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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1276728 |
審判番号 | 不服2012-3284 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-02-21 |
確定日 | 2013-07-08 |
事件の表示 | 特願2007-214709「液体注入モールド法による半導体発光デバイスパッケージの形成方法、及びモールドされた半導体発光デバイスリボン」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月27日出願公開、特開2008- 72102〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年8月21日(パリ条約による優先権主張2006年8月21日、米国)の出願であって、平成23年3月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月2日に手続補正がなされたが、同年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされた後、前置審査において、同年6月12日付けで拒絶の理由(以下「前置拒絶理由」という。)が通知され、同年8月21日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成24年2月21日付けの手続補正書の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 「半導体発光デバイスのパッケージングの方法であって、 半導体発光デバイスを上に搭載するように構成された基板を作製するステップと、 前記基板の空洞中に前記半導体発光デバイスを搭載するステップと、 前記基板の接続部分に、前記半導体発光デバイスを電気的に接続するステップと、 前記空洞中にある電気的接続を行った半導体発光デバイス上に軟樹脂を塗布するステップと 選択された注入圧力で前記基板上に光素子の樹脂を注入するステップを含む、前記半導体発光デバイス上に、前記基板に接着された光素子を液体注入モールドで形成するステップと を有することを特徴とする方法。」 第3 刊行物の記載 1 刊行物に記載された事項 (1)前置拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-174350号公報 (以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 凹部が設けられた光半導体素子搭載部材と、前記光半導体搭載部材の凹部の底部に設けられた光半導体素子と、前記光半導体素子とその周囲の前記光半導体素子搭載部材の凹部の少なくとも一部を覆うように設けられた封止樹脂と、を備えた光半導体モジュールであって、 前記光半導体搭載部材の凹部には、前記光半導体素子への給電するための配線経路が設けられ、前記光半導体搭載部材の凹部内において、前記光半導体素子から前記配線経路への電気的接合がなされていることを特徴とする光半導体モジュール。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、光半導体モジュールに関し、特に、光半導体素子を樹脂封止したモジュールであって、信頼性が高く、量産性に優れた光半導体モジュールに関する。」 ウ 「【0003】図12は、従来の光半導体モジュールの樹脂封止構造を表す概略平面図である。また、図13は、同モジュールの樹脂封止構造を表す概略断面図であり、A-A’線断面を表す。すなわち、光半導体モジュールは、セラミック製で所定の形状に加工され、電気配線用の金属薄膜を形成した光半導体素子搭載用の基板101の配線経路である金属薄膜103上に、光半導体素子102が配置され、もう1つの配線経路である金属薄膜103’と光半導体素子102の上面の間はボンディングワイヤ104によって電気的に接続され、光半導体素子102と基板101の一部が樹脂105で封止されている。」 エ 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したような従来の光半導体モジュールにおいては、光半導体素子を封止する樹脂105に特性上の制限があり、また樹脂105の形状を一定形状に制御することが難しく、光学的なばらつきが大きいという問題があった。以下にこれらの問題について詳述する。光半導体素子102は水分が存在すると特性が劣化していくので、高信頼性を確保するためには、封止構造に高い耐湿性が必要とされる。光半導体素子102の下面から配線電極103’に張られたボンディングワイヤ104が封止樹脂105の外側に出ていると・・・(略)・・・そのため、液状の樹脂原料を塗布し硬化させて、樹脂105を形成する場合、ボンディングワイヤ104を収容できるように液状樹脂原料を盛り上げて塗布し、液状樹脂原料が硬化する前に広がってしまうのを押さえなければならないため、液状樹脂原料の粘度、基板との濡れ性、表面張力等の特性が、ある限られた範囲のものしか使用できないという問題点があった。」 オ 「【0008】本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、その目的は、光半導体搭載部材の凹部に光半導体素子へ給電するための配線経路が設けられ、配線経路と光半導体素子との電気的接合が凹部内において行われ、光半導体素子と凹部を少なくとも1つの封止樹脂により覆い、その少なくとも1つの封止樹脂を凹部内に収めて封止することにより、広い特性範囲の樹脂を使用することができるため、樹脂封止に最適な樹脂を選択し、光半導体素子の寿命を改善して、工程作業性も改善して、安価で信頼性の高い光半導体モジュールを提供し、さらに、安定した樹脂形状を形成することことにより、光学的トレランスの高め、製造歩留まりを改善して、量産性に優れた光半導体モジュールを提供することにある。」 カ 「【0023】次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、光半導体素子搭載部材として、基板1を用い、配線経路3、3’として金属薄膜を設けている。ここで、光半導体素子2として、素子下面に両電極が配置されているフリップチップ型の素子を用いているため、配線経路のパターンに合わせて光半導体素子2を半田でマウントするだけで、凹部1a内で光半導体素子2と配線経路3、3’の電気的な接合を施すことができる。また、樹脂封止の構造として、2種類の封止樹脂を重ねて光半導体素子を封止する、いわゆる2重封止構造を用いている。 【0024】図3は、本実施形態に係る光半導体モジュールの樹脂封止構造を表す概略平面図である。 【0025】図4は、同モジュールの樹脂封止構造を表す概略断面図であり、図3のA-A’線断面を表している。 【0026】本実施形態においては、(100)シリコン基板上にウェットエッチングで側面が{111}面で構成される凹部1aを形成している。このエッチング液としては、例えばKOH溶液を用いることができる。また、凹部形成後に、シリコン基板の表面には、酸化膜6が形成され基板表面の絶縁を確保している。また、本実施形態においても、配線経路は、リフトオフ法により形成した金属薄膜である。 【0027】本実施形態では、樹脂5(第1封止樹脂)で光半導体素子を覆うよう凹部内で樹脂封止(第1樹脂封止)した後、樹脂5’(第2封止樹脂)で樹脂5(第1封止樹脂)を覆うように樹脂封止(第2樹脂封止)する、2重樹脂封止構造を用いている。内側の樹脂5(第1封止樹脂)としては、樹脂硬化後でも柔らかいゲル状あるいはゴム状の樹脂が望ましい。その材料としては、例えば、ゲル状の透光性アクリル樹脂やゲル状あるいはゴム状の透光性シリコーン樹脂を挙げることができる。外側の樹脂5’(第2封止樹脂)は、内側の柔らかい樹脂5(第1封止樹脂)を保護し、かつ水分の浸入、透過を防ぐために設けられている。その材料としては、例えば、透湿性の低い透光性エポキシ樹脂を挙げることができる。 【0028】封止樹脂の形成方法としては、光半導体素子とその周りの凹部の内に、内側の樹脂5(第1封止樹脂)の液状樹脂原料を塗布し、硬化させる。次に、所望の外形形状を成形した型に、外側の樹脂5’(第2封止樹脂)の樹脂原料を流し込んで、硬化させ、2重樹脂封止構造を形成している。外側の樹脂5’(第2封止樹脂)の光半導体素子2の上部には、光束を収斂させるための凸部が設けられている。 【0029】本実施形態によれば、このように凹部1a内に内側の樹脂5(第1封止樹脂)を形成することができるので、液状樹脂原料の粘度、基板との濡れ性、表面張力等の特性に余り関係なく、広い特性範囲の液状樹脂原料を用いることができる。したがって、第1樹脂封止に最適な液状樹脂原料を選択できるようになるため、光半導体素子の寿命および工程作業性を改善し、安価で信頼性の高い光半導体モジュールを得ることができるようになる。さらに、樹脂硬化時あるいは光半導体素子の発熱による樹脂と光半導体素子との間の歪みを柔らかい樹脂5(第1封止樹脂)で吸収し、外側の樹脂5’(第2封止樹脂)で水分の浸入、透過を抑制することができるため、より信頼性の高い光半導体モジュールを実現することができる。 【0030】また、本実施形態によれば、凹部1a内に内側の樹脂5(第1封止樹脂)を形成しているので、樹脂が広がってしまうことがなく、ほぼ安定した樹脂形状に形成することができ、内側の樹脂5(第1封止樹脂)の樹脂形状のばらつきによる光束のばらつきが小さい。したがって、光半導体素子と光ファイバ間の光学的結合効率のばらつきが小さく、光学的なトレランスが大きくなる。つまり、製造歩留まりの改善が可能となり、量産性に優れた光半導体モジュールを得ることができる。 キ 図13は、以下のものである(従来の樹脂封止構造)。 ク 図4は、以下のものである(第2の実施の形態の樹脂封止構造)。 2 引用文献に記載された発明 ア 上記(1)アの記載によれば、 引用文献には、 「凹部が設けられた光半導体素子搭載部材と、前記光半導体搭載部材の凹部の底部に設けられた光半導体素子と、前記光半導体素子とその周囲の前記光半導体素子搭載部材の凹部の少なくとも一部を覆うように設けられた封止樹脂と、を備えた光半導体モジュール。」 が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)オ及びカの記載によれば、 引用文献には、上記アの「『半導体モジュール』を提供する方法』」が記載されているものと認められ、 その方法は「光半導体素子搭載部材をウェットエッチングして凹部を形成し、光半導体搭載部材の凹部に光半導体素子へ給電するための配線経路を設け、配線経路と光半導体素子との電気的接合を凹部内において行い、その後に」、光半導体素子と凹部を少なくとも1つの封止樹脂により覆い、その少なくとも1つの封止樹脂を凹部内に収めて封止するものであってもよいものと認められる。 ウ 上記(1)カの記載を踏まえて、図4を見ると、 上記アの「封止樹脂」の形成方法は、 「光半導体素子とその周りの凹部の内に、第1の樹脂(樹脂硬化後でも柔らかいゲル状あるいはゴム状の樹脂)の液状樹脂原料を塗布して硬化させ、次に、所望の外形形状を成形した型に、第2の樹脂(透湿性の低い透光性の樹脂)の樹脂原料を流し込んで硬化させ、外側の樹脂の光半導体素子2の上部に光束を収斂させるための凸部を形成する」ものであってもよいものと認められる。 エ 上記アないしウの記載から、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「凹部が設けられた光半導体素子搭載部材と、前記光半導体搭載部材の凹部の底部に設けられた光半導体素子と、前記光半導体素子とその周囲の前記光半導体素子搭載部材の凹部の少なくとも一部を覆うように設けられた封止樹脂と、を備えた光半導体モジュールを提供する方法であって、 光半導体素子搭載部材をウェットエッチングして凹部を形成し、光半導体搭載部材の凹部に光半導体素子へ給電するための配線経路を設け、配線経路と光半導体素子との電気的接合を凹部内において行い、その後に、 光半導体素子とその周りの凹部の内に、第1の樹脂(樹脂硬化後でも柔らかいゲル状あるいはゴム状の樹脂)の液状樹脂原料を塗布して硬化させ、次に、所望の外形形状を成形した型に、第2の樹脂(透湿性の低い透光性の樹脂)の樹脂原料を流し込んで硬化させ、外側の樹脂の光半導体素子の上部に光束を収斂させるための凸部を形成する、 光半導体モジュールを提供する方法。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「光半導体素子」は本願発明の「半導体発光デバイス」に相当し、同様に、 「光半導体搭載部材」は「基板」に、 「凹部」は「空洞」に、 「配線経路」は「接続部分」に、 「電気的接合」は「電気的に接続」及び「電気的接続」に、 「塗布」は「塗布」に、 「第1の樹脂(樹脂硬化後でも柔らかいゲル状あるいはゴム状の樹脂)の液状樹脂原料」は「軟樹脂」に、 「光束を収斂させるための凸部」は「光素子」に、 「第2の樹脂(透湿性の低い透光性の樹脂)の樹脂原料」は「光素子の樹脂」に、それぞれ、相当する。 (2)引用発明は、光半導体素子搭載部材の凹部に光半導体素子を設け、その光半導体素子を覆うように封止樹脂を硬化させていることに照らせば、 引用発明は「光半導体素子」を「パッケージングする方法」であるといえる。 してみると、引用発明と本願発明とは「半導体発光デバイスのパッケージングの方法であって、 半導体発光デバイスを上に搭載するように構成された基板を作製するステップと、 前記基板の空洞中に前記半導体発光デバイスを搭載するステップと、 前記基板の接続部分に、前記半導体発光デバイスを電気的に接続するステップと、」を有する点で一致する。 (3)引用発明は、配線経路と光半導体素子との電気的接合を凹部内において行い、その後に、「光半導体素子とその周りの凹部の内に、第1の樹脂(樹脂硬化後でも柔らかいゲル状あるいはゴム状の樹脂)の液状樹脂原料を塗布して硬化させ」ているものであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは「前記空洞中にある電気的接続を行った半導体発光デバイス上に軟樹脂を塗布するステップ」を有する点で一致する。 (4)引用発明は「所望の外形形状を成形した型に、第2の樹脂(透湿性の低い透光性の樹脂)の樹脂原料を流し込んで硬化させ、外側の樹脂の光半導体素子の上部に光束を収斂させるための凸部を形成する」ものであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは「前記基板上に光素子の樹脂を入れるステップを含む、前記半導体発光デバイス上に、光素子を形成するステップ」を有することで共通する。 (5)してみると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「半導体発光デバイスのパッケージングの方法であって、 半導体発光デバイスを上に搭載するように構成された基板を作製するステップと、 前記基板の空洞中に前記半導体発光デバイスを搭載するステップと、 前記基板の接続部分に、前記半導体発光デバイスを電気的に接続するステップと、 前記空洞中にある電気的接続を行った半導体発光デバイス上に軟樹脂を塗布するステップと 前記基板上に光素子の樹脂を入れるステップを含む、前記半導体発光デバイス上に、光素子を形成するステップと を有する、方法。」 (6)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 光素子を形成するステップに関し、 本願発明は、「『選択された注入圧力で』『樹脂を注入するステップを含む』『液体注入モールドで形成するステップ』」であるのに対して、 引用発明は、選択された注入圧で流し込まれているのか不明であり、液体注入モールドで形成しているか否かも不明である点。 <相違点2> 光素子に関し、 本願発明は、「基板に接着された」ものであるのに対して、 引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。 4 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 引用発明は「所望の外形形状を成形した型」に「樹脂原料を流し込んで硬化させ」るものであるところ、 所望の外形形状に形成した型に「液状の樹脂原料」を注入するモールド方法が本願の優先日時点で周知(例えば、 (ア)特開2002-314100号公報の【0044】及び図1を参照。 【0044】には、ケースとレンズ成形板との隙間から液状の樹脂を強制的に充填することが記載されている。 (イ)特開平5-251485号公報の【0019】ないし【0030】及び図1を参照。 【0030】には、圧力調整弁を開状態として、液状透光性樹脂を注入硬化させること、金型内を真空状態にすること等が記載されている。 (ウ)特開平2-1179号公報の第6頁右下欄第6ないし13行及び第5図(B)を参照。 透明エポキシ樹脂の注入方法として、液状の樹脂を注入するキャスティング法と、固形樹脂材料を溶解させ鋳型の中に注入するトランスファーモールド法等のあることが記載されている。 (エ)特開昭61-102760号公報の第1頁右欄第16行ないし第2頁左上欄第17行及び第1図を参照。 上型と下型の隙間に液状樹脂を流し込むこと、注入時の液状樹脂粘度を高くすると、樹脂注入圧の影響を受けてインナーリード部全体が大きく変形し、さらには成形樹脂中に多量の気泡を取り込む等の問題があることが記載されている。 (オ)特開昭58-85539号公報の第2頁左上欄第17行ないし同頁右上欄第10行及び第2図を参照。 液状樹脂を上ケースと下ケースとで囲まれた空間内に満たすこと、加圧注入すること等が記載されている。 (カ)特開昭56-46716号公報の第2頁左上欄第1行ないし同頁右上欄第14行及び第1図を参照。 液状の熱硬化性合成樹脂をキャビティー内に圧送すること、空隙からキャビティー内の空気を逃がすこと等が記載されている。 (キ)実願昭50-58041号(実開昭51-137467号公報)のマイクロフィルムの第2頁第17行ないし第4頁第11行び第3図を参照。 圧縮空気を送り込むことで、液状樹脂材を注入口からパッケージに注入充填することが記載されている。 以下「周知技術」という。)であることに照らせば、 「液状の樹脂原料」を注入するようになすことは、当業者が容易になし得たことであり、どの程度の注入圧とするかは、樹脂の流動性や成型した型の形状等を勘案して当業者が適宜設定し得たことである。 イ 以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。 (2)上記<相違点2>について検討する。 ア 引用文献の記載に照らせば(摘記ウを参照。)、 従来の光半導体モジュールの樹脂封止構造では、光半導体素子と基板の一部が樹脂で封止されていたものと認められるところ、 引用発明においても、光半導体素子と基板(光半導体素子搭載部材)の一部が樹脂で封止されるように、「第2の樹脂部」を凹部の周囲の「光半導体素子搭載部材」の一部を覆うように形成することは必要に応じて適宜なし得たことである。 そして、引用発明の「第2の樹脂部」は、第1の樹脂部を保護するとともに、水分の浸入、透過を防ぐために設けられるものであることに照らせば(摘記カを参照。)、 光半導体素子搭載部材と第2の樹脂部とが接する部分では、両者が接着した状態である方が望ましいことは明らかである。 イ 以上の検討からして、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明、引用文献に記載の事項及び周知技術から予測し得る範囲内のものである。 (4)平成25年1月18日付け回答書における主張 ア 請求人が、「3.本願発明が特許さされるべき理由」において、 (ア)「広辞苑第六版によれば『流し込む』という語は、『流して中に入れ込む。流し入れる。』という意味を有し、『所定の圧力で注入する』ことを想起させるものではない。また、『型に流し込む』という場合、上面が外部に開放された型に液体を流して入れる場合のように、周囲と同じ圧力の状態の液体を注ぎ込む場合に一般に用いられる表現であって、加圧した状態を示すものではない。」 (イ)「引用発明においては圧力の有無を考慮しない方法の発明が記載されているというべきであって、本願発明とは本質的に異なる発明が記載されていることに他ならないというべきである。」 と主張している点について、以下検討する。 イ 引用文献の「所望の外形形状を成形した型に、外側の樹脂5’(第2封止樹脂)の樹脂原料を流し込んで、硬化させ、2重樹脂封止構造を形成している。外側の樹脂5’(第2封止樹脂)の光半導体素子2の上部には、光束を収斂させるための凸部が設けられている。」(摘記カを参照。)との記載に照らせば、 上記樹脂原料は、成形した型の内側から凸部の形状に沿うように流れることで凸部を形成し得る「流動性の樹脂」であることが理解できる。 ウ そして、「流動性の樹脂」を型に入れる際に、加圧して入れることを「樹脂を流し込む」と表現する場合のあることに照らせば、 「加圧した状態」が排除されているのではなく、どのようにして樹脂原料を流し込むかは、当業者が引用文献に記載された発明を実施する際に、樹脂の流動性等を勘案して適宜決め得るべき事項であって、その原料を加圧して流し込むか否かは、当業者に委ねられていると解するのが自然である(例えば、 (ア)特開平9-92669号公報の【特許請求の範囲】を参照。 (イ)特開平3-204945号公報の第2頁左下欄を参照。 (ウ)特開平2-277611号公報の特許請求の範囲を参照。 (エ)特開平1-103417号公報の第1頁右欄ないし第2頁左上欄を参照。 (オ)上記周知技術で例示した、特開昭61-102760号公報の第1頁右欄第16行ないし第2頁左上欄第17行を参照。)。 エ したがって、請求人の上記主張は採用できない。 5 進歩性についてのまとめ 本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明、引用文献に記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明、引用文献に記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-08 |
結審通知日 | 2013-02-12 |
審決日 | 2013-02-25 |
出願番号 | 特願2007-214709(P2007-214709) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多田 春奈、松崎 義邦 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 小松 徹三 |
発明の名称 | 液体注入モールド法による半導体発光デバイスパッケージの形成方法、及びモールドされた半導体発光デバイスリボン |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 清水 邦明 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 亀山 育也 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |