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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D |
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管理番号 | 1276738 |
審判番号 | 不服2012-13262 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-11 |
確定日 | 2013-07-12 |
事件の表示 | 特願2008- 81669「エンジンのクランク角検出方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-235963〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成20年3月26日の出願であって、平成22年11月5日付けの手続補正書により明細書について補正する手続補正がなされ、平成23年11月25日付けの拒絶理由通知に対して平成24年1月24日付けで意見書が提出されるとともに同日付けの手続補正書により特許請求の範囲について補正する手続補正がなされたが、平成24年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年7月11日に拒絶査定不服の審判が請求されると同時に同日付けの手続補正書により特許請求の範囲について補正する手続補正がなされ、その後、当審における平成24年10月2日付けの書面による審尋に対して、平成24年11月28日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成24年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成24年7月11日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.本件補正について (1)本件補正の内容 平成24年7月11日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年1月24日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の下記(a)に示す請求項1及び2の記載を、下記(b)に示す請求項1及び2と補正するものである。 (a)本件補正前の請求項1及び2 「【請求項1】 外周に所定間隔で連続して形成された歯の一部を欠いた歯欠け部を有するクランクパルスロータをエンジンのクランク軸に連結し、クランク軸の回転中に互いに隣接する歯同士の時間間隔を計測し、連続する時間間隔を比較することによって歯欠け部を検出するエンジンのクランク角検出方法において、 前記クランクパルスロータに形成した連続する複数の歯を、上死点の前後に亘って配置し、 前記時間間隔の前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算し、 最初に算出したクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に算出したクランクパルス間隔の比率は先に算出したクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行い、 エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を前記歯欠け部として決定することを特徴とするエンジンのクランク角検出方法。 【請求項2】 エンジンのクランク軸に連結され、外周に所定間隔で連続して形成された歯の一部を欠いた歯欠け部を有するクランクパルスロータと、前記クランクパルスロータの外周に対向して配置されたクランク角センサと、クランク軸の回転中に前記クランク角センサで感知された前記歯の感知信号に基づいて互いに隣接する歯同士の時間間隔を計測する間隔算出手段とを有し、連続する時間間隔を比較することによって歯欠け部を検出するように構成されたエンジンのクランク角検出装置において、 前記クランクパルスロータに形成された連続する複数の歯が、上死点の前後に亘る範囲に位置するように配置されており、 前記時間間隔の前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算する比率算出手段と、 エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を前記歯欠け部として決定する最大比率検出手段とを具備し、 前記最大比率検出手段が、前記比率算出手段から最初に入力されたクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に入力されたクランクパルス間隔の比率は先に入力されたクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行うように構成されていることを特徴とするエンジンのクランク角検出装置。」 (b)本件補正後の請求項1及び2 「【請求項1】 外周に所定間隔で連続して形成された歯の一部を欠いた歯欠け部を有するクランクパルスロータをエンジンのクランク軸に連結し、クランク軸の回転中に互いに隣接する歯同士の時間間隔を計測し、連続する時間間隔を比較することによって歯欠け部を検出するエンジンのクランク角検出方法において、 前記エンジンが単気筒エンジンであり、前記クランクパルスロータに形成した連続する複数の歯を、上死点の前後に亘って配置し、かつ吸気弁の開弁期間中に前記歯欠け部が位置するように構成されており、 前記時間間隔の前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算し、 最初に算出したクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に算出したクランクパルスの間隔の比率は先に算出したクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行い、 エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を前記歯欠け部として決定することを特徴とするエンジンのクランク角検出方法。 【請求項2】 エンジンのクランク軸に連結され、外周に所定間隔で連続して形成された歯の一部を欠いた歯欠け部を有するクランクパルスロータと、前記クランクパルスロータの外周に対向して配置されたクランク角センサと、クランク軸の回転中に前記クランク角センサで感知された前記歯の感知信号に基づいて互いに隣接する歯同士の時間間隔を計測する間隔算出手段とを有し、連続する時間間隔を比較することによって歯欠け部を検出するように構成されたエンジンのクランク角検出装置において、 前記エンジンが単気筒エンジンであり、前記クランクパルスロータに形成された連続する複数の歯が、上死点の前後に亘る範囲に位置するように配置されており、かつ吸気弁の開弁期間中に前記歯欠け部が位置するように構成されており、 前記時間間隔の前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算する比率算出手段と、 エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を前記歯欠け部として決定する最大比率検出手段とを具備し、 前記最大比率検出手段が、前記比率算出手段から最初に入力されたクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に入力されたクランクパルス間隔の比率は先に入力されたクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行うように構成されていることを特徴とするエンジンのクランク角検出装置。」(なお、下線は審判請求人が付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲において、請求項1に関しては、「前記エンジンが単気筒エンジンであり、」の文言を付加するとともに、本件補正前の請求項1における「前記クランクパルスロータに形成した連続する複数の歯を、上死点の前後に亘って配置し、‥‥」の記載を「前記クランクパルスロータに形成した連続する複数の歯を、上死点の前後に亘って配置し、かつ吸気弁の開弁期間中に前記歯欠け部が位置するように構成されており、‥‥」と補正し、また、請求項2に関しても、「前記エンジンが単気筒エンジンであり、」の文言を付加するとともに、本件補正前の請求項2における「前記クランクパルスロータに形成された連続する複数の歯が、上死点の前後に亘る範囲に位置するように配置されており、‥‥」の記載を「前記クランクパルスロータに形成された連続する複数の歯が、上死点の前後に亘る範囲に位置するように配置されており、かつ吸気弁の開弁期間中に前記歯欠け部が位置するように構成されており、‥‥」と補正するものである。 したがって、請求項1及び請求項2に関する補正事項は、それぞれ、本件補正前の請求項1及び請求項2に係る発明の発明特定事項に関して限定を付加するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における請求項1に関する補正事項は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正により補正される請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (1)引用文献の記載内容 (1)-1 引用文献1に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された特開2002-70708号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面(図1及び図2、並びに図5ないし図7)とともに次の事項が記載されている。 ア.「【0007】 【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1に示す如く、単気筒の内燃エンジン10は、吸気管(図示せず)から吸入した吸気と燃料噴射装置(図示せず)から噴射された燃料との混合気を燃焼室20に吸入し、吸入した混合気を燃焼させてピストン12を往復駆動せしめてクランクシャフト14を回転駆動する。燃焼室20において燃焼した混合気は、排気ガスとして、排気管(図示せず)へ排出される。 【0008】上述したクランクシャフト14には、回転体50がクランクシャフト14に連動するように設けられている。後述する如く、回転体50の外周部には、複数の被検出片である複数の磁気突起(図示せず)が設けられている。クランク角センサ16は、磁気突起の回転軌跡の近傍に位置するように設けられている。クランク角センサ16は、所定のクランク角毎、例えばクランク角20度毎に、磁気突起から発せられる磁束の変化に応じて磁気突起を検出したことを示す検出信号を発する。」(段落【0007】及び【0008】) イ.「【0011】上述した回転体50の外周部に形成された複数の被検出片である複数の磁気突起の配置を図2に示す。尚、図2は、内燃エンジン10のピストン12が上死点に位置するときにおける磁気突起の配置を示すものであり、ピストン12が下死点に位置するときにおける磁気突起の配置は、クランク軸14の回りに180度回転したものとなる。 【0012】図2に示す如く、円盤型の回転体50は、クランクシャフト14の回転運動に連動するようにクランクシャフト14上に設けられている。図中の矢印に示す如くクランクシャフト14が反時計方向に回転した場合には、回転体50も反時計方向に回転する。また、回転体50の外周部には、複数の被検出片である磁気突起52a?52oが所定の等角度間隔毎、例えば20度毎に設けられている。また、磁気突起52oと52aとが相隣り合ってなす角の角度間隔は、上述した等角度間隔より大きい角度間隔、例えば80度である。 【0013】クランク角センサ16は、磁気突起52a?52oの回転軌跡近傍に位置するように設けられており、クランク角センサ16は、磁気突起52a?52oがクランク角センサ16の近傍を通過する毎に、磁気突起から発せられる磁束の変化に応じて磁気突起を検出したことを示す検出信号を発する。以下においては、等角度間隔ごとに磁気突起が形成されている領域、即ち図2の一点破線で示す領域の如く、磁気突起52a?52oが形成されている回転体50の外周部の領域を被検出片形成域と称する。また、等角度間隔より大きい角度間隔を有して磁気突起が形成されていない領域、即ち図2の破線で示す領域の如く、磁気突起52oと52aとが相隣り合ってなす間において磁気突起が形成されていない回転体50の外周部の領域を非形成域と称する。」(段落【0011】ないし【0013】) ウ.「【0014】図2に示した如く、内燃エンジン10のピストン12が上死点から下死点へ移動する間において、磁気突起52oと52aとの2つの磁気突起がクランク角センサ16の近傍を通過するように、磁気突起52oと52aとは回転体50に設けられている。このような構成としたことにより、内燃エンジン10のピストン12が上死点から下死点へ移動する間において、磁気突起52oと52aとの2つの磁気突起に挟まれた非形成域の全域がクランク角センサ16の近傍を通過することとなる。また、ピストン12が上死点から下死点へ移動する間における内燃エンジンの行程は、爆発行程又は吸気行程のいずれかの行程である。上述した如き構成としたことにより、非形成域の全域がクランク角センサ16の近傍を通過するときにおける内燃エンジンの行程は、爆発行程又は吸気行程のいずれかの行程となるのである。 【0015】また、ピストン12が上死点近傍に位置したときに、内燃エンジン10の燃焼室20に吸入された混合気への点火がなされるが故に、ピストン12が上死点から下死点へ至るまでの間においてピストン12が上死点と下死点との中間近傍に位置するときに、ピストン12の速度は最大の速度となり、クランク軸及びクランク軸に連動する回転体50の回転速度も最大の速度となる。また、上述した如く、非形成域がクランク角センサ16の近傍を通過するときのエンジンの行程は、爆発行程又は吸気行程のいずれかの行程であり、また、爆発行程においては爆発によりピストン12が付勢されるが故に、爆発行程において非形成域がクランク角センサ16の近傍を通過する速度は、吸気行程において非形成域がクランク角センサ16の近傍を通過する速度よりも速い速度となるのである。」(段落【0014】及び【0015】) エ.「【0033】上述した経過時間TM1及びTM2と、非形成域及び被検出片形成域と、の関係を示すタイムチャートを図6(a)?(c)に示す。前回パルスと今回パルスとの間が非形成域に対応する場合には、図6(a)に示す如きタイムチャートとなる。図6(a)においては、今回パルスは磁気突起52aを検出したときに発せられるパルスであり、前回パルスは磁気突起52oを検出したときに発せられたパルスであり、前前回パルスは磁気突起52nを検出したときに発せられたパルスである。この図6(a)の場合は、前回パルスと今回パルスとの間が非形成域に対応する場合であるが故に、経過時間TM1の値は、経過時間TM2の値より大きい値となり、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比は1より小さい値となる。 【0034】また、前前回パルスと前回パルスとの間、及び前回パルスと今回パルスとの間が共に被検出片形成域に対応する場合の例を示すタイムチャートは、図6(b)に示す如きものとなる。図6(b)の例においては、今回パルスは磁気突起52hを検出して発せられるパルスであり、前回パルスは磁気突起52gを検出したときに発せられたパルスであり、前前回パルスは磁気突起52fを検出したときに発せられたパルスである。この図6(b)の例の場合には、内燃エンジンのクランク軸が一定の回転数で回転しているときには、経過時間TM1の値は、経過時間TM2の値と略等しい値となり、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比は略1となる。 【0035】更に、前前回パルスと前回パルスとの間が非形成域に対応する場合におけるタイムチャートは、図6(c)に示す如きものとなる。図6(c)の場合においては、今回パルスは磁気突起52bを検出したときに発せられるパルスであり、前回パルスは磁気突起52aを検出したときに発せられたパルスであり、前前回パルスは磁気突起52oを検出したときに発せられたパルスである。この場合には、経過時間TM1の値は、経過時間TM2の値より小さい値となり、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比は1より大きい値となる。 【0036】上述した図3に示したフローチャートのステップS19において実行される非形成域判別サブルーチンを示すフローチャートを図7に示す。図3のステップS19において本サブルーチンが呼び出されて実行されたときには、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比が第1所定値より大きいか否かを判断する(ステップS41)。 【0037】前前回パルスを検出したときから前回パルスを検出したときに至るまでの間に非形成域を検出しなかった場合(上述した図6(a)又は(b)に示す場合)には、上述したステップS41において、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比が第1所定値以下であると判別する。この第1所定値は、被検出片形成域における相隣り合う磁気突起の角度間隔及び非形成域をなす角度間隔と、内燃エンジン10のクランク軸の回転数の変動と、を考慮して予め定められた値、例えば2.5である。このステップS41の処理を実行した後、フラグF_LONG_PCの値を0に設定し(ステップS42)、本サブルーチンを終了する。尚、上述した如く、フラグF_LONG_PCは、前前回パルスと前回パルスとの間が非形成域に対応するか否かを示すフラグであり、前前回パルスと前回パルスとの間が非形成域に対応しないときにおけるフラグの値は0であり、前前回パルスと前回パルスとの間が非形成域に対応するときにおけるフラグの値は1である。 【0038】また、前前回パルスを検出したときから前回パルスを検出したときに至るまでの間に非形成域を検出した場合(上述した図6(c)に示す場合)には、上述したステップS41において、経過時間TM1に対する経過時間TM2の比が第1所定値より大きいと判別する。次いで、経過時間TM1に対する経過時間TM3の比が第2所定値より大きいか否かを判断する(ステップS43)。上述した図3のフローチャートのステップS32及びS33において、ステージ番号が10であると判別したときに経過時間TM3の値が定められるものであるが故に、経過時間TM3は、磁気突起52kの立ち上がり部を検出したときから磁気突起52lの立ち上がり部を検出したときに至るまでの経過時間を示すものとなる。また、図5に示した如く、この磁気突起52kと52lとは、圧縮行程又は排気行程において検出されるものであるので、経過時間TM3は、圧縮行程又は排気行程における経過時間となる。一方、経過時間TM1は、上述したステップS41において、前前回パルスを検出したときから前回パルスを検出したときに至るまでの間に非形成域を検出したと判別されたときのものであるが故に、図6(c)に示す如く、経過時間TM1は、磁気突起52aの立ち上がり部を検出したときから磁気突起52bの立ち上がり部を検出したときに至るまでの経過時間を示すものとなる。この磁気突起52aと52bとは、図5に示す如く爆発行程又は吸気行程において検出されるものであるので、経過時間TM1は爆発行程又は吸気行程における経過時間となる。上述した如き構成としたことにより、圧縮行程における経過時間TM3は、爆発行程における経過時間TM1に対応し、排気行程における経過時間TM3は、吸気行程における経過時間TM1に対応することとなる。」(段落【0033】ないし【0038】) したがって、引用文献1には、上記の記載事項ア.ないしエ.、図1、図2、及び図5ないし図7の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。 「外周に所定間隔で連続して形成された被検出片(磁気突起)52の一部を欠いた非形成域を有する回転体50を内燃エンジン10のクランクシャフト14に連動するように連結し、クランクシャフト14の回転中に互いに隣接する被検出片52間の経過時間を計測し、連続する経過時間を比較することによって非形成域を判別し決定する内燃エンジンの非形成域判別方法において、 内燃エンジン10が単気筒エンジンであり、回転体50に形成した連続する複数の被検出片52を、上死点の前後に亘って配置し、かつ吸気弁の開弁期間中に非形成域が位置するように構成されており、 前前回パルスと前回パルスとの間の経過時間TM2を今回のパルスと前回パルスとの間の経過時間TM1で除算して経過時間TM1に対する経過時間TM2の比を計算し、 クランクシャフト14が1回転する間に計算された経過時間の比(TM2/TM1)を、相隣合う被検出片の角度間隔や非形成域のなす角度と内燃エンジンのクランクシャフトの回転数の変動等を考慮して予め定められた第1所定値と比較し、経過時間の比(TM2/TM1)が第1所定値以上となるときの前前回パルスと前回パルスとの間を非形成域と判別決定するように構成した内燃エンジンの非形成域判別方法。」 (以下、「引用文献1に記載された発明」という。) (1)-2 引用文献2に記載された発明 原査定の拒絶理由に引用された特開平1-277662号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面(第1図ないし第3図)とともに次の事項が記載されている。 ア.「そこで、本発明は上述の事情に鑑み、回転体が回転を始めてからその基準回転角度位置が検出されるまでに必要とされる回転体の回転量が少ない回転体の回転角度位置検出方法を提供することを目的としている。 上述の目的を達成する為、本発明による回転体の回転角度位置検出方法においては、回転体にその回転方向において複数の被検知部を相隣り合う被検知部間の角度間隔のうちの1つが最大若しくは最小となるよう形成し、被検知部を検知してパルスを発生する検知素子を設け、パルスの発生間隔を計時して該発生間隔の前回値と今回値との比を算出し、回転体が1回転する毎に得られる被検知部の数と同数の比の中の最大値若しくは最小値を求め、これに応じて回転体の基準回転角度位置を検出することを特徴としている。」(第2ページ右上欄第1ないし16行) イ.「第1図に示した様に、本実施例においては、内燃機関(図示せず)のクランクシャフト1に円形の回転体2が取り付けられており、回転体2はクランクシャフト1と共に図の時計方向に回転する。回転体2の外周部には被検知部として7個の磁性突起3a,3b,・・・3f,3gが回転方向において磁性突起3g,3a間の角度間隔が最大となるよう形成されている。磁性突起3の回転軌跡近傍には磁性突起3が近傍を通過する毎にパルスを発生する検知素子5が設けられている。検知素子5は、例えば磁気コイルを内蔵した磁気センサからなっており、磁性突起3aを検知したときエンジンの第1気筒のピストンが上死点位置となるよう配設されている。」(第2ページ左下欄第16行ないし右下欄第9行) ウ.「上述したマイクロコンピュータMはCPU7及びROM8,RAMl0,クロックジェネレータ等から構成されており、パルスをもとに、後述するプログラムに従って、回転体2の回転角度位置すなわちクランクシャフト1の基準回転角度位置を検出し、クランクシャフト1が所定の回転角度位置に達したとき増幅器11を介して点火ユニット12に対し指令信号を出力するのである。」(第2ページ右下欄第17行ないし第3ページ左上欄第4行) エ.「第3図は、CPU7の動作を司るプログラムの一部を示したフローチャートである。このプログラムは上述したパルスの発生毎に、例えば、エンジンに供給される混合気の空燃比制御の為にプログラムされたメインルーチンに割込んで実行される。」(第3ページ右上欄第12ないし17行) オ.「そして、次のパルス発生により再びメインルーチンに割込んで割込サブルーチンが実行されると、ステップS1?Snが上述の手順で実行され、ステップS12の判別がなされる。今度はカウント値nはステップS15においてインクリメントされ2となっているのでステップS16に進み、フラグFaに1がセットされているか否か判別する。しかし、フラグFaにはステップS6において1がセットされたまま、未だゼロリセットされていないのでステップS17へ進み、ステップS11で取込んだ今回のタイマ値tnから前回のタイマ値tn-1を減算してパルスの発生間隔Δtnを得、これをカウント値nに対応させて記憶する。次いで、フラグFbに1がセットされているか否かを判別する(ステップS18)。フラグFbはエンジンの回転数Neが所定高速回転数例えば3000rpmを超えたときに1がセットされるフラグであり、電源投入直後のエンジン始動状態においてはフラグFbに1はセットされていないのでステップS19に進み、フラグFaに1がセットされているか否か判別する。ここでは、フラグFaは1がセットされたままであるから、更にパルスカウンタのカウント値nが2に等しいか否か判別する(ステップS20)。現在のカウント値はnは上述した様に2であるから、ステップS14を経てステップSI5に進みカウント値nをインクリメントして3とした後、メインルーチンの実行に戻る。 そして、次のパルス発生によりメインルーチンに割込んで割込サブルーチンが実行されると、前回の割込サブルーチンの実行と同様にステップS19まで進み、ステップS20の判別において今回はn=3であり、カウント値n=2ではないのでステップS21に進みステップSI7で求められたパルスの発生間隔の今回値Δtnと前回値Δtn-1との比Tnを求めこれをパルスカウンタのカウント値nに対応させて記憶する(n=3の場合にはT3=Δt3/Δt2)。次いで、フラグFaに1がセットされているか否かの判別を行なう(ステップS22)。フラグFaは未だ1がセットされたままであるのでステップS14→S15と進み、パルスカウンタのカウント値nがステップS14においてK+2(本実施例ではK+2=9)となるまでカウント値nが3の場合と同様に割込サブルーチンが実行され、比Tnを7つ(T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9)記憶する。7つの比Tnが記憶されると、その時のパルスカウンタのカウント値nはK+2に一致するのでステップS14からステップS23に進み、フラグFcに1がセットされているか否かを判別する。フラグFcはフラグFaがゼロリセットされた後エンジンの回転数Neが所定回転数領域内(例えば150rpm<Ne<2000rpm)に入ったときに1がセットされるフラグであり、現在までのところフラグFcに1はセットされていないので、ステップS24に進みステップS22において記憶された7つの比Tn-6,Tn-5,Tn-4,・・・Tnの中から最大の比Txを検索し、その最大の比Txが求められた時のパルスカウンタのカウント値xを求めてこのカウント値xをレジスタaに記憶する(ステップS25)。例えば、第2図の◎の時点で電源投入があり、エンジンが始動されたとすると、パルスカウンタのカウント値nが2となったときからパルスの発生間隔Δtnが求められ、カウント値nが3となったときから比Tn(=Δtn/Δtn-1)が求められる。従って、クランクシャフト1の基準回転角度位置を検出するに必要な情報量(Tnの数)を得るには始動時においてはカウント値nがK+2となるまで待たなくてはならなず(当審注:下線部は「ならず」の誤記と認める。)、それ故にステップS14においてカウント値nがK+2に等しくなったか否かの判断をしているのである。ところで、第2図に示した様に、エンジンが始動された場合、ステップS_(22)において記憶された7つの比(T3,T4,・・・T8,T9)のうち最大となるのは、第2図にも示した様に、T4でありその時のカウント値nは4である。従って、このカウント値4がレジスタaに記憶されるのである。 再び、フローチャートについて説明すると、ステップS25の実行の後、現在のカウント値nとレジスタaに記憶されたカウント値(4)とからクランクシャフト1の基準回転角度位置が現在のパルスカウンタのカウント値nからいくつカウント値nが遡った時点でクランクシャフト1の基準回転角度位置に対応した最大の比Txが得られたかが分かる。」(第4ページ右下欄第5行ないし第5ページ右下欄第8行) カ.「次のパルス発生により、割込サブルーチンが実行されると、ステップS1?S11まで上述の如く実行された後、ステップS12の判別が行なわれる。ここで、カウント値nはステップS15においてインクリメントされ、2となっているので、ステップS16へと進み、フラグFaに1がセットされているか否か判別される。フラグFaは上述した様に既にゼロリセットされているので、ステップS33へ進み、フラグFbに1がセットされているか否か判別する。フラグFbに1は未だセットされていないので、ステップS34へ進みフラグFcに1がセットされているか否か判別する。ここでもフラグFcに1は未だセットされていない。故に、ステップS17にてパルスの発生間隔Δtnを求めた後、ステップS18→S19→S21と進み比Tnを求めステップS22→S32→S15と進む。この動作をカウント値nがKと等しくなるまで実行しクランクシャフト1が1回転する毎に得られる所定数(7つ)の比Tnを求めた後、ステップS32からステップS23以下のステップへ進み実際のステージナンバとステージカウント値SCとのずれがあればこれを修正する。」(第6ページ右下欄第9行ないし第7ページ左上欄第10行) したがって、引用文献2には、上記の記載事項ア.ないしカ.及び図面(第1図ないし第3図)の記載から、次の発明が記載されているものと認められる。 「外周に所定間隔で連続して形成された被検知部(磁性突起)の一部を欠いた不等間隔部を有する回転体を内燃機関のクランクシャフトに連結し、クランクシャフトの回転中に互いに隣接する被検知部間のパルスの発生間隔Δtnを計測し、連続するパルスの発生間隔Δtn,Δtn-1を比較することによって不等間隔部を検出する内燃機関の回転角度位置検出方法において、 パルスの発生間隔Δtnの今回値Δtnを前回値Δtn-1で除算してパルスの発生間隔の比Tn(=Δtn/Δtn-1)を計算し、 クランクシャフトの1回転中において計算された複数のパルスの発生間隔の比T_(n-6)・・・Tnのうち、最大の比Txを検索し、その最大の比Txが求められたΔtxに対応する位置xを不等間隔部として決定し、クランクシャフトの基準回転角度位置を検出する内燃機関の回転角度位置検出方法。」(以下、「引用文献2に記載された発明」という。) (2)対比 本願補正発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明は、単気筒エンジンにおいて、外周に複数の被検出片が設けられた回転体の(被検出片の一部を欠いた)非形成域を判別する非形成域判別方法に関するものであるとはいえ、非形成域を判別しその位置を決定することにより、回転体すなわちクランクシャフトの基準角度位置を検出し得るものであり、内燃エンジンのクランク角検出方法を開示しているといえるものである。そして、引用文献1に記載された発明における「回転体50」、「被検出片52」、「非形成域」、「内燃エンジン10」、「クランクシャフト14」、及び「(互いに隣接する被検出片間の)経過時間」は、それらの形状、構造及びそれらの機能からみて、それぞれ、本願補正発明における「クランクパルスロータ」、「歯」、「歯欠け部」、「エンジン」、「クランク軸」、及び「(互いに隣接する歯同士の)時間間隔」に相当する。 また、引用文献1に記載された発明においては、前前回パルスと前回パルスとの間の経過時間TM2を今回のパルスと前回パルスとの間の経過時間TM1で除算して経過時間TM1に対する経過時間TM2の比(TM2/TM1)を計算し、クランクシャフト14が1回転する間に計算される経過時間の比(TM2/TM1)を(相隣り合う被検出片の角度間隔や非形成域をなす角度と内燃エンジンのクランクシャフトの回転数の変動等を考慮して予め定められた値である)第1所定値と比較し、経過時間の比(TM2/TM1)が第1所定値以上となるとき(すなわち、経過時間の比が非形成域によって最大となるとき)の前前回パルスと前回パルスとの間を非形成域と判別決定しているところであり、引用文献1に記載された発明は、連続する経過時間(時間間隔)の関連性を計算し、エンジンの1回転中において計算により得られた経過時間(時間間隔)の関連性に基づいて非形成域(歯欠け部)を決定している点においては、本願補正発明と軌を一にするものである。 したがって、本願補正発明と引用文献1に記載された発明は、「外周に所定間隔で連続して形成された歯の一部を欠いた歯欠け部を有するクランクパルスロータをエンジンのクランク軸に連結し、クランク軸の回転中に互いに隣接する歯同士の時間間隔を計測し、連続する時間間隔を比較することによって歯欠け部を検出するエンジンのクランク角検出方法において、エンジンが単気筒エンジンであり、クランクパルスロータに形成した連続する複数の歯を上死点の前後に亘って配置し、かつ吸気弁の開弁期間中に歯欠け部が位置するように構成されており、連続する時間間隔の関連性を計算し、エンジンの1回転中において計算により得られた時間間隔の関連性に基づいて歯欠け部を決定するエンジンのクランク角検出方法。」である点で一致し、次の1)及び2)の2点において相違する。 〈相違点〉 1)連続する時間間隔の関連性が、本願補正発明においては、「時間間隔の前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算」しているのに対し、引用文献1に記載された発明においては「前前回パルスと前回パルスとの間の経過時間TM2を今回のパルスと前回パルスとの間の経過時間TM1で除算して経過時間TM1に対する経過時間TM2の比(TM2/TM1)を計算」している点(以下、「相違点1」という。)。 2)本願補正発明においては、歯欠け部の決定に際して、「最初に算出したクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に算出したクランクパルスの間隔の比率は先に算出したクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行う」ことで、エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の最大比率を求め、「エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を歯欠け部として決定し」ているのに対し、引用文献1に記載された発明においては、クランクシャフトが1回転する間に計算される経過時間の比(TM2/TM1)を予め定められた第1所定値と比較し、経過時間の比が第1所定値以上となるとき(すなわち、経過時間の比が歯欠け部により最大となるとき)の経過時間TM2に対応する位置を歯欠け部(非形成域)と判別決定している点(以下、「相違点2」という。)。 (3)判断 相違点1及び相違点2について検討すると、引用文献2には、前項(1)-2において前述したように、「不等間隔部を検出する内燃機関の回転角度位置検出方法において、クランクシャフトの回転中に互いに隣接する被検知部間のパルスの発生間隔Δtnを計測し、連続するパルスの発生間隔Δtnの今回値Δtnを前回値Δtn-1で除算してパルスの発生間隔の比Tn(=Δtn/Δtn-1)を計算し、クランクシャフトの1回転中において計算された複数のパルスの発生間隔の比T_(n-6)・・・Tnのうち、最大の比Txを検索し、その最大の比Txが求められたΔtxに対応する位置xを不等間隔部として決定し、クランクシャフトの基準回転角度位置を検出する内燃機関の回転角度位置検出方法。」が記載されており、引用文献2に記載された発明における「(回転体の)被検知部」、「不等間隔部」、「内燃機関」、「クランクシャフト」、「(互いに隣接する被検知部間の)パルスの発生間隔Δtn」、「パルスの発生間隔の比T」、及び「回転角度位置検出方法」は、それらの形状、構造及びそれらの機能からみて、本願補正発明における「(クランクパルスロータの)歯」、「歯欠け部」、「エンジン」、「クランク軸」、「(互いに隣接する歯同士の)時間間隔」、「クランクパルス間隔の比率」、及び「クランク角検出方法」にそれぞれ相当する。 ところで、本願補正発明においては、クランクパルス間隔の比率は、「時間間隔の前回値を前々回値で除算して計算している」のに対し、引用文献2に記載された発明においては、(本願補正発明の「時間間隔」に相当する)パルスの発生間隔Δtnの今回値Δtnを前回値Δtn-1で除算して、クランクパルス間隔の比率Tn(=Δtn/Δtn-1)を計算している点で相違するとはいえ、本願補正発明のように「(時間間隔の)前回値を前々回値で除算してクランクパルス間隔の比率を計算する」態様と引用文献2に記載されている「(時間間隔の)今回値を前回値で除算してクランクパルス間隔の比率(パルスの発生間隔の比)を計算する」態様は、共に、クランクパルス間隔の比率をエンジンの1回転中において得られる複数の隣り合う時間間隔(パルスの発生間隔)を用いて順次算出し、そして、エンジンの1回転の後にその間の比率の最大値を決定しているものであり、比率の算出に採用する最初と最後の時間間隔(パルスの発生間隔)がそれぞれ一つ相違するとしても、1回転中において計算される複数のクランクパルス間隔の比率のうち最大の比率を求めるにあたり、両者に実質的に格別な差異があるとはいえない。 また、本願補正発明においては、クランクパルス間隔の比率の最大値を求めるために、「最初に算出したクランクパルス間隔の比率はそのまま記憶し、その後に算出したクランクパルスの間隔の比率は先に算出したクランクパルス間隔の比率と比較し、大きい方を残して小さい方を削除する処理を行」う手法を採用しているけれども、設定されたある範囲内における検出値や算出値の最大値を求めるために、最初に検出された検出値あるいは算出された算出値をそのまま記憶し、その後に検出されあるいは算出された値を先に記憶されている値と比較し、大きい値を新たに最大値として記憶し小さい値の方を削除する処理を順次行う手法は、本件出願の出願前に従来から種々の分野において採用されている周知の技術事項(必要ならば、例えば、(a)特開平6-66237号公報〈特に、段落【0020】におけるステップ4?ステップ6に関する記載及び図2(S4ないしS6)参照)〉、(b)特開平11-315750号公報〈特に、段落【0065】の記載及び図4(S270ないしS280)参照〉、(c)特開2005-291182号公報〈特に、段落【0037】におけるステップS4?ステップS5に関する記載及び図4(S4及びS5)参照〉等を参照のこと、以下、「周知技術」という。)であり、クランクパルス間隔の比率の最大値を求めるために、前述した周知技術を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のものである。 よって、引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された発明及び前述した周知技術を採用して、相違点1及び相違点2に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が格別困難なく容易に想到し発明し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術に基づいて当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明をすることができたものである。 しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。 (4)以上のように、本願補正発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.手続の経緯及び本願発明 平成24年7月11日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1及び2に係る発明は、平成22年11月5日付け及び平成24年1月24日付けの各手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2.の〔理由〕1.(1)の(a)に記載されたとおりである。 2.引用文献の記載内容 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2002-70708号公報)及び引用文献2(特開平1-277662号公報)の記載事項は、前記第2.の〔理由〕2.(1)-1、及び(1)-2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.の〔理由〕1.(1)及び(2)で検討したように、本願補正発明における発明特定事項についての限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の各発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の〔理由〕2.(1)ないし(4)に記載したとおり、引用文献1及び2に記載された発明や前述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、本件審判請求人においては、平成24年11月28日付けの回答書において、「‥‥審判請求時にした補正とは異なる補正を行う用意があります。具体的には、平成24年7月11日付け手続補正時の請求項1の「エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた位置を前記歯欠け部として決定する」との記載を「エンジンの1回転中において計算されたクランクパルス間隔の比率のうち、最大比率を生じた計算に用いられた前記前回値に対応する位置を前記歯欠け部として決定する」に補正する用意があります。」として、補正案を提示し、そして、「補正案の請求項1に係る発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。」との趣旨の主張をしているので、審判請求人の提示する補正案について以下に検討する。 補正案の請求項1と平成24年7月11日付けの手続補正書による請求項1とを比較するに、補正案の請求項1は、後者に記載されている「前記エンジンが単気筒エンジンであり」及び「かつ吸気弁の開弁期間中に前記歯欠け部が位置するように構成されており」の文言を削除し、そして、後者における「最大比率を生じた位置(を前記歯欠け部として決定する)」の記載を「最大比率を生じた計算に用いられた前記前回値に対応する位置(を前記歯欠け部として決定する)」と補正しようとするものである。 しかしながら、クランク角検出方法において、「最大比率を生じた計算に用いられた値に対応する位置を歯欠け部として決定する」点は、引用文献2に記載されているところであり、補正案の請求項1に記載された発明も、本願補正発明及び本願発明に関して記載したところと同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、審判請求人の前記の主張は採用できるものではない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに前述した周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-13 |
結審通知日 | 2013-05-15 |
審決日 | 2013-05-29 |
出願番号 | 特願2008-81669(P2008-81669) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02D)
P 1 8・ 575- Z (F02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 寺川 ゆりか |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 藤原 直欣 |
発明の名称 | エンジンのクランク角検出方法および装置 |
代理人 | 阪本 清孝 |
代理人 | 田中 香樹 |
代理人 | 田邉 壽二 |