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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1276627 |
審判番号 | 不服2012-11692 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-06-21 |
確定日 | 2013-07-11 |
事件の表示 | 特願2009-295717「医薬品相互作用チェック装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 79930〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年3月28日に出願した特願2000-89076号の一部を平成21年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成23年7月6日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月6日に手続補正がなされたが、平成24年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月6日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 <本願発明> 「一の医薬品と他の一の医薬品の組み合わせのうち、相互作用が発生する医薬品の組み合わせを個別に格納する相互作用マスタと、患者データを含む過去の処方データを蓄積した蓄積処方データとを記憶する記憶手段と、 表示手段と、 新規処方データの各医薬品の間の相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし、前記新規処方データの各医薬品と、該新規処方データに含まれる患者データに基づいて前記記憶手段から呼び出した蓄積処方データの各医薬品との相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし、前記表示手段に、新規処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果と、新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果とを、それぞれマトリックス形式としてタブで切替可能に表示させる制御手段と、 を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置。」 第3 引用文献 (1)特開平3-218741号公報 原査定の拒絶の理由において引用された特開平3-218741号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(なお、丸数字は、[数字]と表記した。)。 ア.「本実施例は、受付け,処方箋の発行,会計,薬剤調合等をオンラインで行う処方オーダリングシステムに適用した例を示す。また併診による薬害監査機能,体質による薬害監査機能および処方箋のイメージ出力機能を合わせ持たせた例を示す。 第3図は、受付端末1,診療科端末2,薬局端末4,会計端末6,自動調剤分包機5等が病院内に配置され中央電算機7に接続されて、オンラインで患者の受付け処理から会計・薬剤引渡しまでを遂行するシステム例を示している。」(第3ページ左上欄第14行?同ページ右上欄第4行) イ.「第3図中央電算機7において、 8は登録部で、診療科端末2より入力された当日分の処方入力データ15および処方箋を読み取った処方イメージデータ22を患者番号をキーとしてトランザクションファイル13に登録するとともに、監査済みの処方入力データ15を処方歴データ20として患者番号対応で編集し処方歴データファイル12に登録する。」(第3ページ右上欄第5行?第12行) ウ.「11は薬品マスタファイル(用法ファイル30に対応する)で、薬剤名をキーとして、薬価等の会計処理に供する薬品情報とともに、用法データ19が登録されている。 12は処方歴データファイルで、過去の監査済み処方入力データ15が患者対応でファイルされる。この処方歴データ20は、年令,性別等の患者データの他、受診診療科別の処方歴データ20、禁忌症・アレルギー情報等で構成される。」(第3ページ右上欄第18行?同ページ左下欄第6行) エ.「なお、図示省略したが、すべての端末には表示部およびプリンタが備えられている。」(第3ページ左下欄第11行?第12行) オ.「以上のシステム構成による業務の流れは次の通りである。第4図参照 ・・・(中略)・・・ (3)診察が行われた後、ドクターによって処方箋が発行される。このとき、前回の処方データの変更部分が消され、新たな処方データのみ追加する方法で処方箋が作成される。 (4)診療科受付けのオペレータは処方入力データ15を診療科端末2に入力し、処方箋のイメージを読取らせる。これにより薬引替番号が発行され、処方入力データ15、処方イメージデータ22が薬引替番号とともに中央電算機7に送信され、また薬引替券が発行されて患者に渡される。」(第3ページ左下欄第13行?同ページ右下欄第13行) カ.「(イ)処方監査帳票の出力 出力処理部9は、患者番号をキーとして、トランザクションファイル13より処方入力データ15および処方イメージデータ22を抽出する。そして、その処方入力データ15の各項目(薬剤)に関する用法データ19を薬品マスクファイル11より抽出し、患者の処方歴データ20を処方歴データファイル12より抽出する。」(第4ページ左上欄第14行?同ページ右上欄第1行) キ.「(ロ)薬害チェック 一方,監視部10は出力処理部9より処方入力データ15,対応する用法データ19および処方歴データ20を受取り、例えば次のような方法で薬害をチェックする。 [1] 用法データ19で所定期間における極量(年令.性別等)が規定されている薬剤があれば、その所定期間内に処方された薬剤の有無を他科の処方歴データ20bより検索し、今回との合計処方量が極量以内か否かをチェックする。 [2] 用法データ19で相互作用が規定されている薬剤があれば、所定期間内に該当薬剤が処方されているか否かをチェックする。 [3] 禁忌症・アレルギー情報20cがあれば該当薬剤の有無をチェックする. その他、今回処方された処方入力データ15それ自身の極量,相互作用,禁忌症等もチェックする。 (ハ)エラーメッセージ 以上のチェックにより、処方入力データ15が有害と判定した場合は、その項目および内容をエラーメッセージ17として表示する。」(第4ページ右上欄第19行?同ページ左下欄第19行) 前記ア.?キ.、及び、関連する図の記載によれば、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。 ・前記ア.の「本実施例は、受付け,処方箋の発行,会計,薬剤調合等をオンラインで行う処方オーダリングシステムに適用した例を示す。また併診による薬害監査機能,体質による薬害監査機能および処方箋のイメージ出力機能を合わせ持たせた例を示す。」の記載によれば、引用文献1には「薬害監査機能を有する処方オーダリングシステム」が記載されているといえる。 ・前記ア.の「第3図は、受付端末1,診療科端末2,薬局端末4,会計端末6,自動調剤分包機5等が病院内に配置され中央電算機7に接続されて、オンラインで患者の受付け処理から会計・薬剤引渡しまでを遂行するシステム例を示している。」の記載、 第3図における、診療科端末2、薬局端末4、中央電算機7、薬品マスタファイル11、処方箋データファイル12、トランザクションファイル13の記載、 第3図における、中央電算機7内の登録部8、出力処理部9、監査部10の記載によれば、引用文献1には、「登録部と出力処理部と監査部とからなる中央電算機と、薬品マスタファイルと、処方歴データファイルと、トランザクションファイルと、診療科端末と、薬局端末」とを備えた処方オーダリングシステムが、記載されているといえる。 ・前記ウ.の「11は薬品マスタファイル(用法ファイル30に対応する)で、薬剤名をキーとして、薬価等の会計処理に供する薬品情報とともに、用法データ19が登録されている。」の記載、 前記キ.の「用法データ19で相互作用が規定されている薬剤があれば、」の記載によれば、引用文献1には、「薬品マスタファイルには、薬剤名をキーとして、相互作用を規定する用法データが登録され」が記載されているといえる。 ・前記ウ.の「12は処方歴データファイルで、過去の監査済み処方入力データ15が患者対応でファイルされる。この処方歴データ20は、年令,性別等の患者データの他、受診診療科別の処方歴データ20、禁忌症・アレルギー情報等で構成される。」の記載によれば、引用文献1には、「処方歴データファイルには、患者番号に対応して患者データと過去の処方歴データが登録され」が記載されているといえる。 ・前記オ.の「(3)診察が行われた後、ドクターによって処方箋が発行される。このとき、前回の処方データの変更部分が消され、新たな処方データのみ追加する方法で処方箋が作成される。 (4)診療科受付けのオペレータは処方入力データ15を診療科端末2に入力し、処方箋のイメージを読取らせる。これにより薬引替番号が発行され、処方入力データ15、処方イメージデータ22が薬引替番号とともに中央電算機7に送信され、また薬引替券が発行されて患者に渡される。」の記載によれば、引用文献1には、「診療科端末は、ドクターによって発行された処方箋の処方入力データが入力され、当該処方入力データを中央電算機に送信し」が記載されているといえる。 ・前記イ.の「8は登録部で、診療科端末2より入力された当日分の処方入力データ15および処方箋を読み取った処方イメージデータ22を患者番号をキーとしてトランザクションファイル13に登録するとともに、監査済みの処方入力データ15を処方歴データ20として患者番号対応で編集し処方歴データファイル12に登録する。」の記載によれば、引用文献1には、「中央電算機の登録部は、診療科端末より入力された処方入力データを、患者番号をキーとしてトランザクションファイルに登録し」が記載されているといえる。 ・前記カ.の「出力処理部9は、患者番号をキーとして、トランザクションファイル13より処方入力データ15および処方イメージデータ22を抽出する。そして、その処方入力データ15の各項目(薬剤)に関する用法データ19を薬品マスクファイル11より抽出し、患者の処方歴データ20を処方歴データファイル12より抽出する。」の記載によれば、引用文献1には、「中央電算機の出力処理部は、患者番号をキーとしてトランザクションファイルより処方入力データを抽出し、当該処方入力データの各薬剤に関する用法データを薬品マスタファイルより抽出し、当該処方入力データの患者に関する処方歴データを処方歴データファイルより抽出し」が記載されているといえる。 ・前記カ.の「出力処理部9は、患者番号をキーとして、トランザクションファイル13より処方入力データ15および処方イメージデータ22を抽出する。そして、その処方入力データ15の各項目(薬剤)に関する用法データ19を薬品マスクファイル11より抽出し、患者の処方歴データ20を処方歴データファイル12より抽出する。」の記載、 前記キ.の「一方,監視部10は出力処理部9より処方入力デ一夕15,対応する用法データ19および処方歴データ20を受取り」の記載によれば、引用文献1には、「中央電算機の監視部は、出力処理部により抽出された、処方入力データ、用法データ及び処方歴データを受取り」が記載されているといえる。 ・前記キ.の「(ロ)薬害チェック 一方,監視部10は出力処理部9より処方入力データ15,対応する用法データ19および処方歴データ20を受取り、例えば次のような方法で薬害をチェックする。 [1] 用法データ19で所定期間における極量(年令.性別等)が規定されている薬剤があれば、その所定期間内に処方された薬剤の有無を他科の処方歴データ20bより検索し、今回との合計処方量が極量以内か否かをチェックする。 [2] 用法データ19で相互作用が規定されている薬剤があれば、所定期間内に該当薬剤が処方されているか否かをチェックする。」の記載によれば、 引用文献1には、「用法データに相互作用が規定されている薬剤があれば、所定期間内に該当薬剤が処方されているか否かを、処方歴データに基づいてチェックする」監視部が、記載されているといえる。 ・前記キ.の「(ロ)薬害チェック 一方,監視部10は出力処理部9より処方入力データ15,対応する用法データ19および処方歴データ20を受取り、例えば次のような方法で薬害をチェックする。 ・・・(中略)・・・ その他、今回処方された処方入力データ15それ自身の極量,相互作用,禁忌症等もチェックする。」の記載によれば、引用文献1には、「処方入力データそれ自身の相互作用もチェックする」監視部が、記載されているといえる。 ・前記キ.の「(ハ)エラーメッセージ 以上のチェックにより、処方入力データ15が有害と判定した場合は、その項目および内容をエラーメッセージ17として表示する。」の記載、 第3図における、「薬局端末4」から「エラーメッセージ7」に向かう矢印「←」の記載、 前記エ.の「なお、図示省略したが、すべての端末には表示部およびプリンタが備えられている。」の記載によれば、引用文献1には、「中央電算機は、前記チェックにより、処方入力データが有害と判定した場合に、その薬剤および内容をエラーメッセージとして薬局端末に表示させる」ことが記載されているといえる。 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 <引用発明> 「薬害監査機能を有する処方オーダリングシステムにおいて、 登録部と出力処理部と監査部とからなる中央電算機と、薬品マスタファイルと、処方歴データファイルと、トランザクションファイルと、診療科端末と、薬局端末とを備え、 薬品マスタファイルには、薬剤名をキーとして、相互作用を規定する用法データが登録され、 処方歴データファイルには、患者番号に対応して患者データと過去の処方歴データが登録され、 診療科端末は、ドクターによって発行された処方箋の処方入力データが入力され、当該処方入力データを中央電算機に送信し、 中央電算機の登録部は、診療科端末より入力された処方入力データを、患者番号をキーとしてトランザクションファイルに登録し、 中央電算機の出力処理部は、患者番号をキーとしてトランザクションファイルより処方入力データを抽出し、当該処方入力データの各薬剤に関する用法データを薬品マスタファイルより抽出し、当該処方入力データの患者に関する処方歴データを処方歴データファイルより抽出し、 中央電算機の監視部は、出力処理部により抽出された、処方入力データ、用法データ及び処方歴データを受け取り、用法データに相互作用が規定されている薬剤があれば、所定期間内に該当薬剤が処方されているか否かを、処方歴データに基づいてチェックし、処方入力データそれ自身の相互作用もチェックし、 中央電算機は、前記チェックにより、処方入力データが有害と判定した場合に、その薬剤および内容をエラーメッセージとして薬局端末に表示させる、処方オーダリングシステム。」 (2)「福神 ネット情報の機能強化」、日刊薬業、薬業時報社、1999年5月11日発行、p.8 原査定の拒絶の理由において引用された「福神 ネット情報の機能強化」、日刊薬業、薬業時報社、1999年5月11日発行、p.8(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。 「新機能として追加される「相互作用マトリックス」は、薬剤の相互作用の併用禁忌・併用注意をマトリックスの表形式で表示するもの。」 第4 対比 次に、本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明における、「薬剤名をキーとして、相互作用を規定する用法データが登録され」た「薬品マスタファイル」は、本願発明の「一の医薬品と他の一の医薬品の組み合わせのうち、相互作用が発生する医薬品の組み合わせを個別に格納する相互作用マスタ」に相当する。 ・引用発明における、「患者番号に対応して患者データと過去の処方歴データが登録され」た「処方歴データファイル」は、本願発明の「患者データを含む過去の処方データを蓄積した蓄積処方データ」に相当する。 ・引用発明の「薬品マスタファイル」と「処方歴データファイル」とが、記憶手段に記憶されていることは自明であり、この記憶手段が本願発明の「記憶手段」に相当する。 ・引用発明の「薬局端末」はエラーメッセージを表示するから、本願発明の「表示手段」に相当する。 ・引用発明の「中央電算機」は、「処方入力データそれ自身の相互作用もチェック」する。すなわち、処方入力データの各薬剤間の相互作用がチェックされる。また、このチェックの際に、薬剤の相互作用を規定する「薬品マスタファイル」が用いられることは自明である。 したがって、引用発明の「処方入力データそれ自身の相互作用もチェックし」は、本願発明の「新規処方データの各医薬品の間の相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし」に相当する。 ・引用発明の「中央電算機の出力処理部は、患者番号をキーとしてトランザクションファイルより処方入力データを抽出し、当該処方入力データの各薬剤に関する用法データを薬品マスタファイルより抽出し、当該処方入力データの患者に関する処方歴データを処方歴データファイルより抽出し、 中央電算機の監視部は、出力処理部により抽出された、処方入力データ、用法データ及び処方歴データを受取り、 用法データに相互作用が規定されている薬剤があれば、所定期間内に該当薬剤が処方されているか否かを、処方歴データに基づいてチェックし」は、本願発明の「前記新規処方データの各医薬品と、該新規処方データに含まれる患者データに基づいて前記記憶手段から呼び出した蓄積処方データの各医薬品との相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし」に相当する。 ・引用発明の「中央電算機は、前記チェックにより、処方入力データが有害と判定した場合に、その薬剤および内容をエラーメッセージとして薬局端末に表示させる」と、本願発明の「前記表示手段に、新規処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果と、新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果とを、それぞれマトリックス形式としてタブで切替可能に表示させる」は、「前記表示手段に、新規処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果と、新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果とを、表示させる」点で共通する。 ・引用発明の「中央電算機」は、相互作用のチェックとチェック結果の表示に関する制御を行うといえるから、本願発明の「制御手段」に対応する。 ・引用発明の「薬害監査機能を有する処方オーダリングシステム」は、薬剤の相互作用をチェックするから、本願発明の「医薬品相互作用チェック装置」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 <一致点> 「一の医薬品と他の一の医薬品の組み合わせのうち、相互作用が発生する医薬品の組み合わせを個別に格納する相互作用マスタと、患者データを含む過去の処方データを蓄積した蓄積処方データとを記憶する記憶手段と、 表示手段と、 新規処方データの各医薬品の間の相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし、前記新規処方データの各医薬品と、該新規処方データに含まれる患者データに基づいて前記記憶手段から呼び出した蓄積処方データの各医薬品との相互作用を、前記記憶手段に記憶させた相互作用マスタに基づいてチェックし、前記表示手段に、新規処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果と、新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果とを、表示させる制御手段と、 を備えた医薬品相互作用チェック装置。」 そして、本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 <相違点> 新規処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果と、新規処方データの各医薬品と蓄積処方データの各医薬品の間の相互作用のチェック結果の表示が、本願発明では、「それぞれマトリックス形式としてタブで切替可能」であるのに対し、引用発明では、「それぞれマトリックス形式としてタブで切替可能」ではない点。 第5 判断 引用文献2には、薬剤の相互作用をマトリックスの表形式で表示することが記載されている。 また、安部好弘、「開局薬局での薬物間相互作用に関する服薬指導の問題点と解決策」、月刊薬事2月臨時増刊号「薬物間相互作用と医薬品の適正使用」、薬事時報社、1996年2月20日発行、第38巻、第3号、p.451?463(以下、「周知例」という。)には、次の事項が記載されている。 「2)コンピュータシステムによる抽出 自社開発のコンピュータシステム(Liberty System)に『医薬品相互作用ハンドブック』(薬業時報社)のデータの一部を取り入れ,入力した処方せんのデータおよび投薬歴中の薬品(投与日数から,理論的に服用期間が重複する範囲)すべての組み合わせに対して相互作用を検索している。相互作用が存在する場合,入力後ただちにその内容が画面(図3)に表示され,入力者が必要と判断すればその詳細(図4)も表示される。」(第458ページ左欄第4行?第13行) そして、図3には、次のような、マトリックス形式による薬物相互作用の画面表示が記載されている。 したがって、医薬品の相互作用に関する情報をマトリックス形式で表示することは、周知であったといえる。引用発明のエラーメッセージは、薬剤の相互作用に関する情報であるから、このエラーメッセージを周知のマトリックス形式で表示することは何ら困難性がない。 また、タブによる切替表示も、コンピュータのオペレーティングシステムや、各種ソフトウエアが普通に採用しているユーザインタフェースにすぎない。引用発明では、処方入力データと処方歴データとの間の相互作用チェックと、処方入力データそれ自身の相互作用チェックとを行っているが、それぞれのチェック結果の表示に、このような周知のユーザインタフェースを採用して切替可能に表示することも格別困難性はない。 してみると、引用発明において、処方入力データと処方歴データとの間の相互作用のチェックと、処方入力データそれ自身の相互作用のチェックのそれぞれについて、チェック結果をマトリックス形式で表示し、タブのユーザインタフェースを用いて切替可能に表示して、上記相違点に係る構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-13 |
結審通知日 | 2013-05-14 |
審決日 | 2013-05-29 |
出願番号 | 特願2009-295717(P2009-295717) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 美樹 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
石川 正二 西山 昇 |
発明の名称 | 医薬品相互作用チェック装置 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 前田 厚司 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 前田 厚司 |
代理人 | 前堀 義之 |
代理人 | 前堀 義之 |