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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02N
管理番号 1276065
審判番号 不服2011-9740  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-09 
確定日 2013-06-25 
事件の表示 特願2007-552440「生体模倣紙作動器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月26日国際公開、WO2006/112572、平成20年 8月14日国内公表、特表2008-532462〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成17年7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年3月17日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成24年4月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成23年10月19日付けの拒絶理由の「理由A」、及び、平成24年7月2日付けの拒絶理由の「理由」により、記載不備である点を通知しているが、平成24年4月25日付けの補正によっても、依然として、本件出願は、明細書、特許請求の範囲、及び、図面の記載が下記の理由1の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないので、本願は同法第49条第4号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。
さらに、平成24年4月25日付けの手続補正書により補正された本願発明の請求項1ないし5に記載された発明は、下記の理由2に示されるように、本願の優先権主張の日前に頒布された引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2及び3に例示された周知技術及び常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないため、本願は同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。

理由1
(ア)「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由A」には、『(1)本願の【請求項1】には、「セルロース紙を含んでいる生体模倣紙作動器において、セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにした紙(1)、該紙の両面に設けられる電極(2)、外部から電場を受信して直流に変換させる薄膜のレクテナ(rectenna)(4)、及び直流電源の信号を受信して動力を変換/制御するPAD論理回路(5)を有する生体模倣紙作動器。」と特定されており、
本願の【請求項3】には、「生体模倣紙の作動方法において、セルロース紙の両面に薄い導電性電極を設け、紙の一端を固定させ、電場が加えられると曲げ変形が発生するようにし、紙を2つの平面間に位置させ、電場を加えて長手方向の変形が発生するようにする生体模倣紙の作動方法。」と特定されており、
本願の出願当初の明細書の【0005】には、「(2)イオンEAP:・・・。このようなイオンEAPは、低い作動電圧の長所があるのに対し、作動速度が遅く、電解質や水分がなければならないという短所がある。」と記載されており、
本願の出願当初の明細書の【0014】には、「具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。一方、紙は、イオン導電体(ionic conductor)として一般に知られている。紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる。紙作動器の作動原理を纏めれば、セルロースの結晶領域による圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により変形が発生する。」と記載されている。
これらの記載からみると、【請求項1】には、「セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにした紙」であると特定され、
【請求項3】では、「セルロース紙」とのみ記載され、
本願の出願当初の明細書の【0005】には、「電解質や水分がなければならないという短所がある。」を踏まえると、「電解質や水分がない」ものであるといえ、
本願の出願当初の明細書の【0014】には、「セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域」との記載と、「紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられる」との記載があるが、
上記の各記載は整合性がないので、これらの整合性を図られたい。

具体的には、たとえば、上記の各記載からみて、「紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられる」ものである「セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域」が存在する状態が、「セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにした紙」であることの根拠は、出願当初の明細書には、記載されていないので、特許文献等の公知の文献により技術常識である点を説明されたい。また、水分を含むことは、本願の出願当初の明細書の【0005】には、「(2)イオンEAP:・・・。このようなイオンEAPは、低い作動電圧の長所があるのに対し、作動速度が遅く、電解質や水分がなければならないという短所がある。」と記載された従来例と同じであり、本願発明の課題が不明りょうであるといわざるをえない。
さらに、請求項3においては、現在の請求項の記載では任意のセルロースであり、本願の出願当初の明細書の【0014】の記載と整合性がないといえることから、両者の整合性のある記載に補正されたい。 』と指摘している。

これに対し、平成24年4月25日付けの補正により、上記の関連する箇所を以下のように補正している。
「【手続補正1】
【補正対象書類名】 特許請求の範囲
【補正対象項目名】 全文
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
セルロース紙を含んでいる生体模倣紙作動器において、セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにすることにより結晶領域と非結晶領域が形成されるようにしたセルロール紙(1)、該セルロール紙(1)の両面に設けられる電極(2)、外部から電場を受信して直流に変換させる薄膜のレクテナ(rectenna)(4)、及び該変換された直流電源の動力を変換/制御するPAD論理回路(5)を有する生体模倣紙作動器であって、印加された電場によるセルロース紙(1)の結晶領域の圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により、セルロース紙(1)に変形を発生させることを特徴とする生体模倣紙作動器。
【請求項2】
請求項1において、さらに、超薄膜型バッテリ層(6)を結合させ、マイクロ波が伝達されないときにバッテリ電源が用いられるようにした生体模倣紙作動器。
【請求項3】
生体模倣紙の作動方法において、マイクロフィブリルが一定の方向に配列されるようにすることにより、結晶領域と非結晶領域が形成されるようにしたセルロース紙(1)の両面に薄い導電性電極(2)を設け、マイクロ波を生体模倣紙の作動器に送信し、前記マイクロ波をレクテナ(4)を通して受信して直流電源に変換させた後、前記変換された直流電源をPAD論理回路(5)へ供給することにより、セルロール紙(1)の一端を固定させ、電場が加えられると長手方向の曲げ変形が発生するようにし、セルロール紙(1)を2つの平面間に位置させ、電場が加えられると長手方向への伸び変形が発生するようにし、印加された電場によりセルロース紙(1)の結晶領域の圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により、セルロール紙(1)に変形を発生させることを特徴とする、生体模倣紙の作動方法。
【請求項4】
請求項3において、マイクロ波を送信することにより遠隔的に駆動する生体模倣紙の作動方法。
【請求項5】
セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に並べられたセルロール紙(1)を製造する方法において、セルロースパルプを溶かしてセルロース溶液を作った後、セルロース溶液をスピンコーティングして遠心力によりセルロースのマイクロフィブリルが一定の方向に配列されるようにするか、またはセルロース溶液を微細なスリットを通じて押出しながら若干の引張力を加えることにより、マイクロフィブリルが一定の方向に配列されるようにする、セルロール紙(1)を製造する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】 明細書
【補正対象項目名】 0014
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【0014】
具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる(文献1及び2)。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により逆ピエゾ電気効果とも呼ばれる圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。一方、紙は、イオン導電体(ionic conductor)として一般に知られている。紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより非結晶領域内に浸透圧による圧力差が発生して変形が発生するようになる。紙作動器の作動原理を纏めれば、セルロースの結晶領域による圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により変形が発生する。
(文献1): J.Kim, S. Yun and Z.Ounaies, "Discovery of Cellulose as a smart mate
rial,"Macromolecules, 39(16), 4202-4206, June 2006.
(文献2): M.Shahimpoor, Y. Bar-Cohen, J. O. Simson and J. Smith, “Ionic polymer-metal composites(IMPCs)as a biomimetic sensors, actuators and artificial muscles-a review”,Smart materials & Structures, 7, R15-R30,1998.」

しかしながら、平成24年4月25日付けの補正では、本願の出願当初の明細書の【0005】の、「(2)イオンEAP:・・・。このようなイオンEAPは、低い作動電圧の長所があるのに対し、作動速度が遅く、電解質や水分がなければならないという短所がある。」との箇所は補正されていないので、請求項1及び3の「マイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにすることにより結晶領域と非結晶領域が形成されるようにしたセルロール紙」と、本願の出願当初の明細書の【0005】の、「(2)イオンEAP:・・・。このようなイオンEAPは、低い作動電圧の長所があるのに対し、作動速度が遅く、電解質や水分がなければならないという短所がある。」との記載と、補正後の【0014】の「具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる(文献1及び2)。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により逆ピエゾ電気効果とも呼ばれる圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。一方、紙は、イオン導電体(ionic conductor)として一般に知られている。紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより非結晶領域内に浸透圧による圧力差が発生して変形が発生するようになる。紙作動器の作動原理を纏めれば、セルロースの結晶領域による圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により変形が発生する。」との記載は、「電解質や水分がなければならない」という点において、依然として整合していないので、本願発明の構成を特定することができないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、また、当業者が実施することができる程度に発明の構成が記載されていないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(イ)「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由A」には、『(2)本願の出願当初の明細書の【0014】には、「具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。一方、紙は、イオン導電体(ionic conductor)として一般に知られている。紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる。紙作動器の作動原理を纏めれば、セルロースの結晶領域による圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により変形が発生する。」と記載されているが、「イオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる。」とはどのような作用であるのかが出願当初の明細書には明りょうに記載されていないので、本願の出願前に公知となっている特許文献等によりその作用を説明されたい。また、このような作用は「圧電効果とイオン転移効果」といえるのかについても、特許文献等の公知の文献をもとに説明されたい。 』と記載している。
これに対し、平成24年4月25日付けの補正で【0014】を「具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる(文献1及び2)。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により逆ピエゾ電気効果とも呼ばれる圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。一方、紙は、イオン導電体(ionic conductor)として一般に知られている。紙の製造過程でパルプに様々な金属イオンが溶け込むことができ、水分が吸着水(adsorbed water)や自由水(free water)の状態で紙の内部に存在するようになる。このようなイオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより非結晶領域内に浸透圧による圧力差が発生して変形が発生するようになる。紙作動器の作動原理を纏めれば、セルロースの結晶領域による圧電効果と非結晶領域のイオン転移効果により変形が発生する。
(文献1): J.Kim, S. Yun and Z.Ounaies, "Discovery of Cellulose as a smart mate
rial,"Macromolecules, 39(16), 4202-4206, June 2006.
(文献2): M.Shahimpoor, Y. Bar-Cohen, J. O. Simson and J. Smith, “Ionic polymer-metal composites(IMPCs)as a biomimetic sensors, actuators and artificial muscles-a review”,Smart materials & Structures, 7, R15-R30,1998.」と補正しているが、依然として「イオンや水分は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる。」とはどのような作用であるのか、そのメカニズムが当業者にとって明瞭には記載されていない。さらに補正により【0014】により詳しく補正された「具体的な作動原理は、セルロースファイバの結晶領域と非結晶領域が印加された電場により反応する圧電効果とイオン転移効果により変形が発生するようになる(文献1及び2)。マイクロファイバが一定方向に配列されると、結晶領域の結晶構造により逆ピエゾ電気効果とも呼ばれる圧電効果が発生する。木及びセルロースに圧電効果があることは既に知られている事実である。」という記載の「逆ピエゾ電気効果」がどのような影響を与えているのかも不明瞭である。
したがって、本願発明の構成を特定することができないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、また、当業者が実施することができる程度に発明の構成が記載されていないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(ウ)「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由A」には、『(3)本願の出願当初の明細書の【0014】に「イオンや水分」は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる」と記載されているが、変形が発生するためには、「イオンや水分」が移動できないものでないと、紙が変形することはないと思われるが、本願発明の「イオンや水分」がどのような状態であり、それにどのような電場が印加されると、どの方向に移動するのかを意見書にイメージ図で表示されたい。
また、「イオンや水分」は、電場が印加されることにより正極または負極に引き寄せられるが、これにより変形が発生するようになる」のであれば、単に「イオンや水分」を含む紙であれば足りると解されるが、特許請求の範囲には、「イオンや水分」を含むことは特定されていないし、「セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列されるようにした紙」と記載されており、一定の方向に配列したことにより変形する理由も出願当初の明細書には何ら記載されていないので、明細書に本願発明の動作原理が整合性のあるようには記載されていない。(「イオンや水分」ではなく、「セルロースのマイクロフィブリル(micro fibril)が一定の方向に配列される」ことにより変形するのであれば、そのような原理を公知の特許文献等と共にその動作原理を意見書に記載することにより、本願発明の動作原理を明りょうにされたい。) 』と記載しているが、この点は、平成24年4月25日付けの補正、及び、同日付の意見書を参照しても不明瞭である。
したがって、本願発明の構成を特定することができないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、また、当業者が実施することができる程度に発明の構成が記載されていないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(エ)「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由A」には、『(4)本願の【請求項3】には、「生体模倣紙の作動方法において、セルロース紙の両面に薄い導電性電極を設け、紙の一端を固定させ、電場が加えられると曲げ変形が発生するようにし、紙を2つの平面間に位置させ、電場を加えて長手方向の変形が発生するようにする生体模倣紙の作動方法。」が特定されているが、紙がどのように固定され、どのような方向に電場を加えると、どの方向に移動するのかが不明りょうであるので、その作動を意見書にイメージ図で表示されたい。その際、【請求項1】に特定されている「紙の両面に設けられる電極(2)」、「外部から電場を受信して直流に変換させる薄膜のレクテナ(rectenna)(4)」、「直流電源の信号を受信して動力を変換/制御するPAD論理回路(5)」、【請求項2】に特定されている「超薄膜型バッテリ層(6)」、及び「マイクロ波」(の振動の方向等)がどのように構成されているのかをイメージ図中に記載されたい。 』と記載しているが、この点は、平成24年4月25日付けの補正、及び、同日付の意見書を参照しても不明瞭である。
したがって、本願発明の構成を特定することができないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、また、当業者が実施することができる程度に発明の構成が記載されていないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(オ)「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由A」には、『(5)上記の点を踏まえて、本願発明の原理は、任意の紙に電極を付けて電場を印加すると、電場により紙に耐電が発生し、その電荷と電極の電場との関係で逆方向に紙が曲がることであるとも解される。すると、かなりの高電圧でないと実用化は困難であり、特に、マイクロ波で電場を作ろうとすると、現実的にはかなり困難であるようにも思える。
もし、本願発明を実施もしくは実験しているなら、その結果を意見書に記載されたい。なお、その際に、実験に使用した構成と本願発明の特許請求の範囲とが対応していることを記載し、本願発明の構成により実用に足りるアクチュエータを構成できる点を説明されたい。 』と記載しているが、この点は、平成24年4月25日付けの補正、及び、同日付の意見書を参照しても不明瞭である。
また、平成24年7月2日付けの拒絶理由の「理由」には、『請求項1の「電場」は「マイクロ波」と思われるので不明りょうである。また、請求項3の特定と実施例との対応関係が不明りょうであるので、発明の構成を特定することができない。』と記載しているが、請求人からは応答がなかった。
したがって、本願発明の構成を特定することができないので、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、また、当業者が実施することができる程度に発明の構成が記載されていないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

理由2
「平成23年10月19日付けの拒絶理由」の「理由B」には、『(B)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2005-1885号公報
引用文献2:特開昭62-11100号公報
引用文献3:特開2000-278887号公報

・請求項1、2、3、4
・引用文献 1ないし3
・備考
引用文献1には、外部から印加した電場により変形する材料を使用する点が記載されている。そして、セルロースが一定の方向に配列された材料は引用文献2に例示されているように周知であり、一定の方向に配列されていれば、電場により変形するものと解されることから、引用文献1記載の発明において、引用文献2に例示される一定の方向に配列されたセルロースを使用することは当業者にとって格別なものとは認められない。
さらに、マイクロ波を電場に変換することは、引用文献3に例示されるように周知であるといえ、PAD論理回路により電場を切り替える点は設計事項にすぎないといえる。

・請求項 5
・引用文献 1ないし3
・備考
遠心力により配列させる点は、常套手段にすぎない。 』と記載している。

これに対し、平成24年4月25日付けの意見書には、「引用文献1の発明は、動力伝達機構を使用せず、代わりに進行波を使用することにより、平面形状可変膜上にある物体を移動させる物体移動装置についての発明であり、具体的には、電場応答性を有する電場応答樹脂を挟んで上下に配置される多数の電極対を形状可変膜表裏面全域に配置し、進行波により提供される電力を電極対に供給することにより、移動対象物体の移動経路に沿って平面を連続的に変形または凹まして行く方法により移動対象物体を移動させる発明であり、本願の特徴とする「セルロースのマイクロフィブリルが一定の方向に配列される」ことについては何ら記載されていません。」と主張しているが、セルロースが一定の方向に配列された材料は引用文献2に例示されているように周知であり、当業者にとって格別なものとは認められないので、請求人の主張を採用することができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-11 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2007-552440(P2007-552440)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H02N)
P 1 8・ 121- WZ (H02N)
P 1 8・ 537- WZ (H02N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平岩 正一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 槙原 進
田村 嘉章
発明の名称 生体模倣紙作動器  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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