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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1276301
審判番号 不服2012-19837  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-09 
確定日 2013-07-01 
事件の表示 特願2010-119504「熱転写受像シート」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-228456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年8月25日に出願した特願2004-244783号の一部を平成22年5月25日に新たな特許出願としたものであって、同年6月23日及び平成24年4月11日付けで手続補正がなされ、同年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年12月14日付け審尋に対して平成25年2月18日付けで回答書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年4月11日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成24年10月9日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「基材上に断熱層及び受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該断熱層及び該受像層が同時重層塗布方式で形成され、かつ該断熱層が単層構成であり、単層の断熱層内に連続気泡及び独立気泡を含有していることを特徴とする熱転写受像シート。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-270147号公報(以下「引用例」という。)」には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(1)「【0008】
【好ましい実施態様】次に好ましい実施態様を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明で使用する基材シートは特に限定されず、例えば、普通紙、上質紙、両面又は片面コート紙、両面又は片面アート紙、両面又は片面キャストコート紙、合成紙、トレーシングペーパー、プラスチックフイルム等いずれのシート又はフイルムでもよい。又、得られる受像シートに優れた普通紙感を与える為には、通常のPPC用紙等の普通紙が使用出来、又、気泡含有層及び染料受容層を塗工方法で形成する場合には、塗工液の浸透が少ない様にコート紙(アート紙)及びキャストコート紙等を使用することが好ましい。
【0009】上記の基材シートの表面に形成する気泡含有層は、気泡とバインダーとからなる。バインダーとしては、任意の樹脂が使用出来るが、受像シートの基材との接着性が良好である感熱接着剤或は粘着剤(以下単に接着剤という)が好ましい。これらの接着剤としては、例えば、従来技術でフイルムの積層に使用されている様な2液硬化型のポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等からなるドライラミ用の接着剤、ウエットラミ用の酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂のエマルジョン等、エチレン-酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等のホットメルト接着剤等が有利に使用することが出来る。
【0010】これらの接着剤中に含有させる気泡は発泡剤から形成するが、かかる発泡剤としては、熱で分解して酸素、炭酸ガス、窒素等のガスを発生するジニトロペンタメチレンテトラミン、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボアミド等の分解型発泡剤、ブタン、ペンタン等の低沸点液体をポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂でマイクロカプセルしたマイクロバルーン等の公知の発泡剤がいずれも使用出来、更にこれらのマイクロバルーンを予め発泡させた発泡体や白色顔料で被覆されたマイクロバルーン等も有効に使用することが出来る。これらの発泡剤は接着剤中で発泡している状態でもよいし或は未発泡状態でもよいし、その中間の状態でもよい。
【0011】上記発泡剤又は発泡体の使用量は、気泡含有層の発泡倍率が1.5?20倍程度の範囲になる割合、例えば、気泡含有層を形成する接着剤層樹脂100重量部当たり0.5?30重量部の割合で使用することが好ましい。発泡剤の発泡は、気泡含有層の形成前でも形成時でも形成後でもよく、更に後述の様に染料受容層転写フイルムの作成時でもよいし、染料受容層の転写時でもよいし、更には未発泡のままで基材シートに受容層等と共にを転写しておき、サーマルヘッドで画像形成する際の熱で発泡させてもよい。これらの発泡の時期は、発泡剤の選択、染料受容層の転写時の温度等を選択することによって自在に行うことが出来る。上記においてマイクロスフェアー等のマイクロカプセル発泡剤は、発泡後にもその気泡は外壁を有しているので、接着剤層、後述の中間層、更には受容層にピンホール等の欠陥を生じない点で特に好ましい。
【0012】更に上記発泡剤に加えて、気泡含有層には、各種の蛍光増白剤や白色顔料、例えば、酸化チタン等を添加しておくことによって、転写後の受容層の白色度を向上させ、又、基材シートが紙である場合、その紙の黄味を隠蔽することが出来る。本発明の一実施態様では、上記気泡含有層には充填剤を添加することが出来る。かかる充填剤としては、硬い固体粒子であり、例えば、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、弗素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子(プラスチックピグメント)が挙げられる。これらの充填剤を気泡含有層に添加することによって、気泡含有層を厚くしても十分な硬度を与えることが出来る。充填剤の添加量は気泡含有層の重量の10?80重量%を占める範囲が好ましく、これより添加量が少ないと気泡含有層の硬度が不足し、一方、多すぎると気泡含有層の被膜性が低下する。これらの気泡含有層は好ましくは0.5?20μm程度の厚みに形成する。又、気泡含有層中の充填剤の体積は気泡体積の0.1?10%の範囲が好ましい。
【0013】本発明では、上記の気泡含有層上に中間層を形成することが出来る。この中間層は気泡含有層中の発泡剤の発泡或は再膨張等によって、染料受容層に凹凸やクレーターが発生するのを防止する作用を有するものであり、染料受容層を平滑で均一な表面状態に保持することが出来る。かかる中間層を形成する樹脂は、染料受容層を形成する樹脂よりも硬い樹脂であることが好ましく、好適な樹脂の例としては、アクリル系樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらの一部架橋樹脂等が挙げられる。上記樹脂中にも前記の如き硬い粒子の充填剤を含有させることが出来る。これらの充填剤を中間層に添加することによって、中間層を厚くすることなく中間層に十分な硬度を与えることが出来る。充填剤の添加量は中間層の重量の10?80重量%を占める範囲が好ましく、これより添加量が少ないと中間層の硬度が不足し、一方、多すぎると中間層の被膜性が低下する。上記の如き樹脂及び添加剤をアセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン等の適当な有機溶剤に溶解分散して塗料又はインキを調製し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により気泡含有層上に塗布及び乾燥し、更に必要に応じて架橋硬化させて中間層を形成する。この様にして形成する中間層の厚みは約0.5?20μm程度が好適である。」

(2)「【0022】
【実施例】次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部又は%とあるのは特に断りの無い限り重量基準である。先ず受像シートの構成に使用する各種塗工液を以下の配合で調製した。
(充填剤を含有しない気泡含有層用塗工液)
気泡含有層用塗工液1;
ポリエステル樹脂(バイロン600、東洋紡績製) 100部
発泡性マイクロカプセル(F-80、松本油脂製薬製) 10部
酢酸エチル/イソプロピルアルコール(重量比1/1) 400部
…略…
【0023】
…略…
【0024】
中間層用塗工液1;
セルロースアセテートブチレート(CAB-500-1、イーストマンコダック製) 100部
トルエン/メチルエチルケトン(重量比1/1) 400部
【0025】
…略…
【0026】
(滑剤又は充填剤を含有する染料受容層塗工液)
染料受容層用塗工液4;
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(#1000D、 電気化学工業製)
100部
ナイロンパウダー(オルガソール2002、日本リルサン製) 5部
アミノ変性シリコーン(X-22-343、信越化学工業製) 3部
エポキシ変性シリコーン(KF-393、信越化学工業製) 3部
メチルエチルケトン/トルエン(重量比1/1) 500部
…略…
【0027】実施例1
基材シートとして厚さ90μmのキャストコート紙(ミラーゴールド、神崎製紙製)の一方の面に、気泡含有層用塗工液1を乾燥厚み8μmになる割合で塗布及び乾燥させた後、この気泡含有層上に中間層用塗工液1を乾燥厚み3μmになる様に塗工及び乾燥させ、更に中間層上に染料受容層用塗工液4を乾燥厚み3μmとなる様に塗工及び乾燥させて本発明の熱転写受像シートを得た。
…略…。」

(3)上記(1)及び(2)の記載からみて、引用例には、
「基材シートの一方の面に、ポリエステル樹脂100重量部、マイクロカプセル発泡剤である発泡性マイクロカプセル10重量部、重量比1/1の酢酸エチル/イソプロピルアルコール400重量部の配合で調製した気泡含有層用塗工液を乾燥厚み8μmになる割合で塗布及び乾燥させて気泡含有層とした後、該気泡含有層上に、セルロースアセテートブチレート100重量部、重量比1/1のトルエン/メチルエチルケトン400重量部の配合で調製した中間層用塗工液を乾燥厚み3μmになる様に塗工及び乾燥させて中間層とし、更に該中間層上に、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体100重量部、ナイロンパウダー5重量部、アミノ変性シリコーン3重量部、エポキシ変性シリコーン3重量部、重量比1/1のメチルエチルケトン/トルエン500重量部の配合で調製した染料受容層用塗工液を乾燥厚み3μmとなる様に塗工及び乾燥させて染料受容層とし、前記中間層により、前記気泡含有層中の発泡剤の発泡或は再膨張等によって前記染料受容層に凹凸やクレーターが発生するのを防止して、前記染料受容層を平滑で均一な表面状態に保持するようにし、かつ、発泡後にもその気泡が外壁を有しているマイクロカプセル発泡剤を使用して、前記気泡含有層、前記中間層、更には前記受容層にピンホール等の欠陥を生じないようにした、熱転写受像シート。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「基材シート」、「染料受容層」、「熱転写受像シート」及び「気泡」は、それぞれ、本願発明の「基材」、「受像層」、「熱転写受像シート」及び「気泡」に相当する。

(2)引用発明の「気泡含有層」は、気泡の存在により断熱性を有するから、本願発明の「断熱層」に相当する。

(3)引用発明の「熱転写受像シート」は、「基材(基材シート)」の一方の面に、「断熱層(気泡含有層)」用塗工液を塗布及び乾燥させた後、この「断熱層」上に中間層用塗工液を塗工及び乾燥させ、更に中間層上に「受像層(染料受容層)」用塗工液を塗工及び乾燥させることにより得られるものであるから、本願発明の「熱転写受像シート」と、「基材上に断熱層及び受像層を有する」点、「断熱層」及び「受像層」が「塗布方式」で形成される点、及び、「断熱層」が「単層構成」である点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「基材上に断熱層及び受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該断熱層及び該受像層が塗布方式で形成され、かつ該断熱層が単層構成であり、単層の断熱層内に気泡を含有している熱転写受像シート。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記断熱層及び前記受像層の塗布方式が、本願発明では、同時重層塗布方式であるのに対し、引用発明では、同時重層塗布方式ではない点。

相違点2:
前記気泡が、本願発明では、連続気泡及び独立気泡であるのに対し、引用発明では、連続気泡なのか独立気泡なのか明らかでない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 断熱層及び受像層を同時重層塗布方式で形成した熱転写受像シートは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2003-94840号公報(【0115】参照。)、特開平11-192777号公報(【請求項3】【0046】【0047】【0062】参照。))。

イ 上記アからみて、引用発明において、前記断熱層及び前記受像層を同時重層塗布方式で形成すること、すなわち、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜になし得た程度のことである。

(2)相違点2について
ア 熱転写受像シートの断熱層に連続気泡や独立気泡を含有するものは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2002-212890号公報(【0018】参照。)、特開2002-192842号公報(【0019】参照。))。

イ 上記アからみて、引用発明において、前記気泡を連続気泡及び独立気泡とすること、すなわち、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術2に基づいて適宜になし得た程度のことである(特開平9-156236号公報の3頁左欄14?15行(【0009】)の記載参照。)。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術1、周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 請求人の主張について
(1)請求人は回答書で、本願発明を次の[本願補正案発明]のように補正する機会を求めているが、本願補正案発明も以下のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
[本願補正案発明]
「基材上に断熱層、中間層、及び受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該断熱層及び該中間層が同時重層塗布方式で形成され、かつ該断熱層が単層構成であり、単層の断熱層内に連続気泡及び独立気泡を含有していることを特徴とする熱転写受像シート。」

(2)本願補正案発明と引用発明とを対比すると、両発明は、
「基材上に断熱層、中間層、及び受像層を有する熱転写受像シートにおいて、該断熱層及び該中間層が塗布方式で形成され、かつ該断熱層が単層構成であり、単層の断熱層内に連続気泡及び独立気泡を含有している熱転写受像シート。」である点で一致し、次の相違点1’及び上記相違点2で相違する。

相違点1’:
前記断熱層及び前記中間層の塗布方式が、本願補正案発明では、同時重層塗布方式であるのに対し、引用発明では、同時重層塗布方式ではない点。

(3)断熱層及び中間層を同時重層塗布方式で形成した熱転写受像シートは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術3」という。例.特開平6-227159号公報(【請求項1】【0011】【0012】【0018】参照。)、上記特開2003-94840号公報(【0115】参照。)、上記特開平11-192777号公報(【請求項3】【0046】【0047】【0062】参照。))。

(4)上記(3)からみて、引用発明において、前記断熱層及び前記中間層を同時重層塗布方式で形成すること、すなわち、引用発明において、上記相違点1’に係る本願補正案発明の構成となすことは、当業者が周知技術3に基づいて適宜になし得た程度のことである。
そして、相違点2については上記5(2)のとおりである。

7 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-08 
結審通知日 2013-05-10 
審決日 2013-05-21 
出願番号 特願2010-119504(P2010-119504)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鉄 豊郎
西村 仁志
発明の名称 熱転写受像シート  
代理人 中村 行孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 小島 一真  
代理人 横田 修孝  
代理人 伊藤 武泰  
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