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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1276675
審判番号 不服2010-4548  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-02 
確定日 2013-07-10 
事件の表示 特願2003-557500「毛細血管拡張用治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月17日国際公開、WO03/57141、平成17年6月23日国内公表、特表2005-518399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年12月12日(パリ条約による優先権主張、2001年12月27日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年10月30日付けで拒絶査定されたところ、平成22年3月2日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに手続補正書が提出され、平成24年6月14日付けで拒絶理由が通知され、同年12月19日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

そして、本願の請求項1?4に係る発明は、平成24年12月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
1,3,6-トリヒドロキシ-7-メトキシ-2,8-ジ(3-メチル-2-ブテニル)キサントンの化学構造を有するマンゴスチン又はマンゴスチントリアセテートを有効成分として含有するクモ静脈又は破壊された毛細血管と称される毛細血管拡張症を治療するための組成物。」

2.当審の拒絶理由
平成24年6月14日付けで通知された拒絶理由の理由1及び2は、本願は、特許法第36条第4項(正しくは第4項第1号である。)及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、以下の点を指摘している。

マンゴスチンのクモ静脈又は破壊された毛細血管と称される毛細血管拡張症の治療効果は、本願の発明の詳細な説明に客観的な証拠等によって当業者に認識できるように裏付けられていないし、且つ、当該治療効果は、発明の詳細な説明に裏付けがなくとも出願時の技術常識から当業者に認識できる事項であるとも言えないから、本願の発明の詳細な説明は、請求項1-4に係る組成物が前記毛細血管拡張症の治療に有効であることを当業者が認識できるように記載されていない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-4に係る組成物を前記毛細血管拡張症の治療の用途に使用できるように記載されていないし、且つ、本願の請求項1-4に係る発明は、発明の詳細な説明においてその課題(前記毛細血管拡張症の治療)が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

3.当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
本願発明は、上述のとおり組成物の発明であるから、特許法第2条第3項第1号にいう物の発明である。また、物の発明における実施には、その物の使用をする行為が含まれる。そして、本願発明におけるその物の使用とは、1,3,6-トリヒドロキシ-7-メトキシ-2,8-ジ(3-メチル-2-ブテニル)キサントンの化学構造を有するマンゴスチン又はマンゴスチントリアセテートを有効成分として含有する組成物を、クモ静脈又は破壊された毛細血管と称される毛細血管拡張症を治療するという用途に使用することにほかならない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるためには、本願の出願時の技術常識から上記組成物が上記用途に使用可能な薬理作用を有することを当業者が認識できる場合を除き、発明の詳細な説明に上記組成物が上記用途に使用可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるに足る記載がなされている必要がある。

そこで、まず、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、該発明の詳細な説明には、上記組成物の上記用途に関して、以下(ア)?(エ)の記載がある。

(ア)「【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚の審美的外観を改善するための方法に関する。本発明はさらに、感受性の高い皮膚を治療する方法、酒さおよび/または毛細血管拡張症を治療する方法、および老化の皮膚科学的徴候を治療する方法にも関する。本発明はさらに、有効量のマンゴスチンまたはその類似体の局所的適用に関する。」(明細書段落【0001】)

(イ)「【0004】
毛細血管拡張症は、典型的には、明るい赤の中心部分および分枝している発散状態を有する皮膚の表面近くの皮膚の表面の毛管として現れる。そのような皮膚の状態は、しばしば、「クモ静脈」と呼ばれる。毛細血管拡張症が、破裂し、血液または他の流体が漏れ、および/またはきわめて分枝するようになる毛管を含むとき、皮膚の状態は、一般的に「破壊された毛管」と称される。毛細血管拡張症は、UV暴露、ストレス、環境条件、傷害および/または一般的な皮膚の老化により刺激され得る。」(明細書段落【0004】)

(ウ)「【0011】
本発明の目的はまた、毛細血管拡張症を治療するための方法を提供することでもある。」(明細書段落【0011】)

(エ)「【0015】
発明の詳細な記載
驚くべきことに、特に顔面、脚部および/または胴体について皮膚の外観を改善し、感受性の高い皮膚を治療し、酒さおよび/または毛細血管拡張症を治療し、皮膚科学的老化の徴候を治療するための方法が存在することが見出された。驚くべきことに、そのような方法は、患部に有効量のマンゴスチンまたはその類似体を局所的に適用することによりもたらされることもまた見出された。」(明細書段落【0015】)

上記(ア)?(エ)の記載は、毛細血管拡張症にはクモ静脈又は破壊された毛細血管と称される皮膚の状態が含まれ、本願発明の目的はそのような毛細血管拡張症を治療するための方法を提供することであり、毛細血管拡張症等の治療がマンゴスチンまたはその類似体の局所的適用によりもたらされることが見いだされたとするのみで、発明の詳細な説明には、上記組成物が上記用途に使用可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるに足る薬理試験結果等の記載は見いだせない。

そこで、続いて、本願発明が、本願の出願時の技術常識から上記組成物が上記薬理作用を有することを当業者が認識できる場合に該当するか否かを検討すると、マンゴスチン又はマンゴスチントリアセテートを有効成分として含有する組成物がクモ静脈又は破壊された毛細血管と称される毛細血管拡張症を治療可能な薬理作用を有することが、本願の出願時の技術常識であることを示す文献等は見あたらないから、本願発明は、本願の出願時の技術常識から上記組成物が上記薬理作用を有することを当業者が認識できる場合に該当するとは認められない。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するものとはいえない。

(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

ここで、本願発明の課題は、上記(ア)?(エ)等の記載からみて、1,3,6-トリヒドロキシ-7-メトキシ-2,8-ジ(3-メチル-2-ブテニル)キサントンの化学構造を有するマンゴスチン又はマンゴスチントリアセテートを有効成分として含有する組成物を用いてクモ静脈又は破壊された毛細血管と称される毛細血管拡張症を治療することにほかならない。
しかしながら、(1)で説示したように、本願明細書の発明の詳細な説明には、上記組成物が上記の治療が可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるに足る記載がなされているとはいえないし、本願の出願時の技術常識から上記組成物が上記の治療が可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるとも認められない。

そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により本願発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲や、その記載や示唆がなくとも本願の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲は存在しないものとするほかはないが、それにもかかわらず、本願明細書の特許請求の範囲には本願発明が記載されているから、本願明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものとはいえない。

(3)審判請求人の主張について
ア.当審の拒絶理由に対する意見書における主張について
審判請求人は、当審の拒絶理由に対する意見書(3-1-1.(2))において、ある化合物の毛細血管拡張症への有効性を確かめるためのルーチンな実験手技が、本願の出願時の技術常識として当業者に知られており、該実験手技は、審判請求書とともに提出した参考資料1及び2に記載されており、当業者であれば、本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、本願明細書の組成例に記載されている薬剤を処方し、過度な実験を用いずルーチンな実験手技を用いて、上記組成物の毛細血管拡張症の治療効果を容易に確認できるから、上記組成物が上記薬理作用を有することは、発明の詳細な説明に裏付けがなくとも出願時の技術常識から当業者が認識できる旨主張する。
しかしながら、実験手技が本願の出願時の技術常識であったことは、上記組成物が上記薬理作用を有することを当業者が推認し得る根拠となるものではない。そして、審判請求人の上記主張は、上記組成物を用いて試験をしてはじめて上記組成物の上記薬理作用の有無を確認できることをいうものであり、これはすなわち、本願の出願時の技術常識からは上記組成物が上記薬理作用を有することを当業者が認識できないことを意味するから、審判請求人の前記主張は採用できない。

イ.審判請求書における主張について
審判請求人は、審判請求書(3.(2)C.)において、参考資料1及び2は本願発明の効果を示す証拠であり、それらの内容によって本願発明の効果は明らかであるとも主張するので、この点について検討する。

(ア)参考資料1について
参考資料1には、受精鶏卵の繊毛膜(CAM)を用いた抗血管形成性のテストにおいて、マンゴスチンが抗血管形成性を有したことを示すデータが記載されているが、このデータからマンゴスチンを含む組成物が毛細血管拡張症を治療可能な薬理作用を有することを、当業者が認識できるとはいえない。
そして、当審の拒絶理由における上記の指摘に対して、審判請求人は、本願の出願時の技術常識を示す文献として参考資料3?7を提出し、意見書(3-1-2.)にて、参考資料3?7から抗血管形成性を有する物質が毛細血管拡張症の治療に有効であることは明瞭であると主張する。
しかしながら、参考資料3及び4は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(以下、「HHT」という。)が血管新生の異常に関連する疾患であることを記載するのみで、毛細血管拡張症の治療における抗血管形成性物質の有効性についてはなんら記載していないし、参考資料5には、抗血管形成性物質が血管新生依存性疾病の治療に有効である可能性が示唆され、そのような疾病の一例としてHHTも挙げられているが、毛細血管拡張症の治療における抗血管形成性物質の有効性についての具体的な記載はないし、参考資料6、7のそれぞれには、VEGFの組換えモノクローナル抗体であるVEGF拮抗薬のヘバシズマブを投与した特定のHHT患者における、ヘモグロビン濃度の改善等の治療効果が記載されているが、VEGFが血管新生に関わる因子であることを考慮しても、ヘバシズマブという1つのVEGF拮抗薬が特定の少数のHHT患者に奏した治療効果を抗血管形成性物質の毛細血管拡張症の治療における有効性として一般化する合理的な根拠は不明である。加えて、参考資料7に関して審判請求人が指摘する、「唇、胸、手の最小限の目に見える毛細血管拡張症の外観は変化しなかった。」(第2144頁右欄第1?3行)の記載からも、毛細血管拡張症に伴う皮膚状態の治療における抗血管形成性物質の有効性を当業者が認識できるとは認められない。
よって、参考資料3?7から抗血管形成性を有する物質が毛細血管拡張症の治療に有効であることが明瞭であるとはいえない。
そうすると、参考資料1は、マンゴスチンが抗血管形成性を有することを示すにとどまり、参考資料1から、マンゴスチンを含む組成物が毛細血管拡張症を治療可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるとはいえない。

(イ)参考資料2について
参考資料2には、毛細血管拡張症の改善に対するテスト物の可能性を臨床的に評価する目的で行われた「12週間臨床効力検討」において、処方番号1001152-009なるテスト物の使用後、破壊された毛細血管/クモ静脈においてベースラインからの改善効果がみられたことを示すデータが記載されているが、前記テスト物は、参考資料2中の「エイボン処方報告書」によると、0.2%のアルファマンゴスチンの他に多数の成分を含む組成物であるから、該組成物の薬理作用がアルファマンゴスチンによるものであることが明らかであるとはいえず、よって、参考資料2からも、マンゴスチンを含む組成物が毛細血管拡張症を治療可能な薬理作用を有することを当業者が認識できるとはいえない。

当審の拒絶理由における上記の指摘に対して、審判請求人は意見書にて、組成物に含まれている他の多数の成分は、化粧品に慣用的に用いられている成分に過ぎず、出願人の知る限り、こうした慣用的に用いられている成分が抗血管新生性を有するとの周知技術も存在しないから、当業者であれば、参考資料2における上記改善効果がアルファマンゴスチンの作用によるものであると認識できる旨主張するので検討する。
上記組成物は0.2%のアルファマンゴスチンの他に、10%の「アスコルビン酸超微細粉末USP」、0.001%の「トコフェリルアセテート-SYN」、0.01%の「ヘスペレチン」を含むものである。
一方、例えば、本願の出願日前に頒布された米国特許第5,972,993号明細書(これは本願の明細書の段落【0003】に本願発明の先行技術として挙げられた文献である。)には以下の記載がある。(上記文献は英語で記載されているので訳文で示す。下線は当審による。)
「酸化防止剤を含有する局所製剤の皮膚への適用は、敏感肌または酒さに伴う赤み、顔面紅潮及び紅潮を減らすということが今、発見された。敏感肌または酒さの処置に有効な1つの酸化防止剤または複数の酸化防止剤は、以下の3つのグループの1つ以上から選択できる。
I.ベンゼン環と他の不飽和の化学的グループに直接結合した1つ以上の水酸基(-OH)を含むフェノールの合成物。そのような化合物の好ましい例は、・・・ヘスペレチン、・・・、トコフェロール及びその誘導体・・・、アスコルビン酸とその誘導体、・・・。」(第4カラム第35-55行)
ここで、赤ら顔の患者では、生理的血管拡張を起こす刺激に対し、血管の異常拡張が起こり、その結果、紅潮が起きやすく、次第に潮紅の発作頻度が増え、しまいには、毛細血管拡張症に至り、これらの兆候は、いわゆる酒さ(rosacea)ともオーバーラップするものであることが、本願の出願日前の技術常識であると認められる。(要すれば、ルネ・デュ・クロー他,「特集:美容皮膚科学の現状と最近の進歩 [I]美容皮膚科学概説」,1995年,日美外会誌,第32巻,第2/3号,第26(3)-40(17)頁の第29(6)頁の「赤ら顔と毛細血管拡張症」の項を参照。)
そうすると、敏感肌または酒さに伴う赤みや紅潮を減らすことが知られているヘスペレチン、トコフェロール誘導体、アスコルビン酸は、血管拡張を減らすものであると推認されるから、参考資料2における上記組成物の破壊された毛細血管/クモ静脈の改善効果が、「アスコルビン酸超微細粉末USP」、「トコフェリルアセテート-SYN」あるいは「ヘスペレチン」の作用によるものである可能性が優に存在する。
したがって、参考資料2における上記改善効果がアルファマンゴスチンの作用によるものであることを当業者が認識できるとはいえない。

上記(ア)及び(イ)から、本願発明の効果が参考資料1及び2の記載から明らかであるとの審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-07 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-27 
出願番号 特願2003-557500(P2003-557500)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61K)
P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原口 美和  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 天野 貴子
前田 佳与子
発明の名称 毛細血管拡張用治療剤  
代理人 桜田 圭  
代理人 毛受 隆典  
代理人 森川 泰司  
代理人 雨宮 康仁  
代理人 木村 満  
代理人 畑 泰之  
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