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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1276641
審判番号 不服2012-22027  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-07 
確定日 2013-07-11 
事件の表示 特願2005- 4851「リチウム二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-196250〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年1月12日の出願であって、平成24年8月13日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年11月7日に審判請求がされるとともに、特許請求の範囲についての手続補正がされ、平成25年2月7日付けで前置報告書に基づく審尋がされ、これに対して、同年4月5日付けで回答書が提出されている。
そして、この出願の発明は、平成24年11月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。

「層状構造を有するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物を含む正極と、負極と、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上記の非水電解液に、リチウム塩と、被膜形成剤とを添加させ、
前記リチウム塩がリチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]であり、前記被膜形成剤がビニレンカーボネートであり、
前記リチウム塩が、前記非水電解液における非水系溶媒に対して0.001?0.5mol/lの範囲で添加されるとともに、前記被膜形成剤が、前記リチウム塩を添加させる前の非水電解液に対して0.1?5.0質量%の範囲で添加させたことを特徴とするリチウム二次電池。」
(以下、「本願発明」という。)

第2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用刊行物>
刊行物1:特開2005-5115号公報
刊行物2:特開2004-152753号公報
刊行物3:特表2004-523073号公報
刊行物4:特表2005-500432号公報

第3 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
[1a]「【請求項15】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記電解質は、M-X結合(但し、Mは遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)を有する軽金属塩と、不飽和化合物の炭酸エステルとを含むことを特徴とする電池。

【請求項19】
前記電解質は、前記軽金属塩として、化8で表される化合物を含むことを特徴とする請求項15記載の電池。
【化8】

(式中、R11は-C(=O)-R21-C(=O)-基(R21はアルキレン基,ハロゲン化アルキレン基,アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を表す。)または-C(=O)-C(=O)-基を表し、R12はハロゲン,アルキル基,ハロゲン化アルキル基,アリール基またはハロゲン化アリール基を表し、X11およびX12は酸素または硫黄をそれぞれ表し、M11は遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、M21は短周期型周期表における1A族元素あるいは2A族元素またはアルミニウム(Al)を表し、aは1?4の整数であり、bは0?8の整数であり、c,d,eおよびfはそれぞれ1?3の整数である。)

【請求項25】
前記電解質は更に溶媒を含み、前記軽金属塩の含有量は、前記溶媒に対して0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下であることを特徴とする請求項15記載の電池。
【請求項26】
前記電解質は、前記炭酸エステルを0.01質量%以上10質量%以下の含有量で含むことを特徴とする請求項15記載の電池。
【請求項27】
前記電解質は、前記炭酸エステルとして、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートを含むことを特徴とする請求項15記載の電池。

【請求項29】
前記正極は、リチウム(Li)と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種と、酸素(O)とを含むリチウム含有化合物を含むことを特徴とする請求項15記載の電池。」

[1b]「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリチウムイオン二次電池では、近年切望されているような容量特性やサイクル特性あるいは保存特性などは確保できていない。すなわち、リチウムイオン二次電池は、未だ発展途上の電池であり、より性能の向上が求められている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電池容量、サイクル特性および保存特性などの電池特性を向上させることができる電解質および、それを用いた電池を提供することにある。」

[1c]「【0014】
電解質塩としては、M-X結合(但し、Mは遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、Xは酸素または硫黄を表す。)を有する軽金属塩のいずれか1種または2種以上を混合して用いることが好ましい。このような軽金属塩は、電極の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制することができ、電解質の安定性を高めることができるからである。中でも環式化合物が好ましい。環式の部分も被膜の形成に関与すると考えられ、安定した被膜を得ることができるからである。」

[1d]「【0038】
この電解質は、また、添加剤として、不飽和化合物の炭酸エステルのいずれか1種または2種以上を含んでいる。M-X結合を有する軽金属塩は、分解反応しやすいが、不飽和化合物の炭酸エステルの作用により、M-X結合を有する軽金属塩の分解反応を必要最小限に抑制することができると考えられるからである。なお、不飽和化合物の炭酸エステルは溶媒として機能することもあるが、本明細書では、上述した機能に着目し添加剤として説明している。もちろん、添加されたものの少なくとも一部が上述したような反応に寄与すればよく、反応に寄与しないものは溶媒として機能してもよい。不飽和化合物の炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートが好ましい。
【0039】
この電解質における不飽和化合物の炭酸エステルの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。少なすぎると、上述の機能を十分に発揮することができず、多すぎると、例えば電池において、内部抵抗を高くする虞があるからである。」

[1e]「【0050】
リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、エネルギー密度を高くするために、リチウムと遷移金属元素と酸素とを含むリチウム含有化合物を含有することが好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものを含有すればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、LiCoO_(2) ,LiNiCoO_(2) ,LiMn_(2)O_(4) あるいはLiFePO_(4) が挙げられる。」

[1f]「【0074】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが離脱し、電解質を介して正極21に吸蔵される。その際、M-X結合を有する軽金属塩により、負極22の表面に安定した被膜が形成され、負極22における溶媒の分解反応が抑制される。また、不飽和化合物の炭酸エステルによりM-X結合を有する軽金属塩の分解反応が抑制される。
【0075】
このように本実施の形態では、M-X結合を有する軽金属塩と、不飽和化合物の炭酸エステルとを含むようにしたので、M-X結合を有する軽金属塩の分解反応を必要最小限に抑制しつつ、負極22の表面に安定な被膜を形成することができる。よって、溶媒の分解反応を効率的に抑制することできる。従って、負極22における効率を向上させることができ、内部抵抗の増加を抑制することができる。その結果、電池容量,サイクル特性および保存特性などの諸特性を向上させることができる。」

[1g]「【0079】
(実施例1-1?1-11)
まず、…正極材料としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を…正極合剤スラリーとし、…正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、…正極合剤層21Bを形成し正極21を作製した。…
【0080】
また、炭素材料として人造黒鉛粉末を用意し、…負極合剤を調製した。次いで、この負極合剤を…負極合剤スラリーとしたのち、…負極集電体22Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極合剤層22Bを形成し負極22を作製した。…

【0082】
…電解液には、エチレンカーボネート50体積%とジエチルカーボネート50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩として化24で表されるジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムまたは化25で表されるテトラフルオロ[オキソラト-O,O’]リン酸リチウムを溶媒に対して1.0mol/kgの含有量で溶解させたものに、不飽和化合物の炭酸エステルとしてビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)を添加したものを用いた。その際、電解液におけるビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートの含有量は、実施例1-1?1-11で表1に示したように変化させた。
【0083】
【表1】

【0090】
(実施例2-1?2-14)
ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムまたはテトラフルオロ[ オキソラト-O,O’]リン酸リチウムに加えて、他の軽金属塩を混合して用いると共に、これらの軽金属塩の含有量を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例1-5,1-9?1-11と同様にして二次電池を作製した。実施例2-1?2-14についても、実施例1-1?1-11と同様にして充放電試験を行い、初回容量,内部抵抗およびサイクル特性をそれぞれ調べた。その結果を表2に示す。
【0091】
【表2】



(2)刊行物2の記載事項
[2a]「【0003】
非水二次電池用正極活物質としては、従来から例えばスピネル型リチウムマンガン酸化物が用いられているが、より大容量の非水二次電池を製造することができる正極活物質が求められていた。
【0004】
このような状況の中で、リチウムとニッケルとマンガンとを含有し、層状構造を有する化合物である組成式LiCo_(1/3)Ni_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)やLiNi_(1/2)Mn_(1/2)O_(2)(例えば、非特許文献1参照。)、また、Li[Ni_(x)Li_((1/3-2x/3))Mn_((2/3-x/3))]O_(2)(0≦x≦1/2)、Li[Ni_(x)Co_(1-2x)Mn_(x)]O_(2)(0<x≦1/2)で表される新しい化合物(例えば、非特許文献2参照。)等が上述のような問題点を解決し得る非水二次電池用正極活物質として提案され、注目されている。ここで、層状構造とは、X線回折により結晶構造がα-NaFeO_(2)型であると同定される構造をいう(例えば、非特許文献3参照。)。」

(3)刊行物3の記載事項
[3a]「【0001】
本発明は、リチウムイオン蓄電池のための電解質に関する。」

[3b]「【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19633027号明細書Aに記載の一般式
Li[B(ORR_(1))_(2)(OR_(2))_(2)] (1)
で示されるリチウム塩は、使用される有機基R_(1)およびR_(2)が部分的に弗素化されているかまたは過弗素化されている場合にのみリチウムイオン蓄電池中への使用のために導電性塩として適しており、一方で、ドイツ連邦共和国特許第19829030号明細書C1には、卓越した電気化学的安定性を有する導電性塩、即ちリチウムビス(オキサラト)ボレートが開示されている。この塩の固有の利点は、ハロゲンおよびハロゲン化化合物、殊に弗素およびその化合物のそれぞれの使用なしに製造することができかつ使用することができることである。」

(4)刊行物4の記載事項
[4a]「【0011】
従って本発明の目的は、従来技術の欠点のない電解質を提供することである。また、本発明の目的は良好なイオン伝導性及び高い熱安定性を有する電解質を提供することである。さらに、本発明の目的は、電池、キャパシタ、スーパーキャパシタ及びガルヴァーニ電池の耐久性及び性能を改善することである。
【0012】
驚くべきことに、上記目的は請求項1に規定する混合物により達成される。本発明は、a) 一般式(I):
M^(x+) [B(OR^(1))_(n)(OR^(2))_(m)(OR^(3))_(o)(OR^(4))_(p)]_(x)^(-) (I)
で表される少なくとも一つのホウ酸塩…
M^(x+)は1価、2価又は3価のカチオンを表し、好ましくはLi^(+)…」

[4b]「【0020】
混合物は、特に好ましくは以下の群から選ばれたアニオンを有する一般式(I)又は(II)からなる塩を含有する。


第4 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
ア 刊行物の[1a]には、「正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、前記電解質は、M-X結合(但し、Mは遷移金属元素または短周期型周期表における3B族元素,4B族元素あるいは5B族元素を表し、Xは酸素(O)または硫黄(S)を表す。)を有する軽金属塩と、不飽和化合物の炭酸エステルとを含むことを特徴とする電池」(請求項15)について、前記軽金属塩が、「化8で表される化合物」を含み(請求項19)、その含有量が前記電解質の溶媒に対して「0.01mol/kg以上2.0mol/kg以下」であり(請求項25)、前記炭酸エステルの含有量が電解質の「0.01質量%以上10質量%以下」であり(請求項26)、前記炭酸エステルが「ビニレンカーボネート」を含み(請求項27)、前記正極が「リチウム(Li)と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種と、酸素(O)とを含むリチウム含有化合物」を含むことが記載されている。

イ [1g]には、上記の電池の実施例について、例えば、実施例2-2として、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を含む正極と、黒鉛を含む負極と、エチレンカーボネート50体積%とジエチルカーボネート50体積%とを混合した溶媒に電解質塩としてLiPF_(6)を加えた電解液とを備えた二次電池であって、前記電解液には、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムが前記溶媒に対して0.05mol/kg添加されており、ビニレンカーボネートが電解液において2.0質量%添加されている二次電池が記載されている。

ウ そして、この実施例の電池が、[1b]に記載の課題の前提となるリチウムイオン二次電池であることが明らかであるから、以上によると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を含む正極と、負極と、溶媒に電解質を溶解させた電解液とを備えたリチウムイオン二次電池において、上記の非水電解液に、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムと、ビニレンカーボネートとを添加させ、
前記ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムが、前記電解液における溶媒に対して0.05mol/l添加されるとともに、前記ビニレンカーボネートが、電解液に対して2.0質量%添加させたリチウム二次電池。」(以下、「引用発明」という。)

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明(前者)と、引用発明(後者)とを対比すると、後者の「溶媒に電解質を溶解させた電解液」、「ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウム」は、それぞれ前者の「非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液」、「リチウム塩」に相当し、後者のビニレンカーボネートの添加量は、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムを添加する前の電解液に対して0.1?5.0質量%の範囲内になることが明らかであるから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
正極と、負極と、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上記の非水電解液に、リチウム塩と、ビニレンカーボネートとを添加させ、
前記リチウム塩が、前記非水電解液における非水系溶媒に対して0.001?0.5mol/lの範囲で添加されるとともに、前記ビニレンカーボネートが、前記リチウム塩を添加させる前の非水電解液に対して0.1?5.0質量%の範囲で添加させたことを特徴とするリチウム二次電池。

<相違点>
相違点1:本願発明は、正極が、「層状構造を有するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物」を含むのに対して、引用発明は、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を含む点
相違点2:本願発明は、リチウム塩が「リチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]」であるのに対して、引用発明は、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムである点
相違点3:本願発明は、非水電解液に添加させるビニレンカーボネートが、「被膜形成剤」であるのに対して、引用発明は、被膜形成剤であるか不明である点

3 相違点についての判断
(1)相違点1について
刊行物2の記載によると、大容量化に好適な非水二次電池用正極活物質として、リチウムとニッケルとマンガンとを含有し、層状構造を有する化合物である、組成式LiCo_(1/3)Ni_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)やLi[Ni_(x)Co_(1-2x)Mn_(x)]O_(2)(0<x≦1/2)で表される化合物は、本願出願前、公知の事項であったと認められる。
これに対して、引用発明は、正極がリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO_(2) )を含むものであるが、刊行物1の[1e]の記載によると、正極は、リチウムと遷移金属元素と酸素とを含むリチウム含有化合物を含有すればよいのであって、遷移金属として、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものを含有すればより好ましいのである。
そして、二次電池における大容量化はありふれた課題であるから、上記の公知の事項に基づいて、引用発明の正極を、層状構造を有するリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物を含むものに置き換えることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
刊行物1には、電解液に添加するリチウム塩であるジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムの作用機序として、[1c]、[1f]に、「M-X結合を有する軽金属塩」が、電極の表面に安定な被膜を形成し、溶媒の分解反応を抑制し、電解質の安定性を高めること、特に環式化合物が「環式」の部分で被膜形成に関与し、安定した被膜を得ることができる旨が記載されている。
また、[1a]の請求項19には、本願発明の「リチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]」を含む上位概念である「M-X結合」を有する「環状」のリチウム塩について記載されており、「リチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]」がリチウムイオン二次電池の電解質塩として使用されることも、刊行物3、刊行物4に記載されるように公知の事項である。
そうすると、引用発明において、電解液に添加するリチウム塩として、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムに代えて、公知のリチウム塩であって、同様の作用機序が予想される「リチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]」を用いてみることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
電解液に添加されたビニレンカーボネートが、リチウムイオン二次電池の初充電時に、炭素負極に被膜を形成する作用機序を有することは、周知の事項であるから(要すれば特開平8-45545号公報 【0009】?【0012】、特開2000-123869号公報 【0013】?【0017】参照)、引用発明におけるビニレンカーボネートも、被膜形成剤であると認められる。
なお、刊行物1には、ビニレンカーボネートの作用機序として、[1d]、[1f]には、M-X結合を有する軽金属塩の分解反応を抑制すると考えられる旨が記載されているが、この作用機序と、炭素負極に被膜を形成する作用機序とは、何ら矛盾するものでないから、引用発明におけるビニレンカーボネートを被膜形成剤と認定することに阻害要因はない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び刊行物2?4に記載の公知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 補足 - 回答書の主張に対して
請求人は、回答書において、本願発明は、リチウム塩として、リチウム?ビス(オキサラト)ボレートLi[B(C_(2)O_(4))_(2)]を選択したことにより、ジフルオロ[オキソラト-O,O’]ホウ酸リチウムを用いる引用発明と比べて、負極の表面に高温環境下において、より安定な被膜を形成する効果を奏する旨を主張しているが、当該主張を裏付ける科学的な説明又は具体的なデータは示していない。
そして、上記「3 (2)」に示すとおり、刊行物1に記載された、これらのリチウム塩が共通して有する「M-X結合」と「環状」部分との作用機序からすると、本願発明が引用発明と比べて、当業者が予測することのできない顕著な効果を奏するとも認められない。
したがって、上記の主張は受け入れられない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-08 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2005-4851(P2005-4851)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小森 利永子青木 千歌子  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 山田 靖
小川 進
発明の名称 リチウム二次電池  
代理人 大橋 雅昭  

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