• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H03F
管理番号 1276571
審判番号 訂正2013-390067  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-05-02 
確定日 2013-06-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5169941号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5169941号に係る特許請求の範囲、明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第5169941号は、平成21年3月26日に出願され、平成25年1月11日に設定登録され、平成25年5月2日に本件訂正審判が請求されたものである。


第2.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5169941号の特許請求の範囲を請求書に添付した特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。


第3.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。
特許第5169941号の特許請求の範囲における請求項1の「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、」とあるのを、「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、」に訂正する。

そして、上記訂正の事項により、特許請求の範囲の記載は次のとおりのものとなる。
「【請求項1】
入力信号が供給される差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、
前記ソースフォロア回路の出力端、前記差動増幅回路の入力端、前記差動増幅回路の出力端と前記ソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続されるブロックであって、
一端が前記ソースフォロア回路の出力端、他端が前記差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、
前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、
一端が前記中間端点、他端が前記帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタと、
を含む複数の帰還経路ブロックと、
前記中間端点から一以上の前記帰還経路ブロックに含まれる前記キャパシタに至る経路に間挿される解放スイッチと、
を備えることを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記複数の帰還経路ブロックは、互いに異なる静電容量の前記キャパシタを含み、
前記解放スイッチは、少なくとも、前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る経路に間挿されることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックに至る経路である中間帰還経路は、前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が小さいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第1の経路と、前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第2の経路に分岐し、
前記解放スイッチは、前記中間帰還経路のうち、前記第2の経路部分に間挿されることを特徴とする請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記入力信号がフォトダイオードの出力信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項5】
レーザービームを受光するフォトダイオードと、前記フォトダイオードの出力信号を増幅する増幅回路とを備える光ピックアップであって、
前記増幅回路は、
入力信号が供給される差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、
前記ソースフォロア回路の出力端、前記差動増幅回路の入力端、前記差動増幅回路の出力端と前記ソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続されるブロックであって、
一端が前記ソースフォロア回路の出力端、他端が前記差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、
前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、
一端が前記中間端点、他端が前記帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタと、
を含む複数の帰還経路ブロックと、
前記中間端点から一以上の前記帰還経路ブロックに含まれる前記キャパシタに至る経路に間挿される解放スイッチと、
を備えることを特徴とする光ピックアップ。」


第4.訂正の適否
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
入力信号が供給される差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、
前記ソースフォロア回路の出力端、前記差動増幅回路の入力端、前記差動増幅回路の出力端と前記ソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続されるブロックであって、
一端が前記ソースフォロア回路の出力端、他端が前記差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、
前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、
前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、
一端が前記中間端点、他端が前記帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタと、
を含む複数の帰還経路ブロックと、
前記中間端点から一以上の前記帰還経路ブロックに含まれる前記キャパシタに至る経路に間挿される解放スイッチと、
を備えることを特徴とする増幅回路。」

訂正前の請求項1の「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチ」、及び、同「前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチ」は、いずれも選択スイッチであり、前記帰還抵抗に直列に接続されていることから、明らかに重複する構成である。
このため、訂正前の請求項1の「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、」なる記載は、請求項中の記載自体からみて、誤りであることは明らかである。

さらに、明細書の段落【0031】の「 増幅回路1aは、複数の帰還経路ブロック40を備える。各帰還経路ブロック40に含まれる抵抗16の抵抗値は互いに異なる。このため、いずれの帰還経路ブロック40を使用するかによって、増幅回路1aの電圧増幅率を変更できる。帰還経路ブロック40-1に含まれる抵抗16-1は、一端がソースフォロア回路30の出力端Eに接続され、他端は選択スイッチ18-1を介して差動増幅回路20の入力端S、より具体的には、差動増幅回路20の反転入力端子(-)に接続される。選択スイッチ18-1は、抵抗16-1から入力端Sに至る経路に間挿される。同様にして、帰還経路ブロック40-2の抵抗16-2も、一端は出力端Eに接続され、他端は選択スイッチ18-2を介して差動増幅回路20の入力端Sに接続される。帰還経路ブロック40-3の抵抗16-3についても同様である。」、及び、同段落【0032】の「 帰還経路ブロック40-1に含まれるキャパシタ17-1は、一端が差動増幅回路20の出力端Eとソースフォロア回路30の入力端Sの間の中間端点Mに接続され、他端は同図に示す端点B1にて抵抗16-1と接続される。したがって、キャパシタ17-1は、抵抗16-1と同様、選択スイッチ18-1を介して入力端Sと接続されている。帰還経路ブロック40-2のキャパシタ17-2、帰還経路ブロック40-3のキャパシタ17-3についても同様であり、端点B2、B3によりそれぞれ抵抗16-2、16-3と接続されている。」との記載との関係からみても、帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチは1つであって2つではないことから、訂正前の請求項1の「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、」との記載は、誤りであることは明らかである。

そして、上記段落【0031】及び【0032】、並びに、図4等の図面から、「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、前記帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、」なる記載は、「前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、」なる記載が正しい記載であることは明らかである。

したがって、本件訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

さらに、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。


第5.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
増幅回路及びこれを備える光ピックアップ
【技術分野】
【0001】
本発明は増幅回路に関し、特に、フォトダイオードの出力信号の増幅に好適な増幅回路及びこれを備える光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc)(登録商標)等の光ディスクへのデータの記録及び再生を行う光記録再生装置は光ピックアップを備える。光ピックアップには、光源であるレーザーダイオード(Laser Diode)や、光ディスクが反射したレーザービームを受光するフォトダイオード(Photo Diode)などが備えられている。フォトダイオードは、受光したレーザービームを電気信号に変換する素子であり、その出力信号を参照することにより光ディスクに記録されている情報を読み取ることが可能となる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
フォトダイオードの出力信号は極めて微弱であることから、これを外部に出力するためには、増幅回路が必要である。したがって、光ピックアップにはこのような増幅回路(受光アンプ)も搭載されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-332546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増幅回路の電圧増幅率(利得)は、帰還経路の抵抗値によって変化する。そこで、増幅回路に抵抗値が異なる複数の帰還経路を設け、これらのうちのいずれかを選択するように構成しておけば、単一の増幅回路により複数の電圧増幅率を実現できる。帰還経路には抵抗だけではなく位相補償用のキャパシタが設けられることがある。
【0006】
たとえば、帰還経路A、Bを備える増幅回路を想定する。増幅回路から出力される電流は、帰還経路AまたはBを介して入力段に戻る(以下、このような入力段に戻る電流を「帰還電流」とよぶ)。帰還経路Aが選択されるときには帰還経路Bは遮断される。帰還経路Bが選択されるときには帰還経路Aが遮断される。
【0007】
帰還経路Aを導通させ、帰還経路Bを遮断すれば、設計上、帰還経路Aだけに帰還電流が流れ込み、帰還経路Bに帰還電流が流れ込むことはない。しかし、帰還経路Bに設けられるキャパシタが浮遊容量を介してグラウンドと導通すると、未使用であるべき帰還経路Bに帰還電流の一部が漏出する可能性がある。この場合、帰還経路Bの浮遊容量が影響し、応答速度などの面において増幅回路としての特性が劣化する可能性があると本発明者は認識した。
【0008】
本発明の主たる目的は、増幅回路、特に、光ピックアップに用いられる増幅回路の特性を改善するための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は増幅回路に関する。この増幅回路は、入力信号が供給される差動増幅回路と、差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、ソースフォロア回路の出力端、差動増幅回路の入力端、差動増幅回路の出力端とソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続される複数の帰還経路ブロックと、中間端点から一以上の帰還経路ブロックへの導通を遮断するための解放スイッチを備える。帰還経路ブロックは、一端がソースフォロア回路の出力端、他端が差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、一端が中間端点、他端が帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタを含む。また、解放スイッチは、中間端点から一以上の帰還経路ブロックに含まれるキャパシタに至る経路に間挿される。
【0010】
このような態様によれば、解放スイッチにより、差動増幅回路から出力される電流が、未選択の帰還経路ブロックに含まれるキャパシタにまで流れ込むのを抑制できる。いいかえれば、未選択のキャパシタが形成する浮遊容量の影響を排除しやすくなる。これにより、応答速度や位相特性、周波数帯域といった増幅回路の特性(以下、まとめて「増幅特性」とよぶ)を向上させやすくなる。
【0011】
複数の帰還経路ブロックは、互いに異なる静電容量のキャパシタを含み、解放スイッチは、少なくとも、中間端点から複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る経路に間挿されてもよい。
【0012】
静電容量の大きいキャパシタほど、電極面積が大きい分、大きな浮遊容量を発生させやすい。いいかえれば、静電容量の大きなキャパシタが形成する浮遊容量の増幅特性に対する影響は大きなものとなりやすい。そこで、少なくとも、大静電容量のキャパシタへの導通を遮断するための手段として解放スイッチを設けてやれば、増幅特性を効率的に改善しやすい。
【0013】
中間端点から複数の帰還経路ブロックに至る経路である中間帰還経路は、複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が小さいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第1の経路と、中間端点から複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第2の経路に分岐し、解放スイッチは、中間帰還経路のうち、第2の経路部分に間挿されてもよい。
【0014】
最小静電容量のキャパシタを含む帰還経路ブロックを使用しているときには、最大静電容量のキャパシタが生じさせる浮遊容量の影響は相対的に大きくなりやすい。そこで、最小静電容量のキャパシタを含む帰還経路ブロックを使用しているときには、最大静電容量のキャパシタを含む帰還経路ブロックへの導通を解放スイッチにより遮断することにより、増幅特性を効率的に改善しやすくなる。「第2の経路」は、最小静電容量キャパシタを含む帰還経路ブロック以外の帰還経路ブロックに至る経路であればよい。たとえば、第2の経路は、最大静電容量のキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る経路だけでなく、2番目に大きい静電容量のキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る経路とも共通化された経路であってもよい。
【0015】
入力信号はフォトダイオードの出力信号であってもよい。このような態様によれば、フォトダイオードの出力信号を増幅するための増幅回路の応答特性を向上させやすくなる。
【0016】
本発明の別の態様は、レーザービームを受光するフォトダイオードと、フォトダイオードの出力信号を増幅する増幅回路とを備える光ピックアップに関する。この増幅回路は、入力信号が供給される差動増幅回路と、差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、ソースフォロア回路の出力端、差動増幅回路の入力端、差動増幅回路の出力端とソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続される複数の帰還経路ブロックと、中間端点から一以上の帰還経路ブロックへの導通を遮断するための解放スイッチを備える。帰還経路ブロックは、一端がソースフォロア回路の出力端、他端が差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、帰還抵抗に直列に接続される選択スイッチと、一端が中間端点、他端が帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタを含む。また、解放スイッチは、中間端点から一以上の帰還経路ブロックに含まれるキャパシタに至る経路に間挿される。
【0017】
このような態様によれば、光ピックアップ内の増幅回路の応答特性を向上させやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、増幅回路、特に、光ピックアップに用いられる増幅回路の特性を改善する上で効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】増幅回路の詳細を示す回路図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す増幅回路に含まれるキャパシタの構造図である。図2(b)は、図1に示す増幅回路に含まれるキャパシタの等価回路図である。
【図3】図1に示す増幅回路において、浮遊容量に基づく電流の漏れを説明するための模式図である。
【図4】図1、図3に示した増幅回路に解放スイッチを追加した第1の実施形態にかかる増幅回路の回路図である。
【図5】図1、図3に示した増幅回路における帰還経路ブロックそれぞれに解放スイッチを追加した第2の実施形態にかかる増幅回路の回路図である。
【図6】光ディスクの記録再生を行う光記録再生装置において用いられるPDICの外観例を示す図である。
【図7】図4の増幅回路を含むPDICの内部回路構成を示す第1の図である。
【図8】図4の増幅回路を含むPDICの内部回路構成を示す第2の図である。
【図9】図7、図8のPDICを備える光ピックアップの構成を示す模式図である。
【図10】図4に示す増幅回路の電流電圧変換ゲインについてのボード線図である。
【図11】図4に示す増幅回路の利得についてのボード線図である。
【図12】図4に示す増幅回路の位相についてのボード線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、増幅回路1aとフォトダイオード2の基本構成を示す図である。増幅回路1aは、帰還経路ブロック40-1、40-2、40-3(以下、まとめていうときには、単に「帰還経路ブロック40」とよぶ。)により、電圧増幅率を変更可能に形成された増幅回路として想定したものである。まず、図1から図3に関連して、増幅回路1aの構成および問題点について説明する。そのあと、これらの問題点を解決するための増幅回路1b、1cの構成を図4、図5に関連して説明する。
【0021】
増幅回路1aはオペアンプ10を含む。オペアンプ10は差動増幅回路20およびソースフォロア回路30を含み、これらは従属接続されている。差動増幅回路20の反転入力端子(-)にはフォトダイオード2が接続され、差動増幅回路20の非反転入力端子(+)には基準電圧源14が接続される。増幅回路1aは、ソースフォロア回路30の出力端と差動増幅回路20の反転入力端子(-)とを接続する帰還経路ブロック40-1、40-2、40-3を備える。帰還経路ブロック40-1は、抵抗16-1(帰還抵抗)とキャパシタ17-1を含む。以下、抵抗16-1、16-2、16-3をまとめていうときには、単に「抵抗16」とよぶ。キャパシタ17、選択スイッチ18についても同様である。これらの構成により、増幅回路1aはいわゆる反転増幅回路を構成している。
【0022】
フォトダイオード2は、光ディスクにて反射したレーザービームを受光し、光電変換を行う素子である。一例では、フォトダイオード2はPNダイオード、逆バイアス電源、抵抗を含んで構成され、PNダイオードにレーザービームが当たることによって抵抗の両端の電圧が変動する。この電圧は所定の電圧値(バイアス電圧)を基準として上下に変動し、フォトダイオード2の出力Vinとなる。以下では、このバイアス電圧は1.65Vであるとする。
【0023】
フォトダイオード2の出力Vinはまず差動増幅回路20に供給され、さらに差動増幅回路20の出力がソースフォロア回路30に供給される。これらの構成により、増幅回路1aは、フォトダイオード2の出力Vinを増幅して出力する。その結果、増幅回路1aの出力Voutには、受光したレーザービームの強度に応じた出力が得られる。
【0024】
差動増幅回路20は、カレントミラー接続されたPチャンネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ21、22と、PチャンネルMOSトランジスタ21、22にそれぞれ直列接続されたNチャンネルMOSトランジスタ23、24と、NチャンネルMOSトランジスタ23、24のソースに接続された定電流源25を含む。NチャンネルMOSトランジスタ23のゲートはフォトダイオード2に接続され、NチャンネルMOSトランジスタ24のゲートは基準電圧源14に接続されている。基準電圧源14はフォトダイオード2のバイアス電圧と同値の電圧(1.65V)を発生する。差動増幅回路20の出力は、PチャンネルMOSトランジスタ21とNチャンネルMOSトランジスタ23の接続点から取り出される。
【0025】
ソースフォロア回路30は、差動増幅回路20の出力がゲートに供給されるNチャンネルMOSトランジスタ31と、NチャンネルMOSトランジスタ31のソースに接続された定電流源32によって構成されている。ソースフォロア回路30の出力は、NチャンネルMOSトランジスタ31のソースから取り出され、増幅回路1aの出力Voutとなる。NチャンネルMOSトランジスタ31は、いわゆるデプレッション型のMOSトランジスタである。すなわち、NチャンネルMOSトランジスタ31のしきい値電圧Vthはゼロまたはマイナス値である。
【0026】
PチャンネルMOSトランジスタ21、22の各ソース、およびNチャンネルMOSトランジスタ31のドレインには電源電圧Vddが供給される。
【0027】
ここで、増幅回路1aの電圧増幅率は、抵抗16の抵抗値とフォトダイオード2の内部抵抗値の調節により、適宜設定される。ただし、フォトダイオード2の出力電圧がバイアス電圧の電圧値1.65Vである場合、電圧増幅率にかかわらず、ソースフォロア回路30の出力電圧(NチャンネルMOSトランジスタ31のソース電圧)は約1.65V程度となる。
【0028】
NチャンネルMOSトランジスタ31のしきい値電圧をVthとすると、NチャンネルMOSトランジスタ31のゲート電圧は、Vout+Vthで与えられる。増幅回路1aのNチャンネルMOSトランジスタ31はデプレッション型であるため、Vth≦0である。したがって、NチャンネルMOSトランジスタ31のゲート電圧は、ソース電圧とほぼ同じか、むしろこれよりも低くなる。たとえば、しきい値電圧Vthがほぼ0Vであるとすると、NチャンネルMOSトランジスタ31のゲート電圧は出力Voutの電圧とほぼ一致することになる。その結果、出力Voutの電圧が約1.65Vであるとすれば、トランジスタ31のゲート電圧も約1.65Vとなる。
【0029】
増幅回路1aでは、NチャンネルMOSトランジスタ31としてデプレッション型のMOSトランジスタを用いているが、エンハンスメント型のMOSトランジスタを用いることも可能である。なお、NチャンネルMOSトランジスタ31の代わりに、NPNバイポーラトランジスタを使用することも可能である。また、増幅回路1aを構成するMOSトランジスタのそれぞれをバイポーラトランジスタで代用することも可能である。
【0030】
各帰還経路ブロック40は、抵抗16、キャパシタ17および選択スイッチ18を含む。キャパシタ17はゼロ点調整による位相補償と進み位相補償とを実現するためのものである。ここでは、帰還経路ブロック40は3個であるとして説明するが、2個でも、あるいは4個以上であっても基本的な原理は同様である。
【0031】
増幅回路1aは、複数の帰還経路ブロック40を備える。各帰還経路ブロック40に含まれる抵抗16の抵抗値は互いに異なる。このため、いずれの帰還経路ブロック40を使用するかによって、増幅回路1aの電圧増幅率を変更できる。帰還経路ブロック40-1に含まれる抵抗16-1は、一端がソースフォロア回路30の出力端Eに接続され、他端は選択スイッチ18-1を介して差動増幅回路20の入力端S、より具体的には、差動増幅回路20の反転入力端子(-)に接続される。選択スイッチ18-1は、抵抗16-1から入力端Sに至る経路に間挿される。同様にして、帰還経路ブロック40-2の抵抗16-2も、一端は出力端Eに接続され、他端は選択スイッチ18-2を介して差動増幅回路20の入力端Sに接続される。帰還経路ブロック40-3の抵抗16-3についても同様である。
【0032】
帰還経路ブロック40-1に含まれるキャパシタ17-1は、一端が差動増幅回路20の出力端Eとソースフォロア回路30の入力端Sの間の中間端点Mに接続され、他端は同図に示す端点B1にて抵抗16-1と接続される。したがって、キャパシタ17-1は、抵抗16-1と同様、選択スイッチ18-1を介して入力端Sと接続されている。帰還経路ブロック40-2のキャパシタ17-2、帰還経路ブロック40-3のキャパシタ17-3についても同様であり、端点B2、B3によりそれぞれ抵抗16-2、16-3と接続されている。
【0033】
増幅回路1aの使用に際しては、選択スイッチ18-1?18-3のいずれかのみを導通(以下、「オン」とよぶ)させる。たとえば、選択スイッチ18-1がオンされるときには、選択スイッチ18-2、18-3はオフとする。各帰還経路ブロック40に含まれる抵抗16の抵抗値は、抵抗16-1が最も大きく、抵抗16-2、抵抗16-3の順に小さくなる。電圧増幅率(利得)は、帰還経路ブロック40における抵抗16の抵抗値が大きいほど高くなる。したがって、高利得動作時には選択スイッチ18-1、中利得動作時には選択スイッチ18-2、低利得動作時には選択スイッチ18-3をオンすればよい。
【0034】
キャパシタ17-1の容量Cfb1、キャパシタ17-2の容量Cfb2、キャパシタ17-2の容量Cfb3は、それぞれ式(1)、(2)、(3)で表される。Rfb1、Rfb2、Rfb3は、それぞれ抵抗16-1及び抵抗16-2、抵抗16-3の抵抗値である。CTはフォトダイオードの容量、ωはピーク周波数である。
【数1】

【数2】

【数3】

【0035】
帰還経路ブロック40-1?40-3を同一周波数帯域で動作させることを前提とするならば、上記の式からも明らかなように、各帰還経路ブロック40に含まれるキャパシタ17の静電容量は、キャパシタ17-3が最も大きく、キャパシタ17-2、キャパシタ17-3の順に小さくなる。
【0036】
増幅回路1aでは、外部信号によっていずれかの選択スイッチ18を選択することにより、使用対象となる帰還経路ブロック40を切り換える。選択スイッチ18の選択により、抵抗16とあわせて位相補償用のキャパシタ17も切り換えられる。
【0037】
キャパシタ17は、特に限定されるものではないが、半導体基板上に形成されているとする。キャパシタ17-1の中間端点M側の端点をa(図1参照)、選択スイッチ18-1側の端点をb(図1参照)として、次の図2においてキャパシタ17の構造を説明する。
【0038】
図2(a)は、キャパシタ17の具体的な構造を示す図である。図2(b)はキャパシタ17の等価回路図である。キャパシタ17では、電極52や電極53とn層54で酸化膜等の絶縁層50を挟んだ構造となっている。電極52と電極53は、アルミニウムにより形成される。電極52は、キャパシタ17-1の端点aに対応する。電極53は、キャパシタ17-1の端点bに対応する。電極53は、コンタクト孔55を介して、n層54のNエピタキシャル層57と接続される。n層54は、p層56上にウェル(Well)として形成される。ここでは、p層56はグラウンド電位に設定されている。
【0039】
n層54とp層56のPN接合により、n層54とp層56の境界付近には空乏層が形成される。空乏層は、キャリアが極端に少ない領域であるため、絶縁体に近い特性を示す。この結果、Nエピタキシャル層57とp層56(グラウンド電位)の間にはキャパシタとしての効果が発生し、浮遊容量Cp1が生じる。また、電極52(配線)とp層56(グラウンド電位)の間にも浮遊容量Cp2が生じる。したがって、電極として機能するn層54の結線によらず浮遊容量が存在することになる。なお、静電容量の大きなキャパシタ17-3の場合には、キャパシタ17の電極として機能するn層54の面積が大きいため浮遊容量Cp1も大きなものとなりやすい。ただし、浮遊容量Cp2は、配線と基板との間に存在する絶縁層の厚みがキャパシタを形成する絶縁層より厚く、かつ、配線の総面積が小さいので空乏層に起因する浮遊容量Cp1より一般的には小さいものとなる。
【0040】
図3は、図1に示す増幅回路において、浮遊容量による電流漏出を説明するための模式図である。ここでは、選択スイッチ18-1をオンし、それ以外の選択スイッチ18-2、18-3をオフしている。すなわち、帰還経路ブロック40-1が選択されている。以下においては、帰還経路ブロック40-1のように選択されている帰還経路ブロック40を「使用ブロック」、帰還経路ブロック40-2、40-3のように選択されていない帰還経路ブロック40を「未使用ブロック」とよぶ。
【0041】
理想的には、差動増幅回路20から出力された電流の一部はソースフォロア回路30のNチャンネルMOSトランジスタ31に流れ、残りは中間端点Mからキャパシタ17-1、オンされている選択スイッチ18-1を介して差動増幅回路20の入力端Sに帰還する。以下、このような中間端点Mから帰還経路ブロック40に向かって流れる電流を「中間帰還電流」とよぶ。中間帰還電流は、図3に示す第0経路64を通って帰還経路ブロック40に向かう。選択スイッチ18-2、18-3はオフされているため、第0経路64の中間帰還電流は、すべて図3に示す第1経路66に向かい、キャパシタ17-1、選択スイッチ18-1を通り、入力端Sに向かうことが想定される。しかし、実際には、中間帰還電流の一部は、使用ブロック(帰還経路ブロック40-1)だけでなく未使用ブロック(帰還経路ブロック40-1、40-2)にも流れ込む。
【0042】
より具体的には、第0経路64を流れる中間帰還電流の多くは第1経路66に向かうが、一部は第2経路68の方向にも流れる。選択スイッチ18-2はオフであるため、キャパシタ17-2に流れ込んだ中間帰還電流(第3経路74)が差動増幅回路20の入力端Sまで流れ込むことはない。しかし、キャパシタ17-2とグラウンドとの間に浮遊容量60-2が発生するため、キャパシタ17-2はグラウンドと浮遊容量60-2を介して導通することになる。このため、キャパシタ17-2に向かって流れ出た中間帰還電流の一部は、浮遊容量60-2を介してグラウンドに漏れてしまう(図3の第1漏出経路78)。
【0043】
同様にして、選択スイッチ18-3はオフであるため、キャパシタ17-3に流れ込んだ中間帰還電流(第4経路76)が差動増幅回路20の入力端Sまで流れ込むことはない。しかし、キャパシタ17-3とグラウンドとの間に浮遊容量60-3が発生するため、キャパシタ17-3はグラウンドと浮遊容量60-3を介して導通することになる。このため、キャパシタ17-3に向かって流れ出た中間帰還電流の一部は、浮遊容量60-3を介してグラウンドに漏れてしまう(図3の第2漏出経路82)。設計上想定していない浮遊容量60が増幅回路1aの位相特性等に影響し、増幅回路1aの増幅特性劣化要因となっている可能性がある。静電容量が最も大きいキャパシタ17-3に起因する浮遊容量60-3は、特に、大きな値となる可能性がある。
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0045】
[実施形態1]
図4は、図1、図3に示した増幅回路1aに解放スイッチ70を追加した第1の実施形態にかかる増幅回路1bの回路図である。解放スイッチ70は、帰還経路ブロック40-1が使用ブロックであるときに、中間帰還電流が未使用ブロックである帰還経路ブロック40-2、40-3に流れ込むのを阻止するためのスイッチである。選択スイッチ18-1がオンのときには解放スイッチ70をオフし、選択スイッチ18-2、18-3のいずれかがオンのときには解放スイッチ70はオンされる。図4に示すように、第1の実施形態にかかる増幅回路1bにおいては、第0経路64が第1経路66と第2経路68に分岐したとき、第2経路68への中間帰還電流の流入を制御するために、第2経路68の部分に間挿される。
【0046】
帰還経路ブロック40-1が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-1はオン、選択スイッチ18-2、18-3はオフとなる。また、解放スイッチ70もオフとなる。解放スイッチ70がオフされているため第2経路68が遮断され、中間帰還電流は帰還経路ブロック40-2、40-3に流れ込まない。浮遊容量60-2、60-3(図3参照)を介した中間帰還電流の流出を抑制できるため、増幅回路1aに比べて増幅回路1bの増幅特性が向上する。特に、キャパシタ17-1は最も静電容量が小さいため、帰還経路ブロック40-1を使用ブロックとするときには浮遊容量60-2、60-3の影響を受けやすい。したがって、最小静電容量のキャパシタ17-1を使用するとき、それ以上の静電容量のキャパシタ17-2、17-3の方向に中間帰還電流が向かうのを解放スイッチ70によって阻止することにより、増幅特性を効率的に改善できる。
【0047】
帰還経路ブロック40-2が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-2と解放スイッチ70はオンとなり、選択スイッチ18-1、18-3はオフとなる。この場合には、中間帰還電流の一部は、帰還経路ブロック40-1や帰還経路ブロック40-3にも流れ込むことになる。しかし、キャパシタ17-1よりもキャパシタ17-2の方が静電容量が大きいため、キャパシタ17-1に対する浮遊容量60の影響に比べれば、キャパシタ17-2に対する浮遊容量60の影響は相対的に小さくなる。設計上、解放スイッチ70の数を増やすのが難しいときには、図4に示すように帰還経路ブロック40-1と帰還経路ブロック40-2の間に解放スイッチ70を設置するのが最も効果的である。解放スイッチ70を更に追加可能であれば、帰還経路ブロック40-2と帰還経路ブロック40-3の間(図3の第4経路76の部分)にも別の解放スイッチ70を挿入し、帰還経路ブロック40-2を使用するときに帰還経路ブロック40-3に中間帰還電流が流れるのを阻止してもよい。
【0048】
帰還経路ブロック40-3が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-3と解放スイッチ70はオンとなり、選択スイッチ18-1、18-2はオフとなる。この場合には、中間帰還電流の一部は、帰還経路ブロック40-1、40-2にも流れ込むことになる。しかし、キャパシタ17-3は最も静電容量が大きいため、キャパシタ17-3に対する浮遊容量60の影響は相対的に小さい。
【0049】
増幅回路1bの場合、中間端点Mからキャパシタ17-1に至る経路(第0経路64、第1経路66)、中間端点Mからキャパシタ17-2に至る経路(第0経路64、第2経路68、第3経路74)、中間端点Mからキャパシタ17-3に至る経路(第0経路64、第2経路68、第4経路76)は一部において共通化されている。したがって、第4経路76上に解放スイッチ70を設ければ、帰還経路ブロック40-3への中間帰還電流の流入を抑制できる。第2経路68に解放スイッチ70を設ければ、帰還経路ブロック40-2、40-3への中間帰還電流の流入を抑制できる。
【0050】
[実施形態2]
図5は、図1、図3に示した増幅回路1aにおける帰還経路ブロック40それぞれに解放スイッチ70を追加した第2の実施形態にかかる増幅回路1cの回路図である。増幅回路1bの場合、中間帰還電流は中間端点Mから図5に示す第0経路64を通って第5経路84、第6経路86、第7経路88に分岐する。第5経路84、第6経路86、第7経路88を通る中間帰還電流は、それぞれ、キャパシタ17-1、17-2、17-3に向かう。図4に示した増幅回路1bと異なり、増幅回路1cにおいては、帰還経路ブロック40-1、40-2、40-3それぞれに解放スイッチ70-1、70-2、70-3が設けられている。より具体的には、解放スイッチ70-1はキャパシタ17-1に至る経路(第5経路84)に間挿され、解放スイッチ70-2はキャパシタ17-2に至る経路(第6経路86)に間挿され、解放スイッチ70-3はキャパシタ17-3に至る経路(第7経路88)に間挿されている。
【0051】
帰還経路ブロック40-1が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-1はオン、選択スイッチ18-2、18-3はオフとなる。また、解放スイッチ70-1はオン、解放スイッチ70-2、70-3はオフとなる。解放スイッチ70-2、70-3がオフされているため、中間帰還電流は帰還経路ブロック40-2、40-3に流れ込まない。増幅回路1bと同様、図1に示した増幅回路1aに比べて増幅特性が向上する。
【0052】
帰還経路ブロック40-2が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-2はオン、選択スイッチ18-1、18-3はオフとなる。また、解放スイッチ70-2はオン、解放スイッチ70-1、70-3はオフとなる。解放スイッチ70-1、70-3がオフされているため、中間帰還電流は帰還経路ブロック40-1、40-3に流れ込むことができない。
【0053】
帰還経路ブロック40-3が使用ブロックの場合:選択スイッチ18-3はオン、選択スイッチ18-1、18-2はオフとなる。また、解放スイッチ70-3はオン、解放スイッチ70-1、70-2はオフとなる。中間帰還電流は、解放スイッチ70-1、70-2がオフされているため、帰還経路ブロック40-1、40-2に流れ込むことができない。
【0054】
解放スイッチ70の数や挿入箇所については、増幅回路の設計要件にしたがって最適数、最適箇所を決定することが好ましい。
【0055】
[実施形態3]
増幅回路1a?1cは、フォトダイオード2と同一チップ上に集積することができ、このようなチップは、通常、フォトダイオードIC(PDIC:Photo Diode Integrated Circuit)と呼ばれる。第2の実施形態では、このPDICを用いる光記録再生装置の回路構成の具体例を挙げ、さらに、この光記録再生装置内において用いられる光ピックアップの構成について説明する。
【0056】
図6は、光ディスクの記録再生を行う光記録再生装置において用いられるPDIC100の外観例を示す図である。同図に示すPDIC100は、光記録再生装置の中でも特にCD/DVD/BDコンパチブルレコーダーに用いられるものであり、20個のフォトダイオード(A,B,C,D,E1,E2,E3,E4,F1,F2,F3,F4,a,b,c,d,e1,e2,f1,f2)を備える。各フォトダイオードは、それぞれ受光部R-1?6のいずれかに配置されている。
【0057】
受光部R-1?3はBD/DVD記録再生用である。受光部R-1は4つのフォトダイオードA,B,C,Dにより構成され、BDまたはDVDで反射したメインビームMBを受光する。また、受光部R-2は4つのフォトダイオードE1,E2,E3,E4により構成され、BDまたはDVDで反射したサブビームSB1を受光する。また、受光部R-3は4つのフォトダイオードF1,F2,F3,F4により構成され、BDまたはDVDで反射したサブビームSB2を受光する。
【0058】
受光部R-4?6はCD記録再生用である。受光部R-4は4つのフォトダイオードa,b,c,dにより構成され、CDで反射したメインビームMBを受光する。また、受光部R-5は2つのフォトダイオードe1,e2により構成され、CDで反射したサブビームSB1を受光する。また、受光部R-6は2つのフォトダイオードf1,f2により構成され、CDで反射したサブビームSB2を受光する。
【0059】
図7と図8は、増幅回路1bを含む上記PDIC100の内部回路構成を示す図である。なお、図7と図8は、2つの図で1つのPDIC100の内部回路構成を示しており、実際には図7の下部と図8の上部とがつながっている。各フォトダイオードにかかる回路構成には互いに類似している部分が多いので、以下では、フォトダイオードA及びフォトダイオードaに着目して説明を行うこととする。
【0060】
図7に示す回路42は、フォトダイオードAおよびフォトダイオードaの他、オペアンプ10、抵抗16-1、抵抗16-2、キャパシタ17-1、キャパシタ17-2、選択スイッチ18-1、選択スイッチ18-2、切換スイッチ41、リミッタ回路44を含んで構成される。オペアンプ10、抵抗16-1、抵抗16-2、キャパシタ17-1、キャパシタ17-2、選択スイッチ18-1、選択スイッチ18-2は第1の実施形態で説明したものであり、図4に示した増幅回路1bを構成している。もちろん、図5に示した増幅回路1cであってもよい。ここでは、帰還経路ブロック40を2つだけ示しているが、3つ以上である場合についても基本的な原理は同様である。
【0061】
オペアンプ10の反転入力端子(-)には、外部からの制御に応じた切換スイッチ41の動作により、記録再生対象メディアがBDまたはDVDである場合にフォトダイオードAが接続され、記録再生対象メディアがCDである場合にフォトダイオードaが接続される。一方、オペアンプ10の非反転入力端子(+)には、所定電圧の電源Vsが接続される。オペアンプ10および抵抗16を含んで構成される増幅回路1cは、フォトダイオードの出力信号に増幅処理を施す。
【0062】
選択スイッチ18-1および選択スイッチ18-2のオン・オフはゲイン制御部72により制御される。ゲイン制御部72は、外部からの指示に従ってハイ信号またはロー信号を生成することにより各選択スイッチ18および解放スイッチ70を制御する。
【0063】
リミッタ回路44は、オペアンプ10から出力された信号の振幅が所定の最大値を超えている場合、超えた分の振幅をクリップして、後段に出力する。
【0064】
リミッタ回路44の出力信号は、端子VA/Vaから出力されるとともに、合成回路62にも入力される。端子VA/Vaからの出力信号は、図示しない制御回路において、光スポットのデフォーカスやトラックからのずれを検出するためのサーボ信号として用いられる。
【0065】
合成回路62には、上記リミッタ回路44の出力信号の他、フォトダイオードB,C,Dまたはフォトダイオードb,c,dからも同様にリミッタ回路の出力信号が入力される。これらの各出力信号は合成され、端子VRFPおよび端子VRFNから出力される。なお、端子VRFPおよび端子VRFNの出力信号は互いに逆相となる。こうして出力される信号は、図示しない制御回路において、記録されているデータを示すデータ信号として用いられる。
【0066】
図9は、PDIC100を備える光ピックアップ101の構成を示す模式図である。光ピックアップ101は、レーザ光源102と、レーザ光源102からのレーザービームを複数に分割する回折格子103と、回折格子103から出射されたレーザービームを平行光にするコリメートレンズ104と、平行光とされたレーザービームを光ディスク200側へ導くミラー105と、ミラー105で反射されたレーザービームを円偏光に変換して対物レンズ106に入射させる1/4波長板110と、1/4波長板110から入射されたレーザービームをディスク面に収束させる対物レンズ106と、光ディスク200により反射されミラー105でさらに反射された光をPDIC100側へ導くビームスプリッタ107と、ビームスプリッタ107からの反射光を収束させるアナモフィックレンズ108と、アナモフィックレンズ108によって収束された反射光を受光するPDIC100とを備えている。PDIC100は、上述したように20個のフォトダイオードを備え、各フォトダイオードは、上記反射光を受光して光電変換し、反射光の強度に応じた電圧信号を出力する。
【0067】
なお、光ディスク200に対する対物レンズ106の位置は、対物レンズ駆動装置109によって高精度に制御される。詳細には、対物レンズ106をフォーカス方向へ駆動することにより、光ディスク200の記録面にビームスポットの焦点を合わせるフォーカス補正が行われ、トラッキング方向へ駆動することにより、光ディスク200のトラックにビームスポットを追従させるトラッキング補正が行われる。また、タンジェンシャル方向を回転軸にして対物レンズ106をトラッキング方向に回転させることにより、ディスクの反りに対応するチルト角の補正が行われる。
【0068】
以上、実施の形態に基づいて、増幅回路の特性を改善するための方法について説明した。未使用ブロックのキャパシタ17へ中間帰還電流が流れ込むのを防ぐための解放スイッチ70を設けることにより、浮遊容量の影響を効果的に排除できる。特に、静電容量の大きなキャパシタ17は、浮遊容量も大きなものとなりやすい。このため、静電容量の小さなキャパシタ17-1を使用するときに静電容量の大きなキャパシタ17-3に中間帰還電流が流れ込むと、増幅特性の劣化が顕在化しやすい。一方、静電容量の大きなキャパシタ17-3を使用するときに静電容量の小さなキャパシタ17-1に中間帰還電流が流れ込んだ場合は、浮遊容量の影響は比較的小さい。そこで、静電容量の小さなキャパシタ17-1を使用するときに、静電容量の大きなキャパシタ17-3に向かって中間帰還電流が流れ込まないように解放スイッチ70を設ければ(図4参照)、増幅特性を効率的に改善できる。
【0069】
実装によっては、浮遊容量をあえて利用してもよい。たとえば、帰還経路ブロック40-3を使用するときにキャパシタ17-1が形成する浮遊容量によって位相が好適に微調整されるのならば、敢えて、中間帰還電流の一部を帰還経路ブロック40-1にも流すとしてもよい。
【0070】
図5に示した増幅回路1cのように、キャパシタ17ごとに解放スイッチ70を設ければ、未使用ブロックに中間帰還電流が流れ込むのいっそう確実に抑止しやすくなる。解放スイッチ70の数や挿入箇所については、増幅回路に求められる性能や規模、配線レイアウト等を勘案して最適設計を探ることが望ましい。
【実施例1】
【0071】
図10は、増幅回路1bの電流電圧変換ゲインについてのボード線図である。横軸は周波数を対数軸にて示す。縦軸は、帰還経路ブロック40-1を使用ブロックとするとき抵抗16-1にかかる電圧とフォトダイオード2の入力電流の比率を示している。実線(e)は、解放スイッチ70を設けてこれをオフした場合の特性を示す。点線(f)は解放スイッチ70を設けない場合の特性を示す。実線(e)の場合においては-3dBとなるカットオフ周波数は113MHzであり、点線(f)の場合においては83MHzであった。すなわち、解放スイッチ70により未使用ブロックへの中間帰還電流の流入を阻止することにより、使用可能な周波数帯域が拡大されている。
【0072】
図11は、増幅回路1bの利得についてのボード線図である。帰還経路ブロック40-1を使用ブロックとしている。横軸は周波数を対数軸にて示す。縦軸は、オペアンプ10のオープンループゲインを示す。実線(g)は、解放スイッチ70を設けてこれをオフしたときの特性を示す。点線(h)は解放スイッチ70を設けない場合の特性を示す。解放スイッチ70により未使用ブロックへの中間帰還電流の流入を阻止することにより、オペアンプ10の利得についても周波数特性が改善している。
【0073】
図12は、増幅回路1bの位相についてのボード線図である。帰還経路ブロック40-1を使用ブロックとしている。横軸は周波数を対数軸にて示す。縦軸は、オペアンプ10の入力信号(Vin)に対する出力信号(Vout)の位相を示す。実線(i)は、解放スイッチ70を設けてこれをオフしたときの特性を示す。点線(j)は解放スイッチ70を設けない場合の特性を示す。解放スイッチ70により未使用ブロックへの中間帰還電流の流入を阻止することにより、オペアンプ10の位相についても周波数特性が改善している。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0075】
1a、1b、1c 増幅回路
2 フォトダイオード
10 オペアンプ
14 基準電圧源
16 抵抗
17 キャパシタ
18 選択スイッチ
20 差動増幅回路
25 定電圧源
30 ソースフォロア回路
40 帰還経路ブロック
60 浮遊容量
70 解放スイッチ
100 PDIC
101 光ピックアップ
102 レーザー光源
103 回折格子
104 コリメートレンズ
105 ミラー
106 対物レンズ
107 ビームスプリッタ
108 アナモフィックレンズ
109 対物レンズ駆動装置
110 1/4波長板
200 光ディスク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が供給される差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、
前記ソースフォロア回路の出力端、前記差動増幅回路の入力端、前記差動増幅回路の出力端と前記ソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続されるブロックであって、
一端が前記ソースフォロア回路の出力端、他端が前記差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、
前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、
一端が前記中間端点、他端が前記帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタと、
を含む複数の帰還経路ブロックと、
前記中間端点から一以上の前記帰還経路ブロックに含まれる前記キャパシタに至る経路に間挿される解放スイッチと、
を備えることを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記複数の帰還経路ブロックは、互いに異なる静電容量の前記キャパシタを含み、
前記解放スイッチは、少なくとも、前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る経路に間挿されることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックに至る経路である中間帰還経路は、前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が小さいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第1の経路と、前記中間端点から前記複数の帰還経路ブロックのうち最も静電容量が大きいキャパシタを含む帰還経路ブロックに至る第2の経路に分岐し、
前記解放スイッチは、前記中間帰還経路のうち、前記第2の経路部分に間挿されることを特徴とする請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記入力信号がフォトダイオードの出力信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の増幅回路。
【請求項5】
レーザービームを受光するフォトダイオードと、前記フォトダイオードの出力信号を増幅する増幅回路とを備える光ピックアップであって、
前記増幅回路は、
入力信号が供給される差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を受けるソースフォロア回路と、
前記ソースフォロア回路の出力端、前記差動増幅回路の入力端、前記差動増幅回路の出力端と前記ソースフォロア回路の入力端の間の中間端点のそれぞれと接続されるブロックであって、
一端が前記ソースフォロア回路の出力端、他端が前記差増増幅回路の入力端に接続される帰還抵抗と、
前記帰還抵抗の他端と前記差動増幅回路の入力端の間に直列接続される選択スイッチと、
一端が前記中間端点、他端が前記帰還抵抗の他端と接続されるキャパシタと、
を含む複数の帰還経路ブロックと、
前記中間端点から一以上の前記帰還経路ブロックに含まれる前記キャパシタに至る経路に間挿される解放スイッチと、
を備えることを特徴とする光ピックアップ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2009-76650(P2009-76650)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 矢頭 尚之  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
佐藤 聡史
登録日 2013-01-11 
登録番号 特許第5169941号(P5169941)
発明の名称 増幅回路及びこれを備える光ピックアップ  
代理人 緒方 和文  
代理人 三谷 拓也  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 緒方 和文  
代理人 三谷 拓也  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 黒瀬 泰之  
代理人 黒瀬 泰之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ