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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1276069
審判番号 不服2011-16606  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-02 
確定日 2013-06-25 
事件の表示 特願2005-264467「改良された通話記録を有する携帯型電子デバイスおよびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日出願公開、特開2006- 87101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年9月12日(パリ条約による優先権主張2004年9月13日、欧州特許庁)の出願であって、平成23年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたが、当審において平成24年10月5日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成25年1月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年1月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「複数のエントリーを格納するアドレス帳アプリケーションを有する携帯型電子デバイスに通話記録を提供する方法であって、該方法は、
発信コールおよび着信コールに対するコール関連情報をメモリに格納することであって、該コールのそれぞれは、複数の電話番号の1つに関連付けられており、該複数の電話番号のうちの1つ以上は、該アドレス帳アプリケーションの該複数のエントリーのうちのいずれにも含まれていない、ことと、
通話記録のコールのリストを編集することであって、該通話記録のコールは、それに対するコール関連情報が該メモリに格納された該複数の電話番号のそれぞれ1つに対する該コールのうちの単一のコールであり、該複数の電話番号のそれぞれ1つのうちの1つ以上は、該アドレス帳アプリケーションの該複数のエントリーのうちのいずれにも含まれておらず、該複数の電話番号のそれぞれ1つに対する該コールのうちの該単一のコールは、該複数の電話番号のうちの該1つに関連付けられた時間的に直前のコールである、ことと、
該複数の電話番号のそれぞれに対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、該メモリに格納されたコール関連情報を有する該コールのそれぞれ1つのリストを編集することと、
該通話記録のコールのリストを表示することと、
該通話記録のコールのうちの選択された1つが該通話記録のコールのリストからユーザによって選択される場合、該通話記録のコールのうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して編集された該リストの少なくとも一部分を表示することと
を含む、方法。」

3.引用発明
(1)引用発明1
当審の拒絶理由に引用された特開2003-264625号公報(以下、「引用例」という。)には、「電話機」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、電話を使用する場合に、発信した情報を示す発信情報及び着信した情報を示す着信情報をそれぞれ、発信履歴及び着信履歴として記録する電話機であって、さらに発着信リストを有し、発信情報又は着信情報から日時情報などを削除し、かつ重複する電話番号などの識別情報を削除し、発信した相手及び着信した相手を示す識別情報を重複しないように、時系列に発着信リストに記録し、発着信リストを表示し、この発着信リストを用いて、次の発信などを行うことができることを特徴としている。」(2頁2欄、【0006】)

イ.「【0010】
【発明の実施の形態】本発明に係る1の実施の形態としての携帯電話機100について説明する。(携帯電話機100の構成)携帯電話機100は、無線電波を用いて移動通信ができる可搬型の電話機であり、図1に示すように、アンテナ101、アンテナ101を介して他の電話機との間で各種情報の送受信を行う送受信部102、各種情報の変復調を行う変復調部103、電気信号と音声との間の変換を行う音声処理部104、マイク105、スピーカ106、表示部107、制御部108、操作部109及び記憶部110から構成されている。
【0011】表示部107は、具体的には、液晶ディスプレィユニットから構成される。操作部109は、複数個の数字又は文字ボタン、その他の操作ボタンを操作部表面上に備えて構成される。記憶部110は、具体的には、読み書き可能な半導体メモリから構成され、図2に一例として示すように、発信履歴リスト201、着信履歴リスト202及び発着信リスト203を有している。
【0012】発信履歴リスト201は、1個以上の発信情報を含む。発信情報は、利用者により発信が行われたときに、発信履歴リスト201に記録される情報であり、発信情報は、発信先を識別する電話番号及び発信日時を含む。また、発信情報は、「184」、「186」、キャンセルコールウエイティングなど、通話に関する前付けの特別な番号や、DTMF送信のための後付番号(「P」や「・」以降)などを含む場合もある。
【0013】着信履歴リスト202は、1個以上の着信情報を含む。着信情報は、携帯電話機100に着信があったときに、着信履歴リスト202に記録される情報であり、着信情報は、発信元を識別する電話番号及び着信日時を含む。また、着信情報は、発信情報と同様に、その他の情報を含む場合もある。発着信リスト203は、1個以上の発着信情報を記録するための領域を有する。発着信情報は、発信先や発信元を識別する電話番号から構成される。
【0014】制御部108は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成され、ROMは、あらかじめ制御用コンピュータプログラムを記憶しており、マイクロプロセッサが制御用コンピュータプログラムに従って動作することにより、制御部108は、その機能を達成する。制御部108は、通話、メール送受信、インターネット接続、電話帳管理、スケジュール管理、マルチメディアコンテンツの再生及びゲームの機能を制御する。」(2頁2欄-3頁3欄、【0010】-【0014】)

ウ.「【0018】次に、制御部108は、発着信リスト203の先頭領域に前記発着信電話番号を追加して書き込む。
(携帯電話機100の動作)携帯電話機100の制御部108の動作について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0019】制御部108は、発信又は着信を示す発着信情報を受け取る(ステップS101)。受け取った発着信情報が発信情報である場合に(ステップS102)、制御部108は、発信履歴リスト201に受け取った発着信情報を追加して書き込む(ステップS103)。また、受け取った発着信情報が着信情報である場合に(ステップS104)、制御部108は、着信履歴リスト202に受け取った発着信情報を追加して書き込む(ステップS105)。
【0020】次に、制御部108は、受け取った発着信情報から、電話番号以外の情報を除去して発着信電話番号を生成し(ステップS106)、発着信リスト203において生成した発着信電話番号と同じ電話番号を探索し(ステップS107)、存在する場合に(ステップS108)、該当する電話番号を発着信リスト203から消去し(ステップS109)、発着信リスト203において前記消去された領域を詰める(ステップS110)。
【0021】次に、制御部108は、発着信リスト203の先頭領域に前記発着信電話番号を追加して書き込む(ステップS111)。制御部108は、上記のステップS101?S111を繰り返す。
(まとめ)従来の発信履歴、着信履歴機能は、通話の履歴を記録することに重点を置いているため、通話した時間と相手情報を忠実に記録している。従来の発信履歴と着信履歴、又はこれらを統合した履歴表示機能では、履歴機能として日時データを同時に保存していることから、通話した日時を知ることができる。しかし、通話した日時が必要なく単に通話した相手のリストを重複することなく表示し、それを用いて新たな通話に利用するという目的には適さない。」(3頁4欄-4頁5欄、【0018】-【0021】)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.上記引用例1の「電話機」は、制御部108及び記憶部110を備える携帯電話機100であって(摘記事項イの【0010】)、その記憶部110には、1個以上の発信情報を含む発信履歴リスト201と1個以上の着信情報を含む着信履歴リスト202を有している(摘記事項イの【0011】)。
上記「発信情報」は、「利用者により発信が行われたときに、発信履歴リスト201に記録される情報」であり、「発信先を識別する電話番号及び発信日時を含む。」(摘記事項イの【0012】)ものであり、
上記「着信情報」は、「携帯電話機100に着信があったときに、着信履歴リスト202に記録される情報」であり、「発信元を識別する電話番号及び着信日時を含む。」(摘記事項イの【0013】)ものである。
とすると、上記引用例1には、
「携帯電話機に発信履歴及び着信履歴を記録する方法」が記載されており、また、
「該方法は、
発信時に、発信先を識別する電話番号及び発信日時を含む発信情報を記憶部に記録し、着信時に、発信元を識別する電話番号及び着信日時を含む着信情報を記憶部に記録することであって、上記発信は、発信先を識別する電話番号に関連付けられており、上記着信は、発信元を識別する電話番号に関連づけられている、こと」が記載されているものと認められる。
b.次に、携帯電話機110の制御部108は、「受け取った発着信情報から、電話番号以外の情報を除去して発着信電話番号を生成し(ステップS106)、発着信リスト203において生成した発着信電話番号と同じ電話番号を探索し(ステップS107)、存在する場合に(ステップS108)、該当する電話番号を発着信リスト203から消去し(ステップS109)、発着信リスト203において前記消去された領域を詰める(ステップS110)。次に、制御部108は、発着信リスト203の先頭領域に前記発着信電話番号を追加して書き込む(ステップS111)。制御部108は、上記のステップS101?S111を繰り返す。」(摘記事項ウの【0020】-【0021】)が、
上記「発着信リスト203」に対して「消去」することや「追加して書き込む」ことは、該「発着信リスト203」を「編集する」ことと言え、
また、上記「発着信リスト203」における「発着信」である「発着信電話番号」は、上記a.で検討した「記憶部に記録」された「発信情報」又は「着信情報」に対応する電話番号であって、同一の番号が重複しないように、かつ、最新の発着信に対応するものが記録されているから、
「発着信リストを編集することであって、該発着信は、それに対する発信情報又は着信情報が該記憶部に記録された該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のそれぞれ1つに対する該発着信のうちの単一の発着信であり、該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のそれぞれ1つに対する該発着信のうちの該単一の発着信は、該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のうちの該1つに関連付けられた最新の発着信である」と認められる。
c.上記b.の「発着信リスト」について、「発着信リストを表示し、この発着信リストを用いて、次の発信などを行う」(摘記事項アの【0006】)とあるから、
「該発着信リストを表示する」ものであり、また、
「該発着信のうちの選択された1つが該発着信リストからユーザによって選択される場合、該発着信のうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して次の発信を行う」ものと認められる。

以上を総合すれば、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「携帯電話機に発信履歴及び着信履歴を記録する方法であって、該方法は、
発信時に、発信先を識別する電話番号及び発信日時を含む発信情報を記憶部に記録し、着信時に、発信元を識別する電話番号及び着信日時を含む着信情報を記憶部に記録することであって、上記発信は、発信先を識別する電話番号に関連付けられており、上記着信は、発信元を識別する電話番号に関連づけられている、ことと、
発着信リストを編集することであって、該発着信は、それに対する発信情報又は着信情報が該記憶部に記録された該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のそれぞれ1つに対する該発着信のうちの単一の発着信であり、該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のそれぞれ1つに対する該発着信のうちの該単一の発着信は、該発信先を識別する電話番号又は発信元を識別する電話番号のうちの該1つに関連付けられた最新の発着信である、ことと、
該発着信リストを表示することと、
該発着信のうちの選択された1つが該発着信リストからユーザによって選択される場合、該発着信のうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して次の発信を行うことと
を含む、方法。」

(2)引用発明2
同じく、当審の拒絶理由に引用された特開2004-229214号公報(以下、「引用例2」という。)には、「携帯通信端末」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯電話機50(携帯通信端末)の概略構成を示すブロック図である。1は携帯電話機50全体の制御を行うCPU(取得手段)、2はデータや音声を送受信する無線通信部、3はキー入力を行う操作部(入力手段)、4は情報を表示する表示部(表示手段)、5は音声処理部、6はスピーカ、7はマイク、8はCPU1の動作プログラムを記憶するROM(リードオンリメモリ)、9はデータ一時記憶用のRAM(ランダムアクセスメモリ)、11は個人の名前、電話番号やメールアドレスを蓄積する個人情報データベース(電話帳機能)、12は送受信メールの宛先、日時、内容を蓄積するメールデータベース(記憶手段)、13は発着信した通話の日時、電話番号を蓄積する通話データベース(記憶手段)である。
メールデータベース12内には、受信メールを保存する受信メールファイル121と、送信メールを保存する送信メールファイル122が設けられている。また、通話データベース13内には、発信元電話番号と日時を保存する着信通話ファイル131と、発信先電話番号と日時を保存する発信通話ファイル132が設けられている。」(3頁、【0011】)

イ.「【0015】
次に、特定人物における電話の発着信の履歴を表示する携帯電話機50の動作について図3を参照して説明する。
無線通信部2が電話を着信すると(ステップSb1)、CPU1はその着信した電話番号、着信日時を通話データベース13内の着信通話ファイル131に保存する(ステップSb3)。同様に、ユーザが操作部3で電話番号を押下して発信指示すると、CPU1は無線通信部2を用いて発信し(ステップSb5)、その発信した電話番号、発信日時を通話データベース13内の発信通話ファイル132に保存する(ステップSb7)。
【0016】
Aにおける発着信通話を検索する場合を例とする。ユーザが操作部3の電話帳呼出キーを押下すると、CPU1は個人情報データベース11に格納している全ての宛先名を表示部4に表示する。ユーザは表示した中からAの名前を選択する。あるいは、ユーザは操作部3を用いて名前検索の画面にAの名前を直接入力する(ステップSb9)。
CPU1は、個人情報データベース11からAの個人情報である電話番号、メールアドレスを取得する(ステップSb11)。次にCPU1は、ステップSb11で取得したAの電話番号を検索キーとして、通話データベース13内の着信通話ファイル131と発信通話ファイル132から、Aの電話番号を有する発着信データを検索する(ステップSb13)。発着信データがあった場合はそれを取得し(ステップSb15)、発着信データがなかった場合は処理を終了する。次にCPU1は、ステップSb11より取得したAの個人情報と、通話データベース13より取得した発着信通話の日時、発信着信の区分等、通話履歴を時系列順に表示部4に表示させる(ステップSb17)。このとき、名前や電話番号、メールアドレスなどの個人情報は画面の上部に、発着信データは時系列順で画面の下部に表示される。発着信データが多数で1度に表示できないときは、操作部3のキー操作によってスクロールして閲覧することができる。
【0017】
ユーザが表示部4に表示された電話番号を操作部3で選択すると(ステップSb19)、CPU1は電話発信動作を行う(ステップSb21)。
図4に履歴検索の結果画面例を示す。上記図2のステップSa17と図3のステップSb17におけるメール履歴と通話履歴の表示は、ユーザが操作部3のファンクションキーを押下することによって切り換えることができる。」(4-5頁、【0015】-【0017】)

ウ.「【0021】
例えば、上記実施形態では、携帯通信端末の電話帳機能から、特定の人物に関するメール履歴あるいは通話履歴を表示する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、受信または送信メール一覧から特定のアドレスを指定し、ファンクションキー等で特定の人物におけるメールの履歴を表示する構成としてもよい。通話についても同様に、着信または発信一覧から特定の電話番号を指定し、ファンクションキー等で特定の人物における通話履歴を表示する構成としてもよい。
また、履歴の表示において、個人情報を表示する部分と履歴を表示する部分とを上下に画面分割し、上部と下部それぞれでスクロールが可能なダブルウインドウ画面とする構成としてもよい。また、時系列順に新しいデータから並べられた履歴表示の順番を、古いデータから順に並べる構成としてもよい。
また、メールアドレスや電話番号などの個人情報を修正する際に、通信履歴に登録されている個人情報も自動的に書き換えられ編集する構成としてもよい。
また、上記実施形態における携帯電話機の代わりに、無線通信機能を備えた携帯型パーソナル・コンピュータ又はPDA(Personal Digital Assistance)に本発明を適用してもよい。」(5-6頁、【0021】)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
a.上記引用例2の「携帯通信端末」は、「個人の名前、電話番号やメールアドレスを蓄積する個人情報データベース(電話帳機能)」及び「発着信した通話の日時、電話番号を蓄積する通話データベース(記憶手段)」を備えている(摘記事項アの【0011】)。
b.上記「携帯通信端末」は、「特定人物における電話の発着信の履歴を表示する」(摘記事項イの【0015】)ものであり、その具体的な処理として、「CPU1は、個人情報データベース11からAの個人情報である電話番号、メールアドレスを取得する(ステップSb11)。次にCPU1は、ステップSb11で取得したAの電話番号を検索キーとして、通話データベース13内の着信通話ファイル131と発信通話ファイル132から、Aの電話番号を有する発着信データを検索する(ステップSb13)。発着信データがあった場合はそれを取得し(ステップSb15)、発着信データがなかった場合は処理を終了する。次にCPU1は、ステップSb11より取得したAの個人情報と、通話データベース13より取得した発着信通話の日時、発信着信の区分等、通話履歴を時系列順に表示部4に表示させる(ステップSb17)。」(摘記事項イの【0016】)と記載されているが、
上記「Aの電話番号」の取得方法に関し、「通話についても同様に、着信または発信一覧から特定の電話番号を指定し、ファンクションキー等で特定の人物における通話履歴を表示する構成としてもよい。」(摘記事項ウの【0021】)と記載されているから、
「特定の電話番号に対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、記憶手段に格納された発着信履歴を有する該発着信の1つのリストを作成し、
発着信のうちの選択された1つが、該発着信履歴からユーザによって選択される場合、該発着信のうちの選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して作成された該リストの少なくとも一部分を表示する」ものである。

以上を総合すれば、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「特定の電話番号に対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、記憶手段に格納された発着信履歴を有する該発着信の1つのリストを作成し、
発着信のうちの選択された1つが、該発着信履歴からユーザによって選択される場合、該発着信のうちの選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して作成された該リストの少なくとも一部分を表示する、携帯通信端末の発着信リスト作成及び表示方法。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明1を対比すると、

a.引用発明1の「携帯電話機」は本願発明の「携帯型電子デバイス」に含まれる。
b.引用発明1の「発信履歴及び着信履歴」は本願発明の「通話記録」に含まれる。
c.引用発明1の「記録する方法」と本願発明の「提供する方法」は、表現が異なるのみで実質的な差異は無い。
d.引用発明1の「発信時に、発信先を識別する電話番号及び発信日時を含む発信情報を記憶部に記録し、着信時に、発信元を識別する電話番号及び着信日時を含む着信情報を記憶部に記録すること」は本願発明の「発信コールおよび着信コールに対するコール関連情報をメモリに格納すること」に含まれる。
e.引用発明1の「発信先を識別する電話番号」及び「発信元を識別する電話番号」が「複数の電話番号の1つ」であることは自明であり、また、本願発明の「該コール」が「発信コール及び着信コール」を指すことは明らかであるから、
引用発明1の「上記発信は、発信先を識別する電話番号に関連付けられており、上記着信は、発信元を識別する電話番号に関連づけられている」は、本願発明の「該コールのそれぞれは、複数の電話番号の1つに関連付けられており」に相当する。
f.引用発明1の「発着信」は、発着信リストにおいて時系列的に並べられた発呼又は着呼であるから「コール」と言え、かつ、各「コール」は発信履歴又は着信履歴に記録されているから「通話履歴の」コールと言える。
そうすると、引用発明1の「発着信」と本願発明の「通話履歴のコール」あるいは「コール」とは実質的に同一のものである。
g.引用発明1の「発着信リスト」は本願発明の「リスト」に相当する。
h.引用発明1の「それに対する発信情報又は着信情報が該記憶部に記録された」は本願発明の「それに対するコール関連情報が該メモリに格納された」に含まれる。
i.引用発明1の「最新の発着信」は本願発明の「時間的に直前のコール」に相当する。
j.引用発明1の『該発着信のうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号対して「次の発信を行う」』と本願発明の『該通話記録のコールのうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して「編集された該リストの少なくとも一部分を表示する」』とは、『該通話記録のコールのうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して「該電話番号に関連した処理を行う」』点で共通する。

結局、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「携帯型電子デバイスに通話記録を提供する方法であって、該方法は、
発信コールおよび着信コールに対するコール関連情報をメモリに格納することであって、該コールのそれぞれは、複数の電話番号の1つに関連付けられている、ことと、
通話記録のコールのリストを編集することであって、該通話記録のコールは、それに対するコール関連情報が該メモリに格納された該複数の電話番号のそれぞれ1つに対する該コールのうちの単一のコールであり、該複数の電話番号のそれぞれ1つに対する該コールのうちの該単一のコールは、該複数の電話番号のうちの該1つに関連付けられた時間的に直前のコールである、ことと、
該通話記録のコールのリストを表示することと、
該通話記録のコールのうちの選択された1つが該通話記録のコールのリストからユーザによって選択される場合、該通話記録のコールのうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して該電話番号に関連した処理を行うことと
を含む、方法。」

(相違点1)
本願発明の「携帯型電子デバイス」が「複数のエントリーを格納するアドレス帳アプリケーションを有」しており、「該複数の電話番号のうちの1つ以上」及び「該複数の電話番号のそれぞれ1つのうちの1つ以上」は「該アドレス帳アプリケーションの該複数のエントリーのうちのいずれにも含まれて」いないのに対し、
引用発明1ではそのような構成の有無は不明である点。

(相違点2)
本願発明が「該複数の電話番号のそれぞれに対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、該メモリに格納されたコール関連情報を有する該コールのそれぞれ1つのリストを編集すること」を含むのに対し、
引用発明1ではそのような処理を含んでいない点。

(相違点3)
該通話記録のコールのうちの選択された1つが該通話記録のコールのリストからユーザによって選択される場合、該通話記録のコールのうちの該選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して行う「該電話番号に関連した処理」が、
本願発明では「編集された該リストの少なくとも一部分を表示すること」であるのに対し、
引用発明1では「次の発信を行うこと」である点。

以下に、上記各相違点につき検討する。
(相違点1)について
一般に、複数のエントリーを格納するアドレス帳アプリケーションは、携帯電話機が普通に備えている機能に過ぎず、また、アドレス帳に格納されていない電話番号に関連する発着信コールについてもその発着信履歴が記憶部に記録されることは普通に行われていることに過ぎない。
そして、引用例1には「制御部108は、通話、メール送受信、インターネット接続、電話帳管理、スケジュール管理、マルチメディアコンテンツの再生及びゲームの機能を制御する。」(摘記事項イの【0014】)と記載されており、引用発明1の携帯電話機が電話帳(アドレス帳)機能を備えることが示唆されていることから、
引用発明1の携帯電話機が「複数のエントリーを格納するアドレス帳アプリケーションを有」する構成とし、さらに、その発着信履歴にアドレス帳のエントリー以外のものも含ませるようにすることにより、「該複数の電話番号のうちの1つ以上」及び「該複数の電話番号のそれぞれ1つのうちの1つ以上」は「該アドレス帳アプリケーションの該複数のエントリーのうちのいずれにも含まれて」いない構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。

(相違点2)及び(相違点3)について
まず、上記「3.引用発明」の項中の「(2)引用発明2」の項に記したように、上記引用例2には、
「特定の電話番号に対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、記憶手段に格納された発着信履歴を有する該発着信の1つのリストを作成し、
発着信のうちの選択された1つが、該発着信履歴からユーザによって選択される場合、該発着信のうちの選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して作成された該リストの少なくとも一部分を表示する、携帯通信端末の発着信リスト作成及び表示方法。」
なる引用発明2が記載されている。
ここで、上記「特定の電話番号に対して」リストを作成することを「複数の電話番号のそれぞれに対して」リストを作成するようにすることは適宜なし得ることであり、また、引用発明1,2はいずれも携帯電話機の通信履歴に関連する発明であって、両発明を組み合わせることに何ら阻害要因は無いから、引用発明2の「特定の電話番号に対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、記憶手段に格納された発着信履歴を有する該発着信の1つのリストを作成」する構成を引用発明1に適用して、「該複数の電話番号のそれぞれに対して、該電話番号に発信され、該電話番号から受信された、該メモリに格納されたコール関連情報を有する該コールのそれぞれ1つのリストを編集すること」を含む構成とすること(相違点2)は、引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
次に、引用発明2は、このようにして編集された「リスト」を「発着信のうちの選択された1つが、該発着信履歴からユーザによって選択される場合、該発着信のうちの選択された1つに関連付けられた該電話番号に対して作成された該リストの少なくとも一部分を表示する」ものであるから、引用発明1の発着信履歴である「発着信リスト」に対して利用者が選択する動作を行った場合に、「次の発信を行うこと」に替えて引用発明2のように「編集された該リストの少なくとも一部分を表示する」ようにすること(相違点3)は、引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用・効果も引用発明1,2から当業者が予測し得る範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-30 
結審通知日 2013-01-31 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2005-264467(P2005-264467)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 山本 章裕
新川 圭二
発明の名称 改良された通話記録を有する携帯型電子デバイスおよびその方法  
代理人 大塩 竹志  

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