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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
管理番号 1275506
審判番号 不服2011-5285  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-09 
確定日 2013-06-12 
事件の表示 特願2000-236313「ガスタービンバケット壁厚制御」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-173404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明

本件は、平成12年8月4日(パリ条約による優先権主張、1999年12月8日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成12年10月4日付けで明細書及び図面の翻訳文が提出され、平成19年8月2日付けで手続補正書が提出され、平成21年12月24日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年7月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年11月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けの手続補正書によって明細書の特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、平成23年4月21日付けで審判請求書の請求の理由の手続補正書が提出され、その後、当審において、平成23年10月11日付けで書面による審尋がなされ、平成24年4月18日付けで回答書が提出され、平成24年5月10日付けで前記平成23年3月9日付けの手続補正書による手続補正を却下する補正の却下の決定がなされ、平成24年5月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成24年11月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであり、その請求項1ないし3に係る発明は、平成24年11月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
蛇行冷却通路を含むタービンバケットの鋳造用コアであって、
鋳型内に配置し得る前縁コア部(12)、及び
鋳造すべきタービンバケットの蛇行冷却通路の2つの通路間の隔壁部分に沿って根元部から先端まで延びる分割線(16)によって上記前縁コア部と分離していて、鋳型内に別々に配置し得る後縁コア部(14)
からなるコア。」

2.引用文献に記載された発明

(1)本件出願の優先日前に頒布され、当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開平6-154947号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳込部品の内部通路と外面の間の改良壁厚制御を行う手段を含むコアによる中空部品の精密インベストメント鋳造法に関する。」(段落【0001】)

イ)「【0012】
【実施例】本発明の方法は、内部通路と外部鋳肌の間の鋳造壁厚の制御が相当改善されている1つ以上の内部通路を有する中空鋳物を製造する場合に有用である。特に、本発明の方法は、図1の実例で示されるように、ガスタービンエンジンのタービン部の高温使用環境中のブレード又はベーンを冷却すべく付根14及びこの付根の翼形16に貫設される内部冷却通路12を1つ以上有する中空タービンブレード又はベーン10(以下、翼形10)の製造に有用である。この冷却通路12は、ブレード又はベーンの付根14(部分的に図示)中の吸気口又は開口15を介してコンプレッサエアーを吸入する。中空翼形ブレード又はベーン10は、周知の鋳造処理法によって、等軸の指向性固化又は単結晶粒微小組織を有するように鋳造することができる。
【0013】周知の鋳込処理法による中空翼形10の鋳造において、本発明では、翼形16の図1の通路12及び内部リブ17を形成するような形状を成す凹凸形の外面21a、21b(図2)を有する単一構造又は多重構造のセラミックコア20が利用される。このコア20は、翼形16中の冷却通路を形成するとともに、ブレード又はベーンの根元中の冷却通路を形成するように図3のAの共通の下部20dで相互連結される、複数の伸長部20a、20b、20cを含むことができる。あるいは、本発明を実施する場合、根元部で連結されない単独のコア部20a、20b、20cを使用することができる。 」(段落【0012】及び【0013】)

ウ)「【0017】 ・・・(中略)・・・ 例えば、前縁通路形成領域R2や薄肉後縁形成領域R3等のその他の領域は、モールドが高鋳込温度に加熱されるモールド予熱作業中に(曲り等の)焼狂いが生じやすい。コア突起22は、許容不可能な壁厚のばらつきをもたらす当該基幹応力領域の焼狂い又は変位を相殺するために前記基幹応力領域に設けられる。換言すると、コア突起22は、壁厚制御の目的に必要とされるような数と位置に存在する。前縁通路形成領域R2では、突起22は、前記領域R2の長手に沿って千鳥状の位置に設けることができる。」(段落【0017】)

エ)「【0025】 ・・・(中略)・・・ 図7には、原型40を取り外した後のセラミックシェルモールド50が図示されている。」(段落【0025】)

オ)「【0027】 ・・・(中略)・・・ コア外面20の突起22のみによって翼形状シェルモールド50の中(即ち、シェルモールド鋳込キャビティ52の中)に支持されながら正確に位置決めされた状態に保たれる。 ・・・(中略)・・・ コア外面21a、21bとセラミックシェルモールド50の間の空間は、当該コアに一体成形されるとともにシェルモールド50の内壁に係合される突起22によって正確に制御される。この空間は、溶融金属で充填されて鋳造壁厚を形成するので、鋳物壁厚が正確に制御される。」(段落【0027】)

(2)上記(1)及び図面の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

カ)上記「(1)」並びに図1ないし4及び7の記載から、コア20の伸長部20bに対応するタービンブレード10の内部冷却通路12は蛇行しており、タービンブレード10は蛇行内部冷却通路12を含むものであることが分かる。

キ)上記「(1)」並びに図1ないし4及び7の記載から、タービンブレード10の前縁及び後縁に対するコア20の伸長部20a、伸長部20b及び伸長部20cの配置からみて、コア20は共通の下部20dで連結される前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20cからなることが分かる。

ク)上記「(1)」及び上記「カ)」並びに図1ないし4及び7の記載から、コア20には、鋳造すべきタービンブレード10の蛇行内部冷却通路12と他の内部冷却通路12の2つの通路間のリブ17部分に沿って根元部から先端まで延びる空間があることが分かる。

ケ)上記「キ)」及び上記「ク)」並びに図1ないし4及び7の記載から、鋳造すべきタービンブレード10の蛇行内部冷却通路12の2つの通路間のリブ17部分に沿って根元部から先端まで延びる空間をそれぞれの間に備える前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20cであることが分かる。

(3)上記「(1)」及び上記「(2)」並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「蛇行内部冷却通路12を含むタービンブレード10の鋳造用コア20であって、
鋳造すべきタービンブレード10の蛇行内部冷却通路12の2つの通路間のリブ17部分に沿って根元部から先端まで延びる空間をそれぞれの間に備える前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20cと、
翼形状シェルモールド50の中に支持され、且つ、根元中の冷却通路を形成するように共通の下部20dで相互連結される前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20cからなるコア20。」

3.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「内部冷却通路12」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明における「冷却通路」に相当し、以下同様に、「タービンブレード10」は「タービンバケット」に、「コア20」は「コア」に、「翼形状シェルモールド50の中」は「鋳型内」に、「支持され」は「配置し得る」に、
「前縁伸長部20a」又は「前縁伸長部20a及び中央伸長部20b」は「前縁コア部(12)」に、
「中央伸長部20b及び後縁伸長部20c」又は「後縁伸長部20c」は「後縁コア部(14)」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「蛇行冷却通路を含むタービンバケットの鋳造用コアであって、
鋳型内に配置し得る前縁コア部、及び
後縁コア部
からなるコア。」

<相違点>
本願発明においては、「鋳造すべきタービンバケットの蛇行冷却通路の2つの通路間の隔壁部分に沿って根元部から先端まで延びる分割線(16)によって上記前縁コア部と分離していて、鋳型内に別々に配置し得る後縁コア部(14)」であるのに対し、
引用発明においては、「鋳造すべきタービンブレード10の蛇行内部冷却通路12の2つの通路間のリブ17部分に沿って根元部から先端まで延びる空間をそれぞれの間に備える前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20cと、翼形状シェルモールド50の中に支持され、且つ、根元中の冷却通路を形成するように共通の下部20dで相互連結される前縁伸長部20a、中央伸長部20b及び後縁伸長部20c」であって、分割線による分離に関する構成を有しない点。

4.判断

上記相違点について以下に検討する。
引用文献には、「本発明を実施する場合、根元部で連結されない単独のコア部20a、20b、20cを使用することができる。」こと(以下、「設計変更例」という。上記「2.(1)イ)段落【0013】」参照。)が記載されている。そこで、引用発明の各伸長部(本願発明の各「コア部」に対応。以下、同様。)の連結箇所である「共通の下部20d」なる「根元部」を備えたコア20において、上記設計変更例に基づき連結されないものとする際に、「共通の下部20d」は根元中の冷却通路を形成するために必要とされるものであるから(上記「2.(1)イ)段落【0013】」参照。)、これを除去することなく切断分離とすることに当業者の格別の創意は要しないといえる。そして、「共通の下部20d」なる「根元部」の(切断)分離箇所が分割線を形成することは明らかであるし、各伸長部(「コア部」)の間に位置するリブ17(「隔壁」)部分に沿って根元部から先端まで延びる空間をも分離に係る分割線として、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
なお、分離について補足すると、コアの分割線による分離態様は周知技術(以下、「周知技術1」という。特開昭56-68549号公報の第2ページ左上欄第7ないし11行及び第1ないし3図参照。)といえるし、上記「2.(2)カ)」において述べたとおり、引用発明の「コア20」における「中央伸長部20b」は、「タービンブレード10」における「蛇行内部冷却通路12」に対応する伸長部(「コア部」)であり、「中央伸長部20b」と「前縁伸長部20a」との分割箇所又は「中央伸長部20b」と「後縁伸長部20c」との分離箇所は、鋳造すべきタービンブレード10の蛇行冷却通路(と他の内部冷却通路12)の2つの通路間の隔壁部分であるし、「前縁伸長部20a及び中央伸長部20b」に対する「後縁伸長部20c」の分離とすること、又は、「前縁伸長部20a」に対する「中央伸長部20b及び後縁伸長部20c」の分離とすることについても当業者の格別の創意を要するものではない。
また、本願の図1を参照すると、分割線の両側すなわち前縁及び後縁のそれぞれに蛇行冷却流路を備えることが分かる。しかしながら、当該技術分野において、冷却流路を蛇行冷却流路とすることは文献を示すまでもなく慣用された技術(以下、「慣用技術1」という。)であるし、前縁及び後縁のそれぞれを蛇行冷却流路とする翼は周知技術(以下、「周知技術2」という。特開昭59-64140号公報の特にFIG.1及び2参照。)であるから、引用発明の「前縁伸長部20a」又は「後縁伸長部20c」をタービンブレード10の蛇行冷却通路に対応した伸長部(「コア部」)として構成することに当業者の格別の創意は要しないといえる。
さらに、本願の図1を参照すると、根元部の分割線16に加え先端側の先端部においても根元部と同様の連結部材が存在すると共に分割線が記載されていることが分かる。しかしながら、コアの根元部及び先端部を連結態様とすることは慣用技術(以下、「慣用技術2」という。特開昭59-64140号公報の特にFIG.1及び2、特開昭61-74754号公報の第3ページ左下欄5ないし7行及び第5図参照。)であるから、先端側の先端部なる連結部材を分離に係る分割線を備えるものとすることについても当業者の格別の創意は要しないといえる。

そして、本願発明を全体として検討しても、本願発明の奏する効果は、引用発明、設計変更例、周知技術1及び2、並びに、慣用技術1及び2から当業者が予測し得る程度のものである。

5.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び設計変更例に基づいて、引用発明、設計変更例及び周知技術1に基づいて、引用発明、設計変更例、周知技術1及び2並びに慣用技術1に基づいて、又は、引用発明、設計変更例、周知技術1及び2並びに慣用技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-08 
結審通知日 2013-01-15 
審決日 2013-01-28 
出願番号 特願2000-236313(P2000-236313)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
藤原 直欣
発明の名称 ガスタービンバケット壁厚制御  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  

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