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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1276626 |
審判番号 | 不服2012-11404 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-06-19 |
確定日 | 2013-07-11 |
事件の表示 | 特願2005-366916「固体撮像装置および固体撮像装置の駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-261638〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年12月20日(特許法第41条に基づく優先権主張 平成17年2月21日)の出願であって,平成24年3月12日付けで手続補正がされ,同年3月29日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年6月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がされ,その後同年8月22日付けで審尋がされ,それに対する回答はなされなかったものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年6月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成24年6月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?18を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?18と補正するとともに,補正前の明細書を補正後の明細書に補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記絶縁膜に印加する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。 【請求項2】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記光電変換素子の信号電荷と同極性の電圧を前記絶縁膜に印加し,信号電荷と逆極性の電荷を半導体基板の第2面側に誘起する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。 【請求項3】 前記電圧印加手段は,前記絶縁膜上に形成され,前記半導体基板内に入射光を取り込み可能な電極と,当該電極に前記電圧を与える電圧源とを有する ことを特徴とする請求項1または2記載の固体撮像装置。 【請求項4】 …(中略)… 【請求項11】 前記電圧印加手段は,前記絶縁膜上に形成され,前記絶縁膜に対して前記電圧を与える仕事関数差を持つ物質の層である ことを特徴とする請求項1?10の何れか記載の固体撮像装置。 【請求項12】 前記物質は,前記半導体基板と異なる導電型の半導体である ことを特徴とする請求項11記載の固体撮像装置。 【請求項13】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置の駆動方法であって, 前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を,前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜に印加する ことを特徴とする固体撮像装置の駆動方法。 【請求項14】 半導体基板に光電変換素子を含む画素が形成され, 前記半導体基板の裏面側から入射光を取り込むようになされ, 前記裏面側に絶縁膜が形成され, 少なくとも画素アレイ部では前記絶縁膜を介して裏面電極が形成され, 前記裏面電極のパッド部直下に,パッド部と前記半導体基板との間のリーク電流を阻止するリーク電流阻止領域が設けられている ことを特徴とする固体撮像装置。 …(後略)…」 (補正後) 「【請求項1】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記絶縁膜上の全面に設けられ,前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記絶縁膜に印加する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。 【請求項2】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記絶縁膜上の全面に設けられ,前記光電変換素子の信号電荷と同極性の電圧を前記絶縁膜に印加し,信号電荷と逆極性の電荷を半導体基板の第2面側に誘起する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。 【請求項3】 前記電圧印加手段は,前記絶縁膜上の全面に形成され,前記半導体基板内に入射光を取り込み可能な電極と,当該電極に前記電圧を与える電圧源とを有する ことを特徴とする請求項1または2記載の固体撮像装置。 【請求項4】 …(中略)… 【請求項11】 前記電圧印加手段は,前記絶縁膜上の全面に形成され,前記絶縁膜に対して前記電圧を与える仕事関数差を持つ物質の層である ことを特徴とする請求項1?10の何れか記載の固体撮像装置。 【請求項12】 前記物質は,前記半導体基板と異なる導電型の半導体である ことを特徴とする請求項11記載の固体撮像装置。 【請求項13】 光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置の駆動方法であって, 前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を,前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜の全面に印加する ことを特徴とする固体撮像装置の駆動方法。 【請求項14】 半導体基板に光電変換素子を含む画素が形成され, 前記半導体基板の裏面側から入射光を取り込むようになされ, 前記裏面側に絶縁膜が形成され, 少なくとも画素アレイ部では前記絶縁膜上の全面に裏面電極が形成され, 前記裏面電極のパッド部直下に,パッド部と前記半導体基板との間のリーク電流を阻止するリーク電流阻止領域が設けられている ことを特徴とする固体撮像装置。 …(後略)…」 2 補正事項の整理 本件補正のうち,特許請求の範囲についての補正事項を整理すると,以下のとおりである。 (補正事項1) 補正前の請求項1,2の「第2面上に形成された絶縁膜と,」の後に,「前記絶縁膜上の全面に設けられ,」を加入し,補正後の請求項1,2と補正すること。 (補正事項2) 補正前の請求項3,11の「前記絶縁膜上に形成され」を,補正後の請求項3,11の「前記絶縁膜上の全面に形成され」と補正すること。 (補正事項3) 補正前の請求項13の「絶縁膜に印加する」を,補正後の請求項13の「絶縁膜の全面に印加する」と補正すること。 (補正事項4) 補正前の請求項14の「絶縁膜を介して裏面電極が形成され」を,補正後の請求項14の「絶縁膜上の全面に裏面電極が形成され」と補正すること。 3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について (1)新規事項の追加の有無について ア 補正事項1?4 補正後の請求項1?3,11,13,14の「電圧印加手段」である「裏面」「電極」が「絶縁膜上の全面に形成され」ることは, 本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0054】,【0084】及び【0085】に記載されているから,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。 イ 明細書の補正 本件補正のうちの発明の詳細な説明についての補正は,特許請求の範囲の補正と整合を取るためのものであるから,特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすことは明らかである。 ウ したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 (2)補正の目的の適否について ア 補正事項1?4 この補正は,補正前の請求項1?3,11,13,14の「電圧印加手段」である「裏面」「電極」に対して,「絶縁膜上の全面に形成され」たものであるという電極の形成箇所に関して技術的限定を加え,また,電圧の印加方法に関して,電圧を絶縁膜全面に印加するという技術的限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)小括 ア 以上検討したとおりであるから,本件補正のうち特許請求の範囲についての補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。 したがって,本件補正は適法になされたものである。 イ そして,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かにつき,以下において更に検討する。 4 独立特許要件について (1)補正発明 本件補正による補正後の請求項1?18に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?18に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定されるものであり,再掲すると以下のとおりのものである。 「光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記絶縁膜上の全面に設けられ,前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記絶縁膜に印加する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。」 (2)引用例に記載された発明 ア 本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2003-338615号公報(以下「引用例」という。)には,「固体撮像装置」に関して,図7,8とともに以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。)。 (ア)「【0034】次に,本発明の第2の実施の形態例について説明する。図7は,本発明の第2の実施の形態例による裏面入射型CMOSイメージセンサにおける素子構造を示す断面図であり,撮像画素部の1つの画素700内のフォトダイオードや転送ゲートの構造を示している。なお,図7では,図中上方が入射面(裏面)側,下方が配線面(表面)側となっている。また,図5と共通の構成要素については,同一符号を付して説明は省略する。本例のCMOSイメージセンサは,図7に示すように,フォトダイオードやP型ウェル領域を作り込んだ基板800の裏面に電極810を設け,この電極810に対する電源820からの通電によって基板800中に電場を発生させるものである。図7に示す例では,ITO(インジウム・スズ酸化物)などの透明電極810とし,これを基板800の受光領域に配置してP型ウェル領域740よりもマイナスの電圧をかけるものである。 【0035】これにより,光電子がフォトダイオード方向にドリフトする方向の電場が発生するので,光電子が隣接画素に入りにくくする効果が得られる。したがって,P型ウェル領域740を浅く作ることができる。なお,光電変換で電子と共に発生した正孔は,透明電極810側にドリフトされ,吸収される。また,本例において,基板800は,真性半導体に近い高抵抗基板を用いることが望ましい。これによって,P型ウェル領域740等から裏面の透明電極810に流れる電流を十分低減することができる。具体的には,ドナー・アクセプタ濃度の差が10^(13)cm^(-3)以下であるものが望ましい(もちろん真性半導体はこれに含まれる)。ただし,これは現在,半導体ICにはほとんど使われていない濃度の基板である。 【0036】また,透明電極810から基板800に電子が注入されることを防ぐために,それらの間に電子注入防止膜821を配することが望ましい。なお,この電子注入防止膜821には,浅いP+層を形成しても良いし,アモルファスシリコンカーバイドなどバンドギャップの大きな半導体層を形成しても良い。電子注入防止膜821がある場合には,高抵抗基板としてn-型のものを用いることが許される。具体的には,ドナー濃度が10^(15)cm^(-3)以下であるものが望ましい。ただし,この濃度も,現在の半導体ICにはほとんど使われていない低レベルである。さらに,このような電子注入防止膜821が無くても,透明電極自体がP側に仕事関数を持っていれば良い。」 (イ)「【0037】次に,本発明の第3の実施の形態例について説明する。図8は,本発明の第3の実施の形態例による裏面入射型CMOSイメージセンサにおける素子構造を示す断面図であり,撮像画素部の1つの画素700内のフォトダイオードや転送ゲートの構造を示している。なお,図8では,図中上方が入射面(裏面)側,下方が配線面(表面)側となっている。また,図5及び図7と共通の構成要素については,同一符号を付して説明は省略する。本例のCMOSイメージセンサは,図8に示すように,フォトダイオードやP型ウェル領域を作り込んだ基板800の裏面に絶縁性保護膜830を介してAl等による金属電極840を設け,この金属電極840に対する電源820からの通電によって基板800中に電場を発生させるものである。なお,金属電極840は,基板800における受光領域を避ける位置に配置されており,絶縁性保護膜830及び上部絶縁膜850によって包囲されている。また,上部絶縁膜850の上にはカラーフィルタ860及びマイクロレンズ870が配置されている。 【0038】これにより,電子がフォトダイオード方向にドリフトする方向の電場が発生するので,光電子が隣接画素に入りにくくする効果が得られる。したがって,P型ウェル領域740を浅く作ることができる。なお,光電変換で電子と共に発生した正孔は,金属電極840側にドリフトされ,吸収される。また,本例において,金属電極840は受光領域を避ける位置に配置されているため,画素毎に形成された色フィルタのエッジ部分を通る光を遮光したり,黒レベルを検出するために受光領域全体を意図的に遮光した画素を配するための遮光膜と兼用することができる。図8は,このような金属電極840の配置を明示するために,カラーフィルタ860やマイクロレンズ870を図示したものであり,このカラーフィルタ860やマイクロレンズ870の構造自体は上述した各例と特に異なるものではないものとする。 【0039】なお,本例においても,上記と同じ理由で,基板には高抵抗基板またはn-基板を用いることが望ましい。また,裏面の電極840と基板800の間に,電子注入防止膜(絶縁性保護膜830)を配することが望ましい。なお,この電子注入防止膜は,裏面の電極をエッチングするときの保え護膜としても機能するため,絶縁性保護膜830として説明している。」 (ウ)図7を参照すると,基板800の下方に配線層720が形成されていることが,また,高抵抗基板の上方には,全面に電子注入防止膜が形成されていることが看取できる。 (エ)また,段落【0036】には,「電子注入膜821」がある場合に,「基板800」として「n-型」のものを用いることが記載されている。 イ 引用発明の認定 以上を総合すると,引用例には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「画素700内のフォトダイオードを作り込んだn-型の基板800の上方が入射面(裏面)側であり,下方の配線面(表面)側に配線層720を形成した固体撮像装置であって, 基板800の裏面に透明電極810を設け, 透明電極810と基板800との間に電子注入防止膜821を配し, 透明電極810に基板800のP型ウェル領域740よりもマイナスの電圧をかける固体撮像装置。」 (3)対比 以下に,補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「画素700」,「フォトダイオード」,「基板800」は,各々補正発明の「画素」,「光電変換素子」,「半導体基板」にそれぞれ相当する。 したがって,引用発明の「画素700内のフォトダイオードを作り込んだ基板800」は,補正発明の「光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板」に相当する。 イ 引用発明の「基板800の」「下方の配線面(表面)側に配線層720を形成した」ことは,補正発明の「半導体基板の第1面側に配線層を有」することに相当し,引用発明の「基板800の」「上方が入射面(裏面)側」であることは,その入射面側から入射光を取り込んでいることは自明あるから,補正発明の「半導体基板の」「前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む」ことにそれぞれ相当する。 したがって,引用発明の「基板800の上方が入射面(裏面)側,下方の配線面(表面)側に配線層720を形成した固体撮像装置」は,補正発明の「半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置」に相当する。 ウ 引用発明の「電子注入防止膜821」は,「透明電極810と基板800との間」に配したものであるから,補正発明の「前記半導体基板の第2面上に形成された」膜に相当する。 エ 引用発明において,「透明電極810に基板800のP型ウェル領域740よりもマイナスの電圧をかけ」ることは,「透明電極810」に「n-型の基板800」よりもマイナスの電圧をかけること,すなわちn-型の基板800に対して逆極性の電圧をかけていることになるから,引用発明の「基板800の裏面に透明電極810を設け,」「透明電極810に基板800のP型ウェル領域740よりもマイナスの電圧をかけ」ることは,補正発明の「電圧印加手段」が「膜上の全面に設けられ,半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記」「膜に印加する」ことに相当する。 (一致点) したがって,補正発明と引用発明とは, 「光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された膜と, 前記膜上の全面に設けられ,前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記膜に印加する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点) 補正発明は,「半導体基板の第2面上に」「絶縁膜」が「形成」されているのに対し,引用発明は,「電子注入防止膜821」である点。 (4)判断 ア 相違点について 「電子注入防止膜」は基板に電子が注入されることを防ぐものであるが,引用発明である引用例の第2の実施の形態例については,引用例の段落【0036】に,「電子注入防止膜821には,浅いP+層を形成しても良いし,アモルファスシリコンカーバイドなどバンドギャップの大きな半導体層を形成しても良い。」とあり,その一方,引用例の第3の実施の形態例については,引用例の段落【0039】に「電子注入防止膜」は,「絶縁性保護膜830」であることが記載されている。 ここで,第2,3の実施の形態例のものどちらも電子注入防止膜を形成しており,絶縁材料もバンドギャップが大きな材料であることを考慮すると,引用発明の電子注入防止膜として引用例の第3の実施の形態例として記載されている絶縁膜を採用し,基板の裏面全面に形成することは,当業者にとって格別困難なことではない。 したがって,引用発明において,電子注入防止膜として,引用例に記載の絶縁膜を用いることは,当業者が容易になし得た範囲に含まれるものである。 イ 判断についてのまとめ 以上検討したとおり,補正発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)独立特許要件についてのまとめ 本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項をいう。以下同じ。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。 5 補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?18に係る発明は,平成24年3月12日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲1?18に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「光電変換素子を含む画素が形成された半導体基板の第1面側に配線層を有し,前記配線層と反対側の第2面側から入射光を取り込む固体撮像装置であって, 前記半導体基板の第2面上に形成された絶縁膜と, 前記半導体基板のポテンシャルに対して逆極性の電圧を前記絶縁膜に印加する電圧印加手段と を備えたことを特徴とする固体撮像装置。」 第4 引用例に記載された発明 引用例には,上記第2 4(2)に記載したとおり,引用発明が記載されている。 第5 判断 本願発明は,補正発明から,第2 2(2)に記載した補正事項1?4についての補正によりなされた技術的限定を省いたものである。 そうすると,第2 4(3)(4)において検討したとおり,補正発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても,当然に,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-07 |
結審通知日 | 2013-05-14 |
審決日 | 2013-05-29 |
出願番号 | 特願2005-366916(P2005-366916) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田代 吉成 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 西脇 博志 |
発明の名称 | 固体撮像装置および固体撮像装置の駆動方法 |
代理人 | 特許業務法人信友国際特許事務所 |