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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1276846
審判番号 不服2009-25573  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-25 
確定日 2013-07-17 
事件の表示 特願2003-587519「生物学的検定において磁性粒子を処理するための構造体および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日国際公開、WO03/90897、平成17年 8月11日国内公表、特表2005-523692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年4月25日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年4月26日 米国)とする国際出願であって、その請求項9に係る発明は、平成25年1月9日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数の吸引工程を介して、自動式機器において収容器に含まれる内容物に懸濁された磁性粒子をマグネットの磁場によって、分離されていない内容物から分離するための方法であって、
収容器内の内容物を吸引する吸引手段に対する近位の解放端および遠位の閉鎖端を有して、内容物に懸濁された磁性粒子を有する内容物を包含するための収容器を、自動式機器で受ける工程と、
マグネットが、収容器の選択ゾーンに磁性粒子を単離するために、磁場を磁性粒子に作用させるように、第1の位置において少なくとも1つのマグネットおよび収容器を互いに対して配置する工程と、
収容器の第1の吸引ゾーンから磁性粒子を排出するために、収容器を横切る磁場を印加する工程と、
収容器内の第1の吸引ゾーンから事前に選択した量の内容物を吸引する第1の吸引工程とを含み、前記方法がさらに、
収容器に流体を添加することなく、
少なくとも1つのマグネットおよび収容器を、第1の位置から下方の互いに対する第2の位置に配置する工程であって、磁場が、第2の吸引ゾーンから磁性粒子を排出する、前記第2の位置に配置する工程と、
磁性粒子をマグネットの磁場によって、分離されていない内容物から分離するために、第2の吸引ゾーンから内容物を吸引する第2の吸引工程とを含む、方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の2001年1月25日に頒布された刊行物である国際公開第01/5510号(以下、「引用例」という。)には、
(i)「本発明は、磁性または磁化可能粒子の使用に関し、詳細には、磁性または(超)常磁性粒子を流体と効率的に混合する方法、および磁性粒子を流体から分離し、続いて任意選択で、粒子を別の流体に再懸濁させる方法に関する。」(第1頁第5行?第8行)、
(ii)「特定の目的に対して、その用途にマッチするよう装置をさらに修正することができる。
これらの調整によって、液体から粒子を分離するより良い方法とすることができる。この装置を、さまざまな体積の試料流体とともに使用できるように調整することもできる。
本発明による好ましい一実施形態では、磁石を、容器の位置に対して動かせるだけではなく、容器の壁に沿った方向(容器が直立位置にあるときには垂直方向)にも動かすことができる。
このようにすると、容器の中の流体の体積に従って磁石の位置を調整することができる。したがって、ごく小さな体積の流体を粒子と混合するときには、同じ容器で大きな体積の流体を混合するときよりも低い位置に磁石を配置する。
垂直方向に磁石を動かせることは、大きな体積の流体を使用するときでも、この磁石を使用して、容器の下部まで粒子を引き寄せることができるという、追加の利点を有する。したがって、磁石で粒子を下の方に保持しながら、流体の体積の大きな部分を例えばピペッターによって除去することができる。
容器の壁に沿って磁石を垂直方向に動かすことができるときには、任意選択で、磁石を使用して、容器の壁に沿って流体の表面よりも高い位置まで粒子を引き上げることもできる。この方法によって、流体から粒子を分離することができ、残りの流体を容器から取り除き、または例えば、残りの流体を別の流体に置き換えることができる。その後は、磁石を使用して粒子を液面下に引き下ろし、新たな流体と混合する。
この装置設計では、その使用の方法において多くの変形が可能なことは明白である。それらは全て本発明の範囲に含まれる。
垂直方向への磁石の移動の使用を図4に示す。」(第5頁最下行?第6頁第27行:下線部は当審による、以下同じ。)、
(iii)「図4に示した多目的容器は、小体積の試料を収容するのに適した比較的小径の先端を備え、先端よりも上の部分はより大体積の試料を収容するのに適する。
図4に指示するように、この容器は、小体積および大体積の流体とともに装置を使用するのに適し、それに応じて、容器に対する磁石の高さを調整することができる。
さらに、この先端は、磁石を下方に動かすことによって大体積の試料から粒子を集めることを可能にする。次いで、誤って粒子を取り出してしまうことなく、液体の主要な部分を容器から除去することができる。」(第7頁第1行?第9行)、
(iv)「装置を、ブーム法のような方法とともに使用するときには、以下の手順でこれを実行することができる。
洗浄ステップに必要な体積は一般に0.2から0.5mlであって、比較的大きい。したがって洗浄の間、磁性粒子は容器の上部(レベル1)にある(図4の状況1)。しかし、ほとんどの応用では、核酸ターゲットを、一般に10から50μlの緩衝液中に濃縮する必要がある。このような小体積の液体は取扱いが難しい。このような小体積の液体のサイズを制御すること、および磁性粒子とともに容器の中でそれを操作して、境界のないステップを実行するための懸濁液を形成することは難しい。
図4に、以上の問題を克服する方法を示す。
洗浄手順を完了させた後、容器の壁の側面(レベル1)のところで粒子を捕獲し(状況1)、ピペッターの先端で洗液を吸引する。 次に容器を、新しい溶離緩衝液(約0.2ml)で満たし、磁石を下方に動かすことによって磁性粒子を容器の下端(レベル3)に移動させる(状況2)。下方へ動かすときに洗浄中にするように磁石アレイを平行移動させることによって、粒子の輸送を速めることができる。ET緩衝液の組成は、緩衝液の温度がRTを超えない限りシリカから核酸が解放されないような組成である。」(第7頁第38行?第8頁第12行)、と記載されている。

3.対比
上記引用例記載事項(ii)、(iii)には、磁性粒子を大きな体積の試料流体から分離する方法として、容器中の流体の体積にしたがって、容器に対して高い位置に磁石を調製して磁性粒子を捕獲してから、収容器に流体を添加することなく、容器の壁に沿って磁石を垂直方向に引き下げることによって、磁性粒子を容器の下部まで引き寄せることが記載されている。また、分離時の流体の吸引については、それぞれ下線で示したとおり、上記引用例記載事項(ii)及び(iii)では、磁性粒子を容器の下部に保持しながら、例えばピペッターにより除去すること(後述する「第2の吸引ゾーンからの吸引」に相当する。)が、上記引用例記載事項(iv)では、磁石が容器の高い位置で磁性粒子を補獲しているときに、ピペッターの先端で吸引すること(後述する「第1の吸引ゾーンからの吸引」に相当する。)が、記載されている。
そこで、本願発明と引用例に記載された事項を比較すると、引用例に記載の「ピペッター」及び「容器」はそれぞれ、本願発明の「収容器内の内容物を吸引する吸引手段」及び「吸引手段に対する近位の解放端および遠位の閉鎖端を有して、内容物に懸濁された磁性粒子を有する内容物を包含するための収容器」に相当し、引用例に記載の「容器に対して高い位置に磁石を調製して磁性粒子を捕獲してから、容器の壁に沿って磁石を垂直方向に引き下げることによって、磁性粒子を容器の下部まで引き寄せる」ことは、本願発明の「マグネットが、収容器の選択ゾーンに磁性粒子を単離するために、磁場を磁性粒子に作用させるように、第1の位置において少なくとも1つのマグネットおよび収容器を互いに対して配置して、収容器を横切る磁場を印加する工程と、収容器に流体を添加することなく、少なくとも1つのマグネットおよび収容器を、第1の位置から下方の互いに対する第2の位置に配置する工程であって、磁場が前記第2の位置に配置する工程」に相当する。
そうすると、本願発明と引用例に記載された事項は、「吸引工程を介して、収容器内に含まれる内容物に懸濁された磁性粒子をマグネットの磁場によって分離されていない内容物から分離するための方法であって、収容器内の内容物を吸引する吸引手段に対する近位の解放端および遠位の閉鎖端を有して、内容物に懸濁された磁性粒子を有する内容物を包含するための収容器を有し、
マグネットが、収容器の選択ゾーンに磁性粒子を単離するために、磁場を磁性粒子に作用させるように、第1の位置において少なくとも1つのマグネットおよび収容器を互いに対して配置して、収容器を横切る磁場を印加する工程と、
収容器に流体を添加することなく、少なくとも1つのマグネットおよび収容器を、第1の位置から下方の互いに対する第2の位置に配置する工程であって、磁場が前記第2の位置に配置する工程と、
磁性粒子をマグネットの磁場によって、分離されていない内容物から分離するために、内容物を吸引する吸引工程とを含む、方法」である点で一致する。
しかしながら、両者は、(イ)前者が、複数の吸引工程を介するものであり、マグネットが第1の位置に配置され、収容器を横切る磁場を印加する工程により、磁性粒子が排出された収容器の第1の吸引ゾーンから、事前に選択した量の内容物を吸引する第1の吸引工程と、マグネットが第1の位置から下方の第2の位置に配置され、磁場を印加することにより、磁性粒子が排出された第2の吸引ゾーンから、内容物を吸引する第2の吸引工程を含むものであるのに対して、後者では、複数の吸引工程を介することは記載されておらず、第1の吸引ゾーンか第2の吸引ゾーンで吸引する点、及び(ロ)前者は、自動式機器において行われる方法であるのに対して、後者には、自動式機器で行われることは記載されていない点、の2点で相違する。

4.当審の判断
上記引用例記載事項(iv)には、容器の壁の側面の上方で粒子を捕獲しながら、ピペッターの先端で洗液を吸引するという、本願発明の第1の吸引ゾーンで吸引することが記載されており、また、上記引用例記載事項(iii)には、本願発明の第2の吸引ゾーンでの吸引に相当する、磁石を下方に動かすことによって大体積の流体から、磁性粒子を下方に集め、次いで、誤って粒子を取り出してしまうことなく、液体の主要な部分を容器から除去することができることが記載されており、第1又は第2のどちらかの吸引ゾーンで吸引することは、分離後の工程等に応じて当業者であれば適宜選択し得た事項であった。
このように、第1の吸引ゾーン及び第2の吸引ゾーンで、それぞれ吸引できることが引用例に記載されているから、第1の吸引ゾーンで適量吸引後、磁石を引き下げ第2の吸引ゾーンで吸引することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことであり、そのような複数の吸引工程を介することに技術的特徴は見出せない。このことは、本願明細書で吸引工程についての記載がある段落【0150】に「連続した各捕捉の後で、未結合の反応混合物を順次吸引および処分するため、また別法では、最終の捕捉段階の後で未結合反応混合物の排出を実施するために、流体ハンドラー86を使用することが望ましいことがある。」と記載されていることからもうかがえ、上記相違点(イ)の本願発明の特定事項は、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
また、上記相違点(ロ)についても、当審の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願優先日前の平成6年7月19日に頒布された刊行物である特開平6-198214号公報の段落【0010】に「系14は磁気吸引可能な粒子を容器の側面に引き付け、底部をクリアーにする。これは上澄み液除去中にペレットからの液体の排出を可能にし、上澄み液は容器の完全な深さにまで挿入されたピペッティング装置を用いて手動で又はロボットによって効果的に除去される。」とあるように、ロボット、即ち自動式機器において容器中の磁性粒子を分離することは、本願優先日前既に周知慣用の手段であるから、相違点(ロ)は実質的な相違ではないか、あるいは、少なくとも当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明において奏される効果である、磁性粒子の効果的な捕捉を確実にしかつ分離する間に磁性粒子の損失を低減するという効果は、複数の吸引工程を用いない引用例においても奏されており、引用例の記載から予測できない程の格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5.審判請求人の主張
審判請求人は、平成25年1月9日付意見書中で、「従来技術とは異なり、本願発明は、磁性粒子の高い捕捉を確実にするとともに、内容物の分離および吸引の間に内容物からの磁性粒子の損失を低減し、比較的小さな体積でさらなる処理および解析のためにより多量の磁性粒子を残すものである。本願発明は、増加した量の磁性粒子の捕捉により、関心対象種目の定量化における信頼性および感度を向上させる望ましい目的に合致し、また単一の容器内の体積の減少も行い、磁性粒子を使用する内容物の処理における他の望ましい目的に合致するものである。」と主張している。
しかしながら、引用例において第2吸引ゾーンだけで吸引する場合であっても、本願発明と同様の「増加した量の磁性粒子の捕捉により、関心対象種目の定量化における信頼性および感度を向上させる」ことができるものであり、本願発明においては、むしろ第1の吸引ゾーンでの吸引時に、磁場に捕捉されていない磁性粒子をも吸引してしまう可能性もある。また、上記主張中の「磁性粒子を使用する内容物の処理における他の望ましい目的に合致する」の「他の望ましい目的」とは具体的にどのようなものであるかわからないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-12 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-05 
出願番号 特願2003-587519(P2003-587519)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊達 利奈  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 冨永 みどり
六笠 紀子
発明の名称 生物学的検定において磁性粒子を処理するための構造体および方法  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
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