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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1275577
審判番号 不服2011-16524  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-01 
確定日 2013-06-10 
事件の表示 特願2004-220586「LEDモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日出願公開、特開2005- 57272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年7月28日(パリ条約による優先権主張2003年7月31日、ドイツ)の出願であって、 平成22年10月1日付けで拒絶の理由が通知され、平成23年1月11日に手続補正がなされたが、同年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされた後、当審において、平成24年8月21日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月25日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年8月1日付けの手続補正書の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「複数の混合光LED(1)および複数の補助LED(2)を包含する、複数のLEDを有するLEDモジュールにおいて、
前記混合光LED(1)は1つのLEDチップ(4)をそれぞれ有し、該1つのLEDチップ(1)はそれぞれ第1のケーシング内に配置されており、
補助LED(2)は放射波長が異なる複数のLEDチップ(6,7,8)をそれぞれ有し、該LEDチップ(6,7,8)はそれぞれ共通の第2のケーシング(9)内に配置されており、
前記第1のケーシングおよび前記第2のケーシング(9)は共通の基板(3)上に取り付けられていることを特徴とする、複数のLEDを有するLEDモジュール。」(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)

第3 刊行物の記載
1 刊行物に記載された事項
(1)当審拒絶理由で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-58125号公報 (以下「引用文献」という。)には図とともに以下の記載がある。

ア 「【請求項10】 表示部を照明するために白色LEDを用いた照明光源部と、色温度補正用照明光源と、前記白色LEDおよび色温度補正用照明光源の駆動を行う駆動手段と、照明調整モードを設定する設定手段と、前記白色LEDの特性データを記載した特性記憶手段と、前記照明調整モードが設定されたとき、前記特性データ記憶手段により記憶された特性データに基づいて、前記駆動手段を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記照明調整モードで駆動された前記照明光源および色温度補正用照明光源の合成特性が、所定の特性になるよう前記駆動手段を制御し、前記所定の特性における駆動状態に基づき前記特性データを変更することを特徴とする電子機器。」

イ 「【0005】しかしながら、LEDをバックライト部用の光源として用いた場合における問題の一つは、発光光の照度や分光特性が一様ではなく、個々に発光特性のバラツキがあるということである。特に、白色LEDは例えば青色波長の光源からの光を蛍光材料により波長変換して白色光を得るため、蛍光材料による白色点変動が大きいという問題がある。バラツキのあるLEDを、そのまま液晶ディスプレイのバックライト等の照明光源として用いると、液晶ディスプレイに表示される画像の色が異なってしまい、全体として色バランスの崩れた画像になり易い。従って、それを備えた電子機器の製品としての価値を低下させてしまう。これに対し、画像の所望の色を得るために発光特性を狭い範囲で管理しようとすると、LEDの歩留まりが悪化し、その単価が急激に上昇する。
【0006】本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、低コストでありながら、LEDをバックライトやフロントライト等の照明光源として用いた場合でも、画像の所望の色を再現できる表示部を備えた電子機器を提供することを目的とする。」

ウ 「【0041】図12は実際のLEDの配列を示す図である。図12に示すように、各LED160a、160b、160cは、回路基板PC上に配列され、この例では、図白色LED160aの両側に青色LED160bと赤色LED160cとが配列されている。ここでは、白色LED160aの補正のために、白色LED160aと同数の青色LED160bと赤色LED160cを配しているが、補正量が少ない場合には青色LED160bと赤色LED160cの数量を少なくしても良いし、あるいは、基板面積を小さくする場合には、青色LED160bと赤色LED160cとを組み合わせた素子を使用しても良い。」

エ 「【0042】次に、本案施の形態の動作について説明する。まず、デジタルスチルカメラ100の製造時に、たとえば、調整用特殊ソフトウエアやソフトウエアの隠し操作(マニュアルには記載されない操作方法)などにより、カメラを調整モードに設定する。調整モードでは、例えば特定値のグレーや白色を表示するので、現在のバックライト発光特性(発光の分光特性や輝度など)を測色的に測定する。測定した発光特性に基づき、白色LED160aの発光輝度を駆動電流を変化させることにより調整した後、色温度補正用LED(160b、160c)の駆動電流を変更し所定の照明色温度になるように調整する。具体的には、色温度が高い場合には、青色LED160bの駆動電流を低下させ、赤色LED160cの駆動電流を増加させる。あるいは、色温度が低い場合には、赤色LED160cの駆動電流を低下させ、青色LED160bの駆動電流を増加させる。かかるようにして、所定の照明特性になった(合成特性が所定の特性になったともいう)段階で、特性データを取得し、CPU110の内部メモリ(不図示の特性データ記憶手段であるEEPROMなど)に記憶しておく。ここで補正特性データは、照明特性を調整した後の白色LED160aの駆動電流値、青色LED160bの駆動電流値、赤色LED160cの駆動電流値である。」

オ 図12は、以下のものである。


2 引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載に照らせば、
引用文献には、
「表示部を照明するために白色LEDを用いた照明光源部と、
色温度補正用照明光源と、
白色LEDおよび色温度補正用照明光源の駆動を行う駆動手段と、
照明調整モードを設定する設定手段と、
白色LEDの特性データを記載した特性記憶手段と、
照明調整モードが設定されたとき、特性データ記憶手段により記憶された特性データに基づいて、駆動手段を制御する制御手段と、を有し、
制御手段は、照明調整モードで駆動された照明光源および色温度補正用照明光源の合成特性が、所定の特性になるよう駆動手段を制御し、所定の特性における駆動状態に基づき特性データを変更する、電子機器。」
が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イの記載に照らせば、
上記アの「白色LED」は、「青色波長の光源からの光を蛍光材料により波長変換して白色光を得る白色LED」であるといえる。

ウ 上記(1)イ及びウの記載を踏まえて、図12を見ると、
白色LED160aを用いた照明光源部と青色LED160bと赤色LED160cを用いた色温度補正用照明光源は同じ回路基板PC上に配列されたものであることが把握できる。
また、上記アの「白色LEDを用いた照明光源部」は、3個の白色LED(160a、160a、160a)を用いた照明光源部であり、
上記アの「色温度補正用照明光源」は、3個の青色LED(160b、160b、160b)及び3個の赤色LED(160c、160c、160c)を用いた色温度補正用照明光源であることが把握できる。

エ 上記(1)イの「基板面積を小さくする場合には、青色LED160bと赤色LED160cとを組み合わせた素子を使用しても良い。」との記載に照らせば、
上記アの「色温度補正用照明光源」は「青色LED160bと赤色LED160cとを組み合わせた素子」であるといえる。

オ 上記(1)エの記載に照らせば、
調整モードでは、
現在のバックライト発光特性を測色的に測定し、測定した発光特性に基づき、色温度が高い場合には、青色LED160bの駆動電流を低下させ、赤色LED160cの駆動電流を増加させる、あるいは、色温度が低い場合には、赤色LED160cの駆動電流を低下させ、青色LED160bの駆動電流を増加させる、かかるようにして、所定の照明特性になった段階で、特性データを取得し、CPU110の内部メモリに記憶することが理解できる。

カ 上記記載から、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「表示部を照明するために青色波長の光源からの光を蛍光材料により波長変換して白色光を得る3個の白色LED(160a、160a、160a)を用いた照明光源部と、
3個の青色LED(160b、160b、160b)及び3個の赤色LED(160c、160c、160c)を用いた色温度補正用照明光源と、
白色LEDおよび色温度補正用照明光源の駆動を行う駆動手段と、
照明調整モードを設定する設定手段と、
白色LEDの特性データを記載した特性記憶手段と、
照明調整モードが設定されたとき、特性データ記憶手段により記憶された特性データに基づいて、駆動手段を制御する制御手段と、を有し、
制御手段は、照明調整モードで駆動された照明光源および色温度補正用照明光源の合成特性が、所定の特性になるよう駆動手段を制御し、所定の特性における駆動状態に基づき特性データを変更し、
照明光源部と色温度補正用照明光源は同じ回路基板上に配列され、色温度補正用照明光源は青色LEDと赤色LEDとを組み合わせた素子であり、
調整モードでは、
現在のバックライト発光特性を測色的に測定し、測定した発光特性に基づき、色温度が高い場合には、青色LEDの駆動電流を低下させ、赤色LEDの駆動電流を増加させる、あるいは、色温度が低い場合には、赤色LEDの駆動電流を低下させ、青色LEDの駆動電流を増加させる、かかるようにして、所定の照明特性になった段階で、特性データを取得し、CPUの内部メモリに記憶する、
電子機器。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「照明光源部」は本願発明の「混合光LED」に相当し、同様に、
「色温度補正用照明光源」は「補助LED」に、
「回路基板」は「基板」に、
「配列され」は「取り付けられ」に、それぞれ、相当する。

(2)引用発明の「色温度補正用照明光源」が「青色LEDと赤色LEDとを組み合わせた素子」であることに照らせば、
引用発明の「色温度補正用照明光源」は、放射波長が異なる複数のLEDチップを有することになる。

(3)引用発明の「電子機器」は、「照明光源部」及び「色温度補正用照明光源」とを有しているから、引用発明は「LED光源装置」を備えているといえる。

(4)してみると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「複数の混合光LEDおよび複数の補助LEDを包含する、複数のLEDを有するLED光源装置において、
前記混合光LEDは1つのLEDチップをそれぞれ有し、
補助LEDは放射波長が異なる複数のLEDチップをそれぞれ有し、
LEDチップは共通の基板上に取り付けられている、
LED光源装置。」

(5)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
混合光LED及び補助LEDに関し、
本願発明は、「混合光LED(1)は1つのLEDチップ(4)をそれぞれ有し、該1つのLEDチップ(1)はそれぞれ第1のケーシング内に配置されており、
補助LED(2)は放射波長が異なる複数のLEDチップ(6,7,8)をそれぞれ有し、該LEDチップ(6,7,8)はそれぞれ共通の第2のケーシング(9)内に配置されており、
前記第1のケーシングおよび前記第2のケーシング(9)は共通の基板(3)上に取り付けられている」のに対して、
引用発明は、ケーシング内に配置されているか否か不明である点。

<相違点2>
LED光源装置に関し、
本願発明は、「LEDモジュール」であるのに対して、
引用発明は、「LEDモジュール」と呼べるものであるか否か不明である点。

4 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 1つのLEDチップを1つのケーシング内に配置したLED及び放射波長が異なる複数のLEDチップをまとめて1つのケーシング内に配置したLEDは、それぞれ、本願の優先日時点で周知である(例えば、
(ア)特開2003-86846号公報の【0050】及び図7を参照。
a 【0050】には、1つのLED内部にRGBそれぞれから選択される2以上のLEDチップ設置することが記載されている。

b 図7は、以下のものである。


(イ)特開2002-314138号公報の【0041】ないし【0058】、図1及び図2を参照。
a 【0058】には、赤色の発光素子と青色の発光素子を組合わせて白色の発光を得ることが記載されている。

b 図1は、以下のものである。


(ウ)特開2001-53340号公報の【0002】ないし【0004】及び図7を参照。
a 【0004】には、LED素子1aは、例えば赤色を発色し、LED素子1bは、例えば緑色を発色することが記載されている。

b 図7は、以下のものである。


(エ)特開平11-45958号公報の【0014】及び図3を参照。
a 【0014】には、LED10は、赤、緑、青の各発光部を1つの樹脂製パッケージ11内へ収納させたものであることが記載されている。

b 図3は、以下のものである。


(オ)特開平9-321341号公報の【0013】及び図1を参照。
a 【0013】には、パッケージ1内に、RGBがそれぞれ発光可能なLEDチップが3個設けられていることが記載されている。

b 図1は、以下のものである。


(カ)特開平7-38154号公報の【0019】及び図1ないし3を参照。
a 【0019】には、図2及び図3は、それぞれ2色及び3色の多色チップの実施例であることが記載されている。

b 図2は、以下のものである。


(キ)特開平6-104488号公報の【0014】及び図4を参照。
a 【0014】には、表面実装形発光ダイオード10aは異なる発光色の発光ダイオード素子12a、12bを内蔵していることが記載されている。

b 図4は、以下のものである。


以下「周知技術」という。)。

イ 上記周知技術に照らせば、
引用発明において、
白色LED(160a、160a、160a)のそれぞれを、1つのケーシング内に配置するとともに、
放射波長が異なる青色LED(160b)と赤色LED(160c)を、1つのケーシング内に配置することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ その結果、引用発明の「照明光源部」のLEDと「色温度補正用照明光源」のLEDとは、それぞれ、別のケーシング内に配置されるとともに、共通の「基板(回路基板)」上に取り付けられ(配列され)たものとなる。

エ 以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア 上記(1)で検討したように、
引用発明の「照明光源部」のLEDと「色温度補正用照明光源」のLEDを、それぞれ、別のケーシング内に配置するとともに、共通の基板上に取り付けることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記アに照らせば
引用発明の「電子機器」が備える「LED光源装置」は、本願発明を特定するために必要なすべての発明特定事項を備えたものとなるから、本願発明と同様に「LEDモジュール」と呼べるものである。

ウ 以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。

5 進歩性についてのまとめ
本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-11 
結審通知日 2013-01-18 
審決日 2013-01-29 
出願番号 特願2004-220586(P2004-220586)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 謙仁  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 小松 徹三
星野 浩一
発明の名称 LEDモジュール  
代理人 篠 良一  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  

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