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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05F
管理番号 1276077
審判番号 不服2011-21092  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-30 
確定日 2013-06-26 
事件の表示 特願2008-511314「光起動ワイドバンドギャップバイポーラパワースイッチングデバイスおよび回路」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月23日国際公開,WO2006/124450,平成20年11月20日国内公表,特表2008-541275〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,2006年(平成18年) 5月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年(平成17年) 5月13日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年 5月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年 9月30日付けで本件審判請求がなされるとともに,手続補正がなされたものである。

II.平成23年 9月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年 9月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
制御端子を含み,かつ前記制御端子に印加される制御信号に応答して負荷電流を供給するように構成されるワイドバンドギャップバイポーラのラッチ型パワースイッチングデバイスと,
前記制御信号を生成し,かつ前記スイッチングデバイスの前記制御端子に前記制御信号を供給するように構成されるワイドバンドギャップドライバデバイスと,を備え,
前記ドライバデバイスが,それに当てられる紫外線に応答して非伝導状態と伝導状態との間で切り替えをするように構成される光起動バイポーラトランジスタデバイスを備えたことを特徴とする電子回路。」
と補正された。
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ワイドバンドギャップバイポーラパワースイッチングデバイス」を「ワイドバンドギャップバイポーラのラッチ型パワースイッチングデバイス」と,「光起動デバイス」を「光起動バイポーラトランジスタデバイス」とそれぞれ限定したものであって,この限定された事項は,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されており,本件補正後の請求項1に記載された発明は,本件補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である実願昭55-183758号(実開昭57-106327号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には,「直流無接点開閉器」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている。

・「この考案は負荷に供給される直流電力を無接点式にオン-オフ制御する直流無接点開閉器に関するものである。
直流無接点開閉器は,負荷を含む閉回路中に直列にスイツチング素子を介挿し,入力回路でこのスイツチング素子を開閉制御する様にしたものが一般的であり,スイツチング素子としては通常パワートランジスタが用いられる。また,このスイツチング部の制御部への影響,即ち高圧部から入力回路への干渉を防止するため,スイツチング部と制御部である入力回路との結合はホトカプラー等の電気的に絶縁された光学的結合回路によつて行われる。
第1図は従来の典型的な直流無接点開閉器の回路図を示している。
同図において,1は負荷2に直列に接続されるダーリントントランジスタ回路,3はホトカプラー,4は入力回路で,スイツチング回路は同図の様に小電力で駆動し得る様ダーリントン接続されたトランジスタ回路から成り,また,ホトカプラー3は発光素子のホトダイオード30とホトトランジスタ31とで構成されている。」(明細書第1ページ第14行?第2ページ第15行)

・「いずれにしても,これらのダーリントントランジスタ回路1(1’)はその作動点を飽和領域としや断領域に設定されるようにしなければならない。
しかしながら,上述した従来の無接点開閉器では,入力回路4の状態によりホトトランジスタ31の出力電圧が不安定なレベルとなつて確実にトランジスタ回路1(1’)を飽和状態に出来ない場合があった。この原因は,入力回路4の制御信号が不安定レベルにある時,ホトトランジスタ31がトランジスタ11(11’)に対して充分なベース電流を供給出来なくなるからであり,その結果パワートランジスタ10(10’)を活性状態へと移行させ,当然に無効電力の消費と残り電圧の増大という望ましくない事態を招来させていた。」(明細書第2ページ第20行?第3ページ第14行)

・「この考案は以上の事情に鑑みて成されたもので,入力回路の制御信号が如何なるレベルにあろうとダーリントントランジスタ回路がアナログ的動作をせず,常に飽和或いはしや断領域で動作する無接点開閉器を提供することを第一の目的とし,」(第4ページ第2行?第6行)

・「第3図はこの考案の実施例である直流無接点開閉器の回路図を示し,同図において,第1図(第2図)と異なるのは,ホトトランジスタ31の出力にトランジスタ50,51で構成される2段直結トランジスタ増幅回路5が接続された点,トランジスタ11′のベースとトランジスタ51のベース間にツエナーダイオード6が接続された点,およびパワートランジスタ10′の出力端に保護ダイオード7が接続された点である。他の構成については第1図に示す回路と同様であるから,同一部分には同一符号を付す。
次にこの回路の動作を説明すると,今,入力回路4に制御信号が入力されていない時は,ホトダイオード30が発光せず,従つてホトトランジスタ31がオンしないため,トランジスタ50はベース電流が流れて導通し,またこの導通によつてトランジスタ51はしや断状態に保持されてダーリントン回路1′は駆動されない。それ故,パワートランジスタ10′は完全にしや断された状態を保持し,負荷回路のオフ状態を保つ。
入力回路4に充分なレベルの制御信号が入力すると,ホトダイオード30が発光し,ホトトランジスタ31が導通してトランジスタ50へのベース電流が供給されなくなる。そうするとトランジスタ50がオフし,またこのオフによつてトランジスタ51が導通し,さらにトランジスタ11′も導通してパワートランジスタ10′が導通飽和状態に移行する。この場合,ダーリントントランジスタ回路1′はトランジスタ51によつて増幅された電流で駆動されるから,パワートランジスタ10′は充分に飽和領域で作動する。なお,抵抗8,9の値が,ダーリントントランジスタ回路1′が一定の入力電流のある時に充分飽和する様,適当に定められるのはいうまでもない。
次に,入力回路4に不安定な中間レベルの制御信号が入力した場合の動作を説明する。
この場合,ホトトランジスタ31はトランジスタ50に対して充分なベース電流を供給出来ない。ところが,通常のトランジスタは電流増幅率が概ね100を越えるから,トランジスタ50はトランジスタ51に対して充分なベース電流を供給する。その結果トランジスタ11′のベース電流は,トランジスタ50の極めて広い活性動作領域でパワートランジスタ10′が飽和状態に達するに充分な電流値を保つこととなる。制御信号が非常に小さくてホトトランジスタ31に殆んど電流が流れず,そのためトランジスタ50がほぼ完全に導通した時にはじめてトランジスタ51以降がしや断する。要するに,ダーリントントランジスタ回路1′を完全にオン-オフする入力回路4の制御信号のしきい値幅が非常に狭くなり,トランジスタ回路1′のアナログ的動作,即ちパワートランジスタ10′の活性領域での動作が殆んど無くなることになる。それ故に,回路のオン時に残り電圧の増大と電力の損失増大を確実に防止することができる。
また,第3図から明らかな様に,ホトトランジスタ31のコレクタ-エミツタ間に加わる最大電圧はトランジスタ50のベース-エミツタ間の順方向電圧となるから,使用するフォトカプラー3は容量の小さいもので良いことがわかる。
なお,ツエナーダイオード6は,パワートランジスタ10′のコレクタ-エミツタ間に急しゆんな高電圧が加わつた場合,その高電圧を吸収するためのダイオードで,上記コレクタ-エミツタ間の電圧を,ツエナ-電圧プラストランジスタ51および11′のベース-エミツタ順方向電圧でクランプし,更に,その時のツエナー電流でトランジスタ11′,したがつてパワートランジスタ10′を導通させる。この時,電流は殆んどパワートランジスタ10′中を流れるので,ツエナーダイオード6には小電流しか流れず,従つて当該ダイオードの容量を小さくし得るという利点がある。また,小容量のツエナーダイオードは大容量のツエナーダイオードに比し一般に応答性が優れているから,この様な回路構成にすることで,異常高電圧の吸収特性をより優れたものとすることが出来る。
トランジスタ51のベースとパワートランジスタ10′のベース間に接続される抵抗20は,パワートランジスタ10′のベース-エミツタ間順方向電圧とトランジスタ51のベース-エミツタ間順方向電圧との差(パワートランジスタのベース-エミツタ間順方向電圧は小電力トランジスタのそれに比べ高い)を利用して,トランジスタ51のベース電流を増やすための抵抗で,上記のしきい値電圧幅をさらに狭くする様作用する。しかし,実用上は一般に不要で,特に特性のバラツキを問題にする場合や入力回路4の制御信号の状態が悪い場合に取り付ければ良い。
以上説明したように,この考案によれば,ホトカプラーの受光トランジスタとコンプリメンタリダーリントントランジスタ回路との間に2段直結トランジスタ増幅回路を接続したから,制御信号のレベルが不安定であつても,パワートランジスタはアナログ的動作をせず,常に飽和状態かしや断状態のいずれかの状態を保持する優れた無接点開閉機能を発揮する。」(明細書第4ページ第12行?第9ページ第7行)

・明細書第1ページ第14行?第2ページ第15行の記載事項と第1図の図示内容からみて,「制御端子を含み,かつ前記制御端子に印加される制御信号に応答して負荷に電流を供給するように構成されるバイポーラのパワートランジスタ10と,前記制御信号を生成し,かつ前記パワートランジスタ10の前記制御端子に前記制御信号を供給するように構成されるホトトランジスタ31及びトランジスタ11を含む回路素子と,を備え,前記ホトトランジスタ31及び前記トランジスタ11を含む回路素子が,それに当てられる光に応答して非伝導状態と伝導状態との間で切り替えをするように構成されるホトトランジスタ31を備えた,電子回路」が示されているのは明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1の第1図の従来の直流無接点開閉器の回路図には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「制御端子を含み,かつ前記制御端子に印加される制御信号に応答して負荷に電流を供給するように構成されるバイポーラのパワートランジスタ10と,
前記制御信号を生成し,かつ前記パワートランジスタ10の前記制御端子に前記制御信号を供給するように構成されるホトトランジスタ31及びトランジスタ11を含む回路素子と,を備え,
前記ホトトランジスタ31及び前記トランジスタ11を含む回路素子が,それに当てられる光に応答して非伝導状態と伝導状態との間で切り替えをするように構成されるホトトランジスタ31を備えた,
電子回路。」

原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平8-288500号公報(以下「引用例2」という。)には,「炭化珪素半導体素子とその製造法及び用途」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な炭化珪素プレーナー型p-n接合の構造を有する炭化珪素半導体素子および形成方法とその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭化珪素(SiC)には多くの結晶系が存在し,結晶構造により2.3乃至3.0エレクトロンボルトの禁制帯幅を有する。また,SiCは熱的,化学的及び機械的に極めて安定でワイドギャップ半導体としてはめずらしくp型,n型共に安定に存在する材料である。SiCのドーパントはp型についてはアルミ(Al),ボロン(B),n型に関しては窒素(N)が知られているが不純物拡散係数が極めて小さく不純物ドーピングに熱拡散プロセスを用いることが困難であり,イオン注入法が用いられている。従って,SiC単結晶にイオン注入により不純物ドーピングを行い作成された素子は大電力用素子,高温用素子,対放射線素子,光電変換素子その他種々の電子技術分野への応用が期待される。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】SiCはその物性から高耐圧パワーデバイスへの適用が期待されているが,パワーデバイスにおいては電界の集中を緩和する耐圧構造が必要不可欠である。特に,プレーナー型p-n接合は多くのパワーデバイスにおいて必要不可欠である。Siパワーデバイスのプレーナー型p-n接合においては拡散窓を用いた熱拡散プロセスにより形成される接合端部の曲率により電界の集中を緩和している。一方,SiCはSiの約10倍の電界のもとで用いられると共に,不純物拡散係数が極めて小さいためにSiとは異なるSiC特有の耐圧構造,およびその形成プロセスが必要である。
【0005】本発明の目的は高耐圧プレーナー型p-n接合を有する高耐圧炭化珪素半導体デバイス,および高耐圧プレーナー型p-n接合形成方法及びその用途を提供することにある。」

・「【0010】
・・・
また,上記の炭化珪素半導体プレーナー型p-n接合を具備したダイオード,トランジスタおよびサイリスタ等の炭化珪素半導体素子およびこれらの素子を具備した電気回路は高耐圧,かつ低抵抗であり,高温においても安定した特性を示した。
・・・
また,炭化珪素半導体はその物性を活かしたデバイスとして各種トランジスタも有効である・・・」

・「【0031】(実施例5)図11は炭化珪素半導体素子を用いたバイポーラパワートランジスタのチップ構造を示すものである。図のプレーナー型はガードリングと酸化膜により耐圧の確保と接合の保護がなされており,主に樹脂封止形やモジュール形に採用される。また,本実施例は増幅段のトランジスタと主トランジスタが1つのチップ内に構造されたいわゆるダーリントン構造であり,小さなベース電流で大電流を制御できる利点がある。また,スイッチング時間の短縮を目的として,エミッタやベースをメッシュ構造とし,よりいっそうの微細化を図ることができる。本実施例においても,実施例1と同様にp層及びAl電極部のn+ 領域を形成することにより優れた特性が得られるものである。」

原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2005-503024号公報(以下「引用例3」という。)には,「大型炭化ケイ素デバイスおよびその製造方法」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は超小型電子デバイスおよびその製造方法に関し,より詳細には光作動炭化ケイ素サイリスタなどの二電気端子炭化ケイ素デバイスおよびその製造方法に関する。」

・「【0031】
次に,光作動サイリスタの動作について説明する。コンタクト24に対するバイアスより大きい正のバイアスがコンタクト22に印加されると,ドリフト層とゲート層の間の接合が逆方向にバイアスされ,p-ドリフト層における印加電圧をサポートする。この段階ではサイリスタは非導通であり,サイリスタには漏れ電流はほとんど流れない。サイリスタは,約3.25eVを超えるエネルギーを有する紫外(UV)光(例えば,波長が約0.382μm以上の光)などの光をゲート領域に照射することによってターンオンする。UV光によって逆方向バイアス接合中に光子が生成され,それにより電子-正孔対が生成される。光子誘起電子はコンタクト22に向かって流れ,正孔はコンタクト24に向かって流れる。この過程において,層18と層16の間のpn接合およびエピタキシャル層14と層12の間のpn接合の両方が順方向にバイアスされ,より多くの正孔および電子がp-ドリフト層に注入される。p-ドリフト層に注入された正孔はコンタクト24に向かって流れ,また,p-ドリフト層に注入された電子はコンタクト22に向かって流れ,それによりpn接合がさらに順方向にバイアスされる。光の強度が十分である場合,正帰還プロセスが開始され,最終的にサイリスタがこの「オン」状態にラッチされる。ラッチ状態では,密度の高い電流が,サイリスタの両端間における比較的小さい順方向降下電圧でアノードからカソードへ流れる。したがって紫外光がサイリスタをターンオンさせ,電流を流している。ターンオンしたサイリスタは,コンタクト24に印加される電圧の極性を,印加電圧をゼロに減少させることによって,かつ/または他の従来技法を使用して反転させることによってターンオフさせることができる。」

原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-112265号公報(以下「引用例4」という。)には,「インバータ装置及び電動機駆動装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0004】なお,このインバータ装置に用いられる突入防止回路を図6を用いて説明する。図6において,3は限流抵抗,4はサイリスタ,6は突入防止回路制御部,10aはアノードゲート間抵抗,10bはゲートカソード間抵抗,11はフォトサイリスタ用ゲート抵抗,12はフォトサイリスタ,15は突入防止回路制御部用電源である。サイリスタ4は,単一で用いられ,限流抵抗3に並列に接続されている。また,サイリスタ4のゲートは,アノードゲート間抵抗10aとカソードゲート間抵抗10bとの接続点に接続されている。アノードゲート間抵抗10aとサイリスタ4のゲートの間にはフォトサイリスタ12が配置されている。

本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-318669号公報には,「ソリッドステートコンタクタ」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0007】
この発明は,上述のような課題を解決するためになされたもので,光結合素子に高電圧が印加された時に電圧を抑制し,光結合素子を保護できるとともに,光結合素子に逆電圧が印加された場合であっても,光結合素子を保護できるソリッドステートコンタクタを得ることを目的とする。」

・「【0018】
駆動用サイリスタSCR3のゲート・アノード極間に,入力信号回路11から電気的に絶縁された状態で入力信号を受ける受信用のスイッチング素子であるホトトランジスタQ10が介挿され,ホトトランジスタQ10のコレクタと駆動用サイリスタSCR3のカソード間に,ホトトランジスタQ10に並列にツェナダイオードZD1が接続されている。光結合素子OI1は,発光ダイオードD10とホトトランジスタQ10とから構成され,入力端子6,7から入力信号回路11に印加された入力信号を電気的に絶縁して次段のホトトランジスタQ10に伝達し,ホトトランジスタQ10はサイリスタSCR3のゲートを制御する。
【0019】
入力信号回路11において,入力端子6と発光ダイオードD10との間に抵抗R7を接続する。
【0020】
次に,動作について説明する。
入力信号が入力端子6,7間に印加されない場合,光結合素子OI1を構成する発光ダイオードD10には電流が流れないので発光せず,ホトトランジスタQ10はオンしない。従って,ホトトランジスタQ10を通してサイリスタSCR3のゲートにはゲート電流が流れず,サイリスタSCR3はオンしない。従って,主回路サイリスタSCR1,SCR2もトリガされない。入力端子6,7間に入力信号が印加されると発光ダイオードD10が発光して,ホトトランジスタQ10がオンし,主回路サイリスタSCR1,SCR2がトリガされ,交流電源3より負荷4に電力が供給される。」

・「【0022】
実施の形態1に係るソリッドステートコンタクタにおいて,光結合素子OI1を構成するスイッチング素子であるホトトランジスタQ10と並列に接続するツェナダイオードZD1は,光結合素子OI1に高電圧が印加された時に電圧を抑制し,光結合素子OI1を保護することができる。従って,耐電圧が低い光結合素子OI1に高電圧が印加された時でも,駆動用サイリスタSCR3を正常に動作することができる。また,光結合素子OI1にサージ電圧の逆電圧が印加された場合にも,ホトトランジスタQ10と並列に接続されたツェナダイオードZD1により,光結合素子OI1を保護することができる。」

・「【0029】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4に係るソリッドステートコンタクタの回路構成を示す図である。図において,1?7,VAR1,R1?R7,C1,D1?D6,SCR1,SCR2,SCR3,OI1,D10,Q10は図1と同様であり,その説明を省略する。また,光結合素子OI1を構成するスイッチング素子であるホトトランジスタQ10に直列にトランジスタQ11をダーリントン接続し,耐電圧を上げるようにしたものである。
【0030】
実施の形態4に係るソリッドステートコンタクタにおいては,光結合素子OI1に高電圧が印加されても,光結合素子OI1に直列にダーリントン接続したトランジスタQ11が動作することができるため,光結合素子OI1のブレークダウンを防止することができ,低電圧の光結合素子を使用することができる。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「負荷に電流を供給する」態様は前者の「負荷電流を供給する」態様に相当し,後者の「ホトトランジスタ31」は前者の「光起動バイポーラトランジスタデバイス」相当する。
また,後者の「バイポーラのパワートランジスタ10」と,前者の「ワイドギャップバイポーラのラッチ型パワースイッチングデバイス」とは,「バイポーラのパワースイッチングデバイス」である点で共通し,後者の「ホトトランジスタ31及びトランジスタ11を含む回路素子」と,前者の「ワイドバンドギャップドライバデバイス」とは,スイッチングデバイスを駆動するという意味において「ドライバデバイス」である点で共通する。
そして,後者の「光」と,前者の「紫外線」とは,「光」である点で共通する。

そうすると,両者は,
「制御端子を含み,かつ前記制御端子に印加される制御信号に応答して負荷電流を供給するように構成されるバイポーラのパワースイッチングデバイスと,
前記制御信号を生成し,かつ前記スイッチングデバイスの前記制御端子に前記制御信号を供給するように構成されるドライバデバイスと,を備え,
前記ドライバデバイスが,それに当てられる光に応答して非伝導状態と伝導状態との間で切り替えをするように構成される光起動バイポーラトランジスタデバイスを備えた,
電子回路。」
において一致し,以下の各点で相違すると認められる。

<相違点1>
バイポーラのパワースイッチングデバイスに関し,本願補正発明では,「ワイドバンドギャップバイポーラのラッチ型パワースイッチングデバイス」であるのに対して,引用発明では,バイポーラのパワートランジスタ10である点。

<相違点2>
ドライバデバイスに関し,本願補正発明では,「ワイドバンドギャップドライバデバイス」であるのに対して,引用発明では,ホトトランジスタ31及びトランジスタ11を含む回路素子である点。

<相違点3>
光起動バイポーラトランジスタデバイスが,それに当てられる光に応答するのに関し,光が,本願補正発明では,「紫外線」であるのに対して,引用発明では,それ以上の特定はなされていない点。

4.相違点の検討・当審の判断
<相違点1,2について>
引用例1には,制御信号のレベルが不安定であっても,パワートランジスタは,飽和状態かしや断状態のいずれかの状態を保持することが記載されており(明細書第8ページ最下行?第9ページ第7行),バイポーラのパワートランジスタ10(パワースイッチングデバイス)をラッチ型のものにしようとする示唆がされているといえる。
また,チャタリング等を防止してスイッチングを安定させるためにワイドバンドギャップの半導体を用いることが好ましいことは自明である。
一方,ダイオード,トランジスタ,サイリスタ等の炭化珪素半導体素子は,ワイドバンドギャップ半導体素子として従来から周知の事項である(必要があれば,引用例2,引用例3の摘記事項を参照のこと。)とともに,光起動素子によりスイッチングデバイスとしてのラッチ型パワースイッチングデバイスであるサイリスタを駆動することは,慣用手段に過ぎない(必要があれば,引用例4の段落【0004】,図4や特開2004-318669号公報の段落【0018】,【0022】,【0029】,【0030】,図1,図4を参照のこと。)。
そうすると,引用発明に,引用例1に記載された示唆に鑑みて,上記周知の事項,及び,上記慣用手段を適用して,相違点1,2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3について>
引用例3の段落【0001】,【0031】には,紫外光(紫外線)により光起動炭化珪素サイリスタを動作することが開示されている。
そうすると,引用発明に,引用例3に開示された事項を適用して,相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たものである。

そして,本願補正発明の作用効果について検討しても,引用発明,引用例1に記載された示唆,引用例3に開示された事項,上記周知の事項,及び,上記慣用手段から予測し得るものに過ぎず,格別のものとはいえない。

したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例1に記載された示唆,引用例3に開示された事項,上記周知の事項,及び,上記慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

6.付言
審判請求人は,回答書において補正案を提示して,「サイリスタを非伝導状態に切り換えるのに十分な電流を供給するように構成された逆バイアス整流フォトダイオードを備え」ており,引用例は,サイリスタを非伝導状態に切り替えるような構成を開示していない旨の主張をしている。
しかしながら,ラッチ型のデバイスであるサイリスタを用いれば,非伝導状態に切り替えるための構成が必要となることは極めて自然であり(必要があれば、引用例3の段落【0031】の「ターンオンしたサイリスタは,コンタクト24に印加される電圧の極性を,印加電圧をゼロに減少させることによって,かつ/または他の従来技法を使用して反転させることによってターンオフさせることができる。」なる記載を参照のこと。),そのような構成にフォトダイオードを用いる点にも困難性は認められない。
よって,審判請求人の上記主張は採用することができない。

III.本願発明について
1.本願発明
平成23年 9月30日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年 2月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
制御端子を含み,かつ前記制御端子に印加される制御信号に応答して負荷電流を供給するように構成されるワイドバンドギャップバイポーラパワースイッチングデバイスと,
前記制御信号を生成し,かつ前記スイッチングデバイスの前記制御端子に前記制御信号を供給するように構成されるワイドバンドギャップドライバデバイスと,を備え,
前記ドライバデバイスが,それに当てられる紫外線に応答して非伝導状態と伝導状態との間で切り替えをするように構成される光起動デバイスを備えたことを特徴とする電子回路。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?4及びその記載事項は前記II.2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,前記II.1.で検討した本願補正発明の「ワイドバンドギャップバイポーラのラッチ型パワースイッチングデバイス」を「ワイドバンドギャップバイポーラパワースイッチングデバイス」と,「光起動バイポーラトランジスタデバイス」を「光起動デバイス」と,それぞれ下線部の限定を削除したものである。
そうすると,本願発明の構成よりも更に限定した構成を備える本願補正発明が前記II.4に記載されたとおり,引用発明,引用例1に記載された示唆,引用例3に開示された事項,上記周知の事項,及び,上記慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明の上位概念発明である本願発明も,本願補正発明と同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例1に記載された示唆,引用例3に開示された事項,上記周知の事項,及び,上記慣用手段に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2008-511314(P2008-511314)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05F)
P 1 8・ 575- Z (G05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉浦 貴之牧 初  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 槙原 進
藤井 昇
発明の名称 光起動ワイドバンドギャップバイポーラパワースイッチングデバイスおよび回路  
代理人 清水 邦明  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  
代理人 岩見 晶啓  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
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