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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1276086
審判番号 不服2011-27683  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2013-06-25 
事件の表示 特願2007-501792「画像情報を用いるカテーテル追跡用システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月6日国際公開,WO2005/093658,平成19年9月6日国内公表,特表2007-525306〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成17年2月9日(パリ条約による優先権主張日 平成16年3月1日,米国)を国際出願日とする出願で,その請求項1に係る発明は,平成22年12月13日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであって,以下のとおりのものであると認められる。(以下,「本願発明」という。)
「患者内の腔のマッピング用システムであって、
イメージングカテーテルと、コンピュータと、出力装置と、を含んでおり、
上記イメージングカテーテルが、腔の複数の画像をキャプチャするようになっており、各画像は、画像面を有しており、
上記コンピュータが、キャプチャされた複数の画像を受け取り、前記画像に含まれるデータを用いて少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定し、決定された画像面の分離位置角度に基づいて、腔の部分の3次元表示を生成するようになっており、
上記出力装置が、腔の部分の3次元表示を出力するようになっている、
システム。」

第2 引用刊行物記載の発明
(1)これに対して,原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前である平成15年2月12日に頒布された特開2003-38492号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,次の事項が記載されている。
(1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、体内に挿入されて超音波断層像と光学観察像とを得ることができる超音波内視鏡装置に関する。」
(1-イ)「【0010】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施例を説明する。図2は超音波内視鏡装置の全体構成を示しており、操作部2の一端に挿入部可撓管1の基端が連結され、挿入部可撓管1の先端付近の部分は、操作部2に配置された操作ノブ3を回転操作することによって任意の方向に屈曲する湾曲部1aになっている。
【0011】挿入部可撓管1の先端に連結された先端部本体4には、光学観察像を得るための観察窓5と超音波断層像を得るための超音波信号を発受信する超音波プローブ6とが配置されている。Vaは観察窓5から外方に向かう観察光軸、Uは超音波走査範囲である。」
(1-ウ)「【0015】このような超音波プローブ6により、目標とする臓器の超音波走査範囲Uに位置する部分の二次元の超音波断層像U2が得られ、先端部本体4をその軸線4x周りに回転させることにより、その臓器の異なる位置の二次元の超音波断層像U2が順に得られるので、それらを合成することにより超音波断層像の三次元像U3を得ることができる。」
(1-エ)「【0041】そして、光信号入出力装置30から出力される挿入部可撓管1の三次元の屈曲状態の検出信号と、エンコーダ出力装置41から出力される挿入部可撓管1の挿入長と回転角度の検出信号が、コンピュータ90に入力されて、超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され、そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成されて三次元像U3が構築される。
【0042】そして、その映像信号が画像合成ユニット11を経由して表示装置12に送られ、図5に示されるように、三次元像U3が二次元の超音波断層像U2と共に表示装置12に表示される。」
これらの記載事項によると,引用刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「先端に連結された先端部本体4に光学観察像を得るための観察窓5と超音波断層像を得るための超音波信号を発受信する超音波プローブ6とが配置されている挿入部可撓管1,コンピュータ90,表示装置12を含んでおり,該超音波プローブ6により超音波走査範囲Uに位置する部分の二次元の超音波断層像U2が得られ,先端部本体4をその軸線4x周りに回転させることにより,異なる位置の二次元の超音波断層像U2が順に得られ,一方,光信号入出力装置30から出力される挿入部可撓管1の三次元の屈曲状態の検出信号と,エンコーダ出力装置41から出力される挿入部可撓管1の挿入長と回転角度の検出信号が,コンピュータ90に入力されて,超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され,そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成されることにより超音波断層像の三次元像U3を得ることができ,そして,該三次元像U3が二次元の超音波断層像U2と共に表示装置12に表示される,体内に挿入される超音波内視鏡装置。」(以下,「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張日前である平成13年10月16日に頒布された特開2001-286469号公報(以下,「引用刊行物3」という。)には,次の事項が記載されている。
(2-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波診断装置に関し、さらに詳しくは、超音波探触子を動かしながら連続的にスキャンして超音波画像を取り込む際にその超音波画像の取り込みを良好に行えると共に3次元画像の生成を高速処理できるようにした超音波診断装置に関する。」
(2-イ)「【0002】
【従来の技術】図15は、従来の超音波診断装置の一例を示す構成図である。この超音波診断装置500は、超音波探触子1と、超音波診断装置本体51と、前記超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出するための位置検出アーム31および3次元位置検出装置32とを具備している。
【0003】前記超音波診断装置本体51は、被検体の内部を平面的に走査するように音線方向を変えると共に各音線方向の音線信号を生成する送受信部2と、前記音線信号の強度やドプラ成分に基づいてBモード画像やCFM(カラーフローマッピング)画像を生成する画像生成部3と、前記3次元位置検出装置32および前記送受信部2の出力信号に基づいて走査面位置(走査面の3次元位置)を算出する走査面位置算出部55と、前記画像生成部3から出力される画像とその走査面位置とを対応付けて画像メモリ54に格納するのを制御する画像取込制御部56と、前記画像と前記走査面位置とを対応つけて格納する画像メモリ54と、その画像メモリ54に格納した画像および走査面位置から補間演算等を行って3次元データ(ボリュームデータ)を生成する3次元データ生成部56と、前記3次元データを格納する3次元データメモリ7と、その3次元データメモリ7に格納した3次元データと与えられた視線方向とから3次元画像を生成する3次元画像生成部8と、前記3次元画像の表示等の表示制御を行う表示制御部9と、表示装置10と、操作卓12と、全体の制御を行う中央制御部61とを具備している。」
(2-ウ)「【0020】
【発明の実施の形態】以下、図に示す実施の形態により本発明を詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態にかかる超音波診断装置を示す構成図である。この超音波診断装置100は、超音波パルスを被検体内へ送信すると共に該被検体内から超音波エコーを受信する超音波探触子1と、被検体の内部を平面的に走査するように音線方向を変えると共に各音線方向の音線信号を生成する送受信部2と、前記音線信号の強度やドプラ成分に基づいてBモード画像やCFM画像を生成する画像生成部3と、その画像生成部3から出力される画像を格納する画像メモリ4と、前記超音波画像部3から今回出力された画像と前記画像メモリ4に前回記憶した画像の類似度を算出し該類似度が許容範囲内か否かを判定しその判定結果を報知すると共に許容範囲内なら今回出力された画像を前記画像メモリ4に格納する類似度演算制御部5と、前記画像メモリ4に格納した画像から補間演算等を行って3次元データ(ボリュームデータ)を生成する3次元データ生成部6と、前記3次元データを格納する3次元データメモリ7と、その3次元データメモリ7に格納した3次元データと与えられた視線方向とから3次元画像を生成する3次元画像生成部8と、前記3次元画像の表示等の表示制御を行う表示制御部9と、表示装置10と、操作卓12と、全体の制御を行う中央制御部11とを具備している。」
(2-エ)【図10】,【図11】及び【図14】では,画像間の角度が決まれば,それに対応して画像間の類似度が一義的に決まっている。

第3 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明の「体内に挿入される超音波内視鏡装置」は,体内の腔に挿入されるものであり,その三次元像U3が得られるものであるから,本願発明における「患者内の腔のマッピング用システム」に相当する。

イ 引用発明の「先端に連結された先端部本体4に光学観察像を得るための観察窓5と超音波断層像を得るための超音波信号を発受信する超音波プローブ6とが配置されている挿入部可撓管1」は,像を得ていることから「イメージング」であり,本願発明の「イメージングカテーテル」に相当する。そして,「超音波プローブ6」は,異なる位置の二次元の超音波断層像U2を複数得ていることから,「超音波プローブ6とが配置されている挿入部可撓管1」は「複数の画像をキャプチャする」ようになっており,「二次元の超音波断層像」は「画像面」に他ならない。

ウ 引用発明における「コンピュータ」は,摘記事項(1-エ)によると,超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され,そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成されて三次元像U3が構築されるものであるから,本願発明における「キャプチャされた複数の画像を受け取り」及び「腔の部分の3次元表示を生成するようになっており」に相当している。

エ 引用発明の「表示装置12」は,本願発明の「出力装置」に相当し,それは三次元像U3を表示するものであるから,本願発明における「腔の部分の3次元表示を出力するようになっている」に相当する。

してみると,両者は,
(一致点)
「患者内の腔のマッピング用システムであって,イメージングカテーテルと,コンピュータと,出力装置と,を含んでおり,上記イメージングカテーテルが,腔の複数の画像をキャプチャするようになっており,各画像は,画像面を有しており,上記コンピュータが,キャプチャされた複数の画像を受け取り,腔の部分の3次元表示を生成するようになっており,上記出力装置が,腔の部分の3次元表示を出力するようになっている,システム。」の点で一致し,以下の点で相違する。
(相違点)
3次元表示を生成する際に,本願発明では,「画像に含まれるデータを用いて少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定し,決定された画像面の分離位置角度に基づいて」行っているのに対し,引用発明では,「超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され,そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成される」ことにより行っている点。

第4 当審の判断
1 相違点について
(1)本願発明には「分離角度」及び「分離位置角度」との記載があるが,「分離位置角度」との記載は本願明細書には記載されていない。「分離位置角度」との記載は,平成22年12月13日付けの手続補正書によって追加されてきた記載であるが,同日付けの意見書で「上記手続補正により、請求項1において『前記画像に含まれるデータを用いて少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定し、決定された画像面の分離位置角度に基づいて、腔の部分の3次元表示を生成するようになっており、』との記載を追加した。この補正により、『データ』が画像データであることが明確となり、またこの画像データから画像面間の分離角度を決定し、その分離角度に基づいて腔の部分の3次元表示を生成することが明確となった。したがって、この補正により拒絶理由は解消したものと考える。」(下線は当方が引いた。)と記載しており,これを参照するに,「分離位置角度」は「分離角度」と同等なものを特定していると認められる。

(2)引用刊行物3の摘記事項(2-イ)によると,従来技術として,超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出するための位置検出アーム31および3次元位置検出装置32とを具備し,前記3次元位置検出装置32の出力信号に基づいて走査面位置(走査面の3次元位置)を算出し,画像およびその走査面位置から補間演算等を行って3次元データ(ボリュームデータ)を生成し,その3次元データと与えられた視線方向とから3次元画像を生成することが記載されているといえ,これは,「超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出する3次元位置検出装置32の出力信号に基づいて」3次元画像を生成しているといえる。
一方,引用刊行物3の摘記事項(2-ウ)によると,類似度演算制御部5により画像メモリ4に格納された画像から補間演算等を行って3次元データ(ボリュームデータ)を生成し,その3次元データと与えられた視線方向とから3次元画像を生成することが記載されているといえ,これは,類似度が考慮された画像からの3次元データによって3次元画像を生成することである。また,摘記事項(2-エ)の「画像間の角度」は,「少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度」のことであるから,「少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度」が決定すれば,画像間の類似度が決まることになる。してみれば,少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定することにより画像間の類似度が決まり,その類似度が考慮された画像からの3次元データによって3次元画像を生成することになるから,「画像に含まれるデータを用いて少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定し,決定された画像面の分離位置角度に基づいて」3次元画像を生成しているといえる。
そして,摘記事項(2-ア)には,画像間の類似度を考慮することによって,3次元画像の生成を高速処理できるようにすることが記載されているといえる。
そうすると,摘記事項(2-ア)ないし(2-エ)によると,3次元画像を生成する際に,従来の「超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出する3次元位置検出装置32の出力信号に基づいて」行う替わりに「画像に含まれるデータを用いて少なくとも2つの画像の画像面間の分離角度を決定し,決定された画像面の分離位置角度に基づいて」行うことによって,3次元画像の生成を高速処理できるようにするとの技術的事項が記載されているといえる。

(3)相違点について検討する。引用発明において,3次元表示を生成する際に「超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され,そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成される」ことを行っているが,これは「超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出する3次元位置検出装置32の出力信号に基づいて」行っているともいえる。引用発明と引用刊行物3記載のものは,超音波プローブ(超音波探触子)による画像から3次元画像を得る超音波装置という点で共通しており,同一の技術分野に属するものである。また,引用発明においても,3次元画像の生成が高速処理できることは望まれるところであり,3次元画像の生成が高速処理できるようにすることは当業者ならば常に考慮する一般的な課題である。してみれば,引用発明において,3次元表示を生成する際に「超音波プローブ6の位置と姿勢が算出され,そのデータと超音波信号処理部82から出力される二次元の超音波断層像U2とが合成する」ことを行っているが,引用刊行物3記載の技術的事項を鑑みて,「超音波探触子1の3次元位置(角度および姿勢も含む)を検出する3次元位置検出装置32の出力信号に基づいて」行う替わりに「画像に含まれるデータを用いて2つの画像の画像面間の分離角度を決定し,決定された画像面の分離位置角度に基づいて」行うようにすることは,十分に動機付けがあり,当業者が容易になし得ることである。

2 請求人の主張について
請求人は,審判請求書で,引用刊行物1について「引用文献1には、超音波内視鏡装置が開示されている。しかしながら、引用文献1には、本願発明のように画像データを用いて画像面間の分離角度を決定し、この分離角度に基づいて3次元表示を生成することについての記載はない。」(3頁19?21行)、引用刊行物3について「引用文献3には、超音波診断装置が開示されている。しかしながら、この引用文献3に記載の発明は、本願発明のように、画像データを用いて画像面間の分離角度を決定するものではない。・・・・・したがって、引用文献3は、本願発明のように、画像データを用いて画像面間の分離角度を決定し、この分離角度に基づいて3次元表示を生成することを示唆するものではない。」(4頁1?21行)と記載し,「したがって、当業者は引用文献1?3に基づいて、本件発明を想到することは到底できない。」(4頁22?23行)と主張している。
しかし,上記「1 相違点について」で検討したとおり,引用刊行物3には,「画像データを用いて画像面間の分離角度を決定し、この分離角度に基づいて3次元表示を生成する」ことが記載されているといえることから,請求人の上記主張は採用することはできない。

3 まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び引用刊行物3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,他の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2013-01-24 
結審通知日 2013-01-28 
審決日 2013-02-13 
出願番号 特願2007-501792(P2007-501792)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 昌彦  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 画像情報を用いるカテーテル追跡用システム  
代理人 弟子丸 健  
代理人 鈴木 博子  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 松下 満  
代理人 井野 砂里  
代理人 倉澤 伊知郎  

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