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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1276031 |
審判番号 | 不服2012-12332 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-06-29 |
確定日 | 2013-06-27 |
事件の表示 | 特願2007-220352「電子機器および文字装飾方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 53959〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成19年8月27日を出願日とする出願であり、平成24年3月26日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年6月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 平成24年6月29日に提出された手続補正書による補正の却下の決定 (1)[補正却下の決定の結論] 平成24年6月29日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 (2)[補正却下の決定の理由] (a)補正の内容 本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、 「表示部と、 文字装飾の1つの属性を変換する文字装飾と複数の属性を変換する文字装飾とを記憶する記憶部と、 前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する文字列装飾部と、 を備えることを特徴とする、電子機器。」 と補正されている。 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する」を「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する」とするものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。 (b)引用文献 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-255154号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図とともに次のような記載がある。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、文書を編集する文書編集装置に関し、特に文書中の任意の文字列の文字修飾、文字色、文字サイズ、書体等の文字属性を変更する装置に関する。」(段落【0001】) (イ)「(第1実施例)図1は、本発明に係る文字属性変更装置の第1実施例の構成図である。この文字属性変更装置は、キーボード、マウス等からなる入力操作部101と、フロッピーディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等からなる文書保存部102と、RAM等のメモリからなる文書記憶部103と、ROM等のメモリからなる文字属性記憶部104と、カーソル、マウス等からなる選択部105と、CRT、液晶パネル等からなる表示部106と、カーソル、マウス等からなる文字属性登録部107と、RAM等のメモリからなる文字属性パターンデータベース108と、カーソル、マウス等からなる文字属性変更部109と、CPUからなる制御部110とを備える。 【0014】入力操作部101は、利用者から文書の読み込み指示又は文書の入力を受け付け、制御部110にその内容を通知する。また、利用者から文書の保存指示を受け付けると、制御部110に保存指示を通知する。なお、入力操作部101から入力される文書中の文字の文字属性は、例えば、文字修飾属性の指定のない、文字色属性「黒」、書体属性「明朝体」、文字サイズ属性「全角」の標準属性として入力される。 【0015】文書保存部102は、作成された文書を保存している。また、文書記憶部103に記憶された文書の内容を制御部110の制御のもと格納保存する。文書記憶部103は、入力操作部101から入力された文書又は文書保存部に保存されている文書を制御部110の制御によって記憶する。また、制御部110によって、文書中の文字に文字属性の詳細属性を付加して記憶する。 【0016】文字属性記憶部104は、図2に示すような文字属性(詳細属性)とこの詳細属性に対応する数字コードとを記憶している。ここで文字属性は、文字修飾属性、文字色属性、書体属性、文字サイズ属性等の属性の種類からなる。文字修飾属性は、太字、斜体、立体、回転、白抜き、影付き、下線、網掛け等の詳細属性を含む。文字色属性は、黒、赤、青等の詳細属性を含む。書体属性は、明朝体、ゴシック体、毛筆体等の詳細属性を含む。文字サイズ属性は、全角、半角、横倍角、ポイント数の詳細属性を含む。 【0017】選択部105は、利用者からの文字属性設定の指示を受けると、制御部110に該指示を通知する。また、表示部106上の文字属性の種類又は詳細属性をマウスのクリックによって選択され、表示部106上の文書の文字属性を設定すべき文字列範囲をマウスのドローによって指定される。これらの選択又は指定内容を制御部110に通知する。 【0018】表示部106は、制御部110の表示制御によって、文書記憶部103に記憶されている内容を表示し、ウィンドウを設けて文字属性の種類とその詳細属性とを表示し、また図3に示すような、文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示する。図3において、文字属性パターンに従って表示された文字301と、その文字属性パターン即ち詳細属性の組合せ内容302と、その文字属性パターンを選択するための四角記号(□)303とが一列に表示されている。利用者は、この文字301を見て、文書中の文字をこの文字301のような文字属性パターンに変更すべきか否かを判断することができる。 【0019】例えば文字301の「記」は、文字属性の詳細属性「太字」、「斜体」、「青」、「明朝体」、「全角」の組合せであることを示している。文字属性登録部107は、利用者から文字属性パターンの登録を受け付ける。ここで、文字属性パターンとは、文字属性(詳細属性)の組合せをいう。文字属性登録部107は、表示部106上の文書中の文字属性パターンを登録する文字をマウスのクリックによって指定されると、制御部110にその旨通知する。」(段落【0013】?【0019】) (ウ)「【0020】文字属性パターンデータベース108は、図4に示すような、文字属性パターンテーブル401を記憶している。文字属性パターンテーブル401の各レコード402、403、404、405、406は、サンプル文字407と各文字属性の選択状態を表す数字コードとからなるデータ構造をもつ。なお、サンプル文字407も実際には文字コードとして記憶されている。各文字属性の選択状態を表す数字コードについて説明すると、下線コード408は、0?5の整数であり、0は下線なしを表し、1?5は各下線の線種(実線、点線等)に対応している。網掛けコード409は、0?3の整数であり、0は網掛けなしを表し、1?3は網掛けの種類に対応している。色コード410は、1は黒、2は赤、3は青、4は黄、5は緑、6は水色をそれぞれ表している。和文字修飾コード411は、6桁のビットコードであり、各桁は左から順に白抜き、影付き、太字、斜体、立体、回転に対応している。0は修飾なし、1は修飾ありをそれぞれ表している。和文字書体コード412は、1は明朝体、2はゴシック体、3は毛筆体、4は丸ゴシック体をそれぞれ表している。和文字サイズコード413は、1は全角、2は半角、3は横倍角、4は縦倍角、5は4倍角をそれぞれ表している。英文字修飾コード414は、2桁のビットコードであり、各桁は左から順にイタリック、ボールドに対応している。0は修飾なし、1は修飾ありをそれぞれ表している。英文字書体コード415は、1はクーリエ、2はゴシック、3はローマンをそれぞれ表している。英文字サイズコード416は、文字サイズをポイント数で表している。サンプル文字407が日本語文字の場合、英文字修飾コード414、英文字書体コード415、英文字サイズコード416はすべて0である。サンプル文字407が英文字の場合、和文字修飾コード411、和文字書体コード412、和文字サイズコード413はすべて0である。 【0021】なお、この文字属性パターンテーブル401の内容を表示部106に表示すると、上記した図3に示すようになる。文字属性変更部109は、利用者から文字属性変更の指示を受けると、制御部110にその指示を通知する。利用者が表示部106のウィンドウに表示されている図3に示す文字属性パターンに従って表示された文字301の左にある四角記号303をマウスでクリックすると、選択された文字属性パターンを制御部110に通知する。表示部106に表示されている文書中の文字列(文字一字の場合も含む)をマウスでドローすると、指定された文字列範囲を制御部110に通知する。 【0022】制御部110は、入力操作部101から文書の読み込み指示を通知されると、文書保存部102に保存されている文書を読み込み、文書記憶部103にその文書を記憶させ、表示部106にその内容を表示させる。入力操作部101から文書が入力されると、文書記憶部103にその文書を記憶させ、表示部106にその内容を表示させる。 【0023】また、入力操作部101から保存指示を通知されると、文書記憶部103に記憶されている内容を読み出し、文書保存部102にその内容を格納する。選択部105から文字属性設定の指示の通知を受けると表示部106のウィンドウに文字属性の種類を表示させ、文字属性の種類の選択内容を受けると、その種類の詳細属性を表示させる。詳細属性の選択の通知を受けると、文字属性記憶部104からその詳細属性を抽出し、文書記憶部103に記憶されている選択部105から通知された文字列範囲の各文字にその詳細属性を付加して記憶させ、文書記憶部103の記憶内容を表示部106に表示させる。 【0024】また、制御部110は、文字属性登録部107から文字属性パターンを登録する文字の指定の通知を受けると、文書記憶部103に記憶されている指定された文字とその文字に付加されている文字属性パターンを読み出し、それらを分離して文字属性パターンデータベース108に登録する。更に、文字属性変更部109から文字属性変更の指示の通知を受けると、文字属性パターンデータベース108に記憶されている文字属性パターンテーブル401を読み出して、表示部106に設けられたウィンドウに表示させる。文字属性変更部109から選択された文字属性パターンの通知と、指定された文字列範囲(文字列)の通知とを受けると、文字属性パターンデータベース108に登録されているその文字属性パターンを読み出して、それを文書記憶部103に記憶されている指定された各文字の文字属性として変更して付加記憶させる。」(段落【0020】?【0024】) (エ)「【0025】次に本実施例の動作を図5、図6に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、制御部110は、利用者からの文書読み込み指示が入力操作部101からあるか否かを判断し(S502)、あるときには、文書保存部102に保存されている文書を読み込み(S504)、文書記憶部103に記憶させる(S508)。文書読み込み指示がないときには、入力操作部101からの文書の入力を待って(S506)、文書記憶部103に記憶させる(S508)。 【0026】次に、文書記憶部103に記憶されている文書の内容を表示部106に表示させる(S510)。選択部105から文字属性の設定の指示の通知があるか否かを判断し(S512)、ないときにはS522に移り、あるときには文字属性の種類を表示部106のウィンドウに表示する(S513)。選択部105から文字属性の種類の選択通知を待って(S514)、選択された種類の詳細属性を表示部106のウィンドウに表示する(S515)。選択部105からの詳細属性の選択の通知を待ち(S516)、続いて文字列範囲の指定の通知があるか否かを判断し(S518)、ないときにはS514に戻り、更に文字属性の組合せを選択する。文字列範囲の指定の通知があるときには、文書記憶部103に記憶されている文字に選択された文字属性を付加して記憶させ(S520)、S510に戻る。 【0027】次に、文字属性登録部107から文字属性パターンを登録する文字の指定の通知があるか否かを判断し(S522)、指定がないときはS602に移り、指定があるときは、その通知された文字の文字属性パターンを文書記憶部103から読み出し(S524)、その文字属性パターンをその文字とともに文字属性パターンデータベース108に登録し(S526)、S522に戻る。 【0028】S602において、文字属性変更部109から文字属性変更の指示の通知があるか否かを判断し(S602)、指示がないときは処理を終了し、指示が通知されたときは、文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示部106のウィンドウに表示させる(S604)。文字属性変更部109から文字属性パターンの選択の通知と(S606)、文字属性を変更する文字列範囲の指定の通知とを待って(S608)、通知された文字属性パターンを文字属性パターンデータベース108から読み出し、それを文書記憶部103に記憶されている指定された各文字に変更して付加記憶させる(610)。これを表示部106に表示させ(S612)、同一文字属性パターンで指定される文字列範囲の通知が他にあるか否かを判断し(S614)、あるときにはS610に戻り、ないときにはS602に戻る。」(段落【0025】?【0028】) 以上の記載によれば、引用文献1には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「キーボード、マウス等からなる入力操作部101と、フロッピーディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等からなる文書保存部102と、RAM等のメモリからなる文書記憶部103と、ROM等のメモリからなる文字属性記憶部104と、カーソル、マウス等からなる選択部105と、CRT、液晶パネル等からなる表示部106と、カーソル、マウス等からなる文字属性登録部107と、RAM等のメモリからなる文字属性パターンデータベース108と、カーソル、マウス等からなる文字属性変更部109と、CPUからなる制御部110とを備える文書編集装置の文字属性変更装置であって、 入力操作部101は、利用者から文書の読み込み指示又は文書の入力を受け付け、制御部110にその内容を通知し、利用者から文書の保存指示を受け付けると、制御部110に保存指示を通知し、入力操作部101から入力される文書中の文字の文字属性は、例えば、文字修飾属性の指定のない、文字色属性「黒」、書体属性「明朝体」、文字サイズ属性「全角」の標準属性として入力され、 文書保存部102は、作成された文書を保存し、文書記憶部103に記憶された文書の内容を制御部110の制御のもと格納保存し、文書記憶部103は、入力操作部101から入力された文書又は文書保存部に保存されている文書を制御部110によって、文書中の文字に文字属性の詳細属性を付加して記憶し、 文字属性パターンデータベース108は、文字属性パターンテーブル401を記憶しており、文字属性パターンテーブル401の各レコード402、403、404、405、406は、サンプル文字407と各文字属性の選択状態を表す数字コードとからなるデータ構造をもち、下線コード408は、0?5の整数であり、0は下線なしを表し、1?5は各下線の線種(実線、点線等)に対応し、網掛けコード409は、0?3の整数であり、0は網掛けなしを表し、1?3は網掛けの種類に対応し、色コード410は、1は黒、2は赤、3は青、4は黄、5は緑、6は水色をそれぞれ表し、和文字修飾コード411は、6桁のビットコードであり、各桁は左から順に白抜き、影付き、太字、斜体、立体、回転に対応し、0は修飾なし、1は修飾ありをそれぞれ表し、和文字書体コード412は、1は明朝体、2はゴシック体、3は毛筆体、4は丸ゴシック体をそれぞれ表し、和文字サイズコード413は、1は全角、2は半角、3は横倍角、4は縦倍角、5は4倍角をそれぞれ表し、英文字修飾コード414は、2桁のビットコードであり、各桁は左から順にイタリック、ボールドに対応し、0は修飾なし、1は修飾ありをそれぞれ表し、英文字書体コード415は、1はクーリエ、2はゴシック、3はローマンをそれぞれ表し、英文字サイズコード416は、文字サイズをポイント数で表しており、 表示部106は、制御部110の表示制御によって、文書記憶部103に記憶されている内容を表示し、ウィンドウを設けて文字属性の種類とその詳細属性とを表示し、文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示し、文字属性パターンに従って表示された文字301と、その文字属性パターン即ち詳細属性の組合せ内容302と、その文字属性パターンを選択するための四角記号(□)303とが一列に表示され、利用者は、この文字301を見て、文書中の文字をこの文字301のような文字属性パターンに変更すべきか否かを判断することができ 文字属性変更部109は、利用者から文字属性変更の指示を受けると、制御部110にその指示を通知し、利用者が表示部106のウィンドウに表示されている文字属性パターンに従って表示された文字301の左にある四角記号303をマウスでクリックすると、選択された文字属性パターンを制御部110に通知し、表示部106に表示されている文書中の文字列(文字一字の場合も含む)をマウスでドローすると、指定された文字列範囲を制御部110に通知させるものであって、 制御部110は、利用者からの文書読み込み指示が入力操作部101からあるか否かを判断し、文書読み込み指示があるときには、文書保存部102に保存されている文書を読み込み、文書記憶部103に記憶させ、文書読み込み指示がないときには、入力操作部101からの文書の入力を待って、文書記憶部103に記憶させ、文書記憶部103に記憶されている文書の内容を表示部106に表示し、 文字属性変更部109から文字属性変更の指示の通知があるか否かを判断し、指示が通知されたときは、文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示部106のウィンドウに表示させ、文字属性変更部109から文字属性パターンの選択の通知と、文字属性を変更する文字列範囲の指定の通知とを待って、通知された文字属性パターンを文字属性パターンデータベース108から読み出し、それを文書記憶部103に記憶されている指定された各文字に変更して付加記憶させて表示部106に表示させ、同一文字属性パターンで指定される文字列範囲の通知が他にあるか否かを判断し、あるときには同一文字属性パターンを文書記憶部103に記憶されている指定された各文字に変更して付加記憶させて表示部106に表示させる文字属性変更装置。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-268958号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図とともに次のような記載がある。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、文字修飾機能を備えた文書作成装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、文字修飾機能を備えた文書作成装置では、例えば「ルビ」をはじめ、「上付」、「下付」、「回転」、「斜体」、「強調」といった各種の文字修飾を指定することができる。文字修飾を指定すると、選択した文字にその指定に応じた修飾が施される。例えば「ルビ」であれば、選択した文字に振り仮名が付けられることになる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、従来、このような文字修飾は、1回の操作で1つの文字にしか行われなかった。このため、文書中に同一の文字があっても、各文字毎に指定操作を行わなければならなず、非常に不便であった。 【0004】本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、同一文字に同様の文字修飾を一括にかけることのできる文書作成装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、文字修飾機能を備えた文書作成装置において、文字修飾の対象となる文字が指定された際に、その指定文字と同一の文字を検索し、その同一文字に上記指定文字と同様の文字修飾を行うようにしたものである。」(段落【0001】?【0005】) 「【0009】次に、図2に示すフローチャートを参照して同実施例の動作を説明する。なお、ここでは、文書作成後に文字修飾の「ルビ」を行う場合を想定して説明する。 【0010】文書作成後において、図3に示すようにキーボード11を通じて文字修飾の対象となる文字を指定し、「文字修飾」キー11aを押下すると(ステップS1,S2)、文書作成制御部13は、まず、図4に示すようなメニュー画面を表示部15に表示する(ステップS3)。このメニュー画面には、一括修飾を「する/しない」のモードを示す選択項目が表示されている。ここで、キーボード11を通じて一括修飾「しない」のモードを選択すると(ステップS4)、文書作成制御部13は上記指定された文字に文字修飾を行う(ステップS5)。これにより、図5に示すように、カーソルで指定された「論理」という文字に「ろんり」という振り仮名が付加されることになる。この場合、他に「論理」という文字があっても、振り仮名は付加されない。 【0011】一方、ステップS4において一括修飾「する」のモードを選択すると、文書作成制御部13は文書バッファ14をアクセスして文字検索を行う(ステップS6,S7)。この文字検索により上記指定された文字と同一の文字が見付かると(ステップS8)、文書作成制御部13はその文字に対し、上記指定された文字と同様の文字修飾を行う(ステップS9)。これにより、図6に示すように、文書中に存在する全ての「論理」という文字に振り仮名が付加されることになる。この場合、既に他の文字修飾がかけられていれば、重ねて修飾できるのであれば重ねて修飾し、できなければどちらかを優先するものとする。また、一括修飾の範囲については、例えば頁単位、段落単位、文書単位など、任意に設定できるものとする。 【0012】このように、一括修飾「する」のモードを選択することにより、文字修飾を指定した文字だけでなく、文書中の同一文字に対しても同様の文字修飾が行われる。したがって、同一文字が多数ある場合に、従来のように各文字毎に指定操作を必要とせず、1回の操作で各文字に一括に修飾をかけることができる。」(段落【0009】?【0012】) 「【0013】なお、上記実施例では、文字修飾として「ルビ」を例にして説明したが、例えば「上付」、「下付」、「回転」、「斜体」、「強調」等の他の文字修飾についても同様である。 【0014】また、上記実施例では、文書作成後に同一文字の一括修飾を行う構成としたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば文書作成中に文字修飾が指定された場合に、その指定文字を記憶しておき、以後の文書作成において、その指定文字と同一の文字に同様の文字修飾を行う構成としても良い。さらに、文書作成前に予め一括修飾を行うべき文字を指定しておく構成としても良い。このような構成によれば、文書を作成しながら、同一文字の一括修飾を同時に行うことができ、上記実施例と同様、文書作成効率が大幅に向上するものである。」(段落【0013】、【0014】) (c) 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「表示部106」は、本願補正発明の「表示部」に相当する。 (イ)引用発明の「文字修飾属性」、「文字色属性」、「書体属性」、「文字サイズ属性」である「文字属性」は、本願補正発明の「文字装飾の」「属性」に相当するといえ、引用発明の「文字属性の詳細属性」は、本願補正発明の「文字装飾の」「属性を変換する文字装飾」に相当するといえる。 (ウ)引用発明の「文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターン」は、「詳細属性の組合せ内容302」であるから、本願補正発明の「文字装飾の」「複数の属性を変換する文字装飾」に相当するといえ、引用発明の「文字属性パターンデータベース108」は、本願補正発明の「文字装飾の1つの属性を変換する文字装飾と複数の属性を変換する文字装飾とを記憶する記憶部」と「文字装飾の複数の属性を変換する文字装飾を記憶する記憶部」の点で共通するといえる。 (エ)引用発明の「表示部106に表示されている文書中の文字列(文字一字の場合も含む)」は、本願補正発明の「前記表示部に表示された文字列」に相当するといえる。 そして、引用発明の「制御部110」は、「文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示部106のウィンドウに表示させ」、選択された文字属性パターンを文字属性パターンデータベース108から読み出し、「表示部106に表示されている文書中の」「指定された文字列」の文字属性パターンを選択された文字属性パターンに変更して表示部106に表示させるものであるから、本願補正発明の「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する文字列装飾部」と「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する文字列装飾部」の点で共通するといえる。 (オ)引用発明の「文書編集装置」は、本願補正発明の「電子機器」に相当する。 したがって、本願補正発明の用語を用いて表現すると両者は、 「表示部と、 文字装飾の複数の属性を変換する文字装飾を記憶する記憶部と、 前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する文字列装飾部と、 を備えることを特徴とする、電子機器。」 で一致するものであり、次の(1)、(2)点で相違している。 (1)本願補正発明は、「文字装飾の1つの属性を変換する文字装飾と複数の属性を変換する文字装飾とを記憶」し、「前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する」のに対し、引用発明は、1つの文字属性(文字属性の詳細属性)のみの文字属性パターンが文字属性パターンデータベース108に登録されていることが明記されていない点。 (2)本願補正発明は、「表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に」「属性を変換する文字装飾を適用する」のに対し、引用発明は、「文字属性パターンデータベース108に登録されている文字属性パターンの内容を表示部106のウィンドウに表示させ」、指定した文字列に対して適用する文字属性パターンをユーザが選択している点。 (d) 当審の判断 ・相違点(1)について 引用文献1には、「次に、文書記憶部103に記憶されている文書の内容を表示部106に表示させる(S510)。選択部105から文字属性の設定の指示の通知があるか否かを判断し(S512)、ないときにはS522に移り、あるときには文字属性の種類を表示部106のウィンドウに表示する(S513)。選択部105から文字属性の種類の選択通知を待って(S514)、選択された種類の詳細属性を表示部106のウィンドウに表示する(S515)。選択部105からの詳細属性の選択の通知を待ち(S516)、続いて文字列範囲の指定の通知があるか否かを判断し(S518)、ないときにはS514に戻り、更に文字属性の組合せを選択する。文字列範囲の指定の通知があるときには、文書記憶部103に記憶されている文字に選択された文字属性を付加して記憶させ(S520)、S510に戻る。【0027】次に、文字属性登録部107から文字属性パターンを登録する文字の指定の通知があるか否かを判断し(S522)、指定がないときはS602に移り、指定があるときは、その通知された文字の文字属性パターンを文書記憶部103から読み出し(S524)、その文字属性パターンをその文字とともに文字属性パターンデータベース108に登録し(S526)、S522に戻る。」(段落【0026】、【0027】)ことが記載されており、文字属性パターンデータベース108に登録する文字属性パターンの文字属性の選択は任意に行うことができることが示されている。 したがって、引用発明において、1つの文字属性(文字属性の詳細属性)のみを選択した文字属性パターンを文字属性パターンデータベース108に登録すること、及び、文字列に対して前記登録した1つの文字属性(文字属性の詳細属性)または複数の文字属性(文字属性の詳細属性)を適用するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 ・相違点(2)について 上記引用文献2には、「文字修飾の対象となる文字が指定された際に、その指定文字と同一の文字を検索し、その同一文字に上記指定文字と同様の文字修飾を行うようにしたものである。」及び「文書作成中に文字修飾が指定された場合に、その指定文字を記憶しておき、以後の文書作成において、その指定文字と同一の文字に同様の文字修飾を行う構成としても良い。」と記載されており、表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に属性を変換する文字装飾を適用する技術が示されている。 引用発明は、表示部に表示された文字列に、記憶された文字修飾を行うものである点で上記引用文献2記載の技術と共通するものである。 したがって、引用発明において、上記引用文献2記載の技術を採用し、表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に属性を変換する文字装飾を適用するようにして本願補正発明を構成することは、当業者が容易になし得ることである。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。 (e)請求人の主張 請求人は審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由 (2)本願発明と引用文献との対比」において、 「引用文献1には、文字属性の組み合わせである文字属性パターンを登録しておき、文書中の文字列に対して文字属性パターンを適用することにより、複数の文字属性をパターンとして一度に適用することが記載されています。ただし、全ての文字列に対して、個別に文字属性パターンを適用する必要があります。 引用文献2には、同一文字に同様の文字装飾を一括にかけることが記載されています。ただし、「文書バッファの中から指定文字と同一の文字を検索し、同一文字に指定文字と同様の文書修飾を行う」と説明されていることから、既に入力された文章のみが対象となり、その後に入力される文章の中の文字列に対しては適用が行われません。すなわち引用文献2は、文字装飾をユーザの指示により適用するものであって、自動的に適用するものではありません。 上記の引用文献1、2に対し、本願発明は、表示された文字列に応じて自動的に文字装飾を行なうことができる、という構成を有しています。このような本願発明の特徴的な構成は引用文献1、2に記載および示唆するところがありません。」と主張している。 しかしながら、上記「相違点(2)について」で述べたように、引用文献2には、「文書作成中に文字修飾が指定された場合に、その指定文字を記憶しておき、以後の文書作成において、その指定文字と同一の文字に同様の文字修飾を行う構成としても良い。」と記載されており、表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に属性を変換する文字装飾を適用する技術が示されているから、上記主張は採用できない。 (f)結論 そうすると、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年1月16日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「表示部と、 文字装飾の1つの属性を変換する文字装飾と複数の属性を変換する文字装飾とを記憶する記憶部と、 前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する文字列装飾部と、 を備えることを特徴とする、電子機器。」 第4 引用文献 原査定の拒絶理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 (2)(b)」に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて自動的に前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する」を、「前記表示部に表示された文字列に、当該文字列に応じて前記1つの属性を変換する文字装飾または前記複数の属性を変換する文字装飾を適用する」とするものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 なお、請求人は前置審尋の回等書において、補正案を提示し、「請求項1、5に対する補正案は、補正前の請求項4、段落0015-0016、0049-0051、図6等に記載されている事項に基づいています。したがいまして新規事項を追加するものではありません。」と主張し、補正案の請求項1に係る発明は特許可能なことが明白な理由について、「3.特許可能な理由について」において、 「 3-2.本願発明と引用発明との対比 補正案の請求項1に係る発明(本願発明)は、「表示部に表示された文字列に一の装飾が関連付けられている場合、当該文字列を自動的に装飾し、前記表示部に表示された文字列に複数の装飾が関連付けられている場合、装飾した状態の複数の当該文字列をリスト形式で前記表示部に自動的に表示し複数の当該文字列のうち一の文字列をユーザに手動で選択させる」という特徴的な構成を有します。 一方で、引用発明1は、文書中に同一の文字があっても、各文字毎に指定操作を行わなければならず、非常に不便であったという課題に基づき、文字列に対して当該文字列に対応付けられた一の文字修飾を自動的に適用するものであって、文字列に対して複数の文字修飾が関連付けられている場合、修飾した状態の複数の文字列をリスト形式で自動的に表示し、そのうち一の文字列を手動で選択させるものではなく、上記特徴的な構成について記載も示唆もされるものではありません。 また、引用文献2は、まず文章中の文字列を範囲選択してから、文字属性またはその組合せのパターンを適用するものです。引用文献2において文字属性のパターンは、特定の文字列に関連づけられていません。したがって引用文献2には文字属性を自動的に適用する、もしくは文字列に関連づけられた複数の装飾をリスト表示するという概念は全く開示されておらず、引用発明2にも、上記特徴的な構成について記載も示唆もされていません。 そもそも、引用発明1は、文書を作成しながら同時に文字修飾を行うために、文字列に対して文字修飾を一対一で対応付けることで自動的に文字修飾をするものです。そのような自動修飾に関する引用発明1に対して、手動で文字修飾を行う、引用発明2やその他の技術を適用してしまうと、自動で文字装飾を行う引用発明1を阻害することとなり、文書を作成しながら同時に文字修飾を行うという引用発明の目的と矛盾するものとなってしまいます。 また、引用発明1に対して、手動で文字修飾を行う、引用発明2やその他技術を適用してしまうと、引用文献1の段落0014における「文書作成効率が大幅に向上する」という効果が達成し得なくなります。 従って、引用発明1に対して、引用発明2やその他の手動で文字修飾を行う技術を適用することは、当業者であれば通常考えるはずがなく、引用発明1、2を組み合わせることには阻害要因があるということができます。ましてや引用発明1に対して、引用発明2やその他の手動で文字修飾を行う技術を適用して、本願発明の様な構成とすることは、当業者であっても、決して容易になし得たことではありません。 よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に該当せず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものです。」と主張している。 しかしながら、本願の請求項4、段落0015-0016、0049-0051、図6等には、「装飾対象となる文字列に複数の装飾が関連付けられている場合、全ての装飾をリスト形式で表示部に表示させて選択させる」ことは記載されているが、「表示部に表示された文字列に一の装飾が関連付けられている場合」と「前記表示部に表示された文字列に複数の装飾が関連付けられている場合」とを場合分けし、「表示部に表示された文字列に一の装飾が関連付けられている場合、当該文字列を自動的に装飾」することは記載されていない。 したがって、上記補正案は採用できない。 |
審理終結日 | 2013-04-24 |
結審通知日 | 2013-04-30 |
審決日 | 2013-05-13 |
出願番号 | 特願2007-220352(P2007-220352) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土居 仁士 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
五十嵐 努 稲葉 和生 |
発明の名称 | 電子機器および文字装飾方法 |
代理人 | 特許業務法人 アクア特許事務所 |