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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1275813 |
審判番号 | 不服2012-19960 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-10 |
確定日 | 2013-06-20 |
事件の表示 | 特願2005-315792「カメラ及びカメラ付携帯電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-121806〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年10月31日の出願であって、平成24年2月6日及び同年5月7日に手続補正がなされたが、同年7月5日に上記平成24年5月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日に拒絶査定がなされた。 これに対し、平成24年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成25年1月17日に、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年3月25日付けで回答書が提出された。 第2 平成24年10月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年10月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項1に記載された発明 平成24年10月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「指が触れたことを検出する接触検出部と、 カメラ部と、 前記カメラ部に撮像動作を実行させるための入力部と、 指が触れたことを前記接触検出部が検出すると、焦点をあわせるように前記カメラ部を制御し、前記入力部への操作入力を検出すると、撮像動作を実行するように前記カメラ部を制御する制御部と、を有し、 前記接触検出部と前記入力部とが、同じ位置に設けられ、 前記入力部は、前記操作入力が可能な部位全体が前記接触検出部として用いられるとともに、通話の際に操作されることを特徴とするカメラ付携帯電話装置。」 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.引用刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2002-374452号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【0001】本発明は、通信機能および撮影機能を備えた携帯機器、特に携帯電話機に関する。」 (1b)「【0004】かかる事情に鑑みて、本発明では、カメラモードにおいて2段階スイッチとして使用されるレリーズボタンを、カメラモード以外のモードにおいては、通常の単一動作スイッチとして機能させ得る、携帯機器を提供することを目的としている。」 (1c)「【0015】携帯電話機10はカメラ撮影機能を有しているためレリーズボタン15を備えている。後述するように、このレリーズボタン15は、2段階スイッチとなっていて、半押状態で測光および測距等の撮影準備動作が開始され、全押状態となることで撮影が実行される。一方、携帯電話機10がカメラとしてではなく通信機器として機能する場合、レリーズボタン15は、他の機能を実行するための操作部材として兼用されることとなる(兼用操作部材)。しかしながら、その場合にはレリーズボタン15が備える2段階スイッチとしての機能は必ずしも必要ではなく、使い勝手等の関係から、単一動作を行なうスイッチとして機能する方が好ましい場合も多い。」 これらの記載事項及び図面を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「カメラ撮影機能を有し、2段階スイッチとなっていて、半押状態で測光および測距等の撮影準備動作が開始され、全押状態となることで撮影が実行されるレリーズボタンを備え、一方、通信機器として機能する場合、レリーズボタンは、他の機能を実行するための操作部材として兼用される、 携帯電話機。」(以下「引用発明」という。) (2)同じく原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-7221号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2a)「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 従来のデジタルカメラでは、2段式スイッチを利用しているので、ユーザーはシャッタースイッチを半押ししてオートフォーカスをスタートさせ、焦点が合った後また押すことで撮影するという2度押しをしなくてはならない。ユーザーがこの2度押し操作に習熟していない場合、または操作を誤間違った場合、シャッタースイッチを押し切ってしまい撮影が開始されない場合や、撮影されてもオートフォーカスが未完成状態で撮影されるので、不明瞭な画像が撮影される。このように、2段式操作では力の加え具合の調整が困難で、非常に不便である。 そこで、本発明は、デジタルカメラのオートフォーカススタート操作にある不便さを解消することを目的とする。」 (2b)「【0006】 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するため、本発明は、デジタルカメラのシャッタースイッチに光センサー(Photo Diode)あるいはタッチセンサーを配置し、それによりオートフォーカス機能をスタートさせるというものである。ユーザーの指がシャッタースイッチに触れ、光センサーへの光を遮るか、もしくは、タッチセンサーに触れるかすると、マイクロプロセッサが光りセンサーあるいはタッチセンサーの動作を検出し、すぐにオートフォーカス機能をスタートさせる。ユーザーは光センサーへの光を遮ったり、あるいは、タッチセンサーに触れることでオートフォーカス機能を実行できるものである。」 (2c)「【0007】 【発明の実施の形態】 本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。 図4a、図4b、図4cで示すように、本発明のデジタルカメラのオートフォーカススタート機構40は、シャッタースイッチ41、スプリング42および1段式スイッチ43から構成される。本発明の主要な改良点は、図1a中の従来のデジタルカメラのオートフォーカススタート機構10中のシャッタースイッチ11および2段式スイッチ13に関してである。本発明ではシャッタースイッチ41上方内部に光センサー(Photo Diode)44が配置されている。光センサー44は基板30上の電子回路に接続され、図4cでは第1スイッチ45である。1段式スイッチ43は基板30上の電子回路に接続され、図4cでは第2スイッチ46である。指がシャッタースイッチ41の上方にないとき、光センサー44の上方は透光状態で、1段式スイッチ43はまだ非接触状態で入っていない。このとき、図4cで示す第1スイッチ45および第2スイッチ46はすべて未導通状態である。 【0008】 図5a、図5b、図5cで示すように、使用者の指がシャッタースイッチ41の上方に置かれ、まだスイッチが押されていないときは、光センサー44の上方は遮光状態となり、1段式スイッチ43は未接触つまり未導通状態である。図5cの第1スイッチ45が導通状態で、第2スイッチ46は未導通状態である。このとき、デジタルカメラは即座にオートフォーカス動作を開始する。 【0009】 図6a、図6b、図6cで示すように、使用者の指がシャッタースイッチ41を押したとき、1段式スイッチ43が接触状態になり(図6b参照)、第2スイッチ46が導通状態になる(図6c参照)。このとき、デジタルカメラは画像撮影を実行する。 【0010】 図7a、図7b、図7cで示すように、本発明では接触を検出するタッチセンサーを図4aで示す光センサー44に置き換えることができる。シャッタースイッチ50の上方に導電片51を配置し、導電片51を基板52上のタッチ式スイッチに接続する。ユーザーの指が導電片51に触れると、タッチ式スイッチが入り、カメラはオートフォーカス動作を開始する。」 3.対比 補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明は「カメラ撮影機能を有」するから、補正発明の「カメラ部」に相当する構成を有する。 したがって、引用発明の「携帯電話機」は、補正発明の「カメラ付携帯電話装置」に相当する。 (2)引用発明の「2段階スイッチとなっていて・・・全押状態となることで撮影が実行されるレリーズボタン」は、補正発明の「カメラ部に撮像動作を実行させるための入力部」に相当し、引用発明のレリーズボタンが「全押状態となることで撮影が実行される」ことは、補正発明の「前記入力部への操作入力を検出すると、撮像動作を実行する」ことに相当する。 (3)引用発明の「2段階スイッチとなっていて、半押状態で測光および測距等の撮影準備動作が開始され・・・るレリーズボタン」と補正発明の「指が触れたことを検出する接触検出部」は、ともに「所定の操作を検出する検出部」である点で共通する。 したがって、引用発明と補正発明は、ともに「所定の操作を検出部が検出すると、焦点をあわせるように前記カメラ部を制御し、前記入力部への操作入力を検出すると、撮像動作を実行するように前記カメラ部を制御する制御部」を有する。 (4)引用発明において、補正発明の「検出部」と「入力部」に相当する構成は、ともにレリーズボタンによって構成されているから、同じ位置に設けられていることは自明である。 また、引用発明のレリーズボタンは「通信機器として機能する場合、他の機能を実行するための操作部材として兼用される」から、引用発明は、補正発明の「所定の操作を検出する検出部と前記入力部とが通話の際に操作される」構成に相当する構成を有する。 してみると、両者は、 「所定の操作を検出する検出部と、 カメラ部と、 前記カメラ部に撮像動作を実行させるための入力部と、 所定の操作を検出部が検出すると、焦点をあわせるように前記カメラ部を制御し、前記入力部への操作入力を検出すると、撮像動作を実行するように前記カメラ部を制御する制御部と、を有し、 前記所定の操作を検出する検出部と前記入力部とが、同じ位置に設けられるとともに、通話の際に操作されることを特徴とするカメラ付携帯電話装置。」 の点で一致し、次の点で相違している。 (相違点) 補正発明では、所定の操作を検出する検出部が「指が触れたことを検出する接触検出部」であって「入力部は、操作入力が可能な部位全体が前記接触検出部として用いられる」のに対して、引用発明では、所定の操作を検出する検出部が「2段階スイッチとなっているレリーズボタン」であって、「指が触れたことを検出する接触検出部」ではない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 引用文献2には、入力部(シャッタースイッチ50)への操作入力を検出すると撮像動作を実行し、撮影動作に先だって所定の操作を検出部が検出すると焦点を合わせるように構成されたカメラにおいて、所定の操作を検出する検出部として指が触れたことを検出する接触検出部(タッチ式検出スイッチ)を用い、当該接触検出部を入力部上に配置した発明「以下「引用第2発明」という。)」が記載されている。 引用発明の入力部及び検出部として引用第2発明を用いることに格別の技術的困難性も阻害要因もない。 その際に、操作入力が可能な部位全体を接触検出部として構成することは、引用発明の入力部及び所定の操作を検出する検出部が「2段階スイッチとなっているレリーズボタン」であるから、操作入力が可能な部位全体が所定の操作を検出する検出部として用いられるものであることを考慮すれば、操作性や動作の確実性、他の部材との位置関係等の種々の要因を総合的に勘案して、当業者が適宜決定しうる事項である。 してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び引用第2発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び引用第2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成24年10月10日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年5月7日付けの手続補正は同年7月5日に補正の却下の決定がなされている(上記「第1 手続の経緯 」参照)ので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年2月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「指が触れたことを検出する接触検出部と、 カメラ部と、 前記カメラ部に撮像動作を実行させるための入力部と、 指が触れたことを前記接触検出部が検出すると、焦点をあわせるように前記カメラ部を制御し、前記入力部への操作を検出すると、撮像動作を実行するように前記カメラ部を制御する制御部と、を有し、 前記接触検出部と前記入力部とが、同じ位置に設けられ、 前記入力部は、通話の際に操作されることを特徴とするカメラ付携帯電話装置。」(以下「本願発明」という。) 1.引用刊行物 引用文献1、2及びその記載事項は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明の「前記操作入力が可能な部位全体が前記接触検出部として用いられるとともに、」という事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び引用第2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用第2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用第2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-04-18 |
結審通知日 | 2013-04-23 |
審決日 | 2013-05-08 |
出願番号 | 特願2005-315792(P2005-315792) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻本 寛司 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | カメラ及びカメラ付携帯電話装置 |