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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10G
管理番号 1276721
審判番号 不服2011-10163  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-16 
確定日 2013-07-09 
事件の表示 特願2004-352656「火花点火機関の燃料組成物供給手段」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-171251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件審判に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成16年12月6日(パリ条約による優先権主張2003年12月5日、アメリカ合衆国)の特許出願であって、平成22年9月8日付け拒絶理由通知に対し、同年12月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月22日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月16日に本件審判の請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成22年12月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「火花点火式内燃機関で使用するガソリン範囲内で沸騰する複数の種類の燃料を供給する燃料システムであって、
内燃燃焼エンジンは、燃料の供給手段と、供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料とに分離するように動作可能に配置された前記燃料の供給手段に連通する膜とを具備し、
前記第1の燃料は、98よりも高いRON、60容積%よりも多い芳香族化合物含有量、および高負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率を有し、
一方、前記第2の燃料は、90よりも低いRON、45容積%未満の芳香族化合物含有量、および低負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率を有する、
ことを特徴とする燃料システム。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「平成22年9月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由2」であって、要するに、本願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:米国特許第6622663号明細書

4 刊行物及びその記載事項
本願優先日(2003年12月5日)前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された刊行物である米国特許第6622663号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
a 「3. A system for supplying in situ formulated fuels boiling in the gasoline range for use in operating a spark ignition, internal combustion engine having a CR of 11 or more comprising: a fuel supply; a membrane in operable communication with the fuel supply for separating said fuel supply into at least a first fuel and a second fuel, in which the first fuel having a RON greater than about 100 and the second fuel having a RON less than about 90, both fuels having, an average burn rate greater than 105% of isooctane and a laminar flame speed greater than 105% of isooctane; means for supplying at least a portion of the first fuel to the engine at high load condition; and means for supplying at least a portion of the second fuel to the engine at low load conditions.
4. ・・・・
5. The fuel system of claim 3 wherein said membrane is selected to preferentially permeate aromatics whereby said first fuel comprise greater than about forty-five volume percent aromatics.
6. The fuel system of claim 5 wherein said fuel supply is a reservoir of gasoline and wherein said second fuel comprise less than about forty-five percent aromatics.
7. The fuel system of claim 6 wherein said first fuel comprises greater than about fifty five volume percent aromatics.」(第8欄13?41行)
当審訳 「3.11またはそれ以上のCRを有する火花点火式内燃機関を作動させるためのガソリン沸点範囲の燃料をその場で調整し供給するためのシステムであって、供給燃料と、前記供給燃料に連通し前記供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料に分離する膜と、高負荷条件下で前記第1の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段と、低負荷条件下で前記第2の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段とを備え、前記第1の燃料は約100より大きいRONを有し、前記第2の燃料は約90より小さいRONを有し、これら両燃料はいずれもイソオクタンの105%より大きい平均燃焼率とイソオクタンの105%より大きい層流火炎速度を有する、システム。
4.・・・・
5.前記膜は前記第1の燃料が約45体積%より多い芳香族化合物を含むように芳香族化合物を優先的に透過させるものが選択されている、請求項3の燃料システム。
6.前記供給燃料は貯留槽にあるガソリンであり、前記第2の燃料は約45%より少ない芳香族化合物を含む、請求項5の燃料システム。
7.前記第1の燃料は約55容積%より多い芳香族化合物を含む、請求項6の燃料システム。」
b 「The invention employs a membrane pervaporation process and particularly selected membrane to segregate high-octane fuel constituents from primary fuel. Accordingly, membrane 22 is selected from membrane materials to include the following preferable characteristics:
i. permeance to selected constituents of gasoline, particular those having RON and octane boosting properties (e.g. aromatics) and flame speed enhancing properties.」(第5欄66行?第6欄6行)
当審訳 「本発明は、原燃料から高オクタン価の燃料成分を分離するために膜パーベーパレーション法と特に選択された膜を採用している。したがって、膜22は、以下の好ましい特性を含む膜材料から選択される。
i.特にRONとオクタン価を高める特性を有するガソリン成分(例えば芳香族化合物)の選択透過性。」
c 「In one embodiment, membrane 22 comprises a polyamide/polyadiapate membrane selected to preferentially permeate aromatic constituents of gasoline. The gasoline, comprising conventional “regular grade” 92 RON having less than or equal to about 35% aromatic content, is separated into a first high octane/RON fuel having up to about sixty-five percent (65%) aromatic content and a RON in excess of about 100 RON.」(第7欄20?27行)
当審訳 「一実施形態において、膜22は、ガソリン中の芳香族化合物を優先的に透過させるように選択されたポリアミド/ポリアジペート膜で構成される。従来の“レギュラーグレード”の92のRONで、約35%より少ないかまたはそれに等しい芳香族化合物含有量を有するガソリンから、約65パーセント(65%)もの芳香族化合物含有量を有し、約100のRONを超えるRONを有する高いオクタン価/RONの第1の燃料が分離される。」

5 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、上記4aに、第1の燃料及び第2の燃料の芳香族化合物含有量について、それぞれ「約55容積%より多い」及び「約45%より少ない」との記載があるところ、両者の含有量を異なる単位で表すべき特段の理由はないから、後者の記載中の「%」は前者の記載と同様に「容積%」を意味しているのは明らかである。このことは、上記4c中の「%」についても同様である(要すれば、刊行物1の4欄64行参照。)。
そうすると、刊行物1には、上記4aからみて、次の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されていると認められる。
「11またはそれ以上のCRを有する火花点火式内燃機関を作動させるためのガソリン沸点範囲の燃料をその場で調整し供給するためのシステムであって、
供給燃料と、前記供給燃料に連通し前記供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料に分離する膜と、高負荷条件下で前記第1の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段と、低負荷条件下で前記第2の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段とを備え、
前記第1の燃料は約100より大きいRONを有し、前記第2の燃料は約90より小さいRONを有し、これら両燃料はいずれもイソオクタンの105%より大きい平均燃焼率及びイソオクタンの105%より大きい層流火炎速度を有し、
前記膜は前記第1の燃料が約45容積%より多い芳香族化合物を含むように芳香族化合物を優先的に透過させるものが選択され、
前記供給燃料は貯留槽にあるガソリンであり、前記第2の燃料は約45容積%より少ない芳香族化合物を含み、
前記第1の燃料は約55容積%より多い芳香族化合物を含む、システム。」

6 対比
本願発明1と刊行1発明とを対比する。
ア 刊行1発明の「火花点火式内燃機関」は、「11またはそれ以上のCRを有する」ものであるところ、本願発明1の「火花点火式内燃機関」も、本願明細書(段落【0001】、【0014】等)によれば、11またはそれ以上のCRを有するものである。そうすると、刊行1発明の「11またはそれ以上のCRを有する火花点火式内燃機関」は、本願発明1の「火花点火式内燃機関」と実質的に相違しない。
また、刊行1発明の「燃料」が「ガソリン沸点範囲」のものであることは、本願発明1の「燃料」が「ガソリン範囲内で沸騰する」ものであることに他ならない。
そして、刊行1発明の「ガソリン沸点範囲の燃料をその場で調整し供給するためのシステム」は、「供給燃料と、前記供給燃料に連通し前記供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料に分離する膜と、高負荷条件下で前記第1の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段と、低負荷条件下で前記第2の燃料の少なくとも一部を前記内燃機関に供給する手段とを備え」たものであることから、供給燃料を少なくとも二種類の燃料に分離し、それぞれを供給することができるものである。
よって、刊行1発明の「11またはそれ以上のCRを有する火花点火式内燃機関を作動させるためのガソリン沸点範囲の燃料をその場で調整し供給するためのシステム」は、本願発明1の「火花点火式内燃機関で使用するガソリン範囲内で沸騰する複数の種類の燃料を供給する燃料システム」と実質的に相違しない。
イ 本願発明1の「内燃燃焼エンジン」は、一般的に用いられる用語でなく、本願明細書にもこれと同じ記載はないが、その表現ぶり及び本願明細書の全趣旨からみて、「内燃機関(internal combustion engine)」を意味することは明らかである。
一方、刊行1発明の「11またはそれ以上のCRを有する火花点火式内燃機関を作動させるためのガソリン沸点範囲の燃料をその場で調整し供給するためのシステム」は「火花点火式内燃機関を作動させるための」燃料を供給するものであるから、刊行1発明の上記「システム」は「火花点火式内燃機関」を含むものと解することができる。
また、刊行1発明の上記「システム」は「供給燃料」と「前記供給燃料に連通し前記供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料に分離する膜」とを備えたものである。
そうすると、刊行1発明の上記「システム」中の「火花点火式内燃機関」は、「燃料の供給手段」と「燃料の供給手段に連通し供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料に分離する膜」とを備えたものとみることができるところ、このことは、本願発明1の「内燃燃焼エンジン」が「燃料の供給手段」と「供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料とに分離するように動作可能に配置された前記燃料の供給手段に連通する膜」とを具備することに他ならない。
ウ 刊行1発明の「第1の燃料」は、「約100より大きいRON」を有し、「約55容積%より多い芳香族化合物」を含み、「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」及び「イソオクタンの105%より大きい層流火炎速度」を有するものである。
そうすると、刊行1発明の「第1の燃料」と本願発明1の「第1の燃料」は「98よりも高いRON」を有する点で共通するということができる。
エ 刊行1発明の「第2の燃料」は、「約90より小さいRON」を有し、「約45容積%より少ない芳香族化合物」を含み、「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」及び「イソオクタンの105%より大きい層流火炎速度」を有するものである。
そうすると、刊行1発明の「第2の燃料」と本願発明1の「第2の燃料」は「90よりも低いRON」及び「45容積%未満の芳香族化合物含有量」を有する点で共通するということができる。
オ さらに、刊行1発明において、膜は第1の燃料が約45容積%より多い芳香族化合物を含むように芳香族化合物を優先的に透過させるものが選択されることと、供給燃料は貯留槽にあるガソリンであることについて特定されているところ、このような特定による具体的態様は、本願発明1においても排除されていないばかりか、むしろ本願発明1に含まれるというべきであるから(本願明細書の段落【0035】や【0041】等)、この点で両発明は実質的に相違しない。
カ 以上を踏まえると、本願発明1と刊行1発明は、以下(ア)の点で一致し、以下(イ)の点で相違する。
(ア)一致点
「火花点火式内燃機関で使用するガソリン範囲内で沸騰する複数の種類の燃料を供給する燃料システムであって、内燃燃焼エンジンは、燃料の供給手段と、供給燃料を少なくとも第1の燃料と第2の燃料とに分離するように動作可能に配置された前記燃料の供給手段に連通する膜とを具備し、前記第1の燃料は、98よりも高いRONを有し、一方、前記第2の燃料は、90よりも低いRON、45容積%未満の芳香族化合物含有量を有する、燃料システム。」
(イ)相違点
本願発明1では、「第1の燃料」に関し、「60容積%よりも多い芳香族化合物含有量」及び「高負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」を有すること、並びに「第2の燃料」に関し、「低負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」を有することが特定されているのに対し、刊行1発明では、「第1の燃料」に関し、「約55容積%より多い芳香族化合物」を含むこと及び「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」を有すること、並びに「第2の燃料」に関し、「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」を有することが特定されるにとどまる点。

7 判断
上記相違点について検討する。
ア まず、上記相違点のうち「燃焼率」に関する部分について検討するに、本願明細書の段落【0018】及び【0045】には、本願発明1の説明をするために「平均燃焼率」という用語が用いられていることから、本願発明1の「燃焼率」は「平均燃焼率」と同義であり、刊行1発明の「平均燃焼率」は本願発明1の「燃焼率」と実質的に相違しないものと解される。
そして、刊行1発明において、「第1の燃料」と「第2の燃料」は、いずれも「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」を有すると特定されているところ、このことに関し、負荷条件の高いときや低いときというように負荷条件の高低と関連づける特定はなされていない。
そうすると、刊行1発明において、「第1の燃料」と「第2の燃料」が「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」を有することは、負荷条件の高いときや低いときというように特定の負荷条件のときのみに限定されることではなく、負荷条件の高いときであっても低いときであっても該当することであると解するのが自然であるから、刊行1発明の「第1の燃料」は、高負荷条件でイソオクタンの105%より大きい平均燃焼率を有し、刊行1発明の「第2の燃料」は、低負荷条件でイソオクタンの105%より大きい平均燃焼率を有するということができる。
よって、刊行1発明の「第1の燃料」と本願発明1の「第1の燃料」は、「高負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」を有する点で共通し、両者はこの点で実質的には相違しない。また、刊行1発明の「第2の燃料」と本願発明1の「第2の燃料」は、「低負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」を有する点で共通し、両者はこの点で実質的には相違しない。
イ また、刊行1発明は、高負荷条件下で「第1の燃料」の少なくとも一部を内燃機関に供給する手段と、低負荷条件下で「第2の燃料」の少なくとも一部を内燃機関に供給する手段を備えており、このことからみて、刊行1発明の「第1の燃料」は、主に高負荷条件下で供給されるものであり、同「第2の燃料」は、主に低負荷条件下で供給されるものであるということができる。
そうすると、刊行1発明の「第1の燃料」と「第2の燃料」に関する「イソオクタンの105%より大きい平均燃焼率」を有するとの特定は、「第1の燃料」については「高負荷条件下」における特定であり、「第2の燃料」については「低負荷条件下」における特定であると解することができるので、このことからも上記アの判断の結果は妥当であるということができる。
ウ さらに、刊行1発明の「第1の燃料」は、従来の“レギュラーグレード”のガソリンを原燃料として、RONとオクタン価を高める特性を有する成分を選択的に透過させる膜を用いた膜パーベーパレーション法により得られるものであるところ(上記4b及びc)、これと同様の手段で本願発明1の「第1の燃料」も得られること(本願明細書の段落【0035】及び【0036】)に照らせば、本願発明1の「第1の燃料」が有するとされる「高負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」という特性は、刊行1発明の「第1の燃料」も有していると解するのが自然である。
同様に、本願発明1の「第2の燃料」が有するとされる「低負荷条件でイソオクタンの105%よりも高い燃焼率」という特性は、刊行1発明の「第2の燃料」も有していると解するのが自然である。
よって、このことからも上記アの判断の結果は妥当であるということができる。
エ 次に、上記相違点のうち「芳香族化合物含有量」に関する部分について検討するに、刊行1発明において、「第1の燃料」は「約55容積%より多い」芳香族化合物を含むと特定されてはいるものの、同燃料の芳香族化合物含有量に関し、このこと以上に具体的な特定はなされていない。
しかしながら、刊行物1の上記4cの記載によれば、刊行1発明の「第1の燃料」は、芳香族化合物含有量を65容積%までは高めることができるものである。また、同4bの記載によれば、芳香族化合物はオクタン価を高める特性を有するものであり、このことから、芳香族化合物含有量を高めることでオクタン価が高くなることは、当業者には明らかである。
そうすると、オクタン価は一般に高ければ高いほど望ましく、刊行1発明においてもこのことに変わりはないから、刊行1発明において、「第1の燃料」として、オクタン価ができるだけ高いものを得るために、「約55容積%より多い」と特定されるにとどまる「第1の燃料」の芳香族化合物含有量を例えば61容積%や65容積%というように、実現可能な65容積%までの範囲内で「60容積%よりも多い」ものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
オ そして、本願発明1の「第1の燃料」の芳香族化合物含有量を特定する「60容積%よりも多い」という数値限定について、本願明細書及び図面の記載を検討しても臨界的意義を含め格別な技術的意義を見いだせない。本願発明1のこれ以外の数値限定についても同様である。
また、本願発明1の効果について、本願明細書及び図面の記載を検討しても格別なものは見いだせない。
カ 請求人は、審判請求書において、刊行物1には、芳香族化合物含有量に関し、「第1の燃料において芳香族含量が約65%以下である」といったことは記載されているが、その点が記載されているのみであり、その場合の第2の燃料や供給燃料の芳香族化合物含有量は記載されていないとか、本願発明1は刊行1発明に対して選択発明に該当し、その根拠となる本願発明1の作用効果については、本願明細書中の実施例1の記載から、高負荷でのノッキングの問題もなく全運転サイクルにわたりより高い熱効率を実現する高圧縮比エンジンの使用が可能であることが容易に理解できるなどと主張している。
しかしながら、刊行物1には、供給燃料の芳香族化合物含有量に関し、約35容積%より少ないかまたはそれに等しいことが記載されていると認められるし(上記4c)、また、その場合、「第1の燃料」は供給燃料より多くの芳香族化合物含有量(約65容積%)を有するのであるから、「第2の燃料」の芳香族化合物含有量は、供給燃料のそれより少ない、つまり約35容積%より少ないことは明らかである。
また、請求人の上記主張に係る本願発明1の作用効果は、刊行1発明のそれと同質のものであるし(刊行物1の第2欄12?17行)、本願明細書中の実施例1の記載等をみても、本願発明1と刊行1発明の比較がなされておらず、本願発明1の作用効果が刊行1発明のそれに比べて顕著なものと認めることもできないから、本願発明1が刊行1発明に対しいわゆる選択発明であるということはできない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。
キ また、審判請求書には、補正案が示されており、これについて一応検討すると、刊行物1には、上記カに述べたとおり、供給燃料の芳香族化合物含有量に関し、約35容積%に等しいことが記載されていると認められ、この記載に基づき補正案にいう「ASF」を計算すると、(65/35)×(65/35)=約3.4となり、補正案に記載の「ASFは1.2?8.5である」との条件を満たしている。よって、補正案のとおりの発明をもってしても特許を受けることができない。

8 むすび
以上検討したところによれば、本願発明1は、刊行1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項1以外の請求項に係る発明について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-25 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2004-352656(P2004-352656)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 目代 博茂
新居田 知生
発明の名称 火花点火機関の燃料組成物供給手段  
代理人 河備 健二  
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