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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1276727
審判番号 不服2012-584  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-12 
確定日 2013-07-08 
事件の表示 特願2006-541695号「コンパニオン動物からの排出物の臭気を低減する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日国際公開、WO2005/053422、平成19年 5月17日国内公表、特表2007-512029号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年11月24日(パリ条約による優先権主張2003年11月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月8日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成24年1月12日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成24年7月4日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年10月5日に回答書が提出された。

第2 平成24年1月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月12日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
コンパニオン動物の排出物の臭気を低減する方法であって、排出物臭気低減有効量のショウガ科スパイスまたはその抽出物を含む組成物を前記動物に摂取させることを含み、前記ショウガまたはその抽出物の量は、前記組成物中に、前記組成物の少なくとも0.5重量%のショウガ同等量で存在する、前記方法。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である少なくとも0.15重量%のショウガ同等量について、「少なくとも0.5重量%のショウガ同等量」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-234312号公報(以下「刊行物1」という。)には、家畜用消臭剤に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】生姜を有効成分として配合してなることを特徴とする家畜用消臭剤。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】都市化の進行に伴い、畜産農家は、やむなく住宅地との隣接をせまられ、酪農、養豚、養鶏は必然的に悪臭による環境汚染をもたらし、これによる近隣とのトラブルは極限に達し、今や畜産経営を断念せざるを得ない状況にまで追いつめられ、片や一般家庭においては、愛玩動物である犬や猫との同居が増加し、排泄物の臭気は愛情を上回るものがあり、これら悪臭による問題を早急に解決することが望まれている。」
(ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究の結果、生姜など漢方薬に類する植物を調合したものを飼料に添加すると、添加物質は、僅かの添加で家畜の消化管内や排泄物中の悪臭物質を安全に消滅させる作用を有し、抗生物質や抗菌剤などの同時投与においても、消臭効果に影響がないばかりか、動物の健康増進につながるという相乗効果と、悪臭が衣類に付着し難いという特性をも併せもつことを見出し、本発明を完成した。」
(エ)「【0011】生姜は生のまま粉砕投与、乾燥粉砕投与、蒸留水にして成分抽出(蒸留釜に材料を投入して蒸留し水蒸気を冷却して有効成分を採取)するなど、有効成分の抽出方法は使用形態により適宜選択できる。使用形態としては、飼料に混合して用いる経口投与、水溶液にして室内に散布するなどがある。経口投与の場合は、生のまま又は乾燥して粉砕したものを用いるのが好ましく、水溶液の散布の場合は、蒸留水にして成分抽出したものを用いるのが好ましい。蕎麦その他の資材も乾燥粉末にしたり蒸留水にして成分抽出したり、その有効成分の抽出方法は適宜選択される。
【0012】これらの成分の配合割合は、家畜の種類や家畜の体調などにより適宜調整するが、生姜について生の場合は10?30重量%、乾燥粉末の場合は2?6重量%、ジンゲオール(生姜の蒸留物)の場合は1?3重量%、炭末1?3重量%、鉄化合物1?5重量%程度、フラボノイドを含有する植物については用いる植物(蕎麦や柑橘類など)によって賦形剤としての役割もある程度もたせることができるためその配合割合は一概には言えない。トマトについては0.5?5重量%程度がよい。ここで、生姜の添加割合が少ないと十分な消臭効果が得られず、一方多すぎても消臭効果は高まらない。・・・
【0013】経口投与の場合、飼料への消臭剤の添加量は飼料に対して0.05?0.5重量%、さらには0.05?0.2重量%程度の範囲が好ましい。余り添加量が少ないと消臭効果が十分でなく、一方添加量が多くても消臭効果はそれ程高まらず、コストも上がるので、上記範囲が適当である。・・・」

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「家畜の消化管内や排泄物中の悪臭物質を安全に消滅させる方法であって、生姜を有効成分として配合してなる家畜用消臭剤を飼料に混合して用いる経口投与することを含み、成分の配合割合は、生の場合は10?30重量%、乾燥粉末の場合は2?6重量%、ジンゲオール(生姜の蒸留物)の場合は1?3重量%程度とする方法。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-50814号公報(以下「刊行物2」という。)には、動物の排泄物の臭いを低減あるいは消去する方法、その方法に使用する配合剤およびその配合剤を含有する飼料、ペットフードあるいは食品に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は糞尿など動物の排泄物の臭いを低減あるいは消去する方法、その方法に用いられる配合剤およびその配合剤を含有する飼料、ペットフードあるいは食品に関する。
【0002】
【従来の技術】生物、とくに家畜やペットなどの排泄物の臭いを軽減する方法として、消臭剤や防臭剤を利用する方法が古くから採用されていた。これらの方法は、家畜やペットなどの排泄物自体に、あるいはその付近に消臭剤や防臭剤を散布することにより排泄物の臭いを軽減するものであり、一時的なものであって何ら根本的な解決法ではない。家畜やペットなどの排泄物の臭いを軽減するより根本的な解決法として、排泄物の臭い自体を軽減する方法が提案されている。例えば、レモン油、オレンジ油、ライム油、クローブ油、バニリンなどの香りを有する化合物あるいは組成物を添加配合した飼料を家畜やペットなどに食べさせる方法、あるいはゼオライトなどの無機物や乳酸菌などの微生物を有する飼料を家畜やペットなどに食べさせる方法などが知られている。」
(イ)「【0013】本発明では上記第一成分と第二成分とを可食物に配合し、その可食物を動物が食べることにより、・・・動物体内の悪臭物質が減少し消臭効果を示すものと推測される。・・・動物としては、犬、猫、小鳥などのペット、馬、牛、鶏、羊などの家畜、若者や老人などのヒトなど、上記配合剤を食べることが出来る動物であればとくに制限されるものではない。」

3.本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「消化管内や排泄物中の悪臭物質を安全に消滅させる方法」は、本願補正発明の「排出物の臭気を低減する方法」に相当し、以下同様に
「生」、「乾燥粉末」又は「ジンゲオール(生姜の蒸留物)」の「生姜」は、「ショウガ科スパイスまたはその抽出物」に、
「飼料に混合して用いる経口投与すること」は、「動物に摂取させること」に相当する。
(b)引用発明の「家畜」と、本願補正発明の「コンパニオン動物」とは、「飼育動物」で共通し、以下同様に
「生姜を有効成分として配合してなる家畜用消臭剤」と、「排出物臭気低減有効量のショウガ科スパイスまたはその抽出物を含む組成物」とは、「ショウガ科スパイスまたはその抽出物を含む組成物」(なお、前者が「家畜用」で、後者が「コンパニオン動物」を対象とする点は除く)で共通する。
(c)引用発明の「成分の配合割合は、生の場合は10?30重量%、乾燥粉末の場合は2?6重量%、ジンゲオール(生姜の蒸留物)の場合は1?3重量%程度とする」ことと、本願補正発明の「ショウガまたはその抽出物の量は、前記組成物中に、前記組成物の少なくとも0.5重量%のショウガ同等量で存在する」こととは、「ショウガまたはその抽出物の量は、組成物中に、所定量で存在する」点で共通する。

(2)両発明の一致点
「飼育動物の排出物の臭気を低減する方法であって、ショウガ科スパイスまたはその抽出物を含む組成物を前記動物に摂取させることを含み、ショウガまたはその抽出物の量は、組成物中に、所定量で存在する、方法。」

(3)両発明の相違点
ア.飼育動物が、本願補正発明は「コンパニオン動物」なのに対して、引用発明は「家畜」である点。
イ.組成物に含むショウガまたはその抽出物が、本願補正発明は「排出物臭気低減有効量の」ショウガ科スパイスまたはその抽出物なのに対して、引用発明はそのような量のものであるか不明な点。
ウ.組成物に含むショウガまたはその抽出物の量が、本願補正発明は「組成物中に、前記組成物の少なくとも0.5重量%のショウガ同等量で存在する」のに対して、引用発明は「成分の配合割合は、生の場合は10?30重量%、乾燥粉末の場合は2?6重量%、ジンゲオール(生姜の蒸留物)の場合は1?3重量%程度がよいとする」点。

4.本願補正発明の容易推考性の検討
(1)相違点ア.について
刊行物2に【従来の技術】として、「家畜やペットなどの排泄物の臭いを軽減するより根本的な解決法として、排泄物の臭い自体を軽減する方法が提案されている。例えば、レモン油、オレンジ油、ライム油、クローブ油、バニリンなどの香りを有する化合物あるいは組成物を添加配合した飼料を家畜やペットなどに食べさせる方法、あるいはゼオライトなどの無機物や乳酸菌などの微生物を有する飼料を家畜やペットなどに食べさせる方法などが知られている。」と記載されている様に、ペット(本願補正発明の「コンパニオン動物」に相当するもの。)の排泄物の臭いを軽減することは、従来から課題とされていることであり、さらに、刊行物1の記載事項(イ)に「一般家庭においては、愛玩動物である犬や猫との同居が増加し、排泄物の臭気は愛情を上回るものがあり、これら悪臭による問題を早急に解決することが望まれている。」と記載されている様に、引用発明の悪臭物質を安全に消滅させること(本願補正発明の「排出物の臭気を低減する」ことに相当)は、犬や猫の様な愛玩動物(本願補正発明の「コンパニオン動物」に相当するもの。)においても望まれていることと認識出来る。
そして、引用発明の消臭剤を、犬や猫の様な愛玩動物に用いることに特段の困難性も存在しないことを考慮すると、引用文献の消臭剤を用いる対象を、犬や猫等のコンパニオン動物として、本願の相違点ア.に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点イ.ウ.について
ア.まず、引用発明の生姜を有効成分として配合してなる家畜用消臭剤は、生姜が有効成分として作用するものであり、刊行物1の記載事項(エ)に「生姜の添加割合が少ないと十分な消臭効果が得られ」ないと記載されている様に、生姜は所望の消臭効果を得るために適当な量、すなわち排出物臭気低減有効量配合されるべきものであるので、引用発明の生姜を有効成分として配合してなる家畜用消臭剤も、実質的に生姜が排出物臭気低減有効量配合されるものと認められる。

イ.さらに、引用発明の生姜の添加割合は、刊行物1の記載事項(エ)に記載されている様に、「家畜の種類や家畜の体調などにより適宜調整する」ものであり、「生姜の添加割合が少ないと十分な消臭効果が得られ」ないものであるので、所望の消臭効果を得るために、対象となる動物を特定して、製品設計の一般的手設計法である実験等で適当な生姜の添加割合を決定することは、当業者が発明の具現化のために行う通常の設計行為である。

そして、
(ア)本願明細書において、【実施例】に「単に例示とし、いかなる点でも本開示を限定しない。」ものとして、「0.5重量%のショウガ根粉末を加えたかまたは加えない成犬用フードを使用して、実験を行った」時等に、「加えたショウガを有するフードを猫が摂取した期間からの大便試料は、ショウガを有しない対照フードを猫が摂取した期間からの大便試料よりも強度が低い(それぞれ平均強度1022対1123ppmのn-ブタノール)ことを見い出した。」こと等が記載されているものの、実験ではショウガの量を種々変更して「少なくとも0.5重量%」と、それ未満のショウガの量とで、顕著な効果の差を証明する等の「少なくとも0.5重量%」なる数値範囲の値に臨界的意義を認識出来ず、その他にも本願明細書から「少なくとも0.5重量%」なる数値範囲の値に臨界的意義を認識できるものでもない。
(イ)「0.5重量%」なる値に、実験等で適当な生姜の添加割合を決定するときに対象と出来ない様な、特別な技術的事情が存在するものではない。

そうすると、「少なくとも0.5重量%」なる数値範囲の値が、(a)上記(ア)の様に、本願明細書から臨界的意義を認識できるものでなく、(b)上記(イ)の様に、それを採用出来ない特別な技術的事情が存在するものでもなく、(c)本願明細書から当業者が予期し難い格別顕著な効果を認識出来るものでもない以上、上記(1)の消臭剤を用いる対象を犬や猫等のコンパニオン動物とすることにともなって、犬や猫等のコンパニオン動物を対象として、適当な生姜の添加割合を決定する実験等を行って、本願の相違点イ.ウ.に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

ウ.請求人は、審判請求書の [本願発明が特許されるべき理由]2.(2)において
「引例1において家畜用消臭剤における生姜の最大量は30%とされているが、それは消臭剤中の量としての値であり、飼料全体の中の量としての値ではない。該引例の請求項3に記載されているように、飼料中の消臭剤の量は最大0.5%であるので、それと生姜の最大量である30%を併せて計算すると、飼料全体の中における生姜の最大量は0.15重量%にすぎない。
引例1の実施例1に関して同様の計算を行うと、生姜を20重量%含む消臭剤を豚の飼料に0.1重量%の割合で添加しており、該実施例において飼料中に添加されている生姜の量は0.02%である。そのように引例1において開示されている事項は、有効成分である生姜を家畜の飼料中に最大0.15重量%含むことであり、補正後の本願請求項1で規定された「少なくとも0.5重量%のショウガ同等量」よりもずっと低い値である。
更に引例1の段落番号[0012]に、『生姜の添加割合が少ないと十分な消臭効果が得られず、一方多すぎても消臭効果は高まらない。』という記載がある。加えて段落番号[0013]には、『余り添加量が少なくても消臭効果が十分でなく、一方添加量が多くても消臭効果はそれ程高まらず、コストも上がるので、上記範囲が妥当である。』と記載されている。
飼料中に添加される生姜の量が多くても消臭効果はそれ程高まらないことを述べているこれらの引例1の記載は、補正後の本願請求項1に規定された「少なくとも0.5重量%」というような高い濃度で生姜を用いることを妨げるものである。そのような阻害要因が引例1の記載に存在することを考慮すると拒絶査定において認定されたように、補正後の請求項1に記載された「少なくとも0.5重量%」というショウガの添加量を決定することが、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとは考えられない。」
旨の主張を行っているので、当該主張について検討する。
(a)まず、本願補正発明の「組成物」は、本願明細書【0041】に「1具体例においては、本組成物は、・・・フードまたは栄養補助剤である。・・・予測される栄養補助剤は、栄養補助剤として他の供給物またはペットフードに未希釈で供給されるか、別個に入手可能な動物用飼料の他の部分と共に自由に選択できるか、または希釈され、動物の通常の供給物またはペットフードと混合されて完全な供給物またはペットフードを製造する組成物を含む。・・・栄養補助剤は、例えば、粉末、液体、シロップ、丸剤、カプセル封入組成物等を含む様々な形態であることができる。」とされたものであり、引用発明の家畜用消臭剤と同様に餌(引用発明においては「飼料」)に混合して用いるものも包含するものである。
そうすると、本願補正発明の「少なくとも0.5重量%のショウガ同等量」は、該「動物の通常の供給物またはペットフードと混合されて完全な供給物またはペットフードを製造する」ものも含む「組成物」に対する量であるので、引用発明において例示されている「生姜の最大量は30%」を、飼料全体の中における生姜の最大量に換算して、「補正後の本願請求項1で規定された『少なくとも0.5重量%のショウガ同等量』よりもずっと低い値である」とすることはできない。
(b)さらに、引用発明は、「家畜」に対応するものであって、引用発明に例示された生姜の添加割合も「家畜」に対して例示されたものと解するのが適当である。
そして、上記(1)で引用した刊行物1の記載事項(イ)の「愛玩動物である犬や猫」においては、一般家庭において同居して愛玩する等の飼育形態も含めて、要求される消臭能力や許容されるコストも変わってくることは容易に想像出来るものである。
そうすると、引用発明の「家畜の種類・・などにより適宜調整する」ことに起因して、実験等を行うにあたり、実験対象を引用発明に例示された、家畜用消臭剤の生姜の添加割合に限定する必然性は存在せず、刊行物1の「【0012】・・生姜の添加割合が少ないと十分な消臭効果が得られず、一方多すぎても消臭効果は高まらない。」や「【0013】・・余り添加量が少なくても消臭効果が十分でなく、一方添加量が多くても消臭効果はそれ程高まらず、コストも上がるので、上記範囲が妥当である。」なる記載が存在しても、上記(1)の消臭剤を用いる対象を犬や猫等のコンパニオン動物とすることにともなって、犬や猫等のコンパニオン動物を対象として、適当な生姜の添加割合を決定する実験等を行って、「組成物の少なくとも0.5重量%のショウガ同等量」とすることは、容易になし得たことである。

(3)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年1月12日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成23年2月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
コンパニオン動物の排出物の臭気を低減する方法であって、排出物臭気低減有効量のショウガ科スパイスまたはその抽出物を含む組成物を前記動物に摂取させることを含み、前記ショウガまたはその抽出物の量は、前記組成物中に、前記組成物の少なくとも0.15重量%のショウガ同等量で存在する、前記方法。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?2とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2」の「3.」、「4.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2記載の事項、及び当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-08 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-26 
出願番号 特願2006-541695(P2006-541695)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23K)
P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
鈴野 幹夫
発明の名称 コンパニオン動物からの排出物の臭気を低減する方法  
代理人 辻本 典子  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  

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