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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1276732
審判番号 不服2012-21094  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-25 
確定日 2013-07-08 
事件の表示 特願2007-315101「蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月25日出願公開、特開2009-139583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年12月5日の出願であって、平成24年1月5日に手続補正がなされ、同年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成24年12月28日付けの審尋に対して平成25年2月27日付けで回答書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年10月25日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成24年10月25日付け補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「端部にロール直径より小さくなる傾斜部であって、当該端部から連続して傾斜した傾斜部を有するロールに架け渡されるための、蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、
前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に厚みが0.05mm?0.1mmである補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に厚みが0.05mm?0.1mmである補強材を設け、
前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm?2mm大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm?2mmずれて設けるように構成し、
前記ロールに前記エンドレスベルトが掛け渡されるとき、前記傾斜部に前記蛇行防止ガイドが位置することを特徴とする蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-60038号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。
(1)「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である無端シート状ベルト10を用いたベルト駆動装置1を示す。このベルト駆動装置1では、所定距離だけ離れて平行に配置された2つのローラ12,14に無端シート状ベルト10が掛け渡されている。ローラ14の両端部はスプリング16によってローラ12から離れる方向に付勢されており、これによりベルト10には例えば30Nの張力が付与されている。
【0017】
ベルト10の具体的構成を例示すれば、周長580mm、幅260mm、厚さ150μmで、主成分がポリカーボネート(すなわちPC、ヤング率1600N/mm^(2))からなるものと、ポリフェニレンサルファイド(すなわちPPS、ヤング率1500N/mm^(2))からなるものの2種類がある。両方の種類ともに、カーボンブラックを分散して、表面抵抗が10^(8)?10^(12)Ω/□(Ω/cm^(2))となるように調整されている。
【0018】
2つのローラ12,14のうち、一方のローラが駆動ローラ(例えば直径20mm)で、他方のローラが従動ローラ(例えば直径25mm)であり、駆動ローラが図示しないモータによって駆動されることによりベルト10は例えば200mm/sの速度で矢印A方向に回転駆動されるようになっている。
【0019】
前記ベルト駆動装置1におけるベルト蛇行防止機構としては、図3(B)に示す方式のものを採用している。すなわち、ベルト10の幅方向における一方の端部の内周面に、ベルト蛇行規制用のガイド部材13が接着されている。ガイド部材13は、例えば、幅4mmで厚さ1mmのウレタンゴムからなる。
【0020】
ガイド部材13は、円盤状のベルト蛇行規制部材18の外周面に形成された断面矩形状のガイド溝内に多少の隙間をもって嵌り込んでいる。ベルト蛇行規制部材18は、例えばポリアセタール(POM)からなり、ローラ12から独立して回転可能になっており、ベルト10の回転によるガイド部材13の移動にしたがって従動回転するようになっている。
【0021】
ガイド部材13を設けたベルト10の端部の外周面には、テープ状の補強部材11が接着剤によって貼着されている。補強部材11は、引張降伏伸びを有しない材質からなっており、その材質としては例えばポリイミド樹脂(PI)やポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)などが好適に用いられる。このように補強部材11の材質として引張降伏伸びを有しないものを用いれば、蛇行規制されるときにベルト端部に引張力が作用しても補強部材11が塑性変形して永久ひずみが残ってしまうことがなく、これにより補強部材11のうき・しわの発生が防止されて補強効果が損なわれず、無端状ベルトを長期にわたって安定して使用することができる。
【0022】
また、補強部材11はベルト10以上のヤング率を有しいることが好ましい。これにより、ベルト端部に引張力が作用しても補強部材11の厚みが薄くても歪みにくく、引張力に対する補強効果がより一層増大する。この場合、補強部材11の厚みが大きくなると、補強部材11のこしが強くなってベルト10からはがれやすくなるので、その厚みは100μm以下であることが好ましい。
【0023】
なお、本実施形態におけるベルト10では、図4(A)に示すようにベルト端部の内周面にガイド部材13を接着する一方でその外周面に補強部材11を接着したが、図4(B)に示すようにベルト端部の内周面に補強部材11を接着して、その上にガイド部材13を接着してもよい。
【0024】
上述したベルト駆動装置1のように、無端状ベルト10の端部における内周面にゴム等のガイド部材13を設けて蛇行規制する方式では、補強部材11として求められる重要な特性値は引張試験によるものである。ベルト10が回転するときに蛇行が大きいと、ガイド部材13がベルト蛇行規制部材18のガイド溝18aの側壁に一時的に乗り上げかかることがある。
【0025】
図5(A)に示すように、ベルト10が蛇行により矢印P方向に移動して、ガイド部材13がガイド溝18aの内側側壁に乗り上げかかったとき、ベルト10には引張応力が発生し、この引張応力がベルト10の材質の引張降伏強さを超えるとベルト10の端部近傍領域Qでベルト割れが生じやすい。
【0026】
一方、図5(B)に示すように、ベルトが蛇行により矢印R方向に移動して、ガイド部材13がガイド溝18aの外側側壁に乗り上げかかったとき、ベルト10には座屈方向の力が作用することになるが、ベルト端部領域Sについて見るとやはり引張応力が発生しており、この引張応力がベルト10の材質の引張降伏強さを超えるとベルト10の端部領域Sでベルト割れが生じやすい。
【0027】
また、補強部材11が引張降伏伸びを有する材質からなる場合には、ベルト端部に引張降伏強さを超える引張応力が作用すると、補強部材11が塑性変形して永久ひずみを生じてしまい、これにより図6に示すように補強部材11にうき・しわTが発生する。その結果、うき・しわTが発生した箇所では補強部材11がその補強効果を発揮し得ないことから、その箇所でベルト割れが発生することになる。
【0028】
そこで、本実施形態のベルト10では、上述したような補強部材11のうき・しわTの発生を防止してベルト割れが生じないようにするために、補強部材11が引張降伏伸びを有しない材質からものとしたものである。
【0029】
なお、上述したヤング率、引張降伏強さ、引張降伏伸びは、引張試験によって得られる値であり、この引張試験についてはJIS・K7127「プラスチックの引張試験方法」に記載されている。図7に示すように、引張降伏強さVとは「荷重-伸び曲線上で荷重の増加なしに伸びの増加が認められる最初の点における引張応力」であり、引張降伏伸びとは「引張降伏強さに対応する伸び」である。
【0030】
次に、本実施形態のベルト駆動装置1を用いて行ったベルト10の耐久試験について説明する。
この耐久試験では、ローラ12の一端部を他端部に対して1mm高くすることによりローラ12,14間の平行度をずらした状態で、ベルト10を50万回転させてベルト割れが発生するかどうかを調べた。
【0031】
耐久試験におけるベルト駆動装置1のベルト10、ローラ12,14、ガイド部材13についての各種条件は、上述した各具体例のものを用いた。また、ベルト10に接着した補強部材11については、それぞれ厚さ50μmおよび幅12mmで、材質がポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の4種類のものを用いた。
【0032】
その耐久試験の結果を下記の表に示す。
【表1】

【0033】
上記表に示すように、補強部材11の厚さが50μmの場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリフェニレンサルファイド(PPS)については、耐久開始から1万回転したあたりで、補強部材11にうき・しわが発生し、その箇所からベルト10に亀裂が生じて破損したが、ポリイミド(PI)およびポリエチレンナフタレート(PEN)については、50万回転させてもベルト10は破損することなく安定して回転していた。
【0034】
一方、補強部材11の厚さが100μmの場合、ヤング率の比較的高いポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリエチレンテレフタレート(PET)の各補強部材11では、10万回転したあたりから補強部材11がはがれてきて、その箇所からベルト10に亀裂が生じて破損した。また、厚み100μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)の補強部材11では、はがれは生じないものの、10万回転あたりで補強部材11のうき・しわが発生し、その箇所からベルト10に亀裂が生じて破損した。
【0035】
上記耐久試験の結果から、補強部材11としては、引張降伏伸びを有しない材質であって、かつ、例えばヤング率1500?1600N/mm^(2)のベルト10以上のヤング率を有する例えばポリイミド(PI)およびポリエチレンナフタレート(PEN)が適していることが確認できた。
【0036】
なお、上述した実施形態では、ガイド部材13をベルト10の幅方向における一方の端部に設けてベルト蛇行規制を行う方式のベルト駆動装置1について説明したが、本発明は図3(A)に示すようにガイド部材13をベルト10の幅方向における両端部に設けてベルト蛇行規制を行う方式のものについても適用可能である。」

(2)図3(A),(B)の記載から、補強部材11の幅12mmが、ガイド部材13の幅4mmよりも大きく、かつ、補強部材11の幅方向の端部が、ガイド部材13の幅方向の端部よりベルト10の中央側に8mm程度又はそれよりも短い長さだけずれていることが見て取れる。

(3)上記(1)及び(2)から、引用例には、
「所定距離だけ離れて平行に配置された2つのローラに掛け渡されてベルト駆動装置を構成し、ベルト駆動装置におけるベルト蛇行防止機構として、ベルトの幅方向における一方の端部又は両端部の内周面に、幅4mmで厚さ1mmのウレタンゴムからなるベルト蛇行規制用のガイド部材を接着し、ガイド部材を設けたベルトの端部の外周面に、その厚みが100μm以下のテープ状の補強部材を接着剤によって貼着しており、主成分がポリカーボネート(すなわちPC、ヤング率1600N/mm^(2))又はポリフェニレンサルファイド(すなわちPPS、ヤング率1500N/mm^(2))からなる無端シート状ベルトにおいて、
前記補強部材のうき・しわの発生を防止してベルト割れが生じないようにするために、前記補強部材の材質を、引張降伏伸びを有しない材質であって、かつ、ベルトのヤング率以上のヤング率を有する材質である、例えば、ポリイミド(PI)又はポリエチレンナフタレート(PEN)とした、無端シート状ベルトであって、
ベルト端部の内周面にガイド部材を接着する一方でその外周面に補強部材を接着するのに代えて、ベルト端部の内周面に補強部材を接着してその上にガイド部材を接着してもよく、
前記補強部材の厚さは50μm又は100μmであり、前記補強部材の幅は12mmであり、前記補強部材の幅が、前記ガイド部材の幅よりも大きく、かつ、前記補強部材の幅方向の端部が、前記ガイド部材の幅方向の端部より前記ベルト中央側に8mm程度又はそれよりも短い長さだけずれている、
無端シート状ベルト。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ローラ」、「掛け渡され」、「ベルト蛇行規制用のガイド部材」、「主成分がポリカーボネート(すなわちPC、ヤング率1600N/mm^(2))又はポリフェニレンサルファイド(すなわちPPS、ヤング率1500N/mm^(2))からなる」、「無端シート状ベルト」及び「補強部材」は、それぞれ、本願発明の「ロール」、「架け渡され」、「蛇行防止ガイド」、「樹脂製」、「エンドレスベルト」及び「補強材」に相当する。

(2)引用発明の「エンドレスベルト(無端シート状ベルト)」は、所定距離だけ離れて平行に配置された2つの「ロール(ローラ)」に「掛け渡され」てベルト駆動装置を構成し、ベルト駆動装置におけるベルト蛇行防止機構として、ベルトの幅方向における一方の端部又は両端部の内周面に、幅4mmで厚さ1mmのウレタンゴムからなる「蛇行防止ガイド(ベルト蛇行規制用のガイド部材)」を接着し、「蛇行防止ガイド」を設けたベルトの端部の外周面に、その厚みが100μm以下のテープ状の「補強材(補強部材)」を接着剤によって貼着しており、「樹脂製(主成分がポリカーボネート(すなわちPC、ヤング率1600N/mm^(2))又はポリフェニレンサルファイド(すなわちPPS、ヤング率1500N/mm^(2))からなる)」のものであるから、本願発明の「エンドレスベルト」と、「ロールに架け渡されるための、蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製の」点で一致する。さらに、引用発明の「補強材」の厚さは50μm又は100μmであるから、引用発明の「補強材」と本願発明の「補強材」とは、「厚みが0.05mm?0.1mmである」点、「『蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面』に『設』け」る点で一致する。また、引用発明では、ベルト端部の内周面に「補強材」を接着してその上に「蛇行防止ガイド」を接着してもよいから、引用発明の「補強材」と本願発明の「補強材」とは、「『前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間』に『介在』させ」る点でも一致する。

(3)引用発明では、「蛇行防止ガイド(ガイド部材)」の幅は4mmであり、「補強材(補強部材)」の厚さは50μm又は100μmであり、前記「補強材」の幅は12mmであり、前記「補強材」の幅が、「蛇行防止ガイド」の幅よりも大きく、かつ、前記「補強材」の幅方向の端部が、前記「蛇行防止ガイド」の幅方向の端部より「エンドレスベルト(ベルト)」中央側に8mm程度又はそれよりも短い長さだけずれているから、引用発明の「エンドレスベルト」と、本願発明の「前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm?2mm大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm?2mmずれて設けるように構成し、前記ロールに前記エンドレスベルトが掛け渡されるとき、前記傾斜部に前記蛇行防止ガイドが位置することを特徴とする蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」とは「前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm以上大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm以上ずれて設けるように構成し、前記ロールに前記エンドレスベルトが掛け渡される蛇行防止ガイド付」のものである点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明とは、
「ロールに架け渡されるための、蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、
前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に厚みが0.05mm?0.1mmである補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に厚みが0.05mm?0.1mmである補強材を設け、
前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm以上大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm以上ずれて設けるように構成し、
前記ロールに前記エンドレスベルトが掛け渡される、
蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記蛇行防止ガイドの幅に対する前記補強材の幅の差の上限が、本願発明では「2mm」であるのに対して、引用発明では明らかでない点。

相違点2:
前記蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への前記補強材の幅方向の端部のずれ量の上限が、本願発明では「2mm」であるのに対して、引用発明では明らかでない点。

相違点3:
本願発明では、前記ロールが、端部にロール直径より小さくなる傾斜部であって、当該端部から連続して傾斜した傾斜部を有し、該ロールに前記エンドレスベルトが掛け渡されるとき、この傾斜部に前記蛇行防止ガイドが位置するのに対して、
引用発明では、前記ロールが傾斜部を有していない点。

5 判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1及び2について
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には、「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差の上限が2mmである」点及び「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量の上限が2mmである」点について次の(ア)ないし(エ)の記載がある。
(ア)「本発明は、蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に補強材を設け、前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm?2mm大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm?2mmずれて設けるように構成したことを特徴とする。この構成によれば、補強材によって、ベルトと蛇行防止ガイドの設置付近が補強され、その付近の変形が抑制されるため、蛇行が生じにくくなり、蛇行防止ガイド部がロール部に乗り上げることを防止できる。よって、プリンター等に用いられる場合、印字不良等が生じることがない。」(【0007】、【0008】)
(イ)「補強材の幅サイズは、蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm?2mmの範囲で大きく設定される。蛇行防止ガイドの幅サイズは、用途に応じて設定され、また、ロールの幅も設定されることにより、補強材のサイズもそれらに応じて設定される。0.5mm未満であると、厚みにもよるが補強力の観点から好ましくなく、2mmを超える場合、ロールの平滑性、他の部材への悪影響から好ましくない。また、補強材の厚みは、0.05mm?0.1mmの範囲に設定される。」(【0017】)
(ウ)「補強材は、その幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm?2mmずれて設けられる。この場合、補強材の一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に、ずれるように貼付されることが好ましい。」(【0018】)
(エ)「表1に示すように、補強テープの厚みが0.05mmで、補強テープの一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部が蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に0.5mm以上ずれるように貼付してある場合には、回転駆動前においてガイド部がロールへ乗り上げ状態であっても、回転開始により直ちに乗り上げ状態が解消され、正常に回転することがわかった。」(【0028】)
イ 上記アの(ア)では、「補強材によって、ベルトと蛇行防止ガイドの設置付近が補強され、その付近の変形が抑制されるため、蛇行が生じにくくなり、蛇行防止ガイド部がロール部に乗り上げることを防止できる」ようにするための構成に「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差の上限が2mmである」点及び「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量の上限が2mmである」点が含まれているが、その理由は開示されていない。
ウ 上記アの(イ)では、「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差の上限が2mmである」理由として「2mmを超える場合、ロールの平滑性、他の部材への悪影響から好ましくない」旨記載されているが、同時に、「蛇行防止ガイドの幅サイズは、用途に応じて設定され、また、ロールの幅も設定されることにより、補強材のサイズもそれらに応じて設定される」と記載されているから、この記載からみて、ロールの平滑性、他の部材への悪影響から好ましくない「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差」は、蛇行防止ガイドの幅サイズとロールの幅とに関係するものと解される。
エ 上記ア(ウ)及び(エ)からみて、回転駆動前においてガイド部がロールへ乗り上げ状態であっても、回転開始により直ちに乗り上げ状態が解消され、正常に回転するようになすには、「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量」が0.5mm以上あればよいものと解される。
オ 上記イないしエのとおりであるから、本願発明における「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差の上限」及び「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量の上限」は、補強材を設けてもロールの平滑性を維持でき、補強材が他の部材への悪影響を生じないように、蛇行防止ガイドの幅サイズとロールの幅とに関係で決定すべき事項であるといえる。
カ 引用発明では、「蛇行防止ガイドの幅」は4mmであり、「補強材の幅」は12mmであるから、「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差」は8mmであり、「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量」は、8mm程度又はそれよりも短い長さであるところ、引用発明の「補強材」は、「ロール(ローラ)」の平滑性を維持できなくしてはおらず、他の部材への悪影響を生じてもいない。
キ 以上のとおりであるから、本願発明において、「蛇行防止ガイドの幅に対する補強材の幅の差の上限」を「2mm」とした点及び「蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側への補強材の幅方向の端部のずれ量の上限」を「2mm」とした点、すなわち、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成は、いずれも、当業者が適宜決定することができた設計上の事項にすぎない。

(2)相違点3について
ア 引用発明の「蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」を、「端部にロール直径より小さくなる傾斜部であって、当該端部から連続して傾斜した傾斜部を有するロール」(原査定で引用された特開2000-75729号公報の【0024】及び図2に記載のものが相当する。駆動ローラ5のローラ本体6の両端部は、段差8による案内用壁面9を有しているが、小径部7の周面10は、傾斜しており、かつ案内用壁面9から連続しているから、駆動ローラ5あるいはローラ本体6は、「端部にロール直径より小さくなる傾斜部であって、当該端部から連続して傾斜した傾斜部を有」しているといえる。)の「傾斜部」に、前記「蛇行防止ガイド」が位置するように架け渡しすることができることは、当業者に自明である。
イ 上記アからみて、引用発明の「蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」は、「端部にロール直径より小さくなる傾斜部であって、当該端部から連続して傾斜した傾斜部を有するロールの傾斜部」に、前記「蛇行防止ガイド」が位置するように架け渡しすることができるものであるから、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-10 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2007-315101(P2007-315101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 蛇行防止ガイド付エンドレスベルト  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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