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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1276214
審判番号 不服2012-1678  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-27 
確定日 2013-07-03 
事件の表示 特願2006-502374「薄膜半導体デバイスおよび薄膜半導体デバイスの製法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日国際公開、WO2004/068536、平成18年 7月 6日国内公表、特表2006-516819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年1月30日,南アフリカ共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年6月8日に手続補正されたが、同年9月21日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、平成24年1月27付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされ、その後、同年6月25日付けで審尋がされ、それに対して同年12月25日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年1月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成24年1月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?25を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?22と補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層は、ナノ結晶シリコン粉末およびバイオポリマーを含む担体を含むことを特徴とする薄膜半導体デバイス。
【請求項2】
該基材が、紙シートを含む請求項1記載の薄膜半導体デバイス。
【請求項3】
該担体が、酢酸酪酸セルロースを含む請求項1記載の薄膜半導体デバイス。
…(中略)…
【請求項16】
直列にて連結された複数の光電池を含み、各光電池は、少なくとも1つの他の光電池に隣接して形成され、少なくとも1つの電池の第3の層がその透明コンタクトを定め、隣接する電池の第1の層を重ねて、その金属コンタクトを定め、それによって隣接する電池を電気的に直列に連結する請求項11記載の半導体デバイス。
【請求項17】
電界効果トランジスタの形態である請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項18】
該電解効果トランジスタが、基材上に印刷され、金属のソースおよびドレインコンタクトを定める第1の層、ナノ結晶シリコンを含み、該第1の層に適用される第2の層、および該第2の層上に印刷され、金属のゲートコンタクトを定める第3の層を含むMS-FETである請求項17記載の半導体デバイス。
…(中略)…
【請求項20】
該電解効果トランジスタが、該基材に印刷され、ゲートコンタクトを定める第1の層、該第1の層に適用され、ナノ結晶シリコンを含む第2の層、および該第2の層に印刷され、金属のソースおよびドレインコンタクトを定める第3の層を含む請求項17記載の半導体デバイス。
…(後略)…」

(補正後)
「【請求項1】
紙シートの基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層は、ナノ結晶シリコン粉末およびバイオポリマーを含む担体を含むことを特徴とする、光電池の形態またはMS-FETの形態である薄膜半導体デバイス。
【請求項2】
該担体が、酢酸酪酸セルロースを含む請求項1記載の薄膜半導体デバイス。
…(中略)…
【請求項14】
直列にて連結された複数の光電池を含み、各光電池は、少なくとも1つの他の光電池に隣接して形成され、各光電池は3つの層を含み、第1の層は該基材上に印刷された金属ベースコンタクトの形態であり、第2の層は第1の層上に印刷され、第3の層は透明なトップコンタクトを含み、かつ、第2の層上に印刷され、個々の電池は、該基材を横切ってストリップとして設けられ、隣接ストリップのトップおよびベースコンタクトを重ねることによって、隣接する電池が電気的に直列に連結する請求項9記載の半導体デバイス。
…(中略)…
【請求項17】
該MS-FETが、該基材に印刷され、ゲートコンタクトを定める第1の層、該第1の層に適用され、ナノ結晶シリコンを含む第2の層、および該第2の層に印刷され、金属のソースおよびドレインコンタクトを定める第3の層を含む請求項1記載の半導体デバイス。
…(中略)…
【請求項19】
紙シートの基材に無機材料の多数の薄膜活性層を蒸着することを含み、ここに少なくとも1つの活性層が、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層が、ナノ結晶シリコン粉末およびバイオポリマーを含む担体を含むことを特徴とする、光電池の形態またはMS-FETの形態である薄膜半導体デバイスの製法。
…(後略)…」

2 補正事項の整理
本件補正の補正事項を整理すると,以下のとおりである。

(補正事項1)
補正前の請求項1,22の「基材」を,補正後の請求項1,19の「紙シートの基材」と補正すること。

(補正事項2)
補正前の請求項1,22の「薄膜半導体デバイス」を,補正後の請求項1,19の「,光電池の形態またはMS-FETの形態である薄膜半導体デバイス」と補正すること。

(補正事項3)
補正前の請求項2を削除し,それに伴って,請求項の番号及び引用する請求項の番号修正すること。

(補正事項4)
補正前の請求項10を削除し,それに伴って,請求項の番号及び引用する請求項の番号修正すること。

(補正事項5)
補正前の請求項16の「各光電池は、少なくとも1つの他の光電池に隣接して形成され、少なくとも1つの電池の第3の層がその透明コンタクトを定め、隣接する電池の第1の層を重ねて、その金属コンタクトを定め、それによって隣接する電池を」を,補正後の請求項14の「各光電池は、少なくとも1つの他の光電池に隣接して形成され、各光電池は3つの層を含み、第1の層は該基材上に印刷された金属ベースコンタクトの形態であり、第2の層は第1の層上に印刷され、第3の層は透明なトップコンタクトを含み、かつ、第2の層上に印刷され、個々の電池は、該基材を横切ってストリップとして設けられ、隣接ストリップのトップおよびベースコンタクトを重ねることによって、隣接する電池が」と補正し,引用する請求項の番号を修正すること。

(補正事項6)
補正前の請求項17を削除し,それに伴って,請求項の番号及び引用する請求項の番号修正すること。

(補正事項7)
補正前の請求項18の「電界効果トランジスタ」を,補正後の請求項15の「MS-FET」と補正すること。

3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
(1)補正事項1について
「基材」を「紙シートの基材」と補正することは,本願の願書に最初に添付した明細書(以下,願書に最初に添付した明細書,願書に最初に添付した図面を,各々「当初明細書」,「当初図面」といい,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面を「当初明細書等」という。)において,段落【0027】に「紙シートの基材10」と記載されているから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって,補正事項1は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすものである。
補正事項1は,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「基材」に対して,「紙シート」であるという材料に関する技術的限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2について
「薄膜半導体デバイス」を「光電池の形態又はMS-FETの形態である薄膜半導体デバイス」と補正することは,当初明細書等において,段落【0024】に「トップゲートMS-FET」が,また段落【0031】に「光電池」が記載されているから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって,補正事項2は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また,補正事項2は,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「薄膜半導体デバイス」に対して,「光電池」または「MS-FET」であるという「デバイス」の種類に関する技術的限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)補正事項3,4,6について
補正事項3,4,6は,補正前の請求項の削除とそれに伴うものであるから,補正事項3,4,6は,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し,当然特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(4)補正事項5について
「各光電池は、少なくとも1つの他の光電池に隣接して形成され、各光電池は3つの層を含み、第1の層は該基材上に印刷された金属ベースコンタクトの形態であり、第2の層は第1の層上に印刷され、第3の層は透明なトップコンタクトを含み、かつ、第2の層上に印刷され、個々の電池は、該基材を横切ってストリップとして設けられ、隣接ストリップのトップおよびベースコンタクトを重ねることによって、隣接する電池が電気的に直列に連結する」ことは,当初明細書等において,段落【0031】及び図3に記載されているから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって,補正事項5は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また,補正事項5は,補正前の請求項16に係る発明の発明特定事項である「光電池」の構造に対して,第2の層が第1の層の上に,第3の層がトップコンタクトで第2の層の上に印刷されて形成され,基材を横切ってストリップとして設けられると技術的に限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(5)小括
以上検討したとおりであるから,本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。
そして,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,以下において更に検討する。

4 独立特許要件について

(1)補正発明
本件補正による補正後の請求項1?22に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?22に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定される,以下のとおりのものである。
「紙シートの基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層は、ナノ結晶シリコン粉末およびバイオポリマーを含む担体を含むことを特徴とする、光電池の形態またはMS-FETの形態である薄膜半導体デバイス。」

(2)引用例に記載された発明
本願の優先権主張の日前に外国において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された国際公開第2002/45183号(以下「引用例」という。)には,図3A?3Dとともに以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。)。

(ア)「In der vorliegenden Erfindung kann jedes bekannte anorganische halbleitende Material eingesetzt werden. Allerdings finden, unter anderem aus Kostengruenden, vorzugsweise gaengige Halbleitermaterialien wie Silizium, Siliziumcarbid, Germanium, Galliumarsenid, Galliumunitrid, Indiumphosphid, Cadmiumselenid oder Mischungen davon Anwendung in der corliegenden Erfindung. Ein besonders bevorzugtes Material ist polykristallines Silizium, das unter anderem als Abfall in der Herstellung von Silizium-Einkristallen beim Zonenschmelzen anfaellt und das fuer die Verwendung als anorganisches Halbleitermaterial hier lediglich zerkleinert werden muss. Das Halbleitermaterial kann dotiert oder undotiert sein. Dadurch eroeffnet die vorliegende Erfindung einen eleganten Weg zur Wiedercerwertung von Abfaellen aus der traditionellen Halbleiterfertingung. Ein weiterer Vorteil der vorstehend aufgefuehrten Materialien ist ihre Sproedigkeit, die den fuer die Herstellung der Substrate im allgemeinen notwendigen Zerkleinerungsprozess erleichtert.

Die Partikelgroesse des hier verwendeten anorganischen halbleitenden Materials betraegt im allgemeinen zwischen 100μm und 10 nm, vorzugsweise zwischen 50μm und 0,1 μm order 0,05 μm. Allerdings ist die Partikelgroesse nicht auf diesen Berich begrenzt. Vielmehr koennen in der vorliegenden Erfindung einerseits auch groessere Partikel eingesetzt werden, solange sie noch einen fuer die Erzielung der gewuenschten Halbleitereigenschaften ausreichenden Ladungstransport bewirken koennen. Anderersits ist es ebenfalls moeglich, kleinere Partikel zu verwenden, solange sie nicht durch das Auftreten quantenmechanischer Effekte - wie beispielsweise bei den sogenannten Quantumdots der Fall - die Halbleitereigenschaften nachteilig beeinflussen.

Der Gehalt (Fuellgrad) des anorganischen halbleitenden Material in den halbleitenden Schichten des Substrats betraegt jeweils ca. 20 bis ca. 90 Vol.-%, vorzugsweise ungefaehr 30 bis ungefaehr 70 Vol.-%, bezogen auf das Gesamtvolumen der halbleitenden Schicht.」(公報明細書4ページ24行?5ページ24行)
(訳:本発明において、各公知の無機半導体材料が用いられ得る。しかしながら、特に、コスト上の理由から、本発明において、好適には、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、セレン化カドミウム、またはこれらの混合物等、一般的な半導体材料が用いられる。特に好適な材料は多結晶シリコンであり、これは、特に、ゾーン溶融にてシリコン単結晶を製作する際に生じる廃棄物として生成され、かつ無機半導体材料として用いるために、ここで、細断されるだけでよい。半導体材料は、ドーピングされていてもよく、またはドーピングされていなくてもよい。従って、本発明は、従来の半導体製造工程から生成された廃棄物を再利用するという実に巧みな方法をとる。上述の材料のさらなる利点は、そのもろさであり、これは、基板を製作するために通常必要とされる細断プロセスを容易にする。
ここで用いられる無機半導体材料の粒度は、通常、100μm?10nm、好適には、50μm?0.1μmまたは0.05μmである。しかしながら、この粒度は、この範囲に限定されない。むしろ、本発明において、その粒子が所望の半導体特性を獲得するために十分な電荷の移動をもたらし得る限りにおいて、一方で、比較的大きい粒子が用いられ得る。他方、その粒子が、(例えば、いわゆる量子ドットに当てはまる)量子力学的効果が現れることによって、半導体特性に不利な影響を及ぼさない限り、比較的小さい粒子を用いることもまた可能である。
基板の半導体層における無機半導体材料の含有量(占有度)は、半導体層の体積全体に対して、それぞれ、約20?約90体積パーセント、好適には、約30?約70体積パーセントである。)

(イ)「Als Substratmaterial (Traegermaterial) zur Herstellung elektrischer Schaltungen und Bauteile kann in der vorliegenden Erfindung prinzipiell jedes Material eingesetzt werden, auf dem eine halbleitende Schicht dauerhaft aufgebracht werden kann. Beispiele geeigneter Substratmaterialien sind Isolatoren wie Papier, Kunststofffolien, Keramiken, Glas oder Kieselgelplatten, weiterhin Metall oder mit Kunststoff beschichtetes Metall.」(公報明細書8ページ23行?30行)
(訳:電気回路およびコンポーネントを製作する基板材料(支持体材料)として、本発明において、原理的に、半導体層が永久的に設けられ得る、すべての材料が用いられ得る。適切な基板材料の例は、紙、プラスチック薄膜、セラミック、ガラスまたはシリカゲルプレート、さらなる金属、あるいはプラスチックでコーティングされた金属等の絶縁体である。)

(ウ)「Unter Verwendung der hier beschriebenen halbleitenden Materialien und Substrate ist es Mouglich, jedes beliebige elektrische Bauelement bzw. jede beliebige Schaltung herzustellen. Beispiele von solchen Bauelemente sind Transistoren, Dioden, Leuchtdioden, die ihrerseits in Mikrochips, auf Leuchtdioden basierenden Displays, Solarzellen, passiven Bauelementen usw.」(公報明細書9ページ1行?8行)
(訳:ここで記載された半導体材料および基板を使用して、あらゆる任意の電気素子およびあらゆる任意の回路を製作することが可能である。そのような素子の例は、トランジスタ、ダイオード、光ダイオードであり、これらは、それ自体、マイクロチップ内で、光ダイオードベースのディスプレイ、ソーラセル、受動素子等に応用される。)

(エ)「Eine solche druckbare Zusammensetzung kann dabei ausschliesslich aus einem schmelzbaren Matrixmaterial und darin dispergierten anorganischen halbleitenden Partikeln bestehen.」(公報明細書10ページ23行?25行)
(訳:このような印刷可能な組成物は、ここで、溶融可能なマトリックス材料およびその中に分散された無機半導体粒子のみを含み得る。)

(オ)「Organische Matrixmaterialien kounnen in gelouster als auch in dispergierter Form vorliegen.」(公報明細書11ページ24行?25行)
(訳:有機マトリックス材料は、溶解された形態か、または分散された形態にて存在し得る。)

(カ)「Fuer das Auftragen auf das Substratmaterial wird die in Schritt(b) hergestellte Suspension vorzugsweise in eine geeignete Druck- oder Spruehvorrichtung ueberfuehrt. Das Auftragen kann ebenfalls mit jedem bekannten und dazu geeigneten Verfahren erfolgen. So kounnen fuer diesen Zwech beispielsweise Spruehverfahren fuer metallische Tinten auf waessringer und/oder organischer Lousungsmittle-Basis, die sonst zur Herstellung fuer Abschirmungen in der Gehaeusetechnologie Anwendung finden, eingesetzt werden.
Vorzugsweise werden hier Druckverfahren wie Tampon- Sieb-, Schablonen- oder gaengige Tintenestrahldruckverfahren verwendet, da insbesondere mit letztgenannten probemlos eine Auflousong von mindestens 1200 dpi (20μm) erzielt werden kann, welche fuer die oben genannten Einsatzzwecke von erfindungsgemaess aufgedrucketen Schaltungen ausreicht.
Ein weitere Druckverfahren, das ebenfalls in der vorliegenden Erfindung eingesetzt werden kann, ist der Offsetdruck. Der Offsetdruck erfordert zwei fluessige miteinander nur schwer mischbare Phasen (Emulsionen), wobei die erste fluessige Phase hier beispilsweise eine waessrige Phase sein kann und die zweite eine organische Phase, die das inerte Matrixmaterial sowie partikelfourmiges anorganisches Halbleitermaterial enthaelt. Diese beiden Phasen werden beim Offsetdruck zunaechst auf eine mit hydrophile und hydrophobe Bereiche strukturierte Druckplatte uebertragen, wodurch sich die beiden Phasen (voneinander) trennen. Anschliessend kounnen die so erzeugten Strukturen gezielt auf ein hier eingesetztes Substratmaterial uebertragen werden.」(公報明細書15ページ11行?16ページ4行)
(訳:基板材料に付与するために、工程(b)において生成された懸濁液は、好適には、適切な印刷デバイスまたは噴霧デバイスの中に移送される。付与は、同様に、すべての公知およびこのために適切な方法によって行われ得る。従って、この目的のために、例えば、その他の場合、筐体技術(Gehaeusetechnologie)でシールドを生成するために用いられる、金属インク用の噴霧法が水性および/または有機溶剤ベースで用いられ得る。
好適には、ここで、パッド印刷法(Tampondruckverfahren)、スクリーン印刷法(Siebdruckverfahren)、ステンシル印刷法(Schablonendruckverfahren)または一般的なインクジェット印刷法が用いられる。なぜなら、特に、これらの方法を用いることによって、少なくとも1200dpi(20μm)の解像度が問題なく達成され得、これは、本発明による印刷された回路の上述の用途のために十分である。
本発明にてさらに用いられ得る印刷法は、オフセット印刷である。オフセット印刷は、混ざり合い難い2つの液相(乳濁液)を必要とし、ここで、第1の液相が、例えば、水相であり得、第2の液相は、不活性マトリックス材料および粒子形状の無機半導体材料を含む有機相であり得る。これらの両方は、オフセット印刷の場合、まず、親水および疎水領域で構造化された印刷版に転写され、これによって、両方の相が(互いに)分離される。次に、このように生成された構造は、ここで用いられる基板材料上に的確に転写され得る。)

(キ)「Ausfuehrungsbeispiel 3
Dieses Beispiel zeigt einen Metall-Oxid-Halbleiter-Feldelektronentransistor (MOSFET) gemaess Figur 3.
Bei dem MOSFET 30 gemaess Figur 3A sind auf einem Substratmaterial 31 zwei Schichten 32 und 33 aus einem nleiatenden pulverfourmigen Halbleitermaterial, das in einem inertem Matrixmaterial dispergiert ist, sowie eine Schicht 34 aus in einem inertem Matrixmaterial eingebetteten p-leitendem Halbleitermaterial aufgetragen. Die Schicht 34 ist zwischen den beiden Schichten 32 und 33 angeordnet und steht mit den eiden Schichten in Kontakt. Die Schicht 34 dient als Kanalbereich des MOSFETs. Auf der Schicht 34 ist eine 36 befindet. Die Oxidschicht 35 kann eine solche Oxidschicht sein, wie sie in konventionellen MOSFETs corkommt. Allerdings ist die Schicht 35 corzugsweise eine Schicht aus einem druckbaren Material wie einem dielektrischen Kunststoff oder einem Spin-on-Glass-Material, so dass ein zu einem klassischem MOS-FET analoges Bauteil 30 audgebildet wird. Das metallische Gate ist zum Beispiel eine druckbare Cu/Ag-Tinte.」(公報明細書19ページ25行?20ページ10行)
(訳:実施例3
本実施例は、図3による金属-酸化物-半導体-電界効果トランジスタ(MOSFET)を示す。
図3AによるMOSFET30において、基板材料31上に、2つの層32および33が設けられる。2つの層32および33は、n導電型のパウダー形状半導体材料を含み、この半導体材料は、不活性マトリックス材料内で分散される。層34は、不活性マトリックス材料内に埋め込まれたp導電型半導体材料を含む。層34は、2つの層32と33との間に設けられ、両方の層と接触する。層34は、MOSFETのチャネル領域として機能する。層34上に、酸化物層35が設けられる。この酸化物層上に金属ゲート36が位置する。酸化物層35は、従来のMOSFETにて用いられるような酸化物層であり得る。しかしながら、層35は、好適には、誘電プラスチックまたはスピンオンガラス材料といった印刷可能な材料を含む層であるので、従来のMOSFETと類似のコンポーネント30が形成される。この金属ゲートは、例えば、印刷可能なCu/Agインクである。)

(ク)FIG3Aには,基板材料31上にパウダー状半導体材料が不活性マトリックス材料内で分散された層32,33,34が設けられたものが記載されている。

引用発明の認定
以上を総合すると,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものとみとめられる。

「基板材料は紙で,基板材料上に,ケイ素のパウダー形状半導体材料が不活性マトリックス材料内で分散された層32,33,34を印刷により設け,
ケイ素のパウダー形状半導体材料である無機半導体材料の粒度は、通常、100μm?10nm、好適には、50μm?0.1μmまたは0.05μmであることを特徴とする
ソーラセルまたはMOSFET。」

(3)対比・判断
ア 対比
(ア)引用発明の基材の材料としての「紙」は,補正発明の「紙シート」に相当する。
引用発明の「ケイ素のパウダー形状半導体材料」は「無機半導体材料」であるから,引用発明の「ケイ素のパウダー形状半導体材料が不活性マトリックス材料内で分散された層32,33,34」は,補正発明の「無機材料の多数の薄膜活性層」に相当する。

(イ)次に,補正発明の「基材上の層に蒸着され」がどのような意味であるかを検討する。本願に対応する国際特許公開2004/68536号の明細書4ページ14行?18行には,「Any reference herein to "printing" an active layer onto a surface, must be interpreted sufficiently broadly to include coating methods such as spraying, brushing or spin coating an active layer onto a surface, i.e. methods in which no chemical or physical phase change of the coating material occurs during deposition.」と記載され,その訳は,本願明細書段落【0019】の「本明細書における活性層を表面に「印刷」することへのいずれの言及も、活性層を表面に、スプレーする、ブラッシュするまたはスピンコートするといったコーティング方法、つまりコーティング材料の化学的または物理的相変化が蒸着の間起こらない方法を含むように、十分に広範に解釈されなければならない。」であるから,「蒸着」は,「deposition」の訳,すなわち堆積,成長などの意味であることが分かり,いわゆる狭義の「蒸着」である「evaporation」ではないことは明らかであって,本願明細書中でいう「蒸着」の1つとして「印刷」があることも分かる。

(ウ)上記(ア)(イ)から,引用発明の「基板材料は紙で,基板材料上に,ケイ素のパウダー形状半導体材料が不活性マトリックス材料内で分散された層32,33,34を印刷により設け」ることは,補正発明の「紙シートの基材;および基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含む」ことに相当する。

(エ)次に,補正発明の「基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され」がどのような意味であるか検討する。本願に対応する国際特許公開2004/68536号の当初の請求項1の記載を参照すると,「printed onto one of the substrate and an underlying active layer」(当審訳:基板と下の活性層のうちの1つの上に印刷された)と記載されていることから,「基材」と下の活性層のうち何れか一方の上に印刷されたと解すべきである。
そして,引用発明の「基板材料上に,パウダー形状半導体材料が不活性マトリックス材料内で分散された層32,33,34を印刷により設け」ることは,基板材料上に補正発明の「ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され」ることにも相当している。

(オ)引用発明の「粒度は、通常、100μm?10nm、好適には、50μm?0.1μmまたは0.05μmである」,「ケイ素のパウダー形状半導体材料である無機半導体材料」は,補正発明の「ナノ結晶シリコン粉末」に相当する。

(カ)引用発明の「ソーラセル」は,補正発明の「光電池」に相当し,引用発明の「MOSFET」と,補正発明の「MS-FET」とは,「FET」という点で一致し,補正発明は「光電池の形態またはMS-FETの形態」と択一的な選択となっていることから,引用発明の「ソーラセルまたはMOSFET」は,補正発明の「光電池の形態またはFETの形態である薄膜半導体デバイス」と「光電池の形態である薄膜半導体デバイス」という点で一致する。

(一致点)
以上から,補正発明と引用発明とは,
「紙シートの基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層は、ナノ結晶シリコン粉末を含む担体を含むことを特徴とする、光電池の形態である薄膜半導体デバイス。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は,活性層が「バイオポリマーを含む担体を含んで」いるのに対して,引用発明は,この点が特定されていない点。

イ 判断
(相違点について)
まず,補正発明でいうところの「バイオポリマー」について検討する。そもそも「バイオポリマー」とは,生体を構成する高分子物質の総称のことであることは当業者の技術常識であり,本願明細書段落【0022】においては,バイオポリマーとして酢酸酪酸セルロース(CAB)が例示されている。
そして,半導体粒子をバインダー樹脂で結着することにより半導体層形成するときのバインダー樹脂として酢酸セルロースを用いることが以下の周知例1に,導電性粒子をバインダー樹脂で結着するときのバインダー樹脂として酢酪酸セルロースを用いることが周知例2に記載されているように,セルロース系ポリマー等の生体を構成する高分子物質,すなわちバイオポリマーをバインダーとして用いることは当該技術分野において周知の技術である。 そうすると,引用発明において,上記周知の技術を勘案し,活性層にバイオポリマーを含む担体を含むものとすることは当業者が適宜なし得たことである。

(ア) 周知例:特開2002-100759号公報
周知例1には,図1とともに以下の記載がある。
a 「【0006】すなわち、本発明は、少なくとも半導体性物質粒子とバインダー樹脂とからなる半導体層を有する半導体素子を提供する。この半導体素子は、本発明にしたがい、少なくとも半導体性物質粒子とバインダー樹脂と溶媒からなる樹脂ペーストを基材上に塗布または印刷することにより半導体層を形成することを含む方法により製造することができる。」

b 「【0009】半導体粒子を結着するためのバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、飽和ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリブタジエン、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどを用いることができるが、半導体粒子の導電性を維持したまま結着可能な樹脂であれば、なんらこれらに限定されるものではない。」

(イ) 周知例2:特開2001-196166号公報
周知例2には,以下の記載がある。
「【0031】ドーピング物質の昇華もしくは熱移行を妨げないバインダ樹脂としては、染料の転移に必要な熱量を与えても、自身は転移しない、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド等樹脂が使用できる。
【0032】転写層22は、上記したように、ドーピング物質単独を真空蒸着等により真空成膜して、またはドーピング物質とバインダ樹脂とを、溶剤もしくは希釈剤を用いて、溶解もしくは分散し、シート状基材21上に塗付もしくは印刷して、転写層を形成する。カラー画像出力用の昇華転写シートと同様、異なるドーピング物質を与える複数の区域を同一のシート状基材21上に繰り返し並べて形成しておくとよい。またシート状基材21の転写層22のない側には、スリップ剤を塗布しておくとよい。
【0033】上記の転写シート20を、その転写層22側が、基板11上の発光材料を主体として構成された薄膜13に接するようにして重ね、熱転写プリンタのサーマルヘッド30により、転写シート20の背面よりドット状の加熱し、加熱部において、ドーピング物質を薄膜13中に昇華もしくは熱移行させるか、またはバインダ樹脂ごと溶融させて薄膜13上に転移させる。上記の加熱においては、転写層22と薄膜13との界面が加熱されることが必要であり、サーマルヘッド以外の手段、例えばレーザー光等でも加熱が可能である。
【0034】熱転写プリンタのように、入力された文字情報、画像情報に応じて、ドット状に加熱できるものを使用することにより、入力情報を適宜に変更すれば、所望のパターン状にドーピング物質を転移させることが出来る。また、異なるドーピング物質を、所定の大きさで、所定の配列、例えば、ストライプ状、モザイク状、もしくは三角形配列等に配列することができる。
【0035】転写シートを用いて薄膜13にドーピング物質の転写を行なっただけでは、転写されたドーピング物質が偏在して、効果を発揮しないため、転写後に、加熱することにより、拡散を行なわせることが必要である。拡散は、取り扱う素材にもよるが、例えば、温度40?60℃で30分?5時間程度保持することにより行なわせるとよい。
【0036】エレクトロルミネッセント層13は、上記した発光層のほか、正孔注入層(またはバッファー層)、正孔輸送層、電子注入層(またはバッファー層)、および電子輸送層から選択した一層以上を伴なっていてもよい。これらの層には、適当な有機または無機の添加剤を加えることができ、正孔輸送性、電子輸送性、もしくは発光色の調整を行なうことができる。」

(4)判断についてのまとめ
以上検討したとおり,補正発明は,周知の技術を勘案し,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項をいう。以下同じ。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。

5 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?25に係る発明は,出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は再掲すると,請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷され、ここに少なくとも1つの活性層は、ナノ結晶シリコン粉末およびバイオポリマーを含む担体を含むことを特徴とする薄膜半導体デバイス。」

第4 引用例に記載された発明
引用例には,上記第2,4(2)に記載したとおり,引用発明が記載されている。

第5 判断
本願発明は,補正発明から,上記第2,2に記載した補正事項1,2についての補正によりなされた技術的限定を省いたものである。
そうすると第2,4(4)において検討したとおり,補正発明は,周知の技術を勘案し,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても,当然に,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-04 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-21 
出願番号 特願2006-502374(P2006-502374)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 56- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 55- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杢 哲次  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 西脇 博志
近藤 幸浩
発明の名称 薄膜半導体デバイスおよび薄膜半導体デバイスの製法  
代理人 佐藤 剛  
代理人 坂田 啓司  
代理人 田中 光雄  
代理人 山崎 宏  

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