• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1275523
審判番号 不服2012-2147  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-03 
確定日 2013-06-12 
事件の表示 特願2007-500941「多層金属ガスケットおよび組立品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 9日国際公開,WO2005/081957,平成19年 9月 6日国内公表,特表2007-525629〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概略
本願は,2005年2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2004年2月26日,米国,2005年2月22日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成20年2月6日付けで手続補正がなされた後,平成23年4月22日付けで拒絶の理由が通知され,平成23年8月3日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたが,平成23年10月17日付けで拒絶査定がなされた。
それに対し,平成24年2月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされた。

第2 平成24年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成24年2月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
(1) 平成24年2月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
多層金属ガスケットであって,
少なくとも第1および第2のガスケット層を含み,該ガスケット層は,概ね平面状の本体を有し,該ガスケット層の各々に,少なくとも1つの整列した穴と,互いに対向して整列し,かつそれぞれの本体の平面部から,前記穴を囲んで半径方向外側に間隔をおいて突出した少なくとも1つの関連する封止ビードとを備えて形成され,前記多層金属ガスケットはさらに,
前記ガスケット層の間に配置され,かつ前記ガスケット層のいずれか一方よりも小さい面積を有する部分ストッパ層を含み,前記ストッパ層は,前記封止ビード全体に亘って,前記封止ビードの半径方向内側の位置から,前記封止ビードの半径方向外側の位置まで延び,かつ前記封止ビードの半径方向外側で前記ガスケット層の少なくとも一方に固定され,封止ビードの半径方向内側では固定されておらず,
前記ストッパ層は,前記ガスケット層の一方のみに固定される,多層金属ガスケット。」
と補正された(なお,下線は,請求人が付した本件補正による補正箇所を示す。)。
(2) 本願の願書に最初に添付した,明細書の段落【0013】,特許請求の範囲の請求項3等の記載からすると,上記補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲の請求項及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものである。
そして,上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「部分ストッパ層」の「固定され(る)」部位に関し,「前記ストッパ層は,前記ガスケット層の一方のみに固定される」と限定するもので,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

2 引用例に記載された事項
(1)(i) 原査定の拒絶の理由に引用された「引用文献2」であり,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-286141号公報(以下「引用例」という。)には,「内燃機関のシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介在される金属ガスケットの改良に関(し)」(段落【0001】),以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に介在されて両面間をシールする金属ガスケットであって,シリンダ用開口周縁部にビードを形成した弾性金属基板と,前記ビードの凸部側に配置され,前記弾性金属基板より薄い金属薄板とで構成された部分を有することを特徴とする金属ガスケット。
・・・
【請求項3】 前記金属薄板が弾性金属基板のビードの外側領域で固定されている請求項1または請求項2に記載の金属ガスケット。
【請求項4】 前記弾性金属基板にスリットが形成され,前記金属薄板が前記弾性金属基板のスリット部に折り返して固定されている請求項3に記載の金属ガスケット。」
・「【0013】また,前記金属ガスケットにあっては,弾性金属基板に真円,楕円,角穴形状等のスリットが形成され,前記金属薄板の外周縁に一体に形成した係止部を前記スリットに係止することで弾性金属基板に固定されている。固定する場合の固定数については,できる限り数多くの場所で固定することによってエンジン運転中の金属薄板のズレを抑制することができるが,加工工数を考慮した場合,一つのシリンダに対して1?6箇所で固定することが望ましい。その場合,弾性金属基板に備えられているエンジン冷却水の通路孔を前記スリットとして用いることができる。前記スリットの形状は,真円,楕円,角穴等幅広く採用されるが,金属薄板を弾性金属基板の適切な位置に精度良く固定し,さらにズレを防止するためには,スリット形状は真円または楕円が好ましい。」
・「【0018】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態としては,図1?図2に示すように,金属ガスケットはシリンダ用開口1の周縁部にビード2を形成した2枚の弾性金属基板A,Aと,前記基板より薄い金属板であって,シリンダ用開口1の周縁部を所要の幅で囲繞し,かつ基板のビード2の凸部に対向して基板間に配置された環状の金属薄板Bとで構成する。環状の各金属薄板Bは隣り合う部分で一体に接続する構成となし,かつ金属薄板Bはその外周縁から一体に突出させた係合部3を,一方の弾性金属基板Aに形成したスリット4に入れて折り返すことで,スリット側の弾性金属基板に固定する。
【0019】
【実施例】図1?図2に,本発明の第1実施例を示す。図1は金属ガスケットの平面図,図2はそのX-X線の断面拡大図である。同図において,金属ガスケットは,多気筒エンジンの各シリンダ用開口1に沿って形成された凸形ビードを備えた厚さ0.2?0.3mmの2枚の弾性金属基板A,Aと,前記弾性金属基板A,Aより薄い厚さ0.08?0.12mmの金属板であって,シリンダ用開口の周縁を所要の幅で囲繞し,かつ前記基板のビードの凸部側に対向して基板間に配置された環状の金属薄板Bとで構成されている。また,前記環状の各金属薄板Bは隣り合う部分で一体に接続された構成とされている。
【0020】前記環状の各金属薄板Bは,その外周縁から一体に突出されている係止部3を,一方の弾性金属基板Aに形成したスリット4に入れて折り返すことで,スリット側の弾性金属基板Aに固定されている。
【0021】上記金属ガスケットのように,弾性金属基板Aに対し,シリンダ用開口1を囲繞する部位に金属薄板Bを固定した構造によれば,シリンダ用開口1を囲繞する領域は,他の領域に比べ金属薄板Bの板厚部分だけ厚いため,締め付け時のシール面圧を高めることができる。
【0020】さらに前記金属薄板Bをビード外側領域で広げることにより,シリンダ用開口1を囲繞する領域のシール面圧が均一となり,かつビードを全圧縮にて締め付けることで,ビードの耐疲労性の向上およびビードの面圧低下が抑制され,耐久信頼性に富んだシール性能を発揮することができる。」
(ii) また,図2において,各弾性金属基板Aが,概ね平面状の本体及び3つのシリンダ用開口1を有する点,互いに対向して整列し,各弾性金属基板Aの本体の平面部分から,シリンダ用開口1を囲んで半径方向外側に間隔をおいて突出しているビード2を有する点が見て取れる。

(2) 上記の記載及び図面の記載からみて,上記引用例には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(引用発明)
「金属ガスケットであって,
2枚の弾性金属基板A,Aを含み,該弾性金属基板A,Aは,概ね平面状の本体を有し,該弾性金属基板A,Aの各々に,3つの整列したシリンダ用開口1と,互いに対向して整列し,かつそれぞれの本体の平面部から,前記シリンダ用開口1を囲んで半径方向外側に間隔をおいて突出したビード2とを備えて形成され,前記金属ガスケットはさらに,
前記弾性金属基板A,Aの間に配置され,かつ前記弾性金属基板A,Aの周縁部を所要の幅で囲繞する金属薄板Bを含み,前記金属薄板Bは,前記ビード2全体に亘って,前記ビード2の半径方向内側の位置から,前記ビード2の半径方向外側の位置まで延び,かつ前記ビード2の半径方向外側で前記弾性金属基板Aの一方に形成したスリット4に,その係止部3を入れて折り返すことで固定され,ビード2の半径方向内側では固定されておらず,
前記金属薄板Bは,前記弾性金属基板Aの一方のみに固定される,金属ガスケット。」

3 対比及び判断
(1)(i) 本願補正発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「2枚の弾性金属基板A,A」は本願補正発明の「第1および第2のガスケット層」に相当し,以下同様に,「シリンダ用開口1」は「穴」に,「ビード2」は「封止ビード」に,それぞれ相当し,引用発明は,「2枚の弾性金属基板A,A」よりなる「金属ガスケット」であるから,本願補正発明同様,「多層金属ガスケット」ということができる。
また,引用発明の「金属薄板B」は,その有する機能に照らすと本願補正発明の「部分ストッパ層」に相当し,
ア 弾性金属基板A,Aの間に配置されるものであること
イ 弾性金属基板A,Aの周縁部を所要の幅で囲繞するものであるから,弾性金属基板A,Aよりも小さい面積を有することは明らかであること
ウ 前記ビード2全体に亘って,前記ビード2の半径方向内側の位置から,前記ビード2の半径方向外側の位置まで延びていること
からすると,「前記ガスケット層の間に配置され,かつ前記ガスケット層のいずれか一方よりも小さい面積を有する部分ストッパ層を含み,前記ストッパ層は,前記封止ビード全体に亘って,前記封止ビードの半径方向内側の位置から,前記封止ビードの半径方向外側の位置まで延び(る)」点で,本願補正発明の「ストッパ層」と一致する。
ところで,引用発明の「金属薄板B」は,
エ 前記ビード2の半径方向外側で前記弾性金属基板Aの一方に形成したスリット4に,その係止部3を入れて折り返すことで固定され,ビード2の半径方向内側では固定されておらず,前記弾性金属基板Aの一方のみに固定される
ものである。
上記引用例には,この点に関し,「また,前記金属ガスケットにあっては,弾性金属基板に真円,楕円,角穴形状等のスリットが形成され,前記金属薄板の外周縁に一体に形成した係止部を前記スリットに係止することで弾性金属基板に固定されている。固定する場合の固定数については,できる限り数多くの場所で固定することによってエンジン運転中の金属薄板のズレを抑制することができるが,加工工数を考慮した場合,一つのシリンダに対して1?6箇所で固定することが望ましい。その場合,弾性金属基板に備えられているエンジン冷却水の通路孔を前記スリットとして用いることができる。前記スリットの形状は,真円,楕円,角穴等幅広く採用されるが,金属薄板を弾性金属基板の適切な位置に精度良く固定し,さらにズレを防止するためには,スリット形状は真円または楕円が好ましい。」(段落【0013】)と記載されており,このような記載からすると,引用発明は,上記エの構造とすることで,金属薄板Bを弾性金属基板Aに,精度良く,ズレないように,固定するものであることがわかり,あえてスリット4内で係止部3を移動させることを企図したものではなく,一般的に理解されるとおり,金属薄板Bを弾性金属基板Aに固定するものであるということができる。
他方,本願補正発明に係る特許請求の範囲の請求項1には,「固定」の態様について特段の特定はなく,上記エのような構造を排除する記載もない。
そうすると,引用発明の「金属薄板B」は,「前記封止ビードの半径方向外側で前記ガスケット層の少なくとも一方に固定され,封止ビードの半径方向内側では固定されておらず」,「前記ガスケット層の一方のみに固定される」点においても,本願補正発明の「ストッパ層」と一致するといえる。
(ii) 以上の点を総合的にみれば,本願補正発明と引用発明とは,
「多層金属ガスケットであって,
少なくとも第1および第2のガスケット層を含み,該ガスケット層は,概ね平面状の本体を有し,該ガスケット層の各々に,少なくとも1つの整列した穴と,互いに対向して整列し,かつそれぞれの本体の平面部から,前記穴を囲んで半径方向外側に間隔をおいて突出した少なくとも1つの関連する封止ビードとを備えて形成され,前記多層金属ガスケットはさらに,
前記ガスケット層の間に配置され,かつ前記ガスケット層のいずれか一方よりも小さい面積を有する部分ストッパ層を含み,前記ストッパ層は,前記封止ビード全体に亘って,前記封止ビードの半径方向内側の位置から,前記封止ビードの半径方向外側の位置まで延び,かつ前記封止ビードの半径方向外側で前記ガスケット層の少なくとも一方に固定され,封止ビードの半径方向内側では固定されておらず,
前記ストッパ層は,前記ガスケット層の一方のみに固定される,多層金属ガスケット。」
である点で一致し,相違するところは格別ない。
よって,本願補正発明は,上記引用例に記載された発明である。

(2) 請求人は,当審における審尋に対する平成24年11月29日付けの回答書(以下「回答書」という。)において,部分ストッパ層をガスケット層に固定する点に関し,上記引用例の段落【0020】並びに図1及び図2においては,その図面(特に図2)から明らかなように,金属薄板Bの係止部3は,弾性金属プレート1のスリット4に係止されているだけで,固定されていない,そのため,図2から明らかなように,金属薄板Bの係止部3は,スリット4内で移動してしまうため,金属薄板Bは全体として弾性金属基板Aに沿った方向にその位置が移動してしまう,したがって,上記引用例に開示された発明においては,ストッパ層が片面の一方側端部のみがガスケット層に固定されている本願補正発明のようにストッパ層の全体としての位置の移動を抑制することはできない,と主張している。
そこで,部分ストッパ層をガスケット層に固定する点について,さらに検討を進めるに,本願明細書にはこの点に関し,以下のような記載がある。
・「部分ストッパ層16は,第1および第2のガスケット層12,14の少なくとも一方,好ましくは一方のみに,好ましくは溶接によって固定される。図2の第1の実施例では,ストッパ層16は,溶接ジョイント41により,封止ビード26,28の半径方向内側の位置で,第1のガスケット層12に固定される。・・・ストッパ層16を固定するための好ましい手段は,溶接であり,好ましくはレーザ溶接であるが,リベット締め,接着剤,中間接着層などに限定されないその他の技術を用いることもできる。」(段落【0013】)
・「図7は,この発明の第5の実施例に従って構成されたガスケット410を示す。ここでは,同一の参照番号を使用して同様の特徴を示しているが,400を補っている。この実施例では,ガスケットの構造は,図2のガスケットの構造と同一であるが,例外は,取付け溶接部441が,ビード426,428の外向きのストッパ層の,半径方向内側ではなく,半径方向外側443に位置しているという点である。・・・この発明の範囲内で,図7に示したのと同じ取付け溶接部421の外向きの位置が,図4から図6の他の実施例の各々にも適用できると考えられることを理解されたい。」(段落【0018】)
このような記載からすると,本願補正発明において,固定するための手段として,溶接,特にはレーザ溶接が好ましく,リベット締め,接着剤,中間接着層などを用いることができることがわかるが,本願明細書には,引用発明のように,スリットに係止部を入れて折り返すことで固定するような態様については例示がない。
以上の点を踏まえると,引用発明の固定の態様は,本願補正発明が想定している固定の態様と相違し,その構造に照らし,請求人が主張するような事象が生じうると解する余地もないではないが,たとえ,そのような観点から,引用発明が固定の態様の点で本願補正発明と相違しているとしても,この点は当業者にとって容易想到である。
すなわち,上記引用例には,他の実施例に関してではあるが,スポット溶接,レーザ溶接によって,金属薄板Bを弾性金属基板Aに固定する旨(段落【0026】),接着剤によって,金属薄板Bを弾性金属基板Aに固定する旨(段落【0027】)の記載があり,引用発明において,固定度合いを高めるために,固定部位に上記のような溶接や接着剤により固定する点を重畳することは,当業者にとって格別困難なことではなく,当業者が容易に想到できた事項である。

(3) 請求人は,回答書において,本願補正発明によれば,「ストッパ層の全体としての位置の移動を抑制しながらも」,「ガスケット層は,圧縮によって締め付けられたときに,ストッパ層が固定されていないガスケット層に対して,自由に移動することができるため,ガスケット層上の封止ビードの変形を過度に抑制せず,それによって,封止ビードの変形がさらに均等になる」(出願当初明細書の段落【0010】参照)という,有利な効果が奏される,などと主張しているが,このような効果も,上記引用例の記載から十分予測可能な範囲内ものであって,格別ではない。

(4) 以上を総合すると,本願補正発明は,上記引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,又は,上記引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし請求項18に係る発明は,平成20年2月6日付け及び平成23年8月3日付けの手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項18に記載されたとおりのものであると認められるが,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
多層金属ガスケットであって,
少なくとも第1および第2のガスケット層を含み,該ガスケット層は,概ね平面状の本体を有し,該ガスケット層の各々に,少なくとも1つの整列した穴と,互いに対向して整列し,かつそれぞれの本体の平面部から,前記穴を囲んで半径方向外側に間隔をおいて突出した少なくとも1つの関連する封止ビードとを備えて形成され,前記多層金属ガスケットはさらに,
前記ガスケット層の間に配置され,かつ前記ガスケット層のいずれか一方よりも小さい面積を有する部分ストッパ層を含み,前記ストッパ層は,前記封止ビード全体に亘って,前記封止ビードの半径方向内側の位置から,前記封止ビードの半径方向外側の位置まで延び,かつ前記封止ビードの半径方向外側で前記ガスケット層の少なくとも一方に固定され,封止ビードの半径方向内側では固定されない,多層金属ガスケット。」

2 引用例に記載された事項
上記引用例に記載された事項は,上記第2・2のとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は,本願補正発明から,「前記ストッパ層は,前記ガスケット層の一方のみに固定される」との限定を省いたものである(上記第2・1)。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み,さらに発明を特定するために必要な事項をより具体的にしたものに相当する本願補正発明が,上記第2・3で検討したとおり,引用発明と相違するところはなく,たとえ相違するとしても,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明が,実質的に同様の理由により,上記引用例に記載された発明であり,又は,上記引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることは,明らかである。

4 以上のとおり,本願発明(請求項1に係る発明)は,上記引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,又は,上記引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上,本願の請求項2ないし請求項18に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-09 
結審通知日 2013-01-15 
審決日 2013-01-28 
出願番号 特願2007-500941(P2007-500941)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16J)
P 1 8・ 121- Z (F16J)
P 1 8・ 113- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野田 達志鶴江 陽介  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 窪田 治彦
常盤 務
発明の名称 多層金属ガスケットおよび組立品  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ