンパクト化機でコンパクト化した。例えば、このために加圧力14kN/cm^(2)を加える実験室用コンパクト化機(例えばベペックス(Bepex)社の実験室用コンパクト化機L200)が使用できる。コンパクト化機から取り出した製品バンドを引き続いて粒径1.25mm以下に破砕する。この粗顆粒を0.3mm以下の微細部分と分離するために、ふるい分けする。有効物収率は、使用原料に対して50?60%である。
【0140】実施例F1:サイレージのためのスターターカルチャーとして使用するための噴霧コンパクト化物の製造
調製剤A:
粉末濃縮物(実施例S2による) 200.0g、
クエン酸、無水 95.0g、
NaHCO_(3) 95.0g、
PEG(Mw<400) 8.0g、
流動助剤 2.0g。」

3 対比・判断
刊行物1には、「少なくとも1種の微生物種を担持した形で含む乾燥微生物カルチャーにおいて、該カルチャーが
a)少なくとも約0.1mmの粒径を有し、かつ
b)緻密化されている
粒子の形で存在することを特徴とする微生物カルチャー」であって(1a)、「担体として、微生物細胞の埋め込みのための少なくとも1種のマトリックス材料および場合により少なくとも1種の細胞を安定化する追加の添加剤を含」んでいること(1a)、「少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含」んでいること(1a)が記載されている。
そうすると、刊行物1の上記記載から、刊行物1には、
「少なくとも1種の微生物種を担持した形で含む乾燥微生物カルチャーにおいて、該カルチャーが
a)少なくとも約0.1mmの粒径を有し、かつ
b)緻密化されている
粒子の形で存在する微生物カルチャーであり、
担体として、微生物細胞の埋め込みのための少なくとも1種のマトリックス材料および場合により少なくとも1種の細胞を安定化する追加の添加剤を含み、
少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含んだ、微生物カルチャー」
の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。

(ア)本願補正発明の「細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物」について、本願の明細書を参照すると、段落【0019】に、「本明細書で使用する時、用語「乾燥細菌濃縮物」は、本発明の組成物に添加することができる多数の細菌細胞を含有する乾燥され濃縮された細菌生成物を産するために当業者には既知の遠心分離、凍結乾燥、スプレー乾燥、又はこれらの組み合わせなどのプロセスによって濃縮された、細菌の発酵培養物を包含する。この乾燥細菌濃縮物は、本発明の組成物に添加される前に細菌を少なくとも1×10^(8)cfu/g、好ましくは1×10^(8)?1×10^(14)cfu/g、より好ましくは1×10^(10)?1×10^(14)cfu/gの濃度で含む。」と記載されている。
そうすると、本願補正発明の「細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物」の「細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/g」とは、組成物に添加される前の細菌の濃度であって、「乾燥細菌濃縮物」とは、乾燥され濃縮された細菌の発酵培養物を包含するものである。
また、本願補正発明の「細菌」については、本願の明細書の段落【0025】に「経口消費の際に受け入れ動物に有害でないあらゆる細菌科、属、種、又は株、好ましくは、哺乳動物が経口消費した後、より好ましくはヒト又は仲間動物が経口消費した後に有害でない細菌株類、好ましくはプロバイオティクス菌を含んでいてよい」と記載され、「好ましくは、細菌は乳酸菌を含む」として、ストレプトコッカス属、ラクトバシラス属などの乳酸菌が例示されている。
一方、刊行物1発明の「微生物カルチャー」は「少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含んだ」ものであるところ、刊行物1の記載を参照すると、担体と混合して乾燥する前の微生物懸濁液について(1j)、発酵内容物を希望する細胞密度とすること、通常、約1×10^(10)?約5×10^(12)cfu/g(懸濁液)の範囲内にあることが記載されている(1h)。そして、その後、担体と混合した微生物懸濁液を、種々の方法で乾燥して粉末濃縮物とし、さらにこれを緻密化して乾燥微生物カルチャーとする旨、記載されている(1j)。そうすると、刊行物1発明の「少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含んだ」、「少なくとも1種の微生物種を担持した形で含む乾燥微生物カルチャー」は、細胞密度が約1×10^(10)?約5×10^(12)cfu/gの発酵内容物を乾燥させたものを含んだものといえる。
さらに、刊行物1発明の「少なくとも1種の微生物種」としては、いかなる微生物、殊には細菌および酵母にも適用でき、好適な微生物の群は乳酸産生菌の群と記載され(1g)、ラクトバシラス属、ストレプトコッカス属、ならびにペディオコッカス属(Pediococcus sp.) の属などが例示されている(1g)。
以上から、刊行物1発明の「微生物カルチャー」は「少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含んだ」ものであって、細胞密度が約1×10^(10)?約5×10^(12)cfu/gの乳酸菌等の細菌の発酵内容物を乾燥させたものを含むものであり、この「細胞密度が約1×10^(10)?約5×10^(12)cfu/gの乳酸菌等の細菌の発酵内容物を乾燥させたもの」は、本願補正発明の「細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物」相当する。

(イ)刊行物1発明の「少なくとも1種の微生物種を担持」する「担体」である、「微生物細胞の埋め込みのための少なくとも1種のマトリックス材料」および「場合により少なくとも1種の細胞を安定化する追加の添加剤」について、刊行物1には、マトリックス材料としては、オリゴ糖類および多糖類(1d,1i)などが例示されており、また、安定化作用がある添加剤としては例えば抗酸化剤(例えばα-トコフェロールまたはアスコルビン酸)が例示されている(1d,1i)。
そして、本願補正発明の「安定剤」について、本願の明細書を参照すると、「安定剤は本発明において、安定化増量剤又は充填剤として作用するために有用である」こと(段落【0028】)、安定剤としては多糖類やオリゴ糖類などから選択されること(段落【0030】)が記載されている。さらに、本願の明細書には、追加の任意構成成分としてビタミンや酸化防止剤を含んでもよいことが記載され(段落【0035】)、酸化防止剤としてトコフェロール類やアスコルビン酸類が例示されている(段落【0043】)。
そうすると、刊行物1発明の「少なくとも1種の微生物種を担持」する「担体」である、「微生物細胞の埋め込みのための少なくとも1種のマトリックス材料」は、多糖類やオリゴ糖類などを、増量や充填のために用いていることからすると、本願補正発明の「安定剤」とは、充填させるための剤である点で共通する。
また、刊行物1発明の「場合により少なくとも1種の細胞を安定化する追加の添加剤」は、本願の明細書に記載された追加の任意構成成分に含まれるものであり、本願補正発明の「細菌組成物」は、抗酸化剤など追加の添加剤をさらに含むことを排除するものではない。

(ウ)上記(ア)(イ)からすると、刊行物1発明の「少なくとも1種の微生物種」を含む「乾燥微生物カルチャー」は、「乾燥細菌濃縮物」を含む「細菌組成物」である点で、本願補正発明と共通するものである。
また、本願補正発明の「細菌組成物」は、「a)少なくとも約0.1mmの粒径を有し、かつ b)緻密化されている」ものとすることを排除するものではない。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)
細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を含む細菌組成物であって、前記乾燥細菌濃縮物と充填させるための剤との組み合わせをさらに含む、細菌組成物。

(相違点1)
細菌組成物が、本願補正発明では、本密封されている包装容器に含まれているのに対し、刊行物1発明では、密封された包装容器に含ませることについては規定していない点。

(相違点2)
細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を、本願補正発明では、「総細菌組成物の少なくとも10重量%含む」のに対し、刊行物1発明では、乾燥微生物カルチャーに含まれる重量%については特に規定していない点。

(相違点3)
充填させるための剤として、本願補正発明では「10%の水分含有量での-0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有し」、「10%未満の水分含有量および10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有し」た「安定剤」を用いるのに対し、刊行物1発明では、ガラス転移温度や水分含有量および水分活性については特に規定していない「マトリックス材料」を用いている点。

(相違点4)
細菌組成物について、本願補正発明では、「0.5未満の水分活性を有し」「20%未満の総水分含有量を有し」ているのに対し、刊行物1発明では「乾燥微生物カルチャー」の水分活性や総水分含有量については特に規定していない点。

そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
刊行物1には、微生物カルチャーの製造のために好適な粉末濃縮物(1f,1j)(※刊行物1には「粉体濃縮物」とも記載されている(1f)が「粉末濃縮物」と統一して記す。)について、貯蔵安定性の測定を行っており(1k,1l)、この際、密閉した容器内で長期間にわたって貯蔵すること(1k)が記載されている。
そうすると、粉末濃縮物を緻密化した微生物カルチャーについて(1j)、保存のために密封された包装容器に含ませることは、刊行物1に実質的に記載されているか、又はその上記記載から当業者が当然になし得たことである。

(相違点2について)
刊行物1の実施例の記載を参照すると、実施例S2として、マルトデキストリン 75g、ラクトース 75g、NaCl 7.5g、KH_(2)PO_(4) 3.8g、クエン酸 3.8g、l-アスコルビン酸 3.8gの計168.9gに対して、200mlの実施例K5と同様に製造した発酵-遠心分離物(固体含有量(F.G.)16.5%)、すなわち細胞懸濁液を、pH調整したVE水中で混合したことが記載されている(1l)。細胞懸濁液中の固体含有量は16.5%であることから、おおよそ33g程度(200ml×16.5%)の固体が含まれるとすると、16重量%(33g/(168.9g+33g)×100)程度の細胞懸濁液からの固体が含まれると見積ることができる。実施例S2では、pH調整をしたVE水中で撹拌混合した後、さらにトゥイーン80 25%、βカロチン5%およびαートコフェロール2%から成る可溶剤を加え(1l)、その後に乾燥させて粉末濃縮物とし(1l)、さらにこれに流動助剤等配合して微生物カルチャーとしている(1m)ため、微生物カルチャーに含まれる、細胞懸濁液を乾燥させたものは、上記の見積もりの16重量%よりも若干小さくなるものの、少なくとも10重量%以上は含むものと考えられ、よってこの点については実質的な相違点とは認められない。
また、乾燥細菌濃縮物を10重量%よりもさらに少ない量しか含まないとすると、少なくとも1種の微生物種を約10^(8)から10^(12)cfu/g含んだ微生物カルチャーとはならず、刊行物1発明の目的が達成できないことから、微生物カルチャーの使用の目的などに応じて、適宜調整して、10重量%よりも多く含ませるようにすることは、当業者が適宜になし得たことである。

(相違点3及び相違点4について)
刊行物1には、微生物カルチャーの製造のために好適な粉末濃縮物(1f,1j)について、担体と混合した微生物懸濁液を乾燥させる際に、乾燥物内にできるだけ低い残留水分が存在するように乾燥させることとし、乾燥物内の水分活性awは0.4以下でなければならないこと、長期貯蔵安定性の改善のためには0.15以下、約0.03?0.1が望ましいこと、さらに、含水率については2?3質量%であることが記載されている(1j)。
そして、刊行物1の実施例の記載を参照すると、実施例S2には、具体的な粉末濃縮物Aの特性として、水分活性aw=0.065,含水率 2.8%、DSC測定(示差走査熱量測定法)からのTg(ガラス転移温度):60℃と記載されている(1l)。そして、粉末濃縮物Aは、実施例K5と同様にして製造した細胞懸濁液である発酵-遠心分離物と、マルトデキストリン75g、ラクトース75g、NaCl7.5g、KH_(2)PO_(4) 3.8g、クエン酸3.8gおよびl-アスコルビン酸3.8gを、pH調整したVE水中で撹拌し、さらに、トゥイーン80、βカロチンおよびα-トコフェロールから成る可溶化剤を加えて混合した混合物を噴霧乾燥したものであり(1l)、マトリックス成分は担体混合物中に、通常は他の担体成分の約5倍?30倍の量で使用されるものであることを考えれば(1i)、マルトデキストリン及びラクトースがマトリックス材料であるといえる。これらのマトリックス材料を含んで乾燥させた粉末濃縮物Aの特性が、上記のとおり水分活性aw=0.065,含水率 2.8%、DSC測定からのTg:60℃であることから、この中に含まれるマトリックス材料もおおよそ水分活性aw=0.065,含水率 2.8%、DSC測定からのTg:60℃程度の特性を有するものといえる。
そうすると、刊行物1の実施例に記載されたマトリックス材料は、含水率2.8%において、ガラス転移温度が60℃、水分活性が0.065程度の多糖類あるいはオリゴ糖類であって、「10%の水分含有量での-0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有し」、「10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有」する本願補正発明の安定剤と実質、同程度の性質を有する材料であり、この点において実質的な差異は認められない。
そして、粉末濃縮物を緻密化した刊行物1発明の微生物カルチャーについても、長期貯蔵安定性を改善することを考えて、粉末濃縮物の水分活性や水分含有量の値をできるだけ維持して、少なくとも水分活性は0.5以下、水分含有量を20%未満であって10%未満とすること、そしてこれにより微生物カルチャーに含まれるマトリックス材料の水分含量についても同様に10%未満とすることは、当業者が適宜になし得たことである。

(本願補正発明の効果について)
5℃及び室温の両方で改善された長期の安定性を有するプロバイオティクス組成物を提供するなどの、本願の明細書の段落【0004】?【0005】等に記載された本願補正発明の効果は、刊行物1の記載事項から当業者が予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 特許法第36条第6項第2号についての独立特許要件
本願補正後の請求項1は「細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を総細菌組成物の少なくとも10重量%含む細菌組成物を含む包装容器」であって、「前記乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせをさらに含み」と記載されているが、「前記乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせ」を「さらに」含む、とは、「前記乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせ」を包装容器に含むのか、細胞組成物に含むのか不明であるし、細胞組成物に含むと解釈するにしても、なにに加えて「さらに」含むのか、安定剤と組み合わせていない乾燥細菌濃縮物に加えて、さらに安定剤との組み合わせで含むことを意味するのか、など、「前記乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせをさらに含み」ことが意味するところが不明瞭である。
よって、本願補正後の請求項1の記載は特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第26条第6項第2号の規定に適合しないものであるから、独立して特許を受けることができない。
上記「3 対比・判断」は、細胞組成物に安定剤をさらに含むものと解釈して、刊行物1発明と対比、判断した。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年2月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されることになったので、本願の請求項1ないし23に係る発明は、平成21年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1は、次のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「【請求項1】
細菌の濃度が少なくとも1×10^(8)cfu/gである乾燥細菌濃縮物を総細菌組成物の少なくとも10重量%含む細菌組成物を含む包装容器であって、前記細菌組成物が0.5未満の水分活性を有し、前記細菌組成物が、20%未満の総水分含有量を有し、安定剤をさらに含み、前記安定剤が、10%の水分含有量での-0.15℃(273K)よりも高いガラス転移温度を有し、前記包装容器が密封されている、包装容器。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「細菌組成物」が「乾燥細菌濃縮物と安定剤との組み合わせ」で含む構成を省いて安定剤を含むものとし、また「安定剤」が「10%未満の水分含有量および10%の水分含有量での0.5未満の水分活性を有し」たものであるとの構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだ本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-15 
結審通知日 2013-01-18 
審決日 2013-01-30 
出願番号 特願2006-535472(P2006-535472)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 菅野 智子
鵜飼 健
発明の名称 プロバイオティクス菌を含む安定化された組成物  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 中村 行孝  
代理人 小島 一真  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
代理人 小島 一真  
代理人 伊藤 武泰  
代理人 横田 修孝  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ