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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1276299
審判番号 不服2012-14717  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-31 
確定日 2013-07-01 
事件の表示 特願2010-257254「録画装置及び録画装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日出願公開、特開2012-109816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願の手続の経緯は概要次のとおりである。

特許出願 :平成22年11月17日
拒絶理由通知 :平成24年 2月 6日(起案日)
意見書 :平成24年 3月21日
手続補正書 :平成24年 3月21日
拒絶査定 :平成24年 6月20日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成24年 7月31日

2.本願発明
本件出願に係る発明は、平成24年3月21日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項7までの各請求項に係る発明であるところ、請求項1に係る発明(以下、これを「本願発明」ともいう)は、当該請求項1の次の記載により特定されるものである。

「【請求項1】
ネットワークで自装置と接続された記録装置から、当該記録装置で用いられる記録媒体の記録可能容量と、この記録装置が有するデータ圧縮機能の最高圧縮率を示す情報とを受信する情報受信手段と、
自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付けるコンテンツ選択受付手段と、
前記情報受信手段が受信した前記最高圧縮率に基づいて、前記最高圧縮率で圧縮した場合の前記コンテンツデータのデータ容量を算出するデータ容量算出手段と、
前記データ容量算出手段が算出した前記圧縮後のコンテンツデータのデータ容量が、前記情報受信手段が受信した前記記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するデータ容量判定手段と、
前記データ容量判定手段が前記圧縮後のデータ容量は前記記録媒体の記録可能容量内であると判定した場合に、前記コンテンツデータを圧縮して記録する旨の指示を前記記録装置に送信する指示送信手段と、
前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを前記記録装置に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信するデータ送信手段と、
を備えることを特徴とする録画装置。」

3.刊行物1
(1)刊行物1の記載
原査定の拒絶理由に引用された特開2006-18871号公報(以下「刊行物1」という)には、名称を「記録再生装置、ディジタルコンテンツコピー方法」とする発明について、図面と共に次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、記録メディアにディジタルデータでコンテンツを記録し再生することが可能な記録再生装置、およびディジタル形式でのコンテンツのコピー方法に係り、特に、装置間でのコピーが適用され得る記録再生装置およびディジタルコンテンツコピー方法に関する。」
「【背景技術】
【0002】
映像ソフトなどのコンテンツをディジタルデータ形式で記録再生することが可能な装置が隆盛になってきている。その中でも複数の記録メディアを保持または搭載することでそれら間でのダビング(コピー)機能を有するものが市場ではより受け入れられている。このような装置で用いられる記録メディアの代表的なひとつはハードディスク、もうひとつはDVDである。ハードディスクとDVDとに記録可能な装置の公知例として下記特許文献1に記載のものがある。同文献では、これらの記録メディアの記録容量が一般的に相当に異なっておりこれによる使い勝手の悪さを改善することに言及がある。」
「【特許文献1】特開2004-55010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の公知例では、ダビング先は同じ装置内に設けられたかまたは装着された記録メディアである。しかし、ダビング先は、一般的には、同じ装置内の記録メディアに限られるわけではない。そのような場合については上記文献では言及されていない。」
「【0004】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、記録メディアにディジタルデータでコンテンツを記録し再生することが可能な記録再生装置、およびディジタル形式でのコンテンツのコピー方法において、装置間でのコピーを手軽に操作性よく実行することが可能な記録再生装置およびディジタルコンテンツコピー方法を提供することを目的とする。」
「【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係る記録再生装置は、ネットワークを介して接続する他の記録再生装置に対して、保持している記録メディアの陣容に関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する第1の要求部と、前記要求に応じて送信されてきた情報を報知することにより任意の記録メディアの選択をユーザに促す表示部/操作入力部と、前記他の記録再生装置のうち前記選択された記録メディアを有する前記装置に対して、そのステータスに関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する第2の要求部と、前記要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報に基づいて、前記選択された記録メディアがディジタルコンテンツのダビング先として成立するか否かを判断する判断部と、前記判断がダビング先として成立の場合に前記ディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する通信出力部とを具備することを特徴とする。」
「【0006】
すなわち、複数の記録再生装置をネットワークで接続した構成により装置間のダビングを行う。その際に、ダビング元となる記録再生装置から他の記録再生装置に対して2段階で、所定の情報をよこすようあらかじめ要求する。第1段階では他の複数の記録再生装置を特定せずに保持している記録メディアの陣容に関する情報を要求する。第2段階では、他の記録再生装置およびその記録メディアを特定した上で、そのステータスに関する情報を要求する。そしてこのステータスに基づきダビング先として成立するか否かを判断し、成立する場合はダビング動作に移行する。このようなネットワークの利用および2段階の情報収集の適用を行うことで、効率的なダビング先の選択およびダビングへの移行が可能であり、装置間でのコピーを手軽に操作性よく実行することが可能になる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施態様として、前記第2の要求部が要求するステータスに関する前記情報は、記録禁止の設定がされているか、記録可能な領域残量が所定量以上あるか、現在記録/再生中であるか、記録予約時間まで所定以上の時間があるか、GUI画面の表示中であるか、操作ロックの設定がされているか、の各情報の少なくともひとつを含む、とすることができる。ダビング先として成立する条件を考慮して、ステータスに関する情報を例示したものである。GUI(graphical user interface)画面の表示中を挙げているのは、その装置に現在ユーザが操作を行っている(つまり独自に録画を開始するかもしれない)と推定できるからである。操作ロックの設定を挙げているのは、どのような操作も受付けないとユーザが設定していることを優先するためである。」
「【0013】
また、実施態様として、前記判断がダビング先として成立の場合に、自己が保持するディジタルコンテンツの一覧を表示することによりダビングすべきディジタルコンテンツの選択をユーザに促す第2の表示部/操作入力部をさらに具備し、前記通信出力部が、前記判断がダビング先として成立の場合に前記選択されたディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する、としてもよい。これによれば、一括して複数のコンテンツのダビングを行うことができ、さらに操作性が向上する。」
「【0015】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この記録再生装置10は、AV(audio visual)入力インターフェース11、TVチューナ12、エンコーダ13、記憶装置14、デコーダ15、AV出力インターフェース16、制御部17、操作入力部18、表示部19、通信制御部20を有する。記憶装置14は、ディスク駆動部14a、一時記憶部14bを有する。」
「【0016】
AV入力インターフェース11は、映像情報信号および音声情報信号を外部から入力するインターフェースである。入力された各信号はエンコーダ13に送られる。AV入力インターフェース11に入力される各信号は、アナログ形式、ディジタル形式どちらも考えられる。アナログ形式の場合にはこのAV入力インターフェース11、または次段のエンコーダ13の初段階でディジタル形式に変換する。TVチューナ12は、放射され送られた放送波に同調をとって映像情報信号および音声情報信号を取り出すものである。取り出された映像情報信号および音声情報信号はエンコーダ13に送られる。TVチューナ12の出力はアナログ形式、ディジタル形式どちらも考えられる。アナログ形式の場合は次段のエンコーダ13の初段階でディジタル形式に変換する。」
「【0017】
エンコーダ13は、送られてきた映像情報信号および音声情報信号を次段の記録メディアに記録するためのディジタル形式の信号にエンコード(符号化;情報圧縮を含む)するものである。エンコードされた信号は記憶装置14に送られる。記憶装置14は、各種の記録メディアを保持または搭載することが可能であり、それらの記録メディアに、送られてきた信号を記録し、またそれらの記録メディアに記録された信号を読み取り出力するものである。」
「【0025】
図2は、図1に示した記録再生装置10におけるネットワークダビングの動作フローを示す流れ図である。図2をも参照してネットワークを用いてダビングをする場合の動作を説明する。」
「【0026】
まず、操作入力部18へのユーザの操作によってネットワークダビングの旨を受け付ける(ステップ21)。これにより、制御部17が動作し、ネットワークに接続された他の記録再生装置が保持している記録メディアの陣容に関する情報の収集を行う(ステップ22)。このステップ22については詳細を後述するが(図5)、ネットワーク上での態様は図3に示すようになる。図3は、図1に示した記録再生装置10における、記録メディアの陣容情報のネットワークを介する収集態様を示す説明図である。図3では、記録再生装置10のほかに、図示するような各記録メディアを保持する記録再生装置40、50、60、…、70がネットワーク31に接続されている。そのそれぞれと通信がなされる。」
「【0027】
記録再生装置10による情報収集の結果として対象となる記録メディアがない場合には(ステップ23のY)、警告表示を表示部19に行い(ステップ30)、この処理を終了する。情報収集の結果として、対象とする記録メディアがひとつでもある場合には(ステップ23のN)、その陣容を表示部19に表示し、かつ操作入力部18へのユーザの操作によってダビング先となる記録メディアの選択・指定を受け付ける(ステップ24)。ここでの表示部19の表示例としては図4(コピー先機器選択画面41)に示すようになる。図4は、図1に示した記録再生装置10が収集し表示する、記録メディアの陣容情報の表示画面(=ダビング先となる記録メディアの選択・指定画面)の例を示す図である。」
「【0028】
図4に示すような画面41に見てユーザがダビング先としたい記録メディアの選択・指定を操作入力部18に行うと、この記録再生装置10はその記録メディアの記録再生装置にダビング予約を入れる(ステップ25)。そしてその記録再生装置のステータスに関する情報の収集を行う(同ステップ)。この情報収集は、ネットワーク上での態様として図6に示すようになる。図6は、図1に示した記録再生装置10における、ステータス情報のネットワークを介する収集態様の例を示す説明図である。ステータスとは文字通り状態のことでありダビング先として成立するか否かを判断するための情報である。ステータスに関する情報が送られると制御部17はダビング可能かどうかを判断する(同ステップ)。このステップ25については再度述べる(図7)。」
「【0029】
ステップ25は、ステップ22とは異なり図6に示すように特定の例えば記録再生装置40とのみ情報のやり取りを行うものであり、この時点を含めて以降は他の例えば記録再生装置50、…がネットワーク31による通信に関わることがない。この点、効率的な処理が実現される意味で好ましい。また、他の例えば記録再生装置50、…はそれら同士の通信を自由に行うことができ記録再生装置10と同40との間の通信から解放されている。」
「【0030】
制御部17による判断がダビング可能である場合には(ステップ26のY)、記憶装置14から通信制御部20を介し、さらにネットワーク31を用いて、選択・指定された記録メディアにダビングを行う(ステップ27)。このダビングはデコードする前の情報圧縮されたディジタル形式のものとして行うが、デコーダ15を経た信号のダビングとすることも原理的には可能である。」
「【0031】
ダビングが終了したら、選択された記録メディアの記録再生装置(例えば記録再生装置40)のダビング予約を解除する(ステップ28)。ダビング予約解除により、この記録再生装置(例えば記録再生装置40)はダビングのための占有状態から解放される。制御部17による判断がダビング可能ではない場合には(ステップ26のN)、ダビング予約を解除し(ステップ29)、表示部19に警告表示を行う(ステップ30)。」
「【0035】
図7は、図2に示した流れ図中のステップ25をやや詳細に示す流れ図である。図7に示すように、ステップ25においてはまず、選択された記録メディアの記録再生装置(例えば記録再生装置40)にネットワーク31を介してダビング予約を入れる(ステップ25a)。次に、選択された記録メディアの記録再生装置(例えば記録再生装置40)に送信要求信号をネットワーク31を介して送る(ステップ25b)。ここで要求する内容は、ステータス情報の送信である。送信要求信号が送られた記録再生装置(例えば記録再生装置40)はこれに応じて自身のステータス情報をネットワーク31を介して記録再生装置10に送信する。」
『【0036】
そこで、次に記録再生装置10は、送られたステータス情報を受け取り(ステップ25c)、これに基づきダビング可能か否かの判断に移行する。ダビング可能か否かの判断のため、この例ではステータス情報として以下の情報を受け取る。まず、「選択された記録メディアは記録禁止の設定がされているか」の情報である(ステップ25d)。一般に記録メディアは記録禁止の設定ができるようになっているのでこれを吟味するものである。また、「選択された記録メディアは領域残量が所定量以上あるか」の情報である(ステップ25e)。所定量に満たない場合はダビングが未完になるからである。また、「選択された記録メディアは記録または再生中であるか」の情報である(ステップ25f)。このような使用中の場合はその使用状態を優先する。』
『【0037】
さらに、「選択された記録メディアは記録予約時間まで所定以上の時間があるか」の情報である(ステップ25g)。ダビング中に予約による記録モードになるのを避けて、予約による記録を優先するためである。また、「選択の記録メディアの記録再生装置はGUI画面表示中か」の情報である(ステップ25h)。GUI画面表示中の場合現在ユーザが操作を行っており独自に録画などを開始する可能性があるからである。また、「選択の記録メディアの記録再生装置は操作ロックが設定されているか」の情報である(ステップ25i)。これはどのような操作も受け付けないとするユーザの意志による設定を優先するためである。』
「【0038】
以上のような情報の判定によりステップ25iをN側に抜けた場合のみ制御部17はダビング可能と判断する(ステップ25j)。それ以外の場合にはダビングは不可能と判断する(ステップ25k)。なお、ここに挙げたステータス情報は例示であり適宜その一部のみを採用することも、または別の情報をステータス情報として収集し判断材料に加えることも可能である。」
「【0039】
次に、図2に示したネットワークダビングの動作フローとは異なる動作フローについて図8を参照して説明する。図8は、図1に示した記録再生装置におけるネットワークダビングの図2に示した動作フローとは別の動作フローを示す流れ図である。図8において、図2に示した処理ブロックと同一相当の処理ブロックには同一符号を付しその説明を省略する。」
「【0040】
このネットワークダビングでは、ダビング元に存在するディジタルコンテンツをユーザが単数または複数選択し、選択のコンテンツを一括して特定の記録再生装置の記録メディアにダビングすることを可能としたものである。そこで、図8に示すように、最初に一括ネットワークダビングをする旨を操作入力部18へのユーザの操作で受け付ける(ステップ81)。以下、ステップ22からステップ26まで図2の場合と同じ処理を行い、ステップ82では次の処理を行う。」
「【0041】
まず、制御部17が、自身の記録再生装置が有する、ダビングの候補となるコンテンツを表示部19(第2の表示部)に画面表示する(=ダビング部分を選択する画面を表示)。この画面表示の例が、図9に示すような一括コピー部分選択画面91におけるコピー候補表示領域91aである。図9は、図1に示した記録再生装置において、図8に示した流れ図中のステップ82で表示される画面例を示す図である。図9におけるコピー候補表示領域91aには例として10個の候補が表示されている。」
「【0042】
また、一括コピー部分選択画面91では、すでに選択されている記録メディアが「コピー先容量」として下側に示されており、そのすでに記録されている部分には使用済部分インジケート91cが示される(=ダビング先の残量の表示)。そして、コピー候補表示領域91aからユーザがダビングするコンテンツを操作入力部18(第2の操作入力部)からの入力により選択・指定すると、そのコンテンツの表示はコピー選択済表示領域91bになされる(=ダビング部分の選択・指定の受け付け)。図9におけるコピー選択済表示領域91bには例として3つのコンテンツが表示されている。このとき、その選択によりダビング先で予想される占有容量が「コピー先容量」のコピー選択済容量分インジケート91dとして示される(=ダビング先の残量表示の更新)。」
「【0043】
以上の処理後、コピー開始ボタン91eがユーザにより押されると(ステップ83のYに相当)、コピー選択済表示領域91bに表示されたコンテンツが一括連続して選択された記録メディアに記録される(ステップ27)。コピー開始ボタン91eがユーザにより押される前の段階では(ステップ83のNに相当)、ダビングするコンテンツの選択・指定をやり直せる。ステップ27より以下は図2での説明と同様である。」
「【0044】
このネットワークダビングの動作フローによれば、一括して複数のコンテンツのダビングを行うことができ、さらに操作性が向上する。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図7】



(2)刊行物1記載の発明
上記刊行物1の記載について検討する。

第一に、上記段落【0001】の記載からみて、刊行物1記載の発明は「デジタルコンテンツの記録再生が可能であって、装置間でのコピーが適用され得る記録再生装置」に関するものである。
第二に、上記段落【0015】?【0017】の記載からみて、刊行物1記載の発明は「映像情報信号および音声情報信号を外部から入力するAV(audio visual)入力インターフェース11、映像情報信号および音声情報信号をディジタル形式の信号にエンコード(符号化;情報圧縮を含む)するエンコーダ13、エンコードされた信号を記録する記憶装置14」を有している。
第三に、上記段落【0005】の記載によると、刊行物1記載の発明(その記録再生装置)は「ネットワークを介して接続する他の記録再生装置に対して、保持している記録メディアの陣容に関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する第1の要求部と、前記要求に応じて送信されてきた情報を報知することにより任意の記録メディアの選択をユーザに促す表示部/操作入力部と、前記他の記録再生装置のうち前記選択された記録メディアを有する前記装置に対して、そのステータスに関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する第2の要求部と、前記要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報に基づいて、前記選択された記録メディアがディジタルコンテンツのダビング先として成立するか否かを判断する判断部と、前記判断がダビング先として成立の場合に前記ディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する通信出力部とを具備する」ものであって、概要、“ネットワークを介して接続された他の記録装置が保持する記録メディアの選択をユーザに促す表示/操作入力部(以下「記録メディア選択部」という)と、選択された記録メディアを有する記録装置に対して、そのステータスに関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する第2の要求部(以下、単に「要求部」という)と、前記要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報に基づいて、前記選択された記録メディアがディジタルコンテンツのダビング先として成立するか否かを判断する判断部と、前記判断がダビング先として成立の場合に前記ディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する通信出力部とを具備する”構成のものといえる。(より詳細には、上記段落【0015】【0025】?【0028】【図1】?【図4】等に示された実施態様参照。)
第四に、上記段落【0013】の記載からみて、刊行物1記載の発明は、前記判断部の判断がダビング先として成立の場合に、自己が保持するディジタルコンテンツの一覧を表示することによりダビングすべきディジタルコンテンツの選択をユーザに促す第2の表示部/操作入力部をさらに具備し、上記通信出力部が、当該第2の表示部/操作入力部(以下「コンテンツ選択部」という)で選択されたディジタルコンテンツを上記のように他の記録再生装置に送信するようにしてもよいものである。
第五に、上記段落【0036】?【0038】の記載(【図7】参照)からみて、上記「ステータスに関する情報」(ステータス情報)は、上記記録メディア選択部で選択された記録メディアについて、例えば「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報であり、上記判断部は、当該各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報であるか否かによって、当該記録メディアがダビング先として成立するか否かを判断するものである。

したがって、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

〈引用発明1〉
『デジタルコンテンツの記録再生が可能であって、装置間でのコピーが適用され得る記録再生装置であって、
映像情報信号および音声情報信号を外部から入力するAV(audio visual)入力インターフェース11、映像情報信号および音声情報信号をディジタル形式の信号にエンコード(符号化;情報圧縮を含む)するエンコーダ13、エンコードされた信号を記録する記憶装置14を有し、
ネットワークを介して接続された他の記録再生装置が保持する記録メディアの選択をユーザに促す記録メディア選択部と、
選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に対して、そのステータスに関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する要求部と、
前記要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報に基づいて、前記選択された記録メディアがディジタルコンテンツのダビング先として成立するか否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断がダビング先として成立の場合に、自己が保持するディジタルコンテンツの一覧を表示することによりダビングすべきディジタルコンテンツの選択をユーザに促すコンテンツ選択部と、
前記コンテンツ選択部で選択されたディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する通信出力部とを具備し、
前記ステータスに関する情報は、前記選択部で選択された記録メディアのステータスを示す「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報であって、前記判断部は、当該各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報であるか否かによって記録メディアがダビング先として成立するか否かを判断するものである記録再生装置。』

4.対比
以下、本願発明をその各要件毎に引用発明1と対比する。

(1)「録画装置」
引用発明1は「映像情報信号および音声情報信号を外部から入力するAV(audio visual)入力インターフェース11、映像情報信号および音声情報信号をディジタル形式の信号にエンコード(符号化;情報圧縮を含む)するエンコーダ13、エンコードされた信号を記録する記憶装置14を有」する「記録再生装置」であるから、引用発明1も録画装置ともいい得るものであって、引用発明1と本願発明は「録画装置」という点で一致している。

(2)「ネットワークで自装置と接続された記録装置から、当該記録装置で用いられる記録媒体の記録可能容量と、この記録装置が有するデータ圧縮機能の最高圧縮率を示す情報とを受信する情報受信手段」
引用発明1は「ネットワークを介して接続された他の記録再生装置が保持する記録メディアの選択をユーザに促す記録メディア選択部と、選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に対して、その記録メディアのステータスに関する情報の送信を前記ネットワークを介して要求する要求部」を備えている。
ここで、引用発明1での上記「ネットワークを介して接続された他の記録再生装置」と、その「保持する記録メディア」(上記選択部でユーザが選択可能)は、それぞれ本願発明での上記「ネットワークで自装置と接続された記録装置」、「当該記録装置で用いられる記録媒体」(明細書記載の実施態様ではユーザが選択可能)に相当する。
また、引用発明1では、上記要求部により上記他の記録再生装置に対して、そのステータスに関する情報の送信を要求しているのであるから、当然、当該要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報(以下「ステータス情報」ともいう)を受信する情報受信手段を有しているといえる。
もっとも、当該情報受信手段で受信するのは、上記ステータスに関する情報、すなわち上記記録媒体について「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種ステータスに関する情報であって、本願発明の情報受信手段が受信する上記「記録可能容量」と「最高圧縮率」とを示す情報ではない。
しかしながら、本願発明の上記情報と引用発明1の上記ステータス情報は、下記(4)で述べるように、いずれも上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かの判定に用いられているのであるから、“上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報”といえ、この点では共通している。
よって、本願発明と引用発明1とは、いずれも「ネットワークで自装置と接続された記録装置から、当該記録装置で用いられる記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報を受信する情報受信手段」を備えているといえるからこの点で一致し、上記受信手段で受信する記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報が、本願発明では「当該記録装置で用いられる記録媒体の記録可能容量と、この記録装置が有するデータ圧縮機能の最高圧縮率を示す情報」であるのに対し、引用発明1では、上記ステータスに関する情報、すなわち、上記記録媒体について「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種ステータスに関する情報である点で相違する。

(3)「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付けるコンテンツ選択受付手段」
本願発明の前記「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付けるコンテンツ選択受付手段」に対応するものとして、引用発明1では上記「自己が保持するディジタルコンテンツの一覧を表示することによりダビングすべきディジタルコンテンツの選択をユーザに促すコンテンツ選択部」備えており、当該コンテンツ選択部は、“自装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付けるコンテンツ選択受付手段”であるといえるから、この点では本願発明の上記コンテンツ選択受付部と一致する。
もっとも、本願発明の上記コンテンツ選択受付手段は、上記のとおり、コンテンツデータの選択の受付けを、「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から」受付けるものであるのに対し、引用発明1では「自己が保持するディジタルコンテンツの一覧」の中から、すなわち自装置に記憶されたにコンテンツデータの中から受付けるものであるから、この点では両者に違いがある。

(4)「前記情報受信手段が受信した前記最高圧縮率に基づいて、前記最高圧縮率で圧縮した場合の前記コンテンツデータのデータ容量を算出するデータ容量算出手段」「前記データ容量算出手段が算出した前記圧縮後のコンテンツデータのデータ容量が、前記情報受信手段が受信した前記記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するデータ容量判定手段」
本願発明の前記データ容量算出手段とデータ容量判定手段、すなわち「前記情報受信手段が受信した前記最高圧縮率に基づいて、前記最高圧縮率で圧縮した場合の前記コンテンツデータのデータ容量を算出するデータ容量算出手段と、前記データ容量算出手段が算出した前記圧縮後のコンテンツデータのデータ容量が、前記情報受信手段が受信した前記記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するデータ容量判定手段」は、これら手段の当該要件からみて、基本的には、上記情報受信手段が受信した上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報〔上記(2)の認定参照〕に基づいて上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定する判定手段といえるものであるところ、これに対応するものとして、引用発明1は「前記要求に応じて送信されてきたステータスに関する情報」、すなわち上記(2)で認定した“情報受信手段で受信された記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報”に基づいて、前記選択された記録メディアがディジタルコンテンツのダビング先として成立するか否かを判断する判断部を備えており、当該判断部も、同様に「上記情報受信手段が受信した上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報に基づいて上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定する判定手段」といえるものである。
しかしながら、引用発明1の上記判断部は、より具体的には、上記ステータスに関する情報、すなわち上記記録媒体のステータスを示す「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報である場合に、当該記録媒体がダビング先として成立すると判断し、それ以外はダビング先として成立しないと判断するものであるから、本願発明の上記「データ容量算出手段」と「データ容量判定手段」による判定を行う判定手段とは明らかに相違する。
また、本願発明の上記判定手段による判定は、上記コンテンツ選択受付手段によるコンテンツデータの選択の後に行われている(上記データ容量の算出が「前記コンテンツデータ」すなわち選択されたコンテンツデータについて行われている)のに対し、引用発明1の上記判定手段による判定は、上記コンテンツデータの選択の前に行われている(上記判断部による記録媒体についての判断がダビング先として成立の場合にコンテンツデータの選択が行われている)から、この点でも両者に違いがある。
よって、本願発明と引用発明1とは、いずれも、上記情報受信手段が受信した上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報に基づいて上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定する判定手段を備えている点で一致し、当該判定手段が、本願発明では上記のとおりのデータ容量の算出と算出したデータ容量についての判定を行うデータ容量算出手段とデータ容量判定手段であるのに対し、引用発明1では上記記録媒体のステータスに関する情報、すなわち上記記録媒体のステータスを示す「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報であるか否かによって当該記録媒体がダビング先として成立するか否かを判断する判断部である点、および上記判定手段での判定が,本願発明では上記コンテンツ選択受付手段によるコンテンツデータの選択の後に行われているのに対し、引用発明1では当該選択の前に行われている点で相違する。

(5)「前記データ容量判定手段が前記圧縮後のデータ容量は前記記録媒体の記録可能容量内であると判定した場合に、前記コンテンツデータを圧縮して記録する旨の指示を前記記録装置に送信する指示送信手段」
本願発明における前記指示送信手段、すなわち「前記データ容量判定手段が前記圧縮後のデータ容量は前記記録媒体の記録可能容量内であると判定した場合に、前記コンテンツデータを圧縮して記録する旨の指示を前記記録装置に送信する指示送信手段」については、引用発明1では、上記記録媒体へのダビング記録を行う際にコンテンツデータを圧縮して記録するとはしておらず、したがって上記のような指示送信手段を設けていないから、この点で両者は相違する。

(6)「前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを前記記録装置に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信するデータ送信手段」
本願発明の前記データ送信手段は、前記コンテンツ選択受付手段が、上記(3)で述べたように、「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付ける」ものであることを前提に、「前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを前記記録装置に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信する」ようにしたものであり、このデータ送信手段は、上記コンテンツ選択受付手段、上記判定手段との関係では、当該判定手段が上記記録媒体へのダビング記録が可能と判定した場合に上記コンテンツ選択受付手段で選択されたコンテンツデータを上記記録装置に送信するものであることが明らかである。
これに対して、引用発明1は「前記コンテンツ選択部で選択されたディジタルコンテンツを前記ネットワークを介して前記選択された記録メディアを有する前記他の記録再生装置に送信する通信出力部」を備えているが、当該通信出力部は、上記コンテンツ選択部(コンテンツ選択受付手段)が前記のように「自己が保持するディジタルコンテンツ」からコンテンツを選択するものであることから、自装置内に記憶されているコンテンツデータを送信しているだけであり、したがってこの点で本願発明の上記データ送信手段とは相違する。
しかしながら、いずれにしても、本願発明の上記データ送信手段と、引用発明の上記通信出力部とは、“上記判定手段が上記記録媒体へのダビング記録が可能と判定した場合に上記コンテンツ選択受付手段で選択した自装置内に記憶されているコンテンツデータを上記記録装置に送信するデータ送信手段”といえるもので、この点では違いがない。
よって、本願発明と引用発明1とは、いずれも、“上記判定部が上記記録媒体へのダビング記録が可能と判定した場合に、上記コンテンツ選択受付手段で選択した自装置に記憶されているコンテンツデータを上記記録装置に送信するデータ送信手段”を備えている点で一致し、当該データ送信手段が、本願発明では、前記コンテンツ選択受付手段が「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付ける」ものであることを前提に、「前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを上記記録媒体に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信する」ものであるのに対し、引用発明1では、自装置に記憶されているコンテンツデータを上記記録装置に送信しているだけのものである点で相違する。

5.一致点および相違点
以上の対比結果をまとめると、本願発明の引用発明1との一致点および相違点は次のとおりである。

[一致点]
ネットワークで自装置と接続された記録装置から、当該記録装置で用いられる記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報を受信する情報受信手段と、
自装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの選択を受付けるコンテンツ選択受付手段と、
前記情報受信手段が受信した前記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定するための情報に基づいて前記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記記録媒体へのダビング記録が可能と判定した場合に、前記コンテンツ選択受付手段で選択した自装置内に記憶されているコンテンツデータを上記記録装置に送信するデータ送信手段と、
を備えることを特徴とする録画装置。

[相違点]
(i) 上記情報受信手段が、本願発明では「ネットワークで自装置と接続された記録装置から、当該記録装置で用いられる記録媒体の記録可能容量と、この記録装置が有するデータ圧縮機能の最高圧縮率を示す情報とを受信する」ものであるのに対し、引用発明1では、上記記録装置から、上記ステータスに関する情報、すなわち上記記録媒体のステータスを示す「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報を受信するものであり、この点を前提に、本願発明では、上記判定手段が「前記情報受信手段が受信した前記最高圧縮率に基づいて、前記最高圧縮率で圧縮した場合の前記コンテンツデータのデータ容量を算出するデータ容量算出手段と、前記データ容量算出手段が算出した前記圧縮後のコンテンツデータのデータ容量が、前記情報受信手段が受信した前記記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するデータ容量判定手段」であるのに対し、引用発明1では、上記判定手段が、上記記録媒体のステータスを示す各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報であるか否かによって当該記録媒体がダビング先として成立するか否かを判断する判断部であり、また当該判定手段による判定が、本願発明では上記コンテンツ選択受付手段によるコンテンツデータの選択の後に行われているのに対し、引用発明1では当該選択の前に行われている点。
(ii) 本願発明では「前記データ容量判定手段が前記圧縮後のデータ容量は前記記録媒体の記録可能容量内であると判定した場合に、前記コンテンツデータを圧縮して記録する旨の指示を前記記録装置に送信する指示送信手段」を設けているのに対し、引用発明1ではそのような指示送信手段を設けていない点。
(iii) 本願発明では、上記コンテンツ選択受付手段が「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの送信を受け付ける」もので、上記データ送信手段は「前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを上記記録媒体に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信する」ものであるのに対し、引用発明では、上記コンテンツ選択受付手段が、自装置に記憶されたにコンテンツデータの中から上記記録装置に送信するコンテンツデータの送信を受付けるだけのもので、上記データ送信手段は、自装置に記憶されているコンテンツデータを上記記録装置に送信するだけのものである点。

6.判断
(1)刊行物2の記載
原査定の拒絶理由に引用された特開2007-266953号公報(以下「刊行物2」という)には、図面と共に以下の記載がある。

「【0001】
この発明は、映像記録装置に関し、特に記録媒体に記録されている映像コンテンツをダビング処理する映像記録装置に関する。」
「【0006】
この発明に係る映像記録装置は、記録媒体に記録されている映像コンテンツが選択可能となるように出力表示する手段と、前記出力表示された映像コンテンツの中から選択された第1のコンテンツのダビング処理に関する指示を受信する手段と、前記第1のコンテンツのダビング処理指示に対応して第1のコンテンツに関連する第2のコンテンツが前記記録媒体に記録されているかを判別する関連コンテンツ判別手段と、第2のコンテンツが前記記録媒体に記録されていると判別された場合に、前記第2のコンテンツをダビング処理のために選択可能に出力表示する関連コンテンツ表示手段と、前記表示の中から関連コンテンツが選択された場合には前記第1のコンテンツのダビング処理および前記第2のコンテンツのダビング処理を行うダビング処理手段を備えるように構成している。」
「【0010】
図1はこの発明の実施の形態に係る映像記録装置1の構成を示すブロック図である。映像記録装置1は、入力情報を所定の記録媒体に記録し、再生指示に応じて既に記録されている情報を再生する記録再生部104、記録再生部104への記録及び記録再生部104からの再生、及び以下に説明する各部の動作を制御するマイクロコンピュータ(MPUすなわち主制御装置)105を有する。」
「【0011】
記録再生部104は、例えばDVD(Digital Versatile Disk)規格に準拠して製造されたディスクDに、情報の記録及び再生が可能なディスクドライブユニット104a、ディスクドライブユニット104aにセットされたディスクDに記録されるデータあるいはディスクDから再生されたデータの一定量を一時的に保持可能なバッファリングメモリとして機能する一時記録部104b、大容量データを記録可能なHDD104d、及びデータプロセッサ104cを含む。」
「【0043】
図10はこの発明の実施の形態に係る映像記録装置において、コピー先のディスク容量が不足し、ビットレート変換の選択肢が表示されたようすを示す図である。」
「【0044】
ここでは、ダビングを行うコンテンツに使用されるデータ量とダビング先(コピー先)のディスク容量が比較される。そして、ダビング先(コピー先)のディスク容量がダビングを行うコンテンツに使用されるデータ量に比べて少ない場合にこのような表示が行われる。このような場合に、ダビングを行うコンテンツのビットレートを変換し、データ量を圧縮することも可能である。そして、例えば、コピー先のディスク容量が足りません。ビットレート変換しますか?と表示される。」
「【0070】
図15はこの発明の実施の形態に係るダビング処理の動作を示すフローチャートである。」
「【0071】
符号401は上記のように、コピー先に必要なディスク容量があるか否かを判別するステップである。コピー先に必要なディスク容量があると判別される場合は符号500を付したステップへ進む(Yes)。コピー先に必要なディスク容量がないと判別される場合は符号402を付したステップへ進む(No)。」
「【0072】
符号402は、上記のようにビットレート変換が選択されたか否かを受信し、判別するステップである。ビットレート変換が選択されたと判別される場合は符号403を付したステップへ進む(Yes)。ビットレート変換が選択されたと判別されない場合は符号405を付したステップへ進む(No)。」
「【0073】
符号403は、最低ビットレートで上記ビットレートが満足されるか否かを判別するステップである。最低ビットレートで上記ビットレートが満足される場合は符号404を付したステップへ進む(Yes)。最低ビットレートで上記ビットレートが満足されない場合は符号500を付したステップへ進む(No)。」
「【0074】
符号405は映像記録装置に表示されるコンテンツ選択画面(203)へ戻るステップである。」
「【0075】
符号500は上記設定されたダビング処理が開始されるステップである。」
「【図1】


「【図10】


「【図15】



(2)刊行物2記載の発明
上記刊行物2の記載について検討する。

第一に、上記段落【0001】に記載されるとおり、刊行物2記載の発明は「記録媒体に記録されている映像コンテンツをダビング処理する映像処理装置に関する」ものである。
第二に、上記段落【0006】の記載からみて、刊行物2記載の発明は、記録媒体に記録されている映像コンテンツを選択可能に出力表示させ、出力表示された映像コンテンツの中から選択されたコンテンツをダビング処理するものである。
第三に、上記【0070】?【0075】の記載および【図15】のダビング処理の動作を示すフローチャートからみて、刊行物2記載の発明は、上記選択された映像コンテンツ(以下「コンテンツ」ともいう)をダビング処理するに際し、
a)コピー先に必要なディスク容量があるか否かを判別し、
b)コピー先に必要なディスク容量があると判別される場合は、図15にステップ500として記載されるようにダビングをスタートさせ、
c)コピー先に必要なディスク容量がないと判別される場合は、ビットレート変換が選択されたか否かを受信し、
d)ビットレート変換が選択されたと判別される場合は、最低ビットレートで上記ビットレートが満足されるか否か、すなわち図15にステップ403として記載されるように「最低ビットレートでディスク容量を満足するか?」判別し、
e)満足する場合は図15にステップ404として記載される「コピー先のディスク容量よりデータ量が少なくなるようにビットレートを選択」する処理を行い、
f)その後ダビングを開始させる
ようにしたものである。
ここで、上記「ビットレート変換」は、上記選択されたコンテンツに対するビットレート変換であることが明らかで、かつ、このビットレート変換は、上記段落【0044】における記載、すなわち「ダビング先(コピー先)のディスク容量がダビングを行うコンテンツに使用されるデータ量に比べて少ない場合に」「ダビングを行うコンテンツのビットレートを変換し、データ量を圧縮することも可能である。」との記載からみて、上記選択されたコンテンツに対するデータ圧縮処理ともいえるものであり、上記「最低ビットレート」は、上記コンテンツを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ量といえるものである。

したがって、刊行物2には「記録媒体に記録されている映像コンテンツを選択可能に出力表示させ、出力表示された映像コンテンツの中から選択された映像コンテンツをダビング処理する映像処理装置であって、
a)コピー先に必要なディスク容量があるか否かを判別し、
b)コピー先に必要なディスク容量がないと判別される場合、上記選択されたコンテンツに対するデータ圧縮処理が選択されたか否かを受信し、
c)データ圧縮処理が選択されたと判別される場合は、上記コンテンツを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ量でディスク容量を満足するか否かを判別し、
d)満足する場合はコピー先のディスク容量よりデータ量が少なくなるようにビットレートを選択する処理を行い、
e)その後ダビングを開始させる
ようにした映像処理装置」(以下「引用発明2」という)が記載されている。

(3)相違点の想到容易性
ア.相違点(i)について
第一に、上記相違点(i)における基本的な相違は、上記判定手段で「記録媒体へのダビング記録ができるか否かを判定する」判定手法の相違であり、本願発明における上記判定手段での判定手法は、ダビングしようとするコンテンツデータについて、最高圧縮率で圧縮した場合のデータ容量がダビング先の記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するものといえるが、そのような判定手法は、引用発明2により既に開示されている。
すなわち、引用発明2では、上記のように、コピー先(ダビング先)に必要なディスク容量があるか否かを判別し、コピー先に必要なディスク容量がないと判別される場合、最高圧縮率で圧縮した場合のビットレートでディスク容量を満足するか否かを判別するようにしており、ここでいう「最高圧縮率で圧縮した場合のビットレートでディスク容量を満足するか否かを判別する」とは、ダビングしようするコンテンツデータを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ容量がダビング先の記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定することに他ならず、また、当該判定を行う前に上記のようにコピー先に必要なディスク容量があるか否かの判別(すなわち圧縮しなくてもダビング可能かの判別)を行うことは上記最高圧縮率で圧縮した場合の判定を行う上での当然の前提事項というべきもので、本願発明でも特に明示はないものの適宜そのような判別がなされている(少なくともそのような判別を排除するものではない)と解される。
よって、本願発明の上記判定手法は、引用発明2により既に開示されているものである。
一方、引用発明1の上記判定手段(判断部)で「記録媒体へのダビング記録ができるか否かを判定する」判定手法は、上記のとおり、記録媒体(ダビング先)のステータスを示す「記録禁止の設定がなされているか」、「領域残量が所定量以上あるか」、「記録または再生中であるか」等の各種情報の全てがダビング先として成立することを示す情報であるか否かによって、当該記録媒体がダビング先として成立するか否かを判断するものである。
引用発明1の上記判定手法では、上記記録媒体(ダビング先)の「領域残量が所定量以上あるか」に基づく判定も行ってはいるが、この判定は、ダビングするコンテンツのデータ量に関係なく記録媒体に「領域残量が所定量以上あるか」だけを判定しているのであるから、当該記録媒体へのダビング記録が可能か否かのおおよその目安を判定しているにすぎず、より確実に判定する上では、引用発明2のように、コンテンツデータを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ量でディスク容量を満足するか否かを判別するのが望ましいことは容易に予測されることである。
また、引用発明1の上記判定手法では、上記記録媒体の領域残量についての情報を含む上記記録媒体のステータスを示す各種情報の全てに基づく判定を行っているが、この各種情報について、刊行物1には「ステータスに関する前記情報は、」「各種情報の少なくともひとつを含む。」(段落【0012】)、「なお、ここに挙げたステータス情報は例示であり適宜その一部のみを採用することも、または別の情報をステータス情報として収集し判断材料に加えることも可能である。」(段落【0038】)とあるから、上記のような各種情報の全てに基づく判定は、引用発明1において必ずしも必須のものではなく、例えば上記記録媒体の「領域残量が所定量以上あるか」の情報のみに基づく判定であってもよいものである。
以上の点を考慮すると、引用発明1において、その上記判定手法に代えて、引用発明2が開示する上記判定手法を採用することは当業者が容易に想到し得たというべき事項である。
そして、上記引用発明2の判定手法を採用し、上記「最高圧縮率で圧縮した場合のデータ量でディスク容量を満足するか否か」の判定、すなわち「ダビングしようするコンテンツデータを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ容量がダビング先の記録媒体の記録可能容量内であるか否か」の判定を行う上で、本願発明のように、「前記最高圧縮率で圧縮した場合の前記コンテンツデータのデータ容量を算出するデータ容量算出手段」と、「前記データ容量算出手段が算出した前記圧縮後のコンテンツデータのデータ容量が、」「前記記録媒体の記録可能容量内であるか否かを判定するデータ容量判定手段」を設けることは、上記引用発明2の判定手法による判定実施するための一実施態様として当業者が適宜なし得たことにすぎない。
第二に、上記情報受信手段において、上記ネットワークで自装置と接続された記録装置から、引用発明1のように当該記録媒体のステータスに関する情報を受信するのに代え、本願発明のように、「当該記録装置で用いられる記録媒体の記録可能容量と、この記録装置が有するデータ圧縮機能の最高圧縮率を示す情報とを受信する」ようにすることは、引用発明1の上記判定手法に代えて引用発明2の上記判定手法、すなわち「ダビングしようするコンテンツデータを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ容量がダビング先の記録媒体の記録可能容量内であるか否か」を判定する判定手法を採用する場合に当然に予測されることにすぎない。
第三に、引用発明2の上記判定手法は、上記のとおり「ダビングしようとするコンテンツデータを最高圧縮率で圧縮した場合のデータ容量がダビング先の記録媒体の記録可能容量内であるか否か」を判定するものであるから、ダビングしようとするコンテンツデータが選択された後に判定されるべきものであることは当然で、引用発明2でも上記したように当然そのようになされている。
したがって、本願発明において、上記判定を上記コンテンツ選択受付手段でのコンテンツデータの選択の後に行っている点は、上記引用発明2の判定手法を採用するに伴った当然の事項にすぎない。
よって、本願発明の上記引用発明1との相違点は当業者が容易に想到し得たというべきものである。

イ.相違点(ii)について
上記記録媒体へのダビング記録が可能か否かを判定する上記引用発明2の判定手法は、前記「(2)刊行物2記載の発明」で認定したように、コピー先に必要なディスク容量がある場合は、そのままコンテンツのダビングをスタートさせ、コピー先に必要なディスク容量がないが、最高圧縮率で圧縮した場合のデータ量ではディスク容量を満足する(ダビング記録が可能である)場合には、コンテンツを適宜データ圧縮してダビングするようにしており、したがってダビング先の記録媒体でコンテンツをデータ圧縮せずに記録するか、データ圧縮して記録するかの指示が必要であることは明らかである。
そして、引用発明1に引用発明2の上記判定手法を適用する場合、ダビング先の記録媒体はネットワークで接続された記録装置で用いられるものであるから、当該記録媒体にコンテンツをデータ圧縮して記録する場合(すなわち「前記データ容量判定手段が前記圧縮後のデータ容量は前記記録媒体の記録可能容量内であると判定した場合」)、本願発明のように、「前記コンテンツデータを圧縮して記録する旨の指示を前記記録装置に対して送信する指示送信手段」を設けることは、当業者には当然に予測されることにすぎない。

ウ.相違点(iii)について
引用発明1は、刊行物1段落【0026】?【0029】および【図3】【図4】の記載から明らかなように、「記録再生装置10,40,50,…」のような多数の記録再生装置がネットワークを介して相互に接続されていることを前提とするものである。
ここで、引用発明1は「前記判断部の判断がダビング先として成立の場合に、自己が保持するディジタルコンテンツの一覧を表示することによりダビングすべきディジタルコンテンツの選択をユーザに促すコンテンツ選択部」を有するものであるから「ダビングすべきディジタルコンテンツ」は「自己が保持するディジタルコンテンツ」、すなわち、「記録再生装置10」が保持する「ディジタルコンテンツ」から選択されるものである。しかしながら、引用発明1の「記録再生装置10,40,50,…」のいずれもが「ディジタルコンテンツ」を保持しうるから、「記録再生装置10」以外の「記録再生装置40,50,…」が保持する「ディジタルコンテンツ」についてもダビングを行おうとすることは当業者が自然に考えつくことにすぎない。すなわち、引用発明1における「ダビングすべきディジタルコンテンツ」を、これら「記録再生装置10,40,50、…」のいずれからでも選択できるようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、他装置が保持するコンテンツデータを選択して更に別の他装置に転送するに際し、コンテンツデータ自体を送信せずに、その保存場所を示す情報(URL等)を送信することは、例えば、平成24年6月20日付拒絶査定において周知例として引用された特開2009-290557号公報の以下の記載にみられるように、ホームネットワークのDLNA規格等として周知の事項である。

「【0023】
このDLNAのガイドラインでは、写真・音楽・ビデオといったコンテンツを、デジタルメディアサーバ(Digital Media Server:DMS)1001と呼ばれる機器に格納し、コンテンツディレクトリ(Content Directory Service:CDS)と呼ばれる、フォルダ階層を持った構造でコンテンツ一覧を管理する。CDS内の各コンテンツには、一意に識別するためのID値とコンテンツの詳細情報であるメタデータおよびコンテンツデータの取得先を示すURLが与えられている。CDSは、ホームネットワーク1003上の他の機器に公開され、コンテンツ再生をするクライアント機器であるプレーヤー機器(Digital Media Player:DMP)1005は、DMS上のCDSを辿ってコンテンツを選択し、URLで示されるコンテンツデータをデジタルメディアサーバ1001から取得し、再生を行う。ここで、DMS1001とDMP1005との間の通信(例えば、一覧取得、コンテンツデータ取得等の相互間通信)に用いられるプロトコルには、HTTPが用いられる。DMS1001とDMP1005で構成されるコンテンツ共有・再生を実現する図13Aに示した通信のモデルは、2-Boxモデルと呼ばれる。」

よって、本願発明の引用発明1との上記相違点(iii)、すなわち、上記コンテンツ選択受付手段を、「自装置または自装置とネットワークで接続された記憶装置に記憶されたコンテンツデータの中から、前記記録装置に送信するコンテンツデータの送信を受け付ける」ものとし、上記データ送信手段を、「前記コンテンツデータが自装置内に記憶されている場合には当該コンテンツデータを上記記録媒体に送信し、前記コンテンツデータが前記記憶装置に記憶されている場合には当該コンテンツデータの保存場所を示す情報を前記記録装置に送信する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たというべきものである。

(4)まとめ
以上のように、本願発明と引用発明1との上記相違点(i)?(iii)は、いずれも当業者が容易に想到し得たというべきものであり、また本願発明をその作用効果等を含めて全体としてみても、引用発明1に比し格別のものがあるとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本件出願の請求項2から請求項7までの各請求項に発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-26 
結審通知日 2013-05-10 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2010-257254(P2010-257254)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 章子  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 小池 正彦
奥村 元宏
発明の名称 録画装置及び録画装置の制御方法  
代理人 藤原 康高  

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