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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1276608
審判番号 不服2011-21760  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2013-07-11 
事件の表示 特願2001-578794「排ガス設備の排ガス装置、特にモジュール構成形式の自動車触媒装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 1日国際公開、WO01/81736、平成15年10月28日国内公表、特表2003-531994〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、2001年4月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2000年4月26日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成13年12月26日付けで特許法第184条の5第1項に規定する書面が提出されるとともに特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の日本語による翻訳文が提出され、平成22年6月22日付けの拒絶理由通知に対して平成22年12月17日付けで意見書及び明細書について補正する手続補正書が提出されたが、平成23年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、本件出願の請求項1ないし25に係る発明は、平成22年12月17日付けの手続補正書によって補正された明細書、及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 排ガス設備の排ガス装置(1)であって、それぞれ薄板から成る、少なくとも1つのホッパ状排ガス開口(20,21)と、これに接続されている同心的な支承管(2)とが設けられており、該支承管(2)には少なくとも1つのモノリス(3)または粒子フィルタが、該モノリスまたは粒子フィルタを取り囲む支承マット(4)を介して絶縁されて支承されており、前記ホッパ状排ガス開口は二重壁状に2つの成形部分から形成されていて、即ち外側ホッパ(5)と内側ホッパ(6)とから成っている形式のものにおいて、
外側ホッパ(5)だけが支承管(2)に金属的に接触して固定されており、内側ホッパ(6)は無接触式に支承管(2)と外側ホッパ(5)とに対して間隔をおいて配置されていて、内側ホッパ(6)が、向かい合う支承マット(4)の縁部に接触していることを特徴とする、排ガス設備の排ガス装置。」

2.引用文献の記載内容
(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第450348号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、以下の記載がある。
なお、独語表記にあたっては、以下 o、 a、 u ウムラウトを各々、oe、 ae、 ueと、及びエスツエットをssとした。

ア.「Die Erfindung betrifft・・・Schiebesitzes auszugleichen.」(公報第1ページの○付き数字57の要約、すなわち左下欄第25行ないし同欄第34行及び右下欄第25行ないし第33行)
〈当審仮訳〉
「この発明は、内燃機関に用いられる排気ガス触媒コンバーターに関連している。
触媒被膜を有するセラミック・ハニカム体(1)は、吸収性マット(2)の助力により金属製ケーシング(3)において放射状及び軸方向に固定される。このケーシング(3)は、円錐型ケーシング(4)を備えている。その内部において繊維製絶縁マット(5)は、内部テーパー(6)の助力により取り付けられる。内部テーパー(6)の末端(7.1)及びハニカム体(1)の前額面の間で必要となるスリットは、繊維製シールリング(8.2)によって覆われている。この繊維製シールリング(8.2)は、単に次のような課題を有している。繊維製絶縁マット(5)及び吸収性マット(2)を排気ガスパルセーションの有害作用から保護し、内部テーパー(6)の遊離した末端(7.1)を支え、またケーシング(3)、円錐型ケーシング(4)、内部テーパー(6)の間で生じる長さの変化(熱により限定される)を可動シートのような形で調整する、という課題である。」

イ.「Die Innenkonen sind・・・Abgasstroemung zu schmaelern.」(公報第2ページ第1欄第33行ないし第41行)
〈当審仮訳〉
「内部テーパーは、直接に排気ガスの流れに曝される。そのため内部テーパーは、最高駆動温度に達する。そのため大きな熱膨張が生じる。したがって内部テーパーは、適切に、(脈動する排気ガスの流れに対する断熱材及び固定材の保護を弱めることなく)活性触媒モノリスの損傷を妨げるように設計され、寸法を定められる。」

ウ.「Fig.1 zeigt eine erste Ausfuehrungsform.・・・von vornherein ausschliesst.」(公報第3ページ第3欄第10行ないし第49行)
〈当審仮訳〉
「図1は、最初の実施例を示している。活性触媒モノリス1、例えばセラミック・ハニカム体は、吸収性マット2の助力により板金ケーシング3に置かれる。ケーシング3は、入力または出力側に円錐型ケーシング4を備えている。この円錐型ケーシング4は、内部を断熱材5(例えばケイ酸アルミニウム繊維マット)によって断熱される。絶縁マット5の保護のために、金属製内部テーパー6は考慮される。この内部テーパー6の遊離した末端7.1は、補強のために外側へと放射状に曲げられる。
内部テーパー6の遊離した末端7.1に、例えば針金を編んで形成される溝を刻みつけられた繊維製シールリング8.1が備え付けられる。このシールリング8.1は、内部テーパー6の遊離した末端7.1がケーシング3、特に円錐型ケーシング4に触れることを妨げる。それによって、ケーシング3及び円錐型ケーシング4への排気ガスの音響エネルギー伝達は強く制限される。またリング8.1は、内部テーパー6及びモノリスの前額面の間に引きとめられているスリットを覆う。シール8.1が排気ガスパルセーションの最適な抑制において寸法を定められることで、吸収性マット2及び絶縁マット5は保護される。
リング8.1のための針金または繊維素材の適切な選択、及び適切な加工によって、製造における許容差及び駆動時の熱膨張の差が、伸縮性をもって受け入れられ調整される。これは、繊維製シールリングに関する課題が排気ガスパルセーションに対する保護及び長さの変化調整を可動シートという形で制限することでも可能である。従来通りの針金を編んだようなリングは、モノリスを放射状及び/または軸方向に固定するという課題を有している。これは可動シートの形成を、はじめから排除している。」

エ.「Fig.3 zeigt eine Ausfuehrungsform, ・・・3 mit einer Sicke 10 versehen.」(公報第3ページ第3欄第58行ないし第4欄第25行)
〈当審仮訳〉「図3は、内部テーパー6の遊離した末端7.3がケーシング3に対して平衡に曲げられている実施例である。繊維製シールリング8.3への適した溝刻みこみにより、内部テーパー6の遊離した末端7.3はリング8.3との接触を失うことなく、リング8.3でスリップする。それによって内部テーパー6の遊離した末端7.3はとどまり、ケーシング3及び4に対して音響的に絶縁される。リング8.3は、熱により制限された軸性の膨張差を調整するために、もはや伸縮性を伴って弾むことはない。それによってリング8.3は、パルセーションを妨げケーシングを音響的に絶縁するという課題のために、寸法を定められる。
図4は、内部テーパー6の遊離した末端7.4がさらに逆鉤の形に曲げられている実施例である。それによって、排気ガスパルセーションの作用のもとで内部テーパー6の移動を予防するために、内部テーパー6、特にその末端7.4を伴う繊維製シールリング8.4を機械的に固定することも可能である。ケーシング3、円錐型ケーシング4、及び内部テーパー6の間で生じる膨張差において、シール8.4は位置がずれる。
さらに繊維製シールリング8.4を引きとめるために、ケーシング3は溝10を備えている。」

オ.「1.Abgaskonverter fuer Brennkraftmaschinen ・・・nach aussen gebogen ist.」(公報第4欄第29行ないし第56行)
〈当審仮訳〉
「1. 板金ケーシング(3)において吸収性マット(2)によって固定されている触媒で覆われたモノリス(1)、ケーシング(3)の入力及び/または出力側にある内部が断熱材(5)により断熱された円錐型ケーシング(4)、駆動時に遊離した末端(7.1、7.3、7.4)がモノリス(1)の前額面にある内部テーパー(6)《その際に部品(1?6)の異なる熱膨張を調整するスリットは残る》、脈動する排気ガスの流れの作用に対してスリットを覆うカバー(8)を伴う内燃焼機関のための排気ガスコンバーターは、カバーが溝を刻みこまれた繊維製シールリング(8.1?8.4)として形成されることで特徴づけられる。この繊維製シールリング(8.1?8.4)は、内部テーパー(6)の遊離した末端(7.1、7.3、7.4)を包み込む。この末端は、ケーシング(3)、特に円錐型ケーシング(4)を支え、熱による長さの変化を可動シートの形で調整し、排気ガスパルセーションの適する抑制のために寸法を定められる。
2. 請求項1による排気ガスコンバーターは、内部テーパー(6)の遊離した末端(7.1)が外側へ放射状に曲げられることで特徴づけられる。」

(2)引用文献に記載された事項
上記(1)ア.ないしオ.及び図面の記載を参酌すると、引用文献には以下の事項が記載れていることが分かる。

カ.内燃機関の排気ガス触媒コンバータであって、構成されたケーシング3は薄板から構成され、入力側または出力側に円錐型ケーシング4を備えていることから、ケーシング3は円錐型ケーシング4と円筒体部分(以下、「ケーシングA」という。)とからなり、少なくとも1つの円錐型排気ガス開口(以下、「排気ガス開口B」という。)と、これに接続されている同心的なケーシングAとが設けられていることが分かる。

キ.ケーシングAには少なくとも1つの活性触媒モノリス1が、該活性触媒モノリス1を取り囲む繊維性シールリング及び吸収性マット2(以下、「マットC」という。)を介して絶縁されて支承されていることが分かる。

ク.円錐型排気ガス開口Bは二重壁状に2つの成形部分から形成されていて、即ち円錐ケーシング4と金属製内部テーパー6とから成っていることが分かる。

ケ.金属製内部テーパー6は無接触式にケーシングAと円錐型ケーシング4とに対して間隔をおいて配置されていて、金属製内部テーパー6が、向かい合うマットCの縁部に接触している内燃機関の排気ガス触媒コンバータであることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)ア.ないしオ.及び(2)カ.ないしケ.並びに図面の記載を総合すると、
引用文献には、以下の発明(以下、「引用文献に記載された発明」という。)が記載されているといえる。
「内燃機関の排気ガス触媒コンバータであって、それぞれ薄板から成る、少なくとも一つの円錐型ケーシング4と、これに接続する同心的なケーシングAとが設けられており、該ケーシングAには少なくとも1つの活性触媒モノリス1が、該活性触媒モノリス1を取り囲むマットCを介して絶縁されて支承されており、前記円錐型排気ガス開口Bは二重壁状に2つの成形部分から形成されていて、即ち円錐型ケーシング4と金属製内部テーパー6とから成っている形式のものにおいて、
金属製内部テーパー6は無接触式にケーシングAと金属製内部テーパー6とに対して間隔をおいて配置されていて、金属製内部テーパー6が、向かい合うマットCの縁部に接触している排気ガス触媒コンバータ。」

3.対比
本願発明と引用文献に記載された発明を対比すると、引用文献に記載された発明における「内燃機関の排気ガス触媒コンバータは、それらの形状、構造や機能及び意図する技術内容からみて、本願発明における「排ガス設備の排ガス装置(1)」に相当し、以下同様に、「円錐型排気ガス開口B」は「ホッパ状排ガス開口(20,21)」に、「ケーシングA」は「支承管(2)」に、「活性触媒モノリス1」は「モノリス(3)または粒子フィルタ」に、「マットC」は「支承マット(4)」に、「円錐型ケーシング4」は「外側ホッパ(5)」に、「金属製内部テーパー6」は「内側ホッパ(6)」に、各々相当するから、
本願発明と引用文献に記載された発明は、
「排ガス設備の排ガス装置であって、それぞれ薄板から成る、少なくとも1つのホッパ状排ガス開口と、これに接続されている同心的な支承管とが設けられており、該支承管には少なくとも1つのモノリスまたは粒子フィルタが、該モノリスまたは粒子フィルタを取り囲む支承マットを介して絶縁されて支承されており、前記ホッパ状排ガス開口は二重壁状に2つの成形部分から形成されていて、即ち外側ホッパと内側ホッパとから成っている形式のものにおいて、
内側ホッパは無接触式に支承管と外側ホッパとに対して間隔をおいて配置されていて、内側ホッパが、向かい合う支承マットの縁部に接触している、排ガス設備の排ガス装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明においては、外側ホッパだけが支承管に金属的に接触して固定されているのに対して、引用文献に記載された発明においては、本願発明における「外側ホッパ」及び「支承管」に各々相当する「円錐型ケーシング4」及び「ケーシングA」がそのように特定されていない点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
相違点について検討する。
一般に、排ガス設備の排ガス装置において、本願発明における「外側ホッパ」及び「支承管」に相当する部材を互いに金属的に接触して固定させることは周知(例えば、先の拒絶理由で提示した特開平10-299470号公報、特開昭64-60711号公報、実願昭60-179360号(実開昭62-87122号のマイクロフィルム)、特開昭50-75973号公報参照、以下、「周知技術」という。)であることから、引用文献記載の発明における「円錐型ケーシング4」及び「ケーシングA」に代えて、上記周知技術を適用して相違点に係る本願発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。
また、本願発明は、全体構成でみても、引用文献に記載された発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-07 
結審通知日 2013-02-08 
審決日 2013-02-26 
出願番号 特願2001-578794(P2001-578794)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩▲崎▼ 則昌  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
藤原 直欣
発明の名称 排ガス設備の排ガス装置、特にモジュール構成形式の自動車触媒装置  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  

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