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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F |
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管理番号 | 1276057 |
審判番号 | 不服2010-25493 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-11-12 |
確定日 | 2013-06-24 |
事件の表示 | 特願2004-500127「オゾン化水の流れおよび濃度を制御する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月6日国際公開、WO03/91815、平成17年8月11日国内公表、特表2005-523809〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、2003年4月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年4月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年7月1日付けの拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年7月9日付けで拒絶査定されたので、同年11月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けの手続補正書により特許請求の範囲が補正され、平成24年1月30日付けの特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年7月30日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成22年11月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年11月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正前及び補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、本件補正前の「プロセスツール」を本件補正により「半導体プロセスツール」とする補正を含むものである。 そして、この補正は、本願発明を特定する事項を限定するものであることは明らかであり、補正前後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第3項の規定に反する新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかを、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について検討する。 本願補正発明は、次のとおりのものである。 「1つより多くのプロセスツール(40)にオゾン化水を供給するための方法であって、以下: 第1の濃度を有するオゾン化水を、オゾン化水発生器(1000)から受容する工程; 水を供給源(20)から受容する工程; 該受容されたオゾン化水のうちの少なくとも1つと該供給源(20)から受容された水とを混合(1400)して、第2の濃度を有するオゾン化水を生成する工程;および 該第2の濃度を有するオゾン化水を第1の半導体プロセスツールに供給し、同時に、該オゾン化水発生器(1000)からのオゾン化水を第2の半導体プロセスツールに供給する工程、 を包含する、方法。」 2 刊行物に記載された発明 (1)引用例1の記載事項 これに対し、本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-9669号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は、オゾン濃度の異なるオゾン水を個別に給水できるようにしたオゾン水給水装置に関するものである。」(段落【0001】) (イ)「図3は本発明の第3の実施の形態に係るオゾン水給水装置の全体構成を示す概念図である。同図に示す如く、この実施の形態は、オゾン水生成装置1のオゾン水の給水口1a及び水道管7をオゾン濃度調節具9に夫々接続し、オゾン水と水道水とを適宜割合で混合して給水するようにしたことである。・・・オゾン濃度調節具9は、使用者が任意に混合割合を調節できる混合具(図示略)を内蔵している。・・・。 この実施の形態では、一つのオゾン水生成装置1で生成した高オゾン濃度のオゾン水と水道水とをオゾン濃度調節具9で混合し、用途に応じたオゾン濃度のオゾン水を得ることができる。」(段落【0017】、【0018】) (ウ)図3には、引用例1に記載された発明の第3の実施の形態に係る装置の全体構成が示されており、オゾン水生成装置に対し3個所に設けられたオゾン濃度調節具9が、それぞれ、オゾン水供給口1aと水道管7に接続されていることを確認することができる。 (2)引用例1に記載された発明 記載事項(ア)によれば、引用例1には、濃度の異なるオゾン水を個別に給水できるオゾン水給水装置が記載されており、これは、同(イ)(ウ)によれば、一つのオゾン水生成装置に対し複数個所に設けられたオゾン濃度調節具が、それぞれ、オゾン水供給口と水道管に接続されたものである。 そして、このオゾン水給水装置を使用することにより、同(イ)によれば、オゾン水生成装置でオゾン水を生成し、オゾン濃度調整具において、オゾン水生成装置からオゾン水を受容するとともに水道管を通じて水道水を受容し、該オゾン濃度調整具からは、それぞれの用途に応じたオゾン濃度の異なるオゾン水を給水することができる。 また、同(イ)によれば、それぞれのオゾン濃度調整具を使って使用者が任意に混合割合を調節できるので、複数個所に設けられたオゾン濃度調整具は同時に濃度の異なるオゾン水を給水することができる。 したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているとすることができる。 「濃度の異なるオゾン水を、同時に複数個所に個別に給水する方法であって、一つのオゾン水生成装置でオゾン水を生成し、複数個所に設けられたオゾン濃度調整具において、オゾン水生成装置からオゾン水を受容するとともに水道管を通じて水道水を受容し、個々のオゾン濃度調整具においてオゾン水と水道水を混合して所望濃度のオゾン水を給水することからなる、オゾン水の給水方法。」 3 対比と判断 (1)対比 本願補正発明と引用例1発明とを比較するにあたり、両者の比較を容易にするため、引用例1発明の記載を本願補正発明の記載にそって整理する。 まず、引用例1発明における「複数個所に設けられたオゾン濃度調整具」を、2個所に設けた「オゾン濃度調整具1」及び「オゾン濃度調整具2」とすることとし、オゾン水生成装置から供給されるオゾン水を「第1の濃度を有するオゾン水」とする。 また、オゾン濃度調整具に供給されたオゾン水が所望の濃度であれば、該オゾン水を水道水と混合しないことも、引用例1発明は包含すると理解することが自然である。 そうすると、オゾン濃度調整具1においては、「第1の濃度を有するオゾン水」と水道水を混合して「第2の濃度を有するオゾン水」として給水し、オゾン濃度調整具2においては「第1の濃度を有するオゾン水」を給水することは、引用例1発明に包含される1実施態様として、引用例1に実質的に記載されているとすることができる。 したがって、引用例1発明は、次のように整理することができる。 「複数個所にオゾン水を給水するための方法であって、 オゾン濃度調整具1において、第1の濃度を有するオゾン水をオゾン水生成装置から受容し、水道管から水道水を受容し、該オゾン水と該水道水を混合して第2の濃度を有するオゾン水を生成し、オゾン濃度調整具1から第2の濃度を有するオゾン水を給水し、 同時に、オゾン水生成装置からの第1の濃度のオゾン水をオゾン濃度調整具2から給水することからなるオゾン水給水方法。」 そして、引用例1発明の「給水」、「オゾン水」、「オゾン水生成装置」、「水道水」及び「水道管」は、本願補正発明の「供給」、「オゾン化水」、「オゾン化水発生器」、「水」及び「水の供給源」に相当するので、本願補正発明と引用例1発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 ア 一致点 「オゾン化水を供給するための方法であって、 第1の濃度を有するオゾン化水を、オゾン化水発生器から受容する工程; 水を供給源から受容する工程; 該受容されたオゾン化水のうちの少なくとも1つと該供給源から受容された水とを混合して、第2の濃度を有するオゾン化水を生成する工程;および 該第2の濃度を有するオゾン化水を供給し、同時に、該オゾン化水発生器からのオゾン化水を他に供給する工程、 を包含する、方法。」 イ 相違点 オゾン化水を供給する対象として、本願補正発明では「第1及び第2の半導体プロセスツール」に特定するのに対し、引用例1発明では、具体的には特定していない点。 (2)判断 半導体デバイス等を製造するにあたり、オゾンガスを溶解したオゾン水を供給し、これを用いて基板の洗浄等を行うことは、本願優先日前に当業者には周知の技術である。 例えば、前置報告書で引用された特開平11-138181号公報の段落【0001】には、半導体などの電子材料を扱う産業ではウエット洗浄工程に洗浄用のオゾン含有超純水を使用することが記載されているし、同じく特開2000-153139号公報の段落【0001】には、半導体デバイスの製造工程で、基板を洗浄する際にオゾン水を使用することが記載されている。 そして、引用例1発明は、濃度の異なるオゾン水を個別に供給できるようにし(記載事項ア)、洗浄水として有効利用を図ること意図したものであるが、オゾン水を洗浄水として利用することは半導体の製造分野においても周知であるので、洗浄水としての有効利用を図るために引用例1発明を半導体分野に適用することは、当業者が格別の困難なくなしうることである。 したがって、引用例1発明においてオゾン化水を供給する対象を、第1及び第2の半導体プロセスツールとすることは、当業者であれば容易になしうることであり、これによる効果も格別のものとすることもできない。 4 本件補正についての結び 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成22年11月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成21年10月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「1つより多くのプロセスツール(40)にオゾン化水を供給するための方法であって、以下: 第1の濃度を有するオゾン化水を、オゾン化水発生器(100)から受容する工程; 水を供給源(20)から受容する工程; 該受容されたオゾン化水のうちの少なくとも1つと該供給源(20)から受容された水とを混合(1400)して、第2の濃度を有するオゾン化水を生成する工程;および 該第2の濃度を有するオゾン化水を第1のプロセスツール(40A-40C)に供給し、同時に、該オゾン化水発生器(100)からのオゾン化水を第2のプロセスツール(40A-40C)に供給する工程、 を包含する、方法。」 2 進歩性の判断 本願発明は、上記第2[理由]で検討した本願補正発明の特定事項である「半導体プロセスツール」について、「半導体」との特定事項を解除して「プロセスツール」としたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の[理由]3(2)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 請求人の主張について 請求人は、回答書において本願発明の補正案を提示し、本願発明は、オゾン化水と水とを「所定圧力下で」混合し、「第1の濃度又は第2の濃度を有するオゾン化水中の溶解オゾンガスの脱気を回避すべく、前記所定圧力下での混合を行う、前記オゾン化水を生成する」という特定事項を有することで、引用例1に対して新規性と進歩性を有する旨を主張する。 これに関し、オゾン化水を加圧状態に保つことでオゾン濃度の低下を防ぐことができることは、当業者には周知の技術事項である。 このことは、例えば特開2001-79502号公報の段落【0007】には、圧力を保持した状態でオゾン水を密閉洗浄室に導いて洗浄することで、オゾンガスの高濃度溶解状態を維持しながら効率よく洗浄できる旨が記載されているし、特開平11-332959号公報の段落【0006】?【0008】には、オゾン水を循環させる際にオゾン水に溶けきらなかったオゾンの余剰ガスは、大気開放下で大きな気泡となり、オゾン水中の微細なオゾンを系外に持ち去ってオゾン濃度を低下させる要因となっていたので、オゾンガスを原料水に溶解させた後に加圧槽内で加圧する旨が記載されており、これらの公報には、オゾン濃度維持のためには加圧が必要なことが記載又は示唆されているといえることから明らかである。 すなわち、これらの公報の記載から、オゾン水を加圧状態に保つことは、オゾン濃度の低下を防ぐための有効な手段として周知であるといえる。 そして、引用例1発明は、洗浄水としてのオゾン水の製造・供給を行うことに関するものであるが、製造したオゾン水を供給するに際してオゾン濃度低下を防ぐことは当然の課題である。 したがって、引用例1発明において、オゾン水の製造・供給工程中の1工程である水との混合工程で、オゾン濃度の低下を防ぐために所定の圧力下で混合を行おうとすることは、当業者であれば当然に考慮することであり、技術的に格別のものとすることはできない。 このため、仮に請求人が提示する補正案への補正を認めるとした場合でも、本願発明は引用例1発明に対して進歩性を有するとすることはできない。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-23 |
結審通知日 | 2013-01-24 |
審決日 | 2013-02-12 |
出願番号 | 特願2004-500127(P2004-500127) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小久保 勝伊 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
國方 恭子 豊永 茂弘 |
発明の名称 | オゾン化水の流れおよび濃度を制御する装置および方法 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 佐久間 滋 |