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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1276042
審判番号 不服2011-6839  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-01 
確定日 2013-06-28 
事件の表示 特願2004-208850「塗料、その製法、その使用および被覆製品」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月17日出願公開、特開2005-42110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年7月15日(パリ条約による優先権主張 2003年7月18日 ドイツ連邦共和国)に出願されたものであって、平成22年7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月2日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成23年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年6月7日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成24年6月11日付けで審尋され、同年11月19日に回答書が提出されたものである。

第2.補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成23年4月1日付け手続補正書による補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容
平成23年4月1日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合の補正であって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び19において
「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂 0?12質量%、および/または
D)ブロックトポリイソシアネート 5?9質量%」
との発明特定事項を
「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂 0?12質量%、および
D)ブロックトポリイソシアネート 5?9質量%」
とするものである。

2.補正の目的について
上記補正は、請求項1の塗料において、成分C)のベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂と成分D)のブロックトポリイソシアネートについて、本件補正前は「成分C)」、「成分D)」及び「成分C)及び成分D)」のいずれかであったものを、「成分C)及び成分D)」のみに限定するものであるから、択一的記載の要素を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮に該当する。そして、本件補正前後で請求項1及び19にそれぞれ記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更はない。
そうすると、本件補正は、意匠法等の一部を改正する法律(平成18年法律第55号)附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものと認められる。

3.独立特許要件について
上記したとおり、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正発明1」という。)が、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて、さらに検討する。

(1)補正発明1
補正発明1は、次のとおりのものである。
「食品および飲料のための金属包装製品の内部塗布のための、
A)少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリエステル 55?75質量%、および
B)フェノール-ホルムアルデヒド樹脂 5?13質量%、および
C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂 0?12質量%、および
D)ブロックトポリイソシアネート 5?9質量%、および
E)触媒 0.5?2質量%、および
F)溶剤少なくとも1種 5?30質量%
を含有し、その際成分A)?F)の記載質量の合計は100質量%であり、かつ少なくとも成分C)および/またはD)を含有している塗料。」

なお、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂 0?12質量%、およびD)ブロックトポリイソシアネート 5?9質量%、……を含有し」と特定していることと「少なくとも成分C)および/またはD)を含有している」と特定していることとは必ずしも整合していないが、この点につき、請求人が回答書において「成分C)の量を「2?10質量%」とし、これに伴って、「少なくとも成分C)および/またはD)を含有している」との記載を削除する準備がある」旨主張していることにかんがみ、以降、「少なくとも成分C)および/またはD)を含有している」との発明特定事項は存在せず、成分C)と成分D)の両者とも必須成分であるとして補正発明1を扱う。

(2)引用刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開2001-311039号公報(原査定における引用文献2)
刊行物2:特開2003-138225号公報(同引用文献3)

≪刊行物1≫
1-ア.「(A)数平均分子量5,000?100,000のポリエステル樹脂と、(B)フェノール成分として2官能のフェノール化合物50?100重量%、3官能以上のフェノール化合物0?50重量%であるフェノール成分を含有するレゾール型フェノール樹脂架橋剤、(C)酸触媒、を含有することを特徴とする缶用塗料樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

1-イ.「【発明の属する技術分野】本発明は飽和共重合ポリエステル樹脂を有効成分とする塗料樹脂組成物であり、食品、および飲料用金属缶等に塗装され、加工性、オーバーベーク性、耐レトルト性、耐内容物(酸、塩など)性、耐デント性、抽出性、深絞り加工性に優れ、特に缶塗料に適した塗料樹脂組成物、及びこれを塗布した缶用塗装金属板に関する。
【従来の技術】缶塗料のなかで特に缶内面用塗料は内容物の風味やフレイバーを損なわないこと、および多種多様の食物による缶材質の腐食を防止することを目的として使用されるものであり、まず毒性のないこと、加熱殺菌(レトルト)処理に耐えること、次いで成形時の加工性に優れること(加工性、深絞り加工性)、食塩や酸性を示す内容物を加熱殺菌処理したときの耐ブリスター性と耐白化性(耐酸性)、内容物に含まれる酸や硫黄化合物(硫化黒変)での腐食防止、製缶時の過度の焼付による加工性の劣化の無いこと(耐オーバーベーク性)、レトルト後の耐衝撃性(耐デント性)などが要求される。また特に近年では外因子内分泌撹乱物質(以下、環境ホルモン)を含むビスフェノール型エポキシ樹脂等の物質も使用が避けられつつある。」(段落0001?0002)

1-ウ.「(B)フェノール樹脂架橋剤以外に使用できる任意の架橋剤としてはアミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられるが、衛生面よりアミノ樹脂が好ましい。これらの架橋剤は塗膜の性能を低下させない程度に配合し使用できる。
上記のアミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド、などのアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1?6のアルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。これらの内、単独或いは併用して使用できる。衛生上、メラミン、ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂が好ましく、更に好ましくは耐レトルト性、抽出性に優れるベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂である。」(段落0025?0026)

1-エ.「本発明の缶塗料樹脂組成物はこれに使用する(A)ポリエステル樹脂、(B)フェノール樹脂架橋剤、(C)酸触媒の比率は下式の範囲内で配合されることが好ましい。
(A)/(B)/(C)=100/5?40/0.1?5[重量比]
(A)ポリエステル樹脂100重量部に対し、(B)フェノール樹脂架橋剤の重量比が40重量部を超えると加工性が劣ることがあり、5重量部未満だと硬化性、耐レトルト性、耐デント性が低下することがある。より好ましくは10?30重量部、さらに好ましくは15?25重量部の範囲内である。また、(C)酸触媒量が0.1重量部未満だと硬化性が不十分になり加工性、耐レトルト性が劣ることがあり、5重量部を超えると酸による架橋部分の解裂が促進され加工性や硬化性、低レトルト性、耐デント性などが低下することがある。より好ましくは0.2?1重量部の範囲内である。」(段落0030)

1-オ.「本発明の缶用塗料用樹脂組成物は公知の有機溶剤に溶解された状態で塗料化される。塗料化に使用する有機溶剤としては、例えば……等から溶解性、蒸発速度等を考慮して1種、または2種以上を選択し使用される。」(段落0034)

1-カ.「本発明に使用するポリエステル樹脂の合成
エステル交換法による合成例(a)
ジメチルテレフタル酸890部、トリメリト酸4.4部、プロピレングリコール700部、1,4-シクロヘキサンジメタノール100部、チタンテトラブトキシド0.5部を3Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温しエステル交換を行なった。ついで、30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行なうとともに温度を250℃まで昇温し、さらにこのまま、1mmHg以下で90分間後期重合を行ない本発明に使用するポリエステル樹脂(a)を得た。
直接重合法による合成例(a)
テレフタル酸2660部、トリメリト酸15.5部、プロピレングリコール2450部、1,4-シクロヘキサンジメタノール350部、チタンテトラブトキシド1.8部を10Lオートクレーブに仕込み、3.5Kg/cm・Gの窒素加圧下で3時間かけて235℃まで徐々に昇温し、エステル化を行った。次いで、1時間かけて10mmHgまで減圧重合を行うと共に温度を250℃まで昇温し、さらにこのまま1mmHg以下で90分間後期重合を行ない本発明に使用するポリエステル樹脂(a)を得た。それぞれエステル交換法、及び直接重合法で得られた樹脂(a)の性能には差異はなく、組成と特性値は表1に示す。また、得られた樹脂はシクロヘキサノン/ソルベッソ-150=1/1溶剤で固形分40%の樹脂ワニスとし、これを用いて本発明の塗料組成物を調製した。」(段落0053?0054)

1-キ.「本発明のレゾール型フェノール樹脂(g)の合成
P-クレゾール60部、m-クレゾール40部、37%ホルムアルデヒド水溶液180部、及び水酸化ナトリウム1部を加え、60℃で3時間反応させた後、減圧下50℃で1時間脱水した。ついでn-ブタノール100部とリン酸6部を加え、110?120℃で2時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液を濾過して、固形分約50%のP-クレゾール、m-クレゾール混合系のレゾール型フェノール樹脂架橋剤(g)を得た。合成配合を表2に示す。
その他のレゾール型フェノール樹脂の合成
その他のレゾール型フェノール樹脂として合成例(g)と同様にして本発明のレゾール型フェノール樹脂(h)、(i)、(j)および比較例用レゾール型フェノール樹脂(k)、(l)を得た。合成配合を表2に示す
【表2】

表中 m-CS:m-クレゾール
p-CS:p-クレゾール
Xyl:3,5-キシレノール
Ph:フェノール」(段落0058?0060)

1-ク.「実施例 (1)
樹脂ワニス(a)20部、マイコート-106(三井サイテック(株)製)2.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.01部を配合した後、シクロヘキサノン/ソルベッソ-150=1/1で塗装に適した粘度になるまで希釈し、本発明の塗料組成物(1)を得た。これを前述した方法により塗布、焼付を行い本発明の塗装金属板のテストピースを得た。配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表3に示す。
……
【表3】

*1:メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂(三井サイテック(株)製)
*2:メチルエーテル化メラミン樹脂(三井サイテック(株)製)
*3:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製)ドデシルベンゼンスルホン酸
*4:ドデシルベンゼンスルホン酸
*5:ドデシルベンゼンスルホン酸系硬化触媒(キングインダストリイズ社製)」(段落0061?0063)

≪刊行物2≫
2-ア.「【請求項1】 (A)水酸基含有樹脂100重量部に対し、(B)アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤10?40重量部、及び(C)レゾール型フェノール樹脂架橋剤1?10重量部を含有することを特徴とするプライマー用塗料組成物。
【請求項2】 レゾール型フェノール樹脂架橋剤(C)が、3官能性以上のフェノール化合物とホルムアルデヒド類とを反応させて得られる数平均分子量が200?1,000のレゾール型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー用塗料組成物。
【請求項3】 3官能性以上のフェノール化合物が、m-クレゾール及び/又は石炭酸であることを特徴とする請求項2記載のプライマー用塗料組成物。
【請求項4】 水酸基含有樹脂(A)が、数平均分子量2,000?30,000、水酸基価が5?50及びガラス転移点が10?100℃の範囲内にあるエポキシ変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載のプライマー用塗料組成物。
【請求項5】 化成処理されていてもよい金属板上に、上記請求項1?4のいずれか一項に記載の塗料組成物が乾燥膜厚2?10μmとなるようにして塗装され、素材到達最高温度160?250℃で15?60秒間焼付けられた後、さらに該塗膜上に乾燥膜厚8?50μmの上塗塗膜が形成されてなることを特徴とする塗装金属板。」(特許請求の範囲の請求項1?5)

2-イ.「【発明の属する技術分野】本発明は、耐スクラッチ性、耐食性、耐沸騰水性、加工性などに優れた塗膜を形成できるプライマー用塗料組成物に関する。」(段落0001)

(3)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘示1-アの記載からみて、以下の発明 (以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
「(A)数平均分子量5,000?100,000のポリエステル樹脂と、(B)フェノール成分として2官能のフェノール化合物50?100重量%、3官能以上のフェノール化合物0?50重量%であるフェノール成分を含有するレゾール型フェノール樹脂架橋剤、(C)酸触媒、を含有する缶用塗料樹脂組成物」

(4)対比・判断
補正発明1と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の缶用塗料樹脂組成物は、摘示1-イに記載のとおり、食品及び飲料用金属缶等に塗装されるものであり、また、缶内面用塗料といえるものであるから、「食品および飲料のための金属包装製品の内部塗布のための」塗料といえる。
また、刊行物1発明におけるポリエステル樹脂はレゾール型フェノール樹脂架橋剤や摘示1-ウに記載されるように任意の架橋剤により架橋されるものであるからヒドロキシ基を有するものであることは当業者において自明のことであり、さらに、摘示1-オ及び1-クに記載のとおり、塗料とするためには溶剤が必須となることも明らかである。
そうすると、両者は、
「食品および飲料のための金属包装製品の内部塗布のための、
A)少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリエステル、および
B)フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、および
E)触媒、および
F)溶剤少なくとも1種
を含有している塗料」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。

相違点1:
補正発明1では、塗料成分として、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、およびD)ブロックトポリイソシアネート」を含有することが特定されているのに対し、刊行物1発明では、そのような規定のない点

相違点2:
補正発明1では、各成分A)?F)の含有量を特定しているのに対し、刊行物1発明では、各成分の含有量を特に規定していない点

上記相違点について検討する。
≪相違点1≫
刊行物1の摘示1-ウには、任意の架橋剤としてアミノ樹脂やイソシアネート化合物等が挙げられており、アミノ樹脂としてはベンゾグアナミンのメチロール化アミノ樹脂(補正発明1のベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂と同じものである。)が耐レトルト性、抽出性に優れて、更に好ましいと記載されるとともに、摘示1-クの実施例2には、メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂(三井サイテック(株)製のマイコート106)を含有する塗料が記載され、この任意成分は単なる例示でないことは明らかである。
また、刊行物1に記載の架橋剤としてのイソシアネート化合物については、刊行物2の摘示2-アに、ポリエステルなどの水酸基含有樹脂を使用した塗料において、フェノール樹脂架橋剤とともに、架橋剤としてアミノ樹脂(刊行物2の段落0023には、ベンゾグアナミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられており、これは補正発明1におけるベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂に該当する。)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(補正発明1のブロックトポリイソシアネートと同じものである。)が記載されているように、架橋剤としてのブロックトポリイソシアネートはアミノ樹脂とともに周知のものである。そうすると、刊行物1における架橋剤としてのイソシアネート化合物としてブロックトポリイソシアネートを使用することは当業者が容易になし得ることである。
そして、刊行物2の摘示2-アに記載されるように、ポリエステルなどの水酸基含有樹脂の架橋剤として、アミノ樹脂とブロックトポリイソシアネートは同等の働きを有するものであるから、刊行物1における架橋剤としてベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂(アミノ樹脂)の一部をブロックトポリイソシアネートとすることに格別な困難性は認められない。
また、本願明細書の実施例(回答書における請求人の主張を考慮)をみても、架橋剤として「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂」のみを使用した例3(塗料I/A)及び例4(塗料I)と「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂およびD)ブロックトポリイソシアネート」を併用した例7(塗料III)とを比較しても作用効果において格別の差異はなく、特に水吸収においては、明らかに「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂」のみを使用した例3及び4の方が優れていることから、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂およびD)ブロックトポリイソシアネート」を併用することに有利な効果を見いだせない。

≪相違点2≫
刊行物1においても、その摘示1-エには、「本発明の缶塗料樹脂組成物はこれに使用する(A)ポリエステル樹脂、(B)フェノール樹脂架橋剤、(C)酸触媒の比率は下式の範囲内で配合されることが好ましい。」として、「(A)/(B)/(C)=100/5?40/0.1?5[重量比]」との配合割合が記載されており、補正発明1のポリエステル、フェノール-ホルムアルデヒ及び触媒の含有量と格別な差異はなく、また、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂についても、摘示1-クの実施例2に、ポリエステル100(重量部)に対し、フェノール樹脂15(重量部)、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂5(重量部)及び触媒0.3(重量部)とすることが記載されている。
そして、架橋剤としてのブロックトポリイソシアネートについてはその量についての記載はないとしても、その架橋剤としての配合目的からみてベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂の使用量と同程度であることが容易に予測し得るものである。なお、溶剤については、同じく摘示1-オ及び1-クに記載のとおり、塗料成分としての溶剤量は、塗装に適した粘度になるまで使用されるものであることは自明である。
そうすると、塗料における各成分の配合量を補正発明1で特定する範囲にすることは当業者が容易になし得るものであり、そのことによる作用効果についても当業者が容易に予測し得るものといえる。

(5)まとめ
上記のとおり、補正発明1は刊行物1及び刊行物2(周知技術)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しているので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.原査定について
1.本願発明
上記のとおり、平成23年4月1日付け手続補正書による補正は却下されたので、本願の請求項1?25に係る発明は、平成22年11月15日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?25にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。
「食品および飲料のための金属包装製品の内部塗布のための、
A)少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリエステル 55?75質量%、および
B)フェノール-ホルムアルデヒド樹脂 5?13質量%、および
C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂 0?12質量%、および/または
D)ブロックトポリイソシアネート 5?9質量%、および
E)触媒 0.5?2質量%、および
F)溶剤少なくとも1種 5?30質量%
を含有し、その際成分A)?F)の記載質量の合計は100質量%であり、かつ少なくとも成分C)および/またはD)を含有している塗料。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
これに対して、原査定における拒絶の理由は、この出願については、平成22年7月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきもの」という点にあるところ、当該理由2とは、概略、「この出願に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」というものである。

3.当審における判断
そこで、本願発明1が原査定の拒絶の理由により拒絶すべきものであるか否かについて検討する。
(1)引用文献及びその記載事項
拒絶査定において次の文献が引用されている。
2.特開2001-311039号公報

そして、引用文献2は、上記第2の3(2)に記載の刊行物1と同じ文献であり、同箇所において摘示した事項が記載されている。

(2)引用文献2に記載された発明
引用文献2には、上記第2の3(3)の「刊行物1に記載された発明」に記載されているとおりの発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

(3)対比
本願発明1と引用発明2に記載とを対比すると、上記第2の3(4)に記載したとおりであるから、両者は、
「食品および飲料のための金属包装製品の内部塗布のための、
A)少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリエステル、および
B)フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、および
E)触媒、および
F)溶剤少なくとも1種
を含有している塗料」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認める。

相違点ア:
本願発明1では、塗料成分として、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂0?12質量%、および/またはD)ブロックトポリイソシアネート5?9質量%」を含有し、かつ、「少なくとも成分C)および/またはD)を含有」していることが特定されているのに対し、引用発明2では、そのような規定のない点

相違点イ:
本願発明1では、各成分A)?F)の含有量を特定しているのに対し、引用発明2では、各成分の含有量を特に規定していない点

(4)相違点に対する判断
≪相違点ア≫
本願発明1は、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂0?12質量%、および/またはD)ブロックトポリイソシアネート5?9質量%」を含有し、かつ、「少なくとも成分C)および/またはD)を含有」するものであると特定されているが、このことは、「D)ブロックトポリイソシアネート」のみを含有するか、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂およびD)ブロックトポリイソシアネート」を併用することを特定しているものと解される。
そして、後者の場合は、本願発明1は上記第2の3(1)に記載した補正発明1と本質的に相違するものではなく、その場合は、相違点アは上記第2の3(4)に記載した相違点1と同じになる。
そうすると、相違点アについては、上記第2の3(4)で述べたとおり、当業者が容易に想到し得るものであり、また、その作用効果についても格別なものとはいえないものである。
なお、本願明細書の実施例に関し、「D)ブロックトポリイソシアネート」のみを含有する場合の例2(塗料II)においても、「C)ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂」のみを使用する例1(塗料I)、例3(塗料I/A)及び例4(塗料I)に比して格別な効果を奏するものではない。

≪相違点イ≫
相違点イについては、上記第2の3(4)の相違点2と同じであるから、同箇所の相違点2に対する判断で示した理由と同じ理由により、当業者であれば容易になし得るものである。

(5)まとめ
上記のとおり、本願発明1は引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-25 
結審通知日 2013-02-01 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2004-208850(P2004-208850)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09D)
P 1 8・ 121- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増永 淳司  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
磯貝 香苗
発明の名称 塗料、その製法、その使用および被覆製品  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  
代理人 二宮 浩康  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 篠 良一  

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