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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H03H |
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管理番号 | 1275797 |
審判番号 | 不服2012-8109 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-04-16 |
確定日 | 2013-06-20 |
事件の表示 | 特願2006- 23524「水晶振動子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日出願公開、特開2007-208515〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年1月31日の出願であって、平成23年4月25日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月11日付けで手続補正書が提出され、平成24年1月12日付けで拒絶査定がなされ、同年4月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 平成24年4月16日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年4月16日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに変更する補正事項を含むものである。 「 【請求項1】 水晶振動素子が、ガラスから成る第一のウェーハ状部材に複数個形成されたベース基板に載置され、それぞれの水晶振動素子が一括的に封止されるようにガラスから成る第二のウェーハ状部材が被せられる水晶振動子の製造方法において、 該第一のウェーハ状部材上の各ベース基板にフォトリソグラフィー法により水晶振動素子が搭載されるベースパターンを形成する工程(S101)と、 該第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅に設けられている該ベースパターンのみを認識することによって位置合わせを行った後、該ベースパターン上に該水晶振動素子を搭載する工程(S102)と、 該水晶振動素子の周波数調整を行う工程(S103)と、 個々の該水晶振動素子が一括的に封止されるように、該第二のウェーハ状部材を該第一のウェーハ上部材に被せて接合し、一体のウェーハを形成する工程(S104)と、 複数の水晶振動子が形成された該ウェーハを、個々の該水晶振動子に個割り切断する工程(S105)と、 からなることを特徴とする水晶振動子の製造方法。」 2.本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合するか否かについて 当審は、以下の理由で、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないものであると判断する。 すなわち、本件補正後の上記請求項1は、「該第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅に設けられている該ベースパターンのみを認識することによって位置合わせを行った後、該ベースパターン上に該水晶振動素子を搭載する工程」という発明特定事項(以下、「発明特定事項A」と呼ぶ。)を含むものであるが、該発明特定事項Aが表す技術的事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」と呼ぶ。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項に該当し、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとは認められないから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 以下詳述する。 発明特定事項Aは、本件補正後の上記請求項1の記載全体からみて、「『第一のウェーハ状部材上に複数個形成されたベース基板の各々にフォトリソグラフィー法により形成されたベースパターン』の内の『第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅に設けられているベースパターン』のみを認識することによって、第一のウェーハ状部材を位置合わせし、その後に上記ベースパターンのそれぞれの上に水晶振動素子を搭載する工程」といった技術的事項(以下、「技術的事項A」と呼ぶ。)を表していると認められるが、そのような技術的事項Aは、当初明細書等には記載されていないし、当初明細書等に記載された事項から自明な事項とも認められないから、該技術的事項Aは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではない。 審判請求人は、審判請求書において、発明特定事項Aは当初明細書の段落[0015]及び[0016]の記載を根拠とするものである旨主張しており、該段落[0015]、[0016]の記載は下に転記するとおりであるが、該段落[0015]、[0016]の記載からは、技術的事項Aを読み取ることはことはできない。 なぜならば、該段落[0015]、[0016]から読み取ることができる技術的事項Aに関連する技術的事項は、「本願発明の製造方法によれば、図2に示されたようなA、B,C,Dの4点でのパターン認識を行うだけで必要な位置合わせができるので、個々の水晶振動素子1が搭載されるベースパターン6のパターン認識をする必要がない。」といった程度の技術的事項のみであるところ、そこで言及されている図2には、A、B、C,Dの4点が「『第一のウェーハ状部材上に複数個形成されたベース基板の各々にフォトリソグラフィー法により形成されたベースパターン』の内の『第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅に設けられているベースパターン』」を含むことは記載されていないし、他に技術的事項Aを表していると解し得る記載は該段落[0015]、[0016]にはないからである。 <当初明細書の段落[0015]及び[0016]> 「 【0015】 図2は本発明の水晶振動子5の第一のウェーハ状部材2に複数個形成されたベース基板3に、個々に水晶振動素子1が搭載される様子を上方からみた概略の上面模式図である。第一のウェーハ状部材2に複数個形成されたベース基板3に個々に水晶振動素子1を搭載する際は、ベース基板3のベースパターン6がフォトリソグラフィー法により形成されている為に、従来の蒸着によるベースパターンの形成では、ウェーハ部材と蒸着パターンを形成するのに必要なメタルマスクとの密着性が悪く、その結果、形成されるパターンの周縁部がぼやけてしまうのに比較して、ベースパターン6の平面度、及びパターン輪郭度が非常に高く、かつ、それぞれのベースパターン6が整列された状態での位置精度が著しく高い為に、個々の水晶振動素子1が搭載されるベースパターン6のパターン認識をする必要なく、図2に示されたようなA、B,C,Dの4点でのパターン認識を行うだけで著しく精度良く個々の水晶振動素子1を搭載することが出来る。 【0016】 図3は本発明の水晶振動子5の製造方法を示す工程図である。即ち、まずガラスなどから成る、第一のウェーハ状部材2上のガラスのベース基板3にフォトリソグラフィー法により水晶振動素子1が搭載されるベースパターン6を形成する工程(S101)があり、次に先のベースパターン6上に水晶振動素子1を搭載する工程(S102)を行い、次に水晶振動素子1の周波数調整を行う工程(S103)を行い、次に個々の水晶振動素子1が一括的に封止されるように第二のウェーハ状部材4を被せる工程(S104)を行い、そして最後に複数の水晶振動子5が形成された第一のガラスなどから成るウェーハ状部材2と第二のウェーハ状部材4が接合された一体のウェーハ7を個割り切断する工程(S105)とからなるものである。本発明の水晶振動子5の製造方法により、従来のセラミックから出来たベース基板3に比べ、本発明の水晶振動子1ではベースパターン6位置の認識回数を著しく減らすことが出来、認識作業の為のベースパターン6位置認識装置の動作時間の削減、及び位置制御(位置調整と決定)に要する演算時間を短縮し、水晶振動子5の生産コストを著しく削減することが出来るといった効果を奏する。」 上記段落[0015]、[0016]以外の当初明細書等の記載を念のため精査してみても、技術的事項Aを表していると解し得る記載を見出すことはできない。 以上のとおりであるから、技術的事項Aは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項に該当し、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 3.むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 上記補正却下の決定を前提とした本願についての検討 1.本願発明 上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成23年7月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 水晶振動素子が、ガラスから成る第一のウェーハ状部材に複数個形成されたべース基板に載置され、それぞれの水晶振動素子が一括的に封止されるようにガラスから成る第二のウェーハ状部材が被せられる水晶振動子の製造方法において、 該第一のウェーハ状部材上の各ベース基板にフォトリソグラフィー法により水晶振動素子が搭載されるベースパターンを形成する工程(S101)と、 該第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い、該ベースパターン上に該水晶振動素子を搭載する工程(S102)と、 該水晶振動素子の周波数調整を行う工程(S103)と、 個々の該水晶振動素子が一括的に封止されるように、該第二のウェーハ状部材を該第一のウェーハ上部材に被せて接合し、一体のウェーハを形成する工程(S104)と、 複数の水晶振動子が形成された該ウェーハを、個々の該水晶振動子に個割り切断する工程(S105)と、 からなることを特徴とする水晶振動子の製造方法。」 2.引用例記載発明 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-154183号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には以下の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、水晶振動子などの圧電振動子を収納するパッケージの構造およびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来のパッケージの構造とその製造方法について、図5と図6との斜視図を用いて説明する。 【0003】従来のパッケージの作成方法を、多数個処理の場合を例に上げ、図5と図6を用いて説明する。パッケージ部材11をマトリックス状に並べた、ガラスまたはシリコンを材料とするパッケージ部材基板10を形成する。 【0004】さらに、蓋12をマトリックス状に並べた、ガラスまたはシリコンを材料とする蓋基板13を作成する。 【0005】そして、このパッケージ部材基板10と蓋基板13とを張り合わせる。 【0006】その後、ダイシングソーやレーザーなどの切断方法により、X方向切断ライン15とY方向切断ライン16に沿って、切断あるいは溝入れを行う。その後、ブレイクダウンすることで個々のパッケージに切り出す。このようにして、切り出されたパッケージは、図6に示す形状となる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】図6に示すように、パッケージ部材11と蓋12のそれぞれのコーナー部19とエッジ部21とは、切断時の状態のままである。 【0008】図6のB-B部の断面状態を図7に示す。この図7に示すように、パッケージ部材11や蓋12は切断時の状態であるため、クラック45や、チッピング41や、バリ43が存在する。 【0009】さらには、コーナー部19やエッジ部21は、クラック45やチッピング41を引き起こしやすい状態となっている。 【0010】近年、パッケージの小型化や薄型化が展開されてきているため、この図7に示すようなクラック45や、チッピング41や、バリ43が原因となって、パッケージはリークを引き起こす。 【0011】ダイシングソーやレーザーなどの切断方法によりパッケージ部材11と蓋12を切り出す。このために、コーナー部19やエッジ部21には、チッピング41や、クラック45や、バリ43が発生し、これがパッケージのリークやパッケージ内雰囲気の安定性およびパッケージ自身の耐久性の低下の原因となっている。 【0012】本発明の目的は、エッジ部に存在するチッピング、クラック、バリを解消し、パッケージ内雰囲気の安定性およびパッケージ自身の耐久性を向上させるためのパッケージ構造およびその製造方法を提供することである。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のパッケージおよびその製造方法においては、下記記載の手段を採用する。」 「【0016】本発明のパッケージの製造方法は、パッケージ部材基板にキャビティーとスルーホールと面取り用溝をフォトリソグラフィーとエッチングとにより形成し、さらにパッケージ部材基板上に接合層と引き出し電極とを形成してパッケージ部材を形成する工程と、引き出し電極上に水晶片を固定する工程と、フォトリソグラフィーとエッチングにより凹部と面取り用溝とを形成した蓋とパッケージ部材とを接合する工程と、パッケージを切り出す工程とを有することを特徴とする。」 「【0026】つぎに、図3(a)から図3(g)を用いて、本発明のパッケージの製造方法を説明する。 【0027】まずはじめに、パッケージ部材11の製造方法を説明する。図3(a)に示すように厚さ0.5mmのパイレックス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラスのガラスやシリコンからなるパッケージ部材基板10の両面にドライフィルムをラミネートし、フォトマスクを用いて露光処理と、現像処理とを行い、所定のレジストパターン35を形成する。 【0028】そして、図3(b)に示すように、レジストパターン35をマスクとして、フッ酸と硝酸の混合液を用いて化学エッチングにより、パッケージ部材基板10の上面に深さ0.3mmのキャビティー32と、パッケージ部材基板10の下面に深さ0.3mm、幅0.5mmの面取り用溝37と、パッケージ部材基板10の両面から直径0.3mmのスルーホール33とを同時に形成する。 【0029】その後、図3(c)に示すように、レジストパターン35を除去し、パッケージ部材11を形成する。 【0030】つぎに、図3(d)に示すように、パッケージ部材11の両面に、スパッタリング法や真空蒸着法などの膜形成技術により、アルミニウム薄膜層を形成する。 【0031】その後、両面に感光性ドライフィルムを張り付け、フォトマスクを用いて露光処理、および現像処理を行い、接合層25と引き出し電極27とを形成する。 【0032】つぎに、図3(e)に示すように、パッケージ部材11上の接合層25に水晶片29を導電性接着剤28を用いて固定する。 【0033】そして図3(f)に示すようにパッケージ部材11と同じようなレジストパターン形成とエッチング処理の手法で形成した、上面に深さ0.3mm、幅0.5mmの面取り用溝37と、下面に深さ0.3mmの凹部31を有する厚さ0.5mmのガラスあるいはシリコンからなる蓋12を、パッケージ部材11と重ね合わせる。 【0034】そして、150℃から250℃の温度に加熱して、接合層25をプラス電位、蓋12をマイナス電位にし、300Vから400Vの直流電圧を印加して、陽極接合技術により、パッケージ部材11と蓋12とを接合し、パッケージの気密封止を行う。 【0035】最後に、図3(g)に示すように、面取り用溝37に沿ってブレイクダウン、あるいは、この面取り用溝37の幅よりも狭い切断幅でダイシングソーやレーザー加工により切り出すことで、本発明のパッケージを得る。」 そして、上記記載事項を関連図面と技術常識に照らせば、審判請求人が審判請求書の【請求の理由】の3.の(d)の欄で認めるとおり、以下の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。 「水晶振動素子が、ガラスから成る第一のウェーハ状部材に複数個形成されたべース基板に載置され、それぞれの水晶振動素子が一括的に封止されるようにガラスから成る第二のウェーハ状部材が被せられる水晶振動子の製造方法において、 該第一のウェーハ状部材上の各ベース基板にフォトリソグラフィー法により水晶振動素子が搭載されるベースパターンを形成する工程と、 該ベースパターン上に該水晶振動素子を搭載する工程と、 個々の該水晶振動素子が一括的に封止されるように、該第二のウェーハ状部材を該第一のウェーハ上部材に被せて接合し、一体のウェーハを形成する工程と、 複数の水晶振動子が形成された該ウェーハを、個々の該水晶振動子に個割り切断する工程と、 を備えている水晶振動子の製造方法。」 3.対比 本願発明と引用例記載発明とを対比すると、両者の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「水晶振動素子が、ガラスから成る第一のウェーハ状部材に複数個形成されたべース基板に載置され、それぞれの水晶振動素子が一括的に封止されるようにガラスから成る第二のウェーハ状部材が被せられる水晶振動子の製造方法において、 該第一のウェーハ状部材上の各ベース基板にフォトリソグラフィー法により水晶振動素子が搭載されるベースパターンを形成する工程と、 該ベースパターン上に該水晶振動素子を搭載する工程と、 個々の該水晶振動素子が一括的に封止されるように、該第二のウェーハ状部材を該第一のウェーハ上部材に被せて接合し、一体のウェーハを形成する工程と、 複数の水晶振動子が形成された該ウェーハを、個々の該水晶振動子に個割り切断する工程と、 を備えている水晶振動子の製造方法。」である点。 (相違点1) 本願発明の「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」は、「第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い、該ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」であるのに対し、引用例記載発明の「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」は、「第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い、該ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」ではない点。 (相違点2) 本願発明は、「水晶振動素子の周波数調整を行う工程」を有するのに対し、引用例記載発明は、「水晶振動素子の周波数調整を行う工程」を有しない点。 4.判断 (1)(相違点1)について 以下の事情を勘案すると、引用例記載発明の「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」を、「第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い、該ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 ア.引用例には、引用例記載発明の「水晶振動素子を搭載する工程」(図3(e)の工程)において位置合わせをすることに関する記載がないが、該引用例記載発明の「水晶振動素子を搭載する工程」において、「水晶振動素子」の位置と「当該水晶振動素子を搭載するベースパターン」の位置を合わせる必要があることは、当然のことである。 イ.また、引用例記載発明における「ベースパターン」は、「第一のウェーハ状部材」上に複数個形成された「ベース基板」の各々にフォトリソグラフィー法により形成されるものであるから、その位置は当然に「第一のウェーハ状部材」の位置によって決定される。したがって、引用例記載発明において「水晶振動素子」の位置と「当該水晶振動素子を搭載するベースパターン」の位置を合わせるために、「水晶振動素子」と「第一のウェーハ状部材」の間の位置合わせが必要であることも当然のことである。 ここで、「水晶振動素子」と「第一のウェーハ状部材」の間の位置合わせを行う際に、「水晶振動素子」を基準に「第一のウェーハ状部材」の位置を合わせるようにするか、「第一のウェーハ状部材」を基準に「水晶振動素子」の位置を合わせるようにするかは、当業者が適宜決定し得たことである(なお、このことは、前者(「水晶振動素子」を基準に「第一のウェーハ状部材」の位置を合わせるようにすること)を規定したものと解される「第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い」という発明特定事項が、それについての具体的記載が当初明細書等にないにもかかわらず平成23年7月11日付けの手続補正書で導入されている経緯からもいえることである。)。 ウ.以上によれば、引用例記載発明の「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」を、「第一のウェーハ状部材を、位置合わせを行い、該ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」とすること自体は、当業者が容易に推考し得たことである。 エ.一方、平面上の複数箇所において位置合わせが必要な、物の製造工程において、当該複数箇所を囲む平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって、該位置合わせを行うようにすることは、原査定に周知例として引用された特開2001-223456号公報、特開2005-260140号公報、特開平10-256707号公報等にも示されるように周知である。 オ.そして、引用例記載発明における「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」も、平面上の複数箇所において位置合わせが必要な、物の製造工程であり、そこに上記エ.で言及した周知の手法が有用であることは、当業者に自明のことである。 カ.以上によれば、引用例記載発明の「ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」を、「第一のウェーハ状部材を、該第一のウェーハ状部材の平面視外周の四隅でのパターン認識のみによって位置合わせを行い、該ベースパターン上に水晶振動素子を搭載する工程」とすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (2)(相違点2)について 平成23年4月25日付けの拒絶理由通知でも言及され、審判請求人もそれについての何らの反論をしていないことからも明らかなように、ベースパターン上に水晶振動素子を搭載後、周波数調整を行うことは慣用技術である。 そして、引用例記載発明に該慣用技術が有用かつ採用可能であることは当業者に自明のことである。 したがって、引用例記載発明を、「水晶振動素子の周波数調整を行う工程」を有するものとすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (3)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項や周知あるいは慣用されている事項から当業者が予測可能なものであり、格別なものではない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例記載発明、及び周知あるいは慣用されている事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明、及び周知あるいは慣用されている事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-28 |
結審通知日 | 2013-04-23 |
審決日 | 2013-05-09 |
出願番号 | 特願2006-23524(P2006-23524) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03H)
P 1 8・ 561- Z (H03H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑中 博幸 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 佐藤 聡史 |
発明の名称 | 水晶振動子の製造方法 |