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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B61F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B61F |
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管理番号 | 1276836 |
審判番号 | 不服2012-24207 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-06 |
確定日 | 2013-07-18 |
事件の表示 | 特願2007- 43296号「鉄道車両用台車枠及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年9月11日出願公開、特開2008-207576号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成19年2月23日の出願であって、平成24年1月10日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成24年3月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年9月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。 II.平成24年12月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「左右一対の側梁が横梁に連結されてなる鉄道車両用台車枠において、 前記側梁は、1本の鋼管を高周波誘導加熱の加熱手段により局部的に加熱し、その加熱部分に断面変形加工や曲げ変形加工を加えることにより特定の形状に形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車枠。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。) 2.補正の目的及び新規事項の追加の有無 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「加熱手段」の限定事項である「高周波加熱或いはバーナー加熱などの」を、「高周波誘導加熱の」とその限定事項をさらに限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用刊行物の記載事項 (刊行物1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭52-116544号(実開昭54-42210号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「鋼管等の円筒状素材を鍛造加工して製造してなる鉄道車両用台車わく側ばり。」(2.実用新案登録請求の範囲) (イ)「この考案は鉄道車両用台車わく側ばりの改良に関するものである。 周知のごとく、鉄道車両台車わくは側ばりと横ばりとで構成されているが、従来の台車わくは側ばり、横ばり共に複数枚の平板、あるいは溝形の曲げ板を溶接して組立てられている。第1図?第3図は従来の台車わくを示すもので、(1')は側ばり、(2')は横ばりで、側ばり(1')はその断面構造の一例を第3図に示すごとく、切り板方式あるいはプレス成形方式の溶接組立て構造のものが多用されている。」(1頁8?18行) (ウ)「この考案は、鋼管等の円筒状素材を鍛造加工して製造してなる台車わく側ばりで、この場合素材としての鋼管は側ばりの形状、強度を十分に考慮する必要があることはいうまでもない。第4図はこの考案の一例を示すもので、この側ばり(1)の場合は形状的には第2図に示した従来品と同形であるが、断面形状は第5図に示すごとく、イ-イ部分は横長の楕円形、ロ-ロ部分は角が丸みをおびた矩形を呈し、ハ-ハ部分は縦長の楕円形となしている。無論かかる断面形状のみに限るものではないが、この屈曲形の側ばりの場合はその局部的個所に要求される強度を考慮すると略このような断面形状を呈する。 この種の側ばりを製造する場合は、素材である鋼管を先ず所定の形状に曲げ加工し、次にプレス加工により成形し、最後に所定の長さに両端部を切取つて成品とする。鋼管の曲げ加工およびプレス加工を施す場合は、断面形状を保持するために内部に、例えば砂等の物質を充填することはいうまでもない。」(2頁7行?3頁6行) (エ)「この考案は上記のごとく、側ばりの素材に鋼管を用いることにより、従来のような溶接作業が不要となり鍛造加工のみで簡単に側ばりを製造することができるので、従来の側ばりに比べて製造コストが安価につく上、強度的にも強いというすぐれた効果を有する外、素材の切捨て部分は両端のみであるから歩留りも良く経済的である。」(3頁11?17行) (オ)第1図には、従来の台車わくの一部として、片側の側ばり(1')に、横ばり(2')が連結されてなる台車わくが開示されており、側ばり(1')は片側しか図示されていないが、台車わくの構造に鑑みれば、従来の台車わくは、左右一対の側ばり(1')を有していることは記載されているに等しい。 (カ)上記記載事項、および、図示内容からみて、刊行物1に記載された鋼管等の円筒状素材を鍛造加工して製造してなる台車わく側ばりも、第1図の従来例に記載された台車わくの側ばりと同様に用いられ、左右一対の側ばりに、横ばりが連結されてなる台車わくを構成することは記載されているに等しい。 したがって、上記記載事項及び図示内容からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「左右一対の側はりが横ばりに連結されてなる鉄道車両用台車わくにおいて、 前記側ばりは、1本の鋼管をプレス加工および曲げ加工を施すことにより所定の形状に形成されたものである鉄道車両用台車わく。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「側ばり」は、本願補正発明の「側梁」に相当し、以下同様に、「横ばり」は「横梁」に、「鉄道車両用台車わく」は「鉄道車両用台車枠」に、「所定の形状」は「特定の形状」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「プレス加工」は、上記(ウ)の記載、及び、第5図からみて、断面変形をさせるものであるから、本願補正発明の「断面変形加工」に相当する。また、引用発明の「曲げ加工」は、本願補正発明の「曲げ変形加工」に相当する。そして、引用発明の「プレス加工および曲げ加工を施す」は、本願補正発明の「断面変形加工や曲げ加工を加える」に包含されるものである。 してみると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「左右一対の側梁が横梁に連結されてなる鉄道車両用台車枠において、 前記側梁は、1本の鋼管を断面変形加工や曲げ変形加工を加えることにより特定の形状に形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車枠。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明は、断面変形加工や曲げ変形加工を加える部分が、高周波誘導加熱の加熱手段により局部的に加熱した部分であるのに対し、引用発明は、断面変形加工や曲げ変形加工を加える部分が加熱した部分でない点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 金属加工において、金属材料に曲げやプレス、鍛造等の塑性変形加工を施す際、材料の加工部分を加熱させない冷間加工と、材料の加工部分を加熱させる熱間加工とが存在し、それぞれの長所、短所を考慮し、適切な方法を選択することは金属加工一般においては技術常識である。 そして、その金属加工の技術分野において、鋼管の断面を塑性変形させて断面変形加工させる際、加工部分を加熱させて加工を施すことは、拒絶査定の理由において、刊行物2として提示した特開2006-150377号公報にも記載されているように周知の技術事項である。 また、鋼管の熱間加工において、その加熱手段として高周波誘導加熱を用いることも、特開平4-339517号公報(段落【0024】、【0025】、【図1】?【図6】参照。)や、特開平5-287379号公報(段落【0011】、【図4】参照。)にも開示されているように、周知の技術事項にすぎない。 してみると、上記刊行物1に接した当業者が、側ばりの加工手段として、熱間加工と冷間加工とのそれぞれ長所短所等を考慮し、熱間加工を選択し、その加熱手段として周知の高周波誘導加熱を採用して、上記相違点に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 また、引用発明の側ばりの加工手段に熱間加工を採用することに特段の阻害要因も認められない。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成24年3月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「左右一対の側梁が横梁に連結されてなる鉄道車両用台車枠において、 前記側梁は、1本の鋼管を高周波加熱或いはバーナー加熱などの加熱手段により局部的に加熱し、その加熱部分に断面変形加工や曲げ変形加工を加えることにより特定の形状に形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車枠。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「加熱手段」の限定事項である「高周波誘導加熱の」との限定を、「高周波加熱或いはバーナー加熱などの」と拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?10に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-17 |
結審通知日 | 2013-05-21 |
審決日 | 2013-06-04 |
出願番号 | 特願2007-43296(P2007-43296) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B61F)
P 1 8・ 575- Z (B61F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小岩 智明 |
特許庁審判長 |
山口 直 |
特許庁審判官 |
大熊 雄治 原 泰造 |
発明の名称 | 鉄道車両用台車枠及びその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人コスモス特許事務所 |