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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F
管理番号 1276849
審判番号 不服2010-15543  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-12 
確定日 2013-07-17 
事件の表示 特願2002-355699「不活性担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法または遷移金属触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月22日出願公開、特開2003-206309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年12月6日(優先権主張、平成13年12月11日、ドイツ国)に出願したものであって,平成20年11月20日付けで拒絶の理由が通知され,平成21年3月26日に意見書および手続補正書が提出されたが,平成22年3月8日付けで拒絶査定がされた。これに対し,平成22年7月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,当審において平成24年8月14日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月10日に意見書と共に手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1乃至16に係る発明は,平成24年12月10日提出の手続補正書により補正された明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1乃至16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「 金属有機化合物が、混合されたかまたは混合されていないアルキルアルミニウム化合物、混合されたかまたは混合されていないアリールアルミニウム化合物、或いは混合されて置換されたアルカリールアルミニウム化合物または混合されて置換されていないアルカリールアルミニウム化合物である、担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法において、
金属有機化合物および水を連続的に静的混合装置中に水と金属有機化合物とのモル比0.6?0.9:1で炭化水素の存在で供給し、生じる反応生成物を担持材料と接触させ、その際、金属有機化合物、水及び担持材料を同時に静的混合装置中に計量供給することを特徴とする、担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法。」

3.拒絶理由
当審において平成24年8月14日付けで通知した拒絶の理由は,
「この出願に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平7-188253号公報(以下、「引用例」という。平成20年11月20日付け拒絶理由通知書に記載された引用文献2に対応する。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。」および「この出願に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」という理由を含むものである。

4.当審の判断

(1)引用例の記載事項
引用例には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

ア.
「【請求項1】 不活性担持材料上で不動態化されたアルキルアルミノキサンを製造するための方法において、分散液の形で存在するアルキルアルミノキサンを不活性担持材料上に固着させることを特徴とする、不活性担持材料上で不動態化されたアルキルアルミノキサンの製造法。
【請求項2】 芳香族炭化水素中のメチルアルミノキサンからなる分散液を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 分散液を静的混合機を用いて得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 水およびアルミニウムアルキル化合物を0.8?1.3のモル比で使用する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】 担持材料として、含水量<5重量%のSiO_(2)を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】 担持材料上に、アルミニウム5?40重量%をアルミノキサンの形で固着する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】 担持材料を分散液に供給する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。」(特許請求の範囲)
イ.
「【産業上の利用分野】アルキルアルミノキサン、殊にメチルアルミノキサンは、ポリオレフィンを製造するための触媒系の新世代の主要成分として重要性を増している(“Single Site Catalysts”)。この新規触媒は、本質的に、既に古典的なチーグラー・ナッタ触媒作用(Ziegler-Natta-Katalyse)から公知であるように触媒としての遷移金属化合物並びにアルミニウム有機共触媒成分(aluminiumorganischer Cokatalysator-Komponente)としての冒頭に記載されたアルキルアルミノキサンからなる。遷移金属化合物としては、有利に元素の周期律表の第IVa族のシクロペンタジエンジエニル誘導体、インデニル誘導体またはフルオルエニル誘導体が使用される。この系統は、従来のチーグラー・ナッタ触媒とは異なり、高い活性および生産性とともに、使用された成分および反応条件に応じて生成物の性質の意図された制御のため能力を有するばかりでなく、その上更に、工業用の使用に関連して前途有望な性質を有するこれまで知られていない重合体構造体への可能性を有している。」(段落【0001】)
ウ.
「本発明により使用された分散液は、アルキルアルミニウム化合物の常用の加水分解法によって、溶剤としての炭化水素中で製造可能である。この場合、水対アルキルアルミニウム化合物のモル比は、0.8:1?1.3:1、好ましくは0.9:1?1.2:1の範囲内である。
本発明によれば、水が、脂肪族、脂環式または好ましくは芳香族炭化水素中のトリアルキルアルミニウムの溶液に、静的混合機中、好ましくは噴射管型反応器中への混合ノズルを通して供給される方法は製造のために有利である(欧州特許出願第93118245.5号)。」(段落【0012】-【0013】)
エ.
「アルミニウム有機化合物としては、原理的には、水を用いて加水分解してアルミノキサンに変えることができる全ての前記領域で通常の化合物が使用可能である。本発明の本質的には、炭化水素中で親液性の分散液状態が達成可能であることである。加水分解生成物は、ゾル状態で存在する本発明による親液性分散液である。
本発明によれば、短鎖状のアルキル基、殊にメチル基を有するトリアルキルアルミニウム化合物は有利である。
本発明により使用可能な担持材料としては、周期率表の第II族、第III族または第IV族の元素の1つまたはそれ以上の多孔質酸化物、例えばZrO_(2)、TiO_(2)、B_(2)O_(3)、CaO、ZnO、BaO、好ましくはAl_(2)O_(3)およびMgO、殊にSiO_(2)が使用される。
前記担持材料は、1?300μm、好ましくは10?200μmの範囲内の粒度;10?1000m^(2)/g、殊に100?500m^(2)/gの表面積;0.5?3cm^(3)、好ましくは1?2cm^(3)のN_(2)-孔容積を有していてもよい。」(段落【0018】-【0021】)

上記記載事項(特に、ア.およびウ.の記載を参照。)の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「不活性担持材料上で不動態化されたアルキルアルミノキサンを製造するための方法において、
水およびアルミニウムアルキル化合物を0.8?1.3のモル比で使用し、
担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させて静的混合機を用いてアルキルアルミニウム化合物の常用の加水分解法によって、溶剤としての炭化水素中で得た分散液の形で存在するアルキルアルミノキサンを不活性担持材料上に固着させる、
不活性担持材料上で不動態化されたアルキルアルミノキサンの製造法。」

(2)対比、判断
本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「不活性担持材料」、「水」は、本願発明の「担持材料」、「水」に相当する。
引用発明の「アルミニウムアルキル化合物」は、本願発明の「金属有機化合物が混合されたかまたは混合されていないアルキルアルミニウム化合物」に相当する。
引用発明の「溶剤としての炭化水素」は、本願発明の「炭化水素」に相当する。
引用発明の「アルキルアルミノキサン」は、本願発明の「金属有機化合物が混合されたかまたは混合されていないアルキルアルミニウム化合物」「である」「金属有機化合物の部分水解生成物」を明らかに満足する。
引用発明の「不活性担持材料上で不動態化されたアルキルアルミノキサンの製造法」は、本願発明の「担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法」を明らかに満足する。
引用発明の「静的混合機」は、本願発明の「静的混合装置」に相当する。
引用発明の「静的混合機を用いてアルキルアルミニウム化合物の常用の加水分解法によって、溶剤としての炭化水素中で得た分散液の形で存在するアルキルアルミノキサン」は、静的混合機が原料を連続的に供給しつつ混合する装置であることを勘案すれば、本願発明の「金属有機化合物および水を連続的に静的混合装置中に」「供給し、生じる反応生成物」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、

「金属有機化合物が混合されたかまたは混合されていないアルキルアルミニウム化合物である、担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法において、
金属有機化合物および水を連続的に静的混合装置中に炭化水素の存在で供給し、生じる反応生成物を担持材料と接触させることを特徴とする、
担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法。」
である点で一致し、下記の点で一応相違する。

<一応の相違点1>
水と金属有機化合物とのモル比に関し、本願発明は、「0.6?0.9:1」であるのに対し、引用発明は、「0.8?1.3のモル比」である点。

<一応の相違点2>
本願発明は、反応生成物を担持材料と接触させる際に、「金属有機化合物、水及び担持材料を同時に静的混合装置中に計量供給する」と特定されているのに対し、引用発明は、「担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させ」ると特定されている点。

一応の相違点1について
本願発明と引用発明は、水と金属有機化合物とのモル比が0.8?0.9:1の範囲において重複一致するから、一応の相違点1は、実質的な相違点ではない。

一応の相違点2について
まず、引用発明の「担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させ」について以下のa乃至cに場合分けをする。

a:分散液の製造の開始前に担持材料が混合物中に存在するようにした場合(すなわち、分散液の製造の開始前に担持材料を静的混合機中に供給した場合)
b:分散液の製造開始と同時に担持材料が混合物中に存在するようにした場合
c:分散液の製造の開始後かつ分散液の製造完了よりも前に担持材料が混合物中に存在するようにした場合

ここで、分散液の製造の開始とは、具体的には水とアルキルアルミニウム化合物とからアルキルアルミノキサンが生成する反応が開始することであり、水とアルキルアルミニウム化合物を静的混合機中に供給すると同時に両者の化学反応が始まることは明らかであるから、水とアルキルアルミニウム化合物を静的混合機中に供給した時点で分散液の製造が始まるといえるので、上記a乃至cの場合を以下のように言い換えることができる。

a:水とアルキルアルミニウム化合物を静的混合機中に供給するよりも前に担持材料が混合物中に存在(静的混合機中に供給)するようにした場合
b:水とアルキルアルミニウム化合物を静的混合機中に供給すると同時に担持材料が混合物中に存在(静的混合機中に供給)するようにした場合
c:水とアルキルアルミニウム化合物を静的混合機中に供給した後かつ分散液の製造完了よりも前に担持材料が混合物中に存在(静的混合機中に供給)するようにした場合

結局、引用発明は、上記bの場合、すなわち、アルキルアルミニウム化合物、水及び担持材料を同時に静的混合装置中に供給する態様を包含しているのであるから、一応の相違点2も、実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一である。

なお、仮に一応の相違点1および2が実質的な相違点であるとしても、(一応の相違点1について)水と金属有機化合物は、部分水解生成物を製造するための原料であることを勘案すれば、その供給割合を最適化する程度のことは当業者が実施にあたり行う通常の創作能力の発揮に該当し、(一応の相違点2について)水とアルキルアルミニウム化合物と担持材料を反応させる際にこれらの好ましい供給順序を決定して上記bの場合に該当する順序とする程度のことは当業者が適宜なし得ることである。
また、b以外の場合に該当する供給順序と比較して格別顕著な効果が奏されているわけでもない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求人の主張
審判請求人は、平成24年12月10日提出の意見書(3.拒絶理由について(1)理由A.及び理由B.について、の項を参照。)において、「引用文献2(特開平7-188253号公報)には、「担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させる」(請求項8等)ことが記載されています。 実際に、引用文献2の例1では、金属有機化合物と水から得られた分散液を珪素担持材料と一緒に攪拌し、例2でも同様に実施されています。・・従って、引用文献2と本願の請求項1は、構成の点で同一ではありません。・・更に、本願の例7は、生成物の粒子形態及び均質性の点で、金属有機化合物と水から得られた分散液に担持材料を少量ずつ添加している例5の収量8.3kg、アルミニウム含量15.4質量%及びメチル-アルミニウム比1.15と比較して、収量8.6kg、アルミニウム含量10.8質量%及びメチル-アルミニウム比1.25という最終製品の改善を得ることができます。 従って、金属有機化合物、水及び担持材料を同時に静的混合装置中に計量供給するという本願による手段から本願の上記の効果を予測する事は困難です。」と主張している。

しかしながら、引用発明の「担持材料を既に分散液の製造の間に混合物中に存在させ」には「金属有機化合物、水及び担持材料を同時に静的混合装置中に計量供給する」態様が包含されていることは、上記4.に記載したとおりである。
また、そもそも、例7と例5の収量等をどのような評価基準に基づいて比較したら「最終製品の改善を得ることができ」たといえるのか具体的な説明がなく不明である。
なお、収量等について技術常識に基づいて一応評価を行ったが、以下のとおり予測できない顕著な効果が奏されているとはいえない。
よって、請求人の主張は、採用することができない。

収量について
収量は、原料(SiO_(2)等)の仕込み量が多いほど増加するので、収量自体を直接比較しても意味が無いから、原料の仕込み量に対する収量の比率(収率)で比較する。
本願の例7では原料としてSiO_(2) 6.8kg、トリメチルアルミニウム3.7kgおよび水0.593kg(合計11.093kg)を使用しており、これに対して収量8.6kgであるから収率は77.5%であるのに対し、例5では原料としてSiO_(2) 5.6kg(=1.4×4)、トリメチルアルミニウム3.5kgおよび水0.608kg(合計9.708kg)を使用しており、これに対して収量8.3kgであるから収率は85.5%である。
よって、収率は、例5の方が多い。(例5の方が優れている。)

アルミニウム含量について
アルミニウム含量は、SiO_(2)に対するトリメチルアルミニウムの量(原料の仕込み比率)が多いほど大きくなることは明らかであるから、アルミニウム含量自体を直接比較しても意味が無い。原料の仕込み比率と合わせて比較する。
例7ではSiO_(2)に対するトリメチルアルミニウムの比が0.54(=3.7/6.8)であるのに対し、例5では0.63(=3.5/5.6)であるから、例5の方がアルミニウム含量が大きくなっていることは当然である。
なお、そもそもアルミニウム含量の好ましい値(優れているといえる基準)が不明であるし、好ましいアルミニウム含量となるように仕込み比率を調整すべきものであるから、アルミニウム含量は、優劣を評価する対象となりえない特性である。

メチル-アルミニウム比について
メチル-アルミニウム比は、トリメチルアルミニウムに対する水の仕込量(原料の仕込み比率)が多いほどメチル-アルミニウム比が小さくなるから、メチル-アルミニウム比自体を直接比較しても意味が無い。原料の仕込み比率と合わせて比較する。
例7では、仕込み比率が0.16(=0.593/3.7)であるのに対し、例5は、0.17(=0.608/3.5)であるから、例5の方がメチル-アルミニウム比が小さくなっていることは当然である。
なお、そもそもメチル-アルミニウム比の好ましい値(優れているといえる基準)が不明であるし、好ましいメチル-アルミニウム比となるように仕込み比を調整すべきものであるから、メチル-アルミニウム比も優劣を評価する対象となりえない特性である。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-188253号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平7-188253号公報に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の拒絶の理由およびその余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-15 
結審通知日 2013-02-22 
審決日 2013-03-07 
出願番号 特願2002-355699(P2002-355699)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08F)
P 1 8・ 113- WZ (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 智之村上 騎見高  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 富永 久子
須藤 康洋
発明の名称 不活性担持材料上で不動態化された、金属有機化合物の部分水解生成物の製造法または遷移金属触媒  
代理人 矢野 敏雄  
復代理人 宮城 康史  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
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