ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F |
---|---|
管理番号 | 1276862 |
審判番号 | 不服2011-25649 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-28 |
確定日 | 2013-07-17 |
事件の表示 | 特願2001-550292「フッ素化ポリマーの調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月12日国際公開、WO01/49752、平成15年7月2日国内公表、特表2003-520287〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年12月22日を国際出願日とする特許出願であって、平成22年7月5日付けで拒絶理由が通知され、平成23年1月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、それに対して、同年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年12月26日付けで前置審査の結果が報告され、当審において平成24年8月6日付けで審尋がされ、同年11月7日に回答書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年1月13日提出の手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「少なくとも50℃の沸点を有し、加水分解においてイオン性の基を生じる加水分解性の基を含有しないフッ素化オレフィン、フッ素化アリルエーテル及びフッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される液体状のフッ素化モノマーから誘導された繰り返し単位を包含するフッ素化ポリマーの調整方法であって、 フッ素化乳化剤を用いて水中で前記液体状のフッ素化モノマーを予備乳化して前記フッ素化モノマーの水性エマルジョンを得る工程、及び そのようにして得られた、乳化された液体状のフッ素化モノマーを重合する工程を含み、前記水性エマルジョンが少なくとも1時間のポットライフを有する、フッ素化ポリマー調整方法。」 3.原査定について 原査定の拒絶の理由は、「この出願に係る発明は、国際公開第00/022002号に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由を含むものであり、平成23年7月15日付け拒絶査定の備考欄には、次の記載がある。 「出願人は、意見書において、「本願は1999年12月30日付のドイツ国特許出願に基づく優先権を主張する出願ですので、引用文献は本願の優先権出願日より後に公開された文献です。したがって引用文献は特許法第29条第1項第3号あるいは第29条第2項の規定に基づく適法な引用文献ではない」との主張している。 しかしながら、本願の優先権の主張の手続は、国内段階に入る前の手続において、特許協力条約に基づく規則17.1(a)又は(b)を満たさないと判断されており、さらに、優先権書類は、国内書面提出期間が満了する時の属する日後二月以内に特許庁長官に対して提出されていないので、1999年12月30日付のドイツ国特許出願に基づく優先権の主張は認められない。したがって、本願は2000年12月22日を出願日とする出願であり、先の拒絶理由通知で通知した引用文献は、特許法第29条第1項第3号あるいは第29条第2項の規定に基づく適法な引用文献である。 そして、先の拒絶理由通知において指摘したように、引用文献1には、実施例においてパーフルオロオクタン酸アンモニウムを乳化剤として用いてパーフルオロ(アルキル)ビニルエーテルの予備乳化液を製造し、その後予備乳化液と含フッ素エチレン性モノマーのTFEを用いて含フッ素ポリマーを製造することが記載されている。また、パーフルオロ(アルキル)ビニルエーテルは、本願の【0031】において記載されている液体上のフッ素化モノマーに該当し、さらに、pH調整剤を用いてpH7?10程度の弱アルカリ性に保持して重合を行うことも記載されているので、本願の【0020】に記載されている程度に予備乳化液はポットライフを有しているものと認められる。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明と同一であり、又は、当業者が容易に想到できたものであるから、依然として先の拒絶理由は解消しない。」 4.当審の判断 4.-1 優先権主張の認否について (1)従来から、我が国特許庁においては、国際出願日の時点で有効な特許協力条約に基づく規則17.1(以下、「PCT規則17.1」という。)に基づいて、優先権主張の認否を行っている。 そして、本願の国際出願日は、2000年12月22日であるから、適用されるPCT規則17.1は、1998年(平成10年)7月1日発効のものである。 (2)1998年(平成10年)7月1日発効のPCT規則17.1には、以下のように記載されている。 「17.1 先の国内出願又は国際出願の謄本を提出する義務 (a)第8条の規定により先の国内出願又は国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該先の国内出願又は国際出願を受理した当局が認証したその出願の謄本(「優先権書類」)は、既に優先権書類が優先権を主張する国際出願とともに受理官庁に提出されている場合又は(b)の規定に従う場合を除くほか、優先日から16箇月以内に出願人が国際事務局又は受理官庁に提出する。ただし、当該期間の満了後に国際事務局が受理した当該先の出願の写しは、その写しが国際出願の国際公開の日前に到達した場合には、当該期間の末日に国際事務局が受理したものとみなす。 (b)優先権書類が受理官庁により発行される場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、受理官庁に対し、優先権書類を、作成し及び国際事務局に送付するよう請求することができる。その請求は、優先日から16箇月以内にするものとし、また、受理官庁は、手数料の支払を条件とすることができる。 (c)(a)及び(b)の要件のいずれも満たされない場合には、指定国は、優先権の主張を無視することができる。ただし、指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に出願人に優先権書類を提出する機会を与えた後でなければ、優先権の主張を無視することはできない。」 (3)本願の場合、手続の経緯は、以下のとおりである。 優先日 1999年12月30日 優先日から16箇月 2001年 4月30日 国際公開日 2001年 7月12日 国際事務局が優先権書類を受領した日 2002年 1月31日 したがって、PCT規則17.1(a)に規定する要件は満たされていない。 (4)本願の場合、優先権書類を発行する官庁は、ドイツ特許商標庁であり、受理官庁は、国際事務局であるから、PCT規則17.1(b)における「優先権書類が受理官庁により発行される場合」に該当しない。 したがって、PCT規則17.1(b)は適用されない。 (5)指定官庁としての我が国特許庁による国際出願の優先権書類の取り扱いについては特許法に従い、PCT規則17.1(c)に関し特許法施行規則38条の14に、「優先権書類を国内書面提出期間が満了する時の属する日後(?)二月以内に特許庁長官に提出することができる。」との規定が設けられているところ、本願においては、規定された上記期間内に優先権書類が出願人より提出されていなかった。 したがって、PCT規則17.1(c)のただし書きに規定する要件は満たされていない。 (6)以上のことから、本願は、2000年12月22日を国際出願日としてなされたものであって、パリ条約による優先権主張の効果が認められない出願であるから、以下の判断は、上記国際出願日を基準日として行う。 4.-2 特許法第29条第1項第3号について (1)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第00/022002号(以下、「引用文献」という。)は、その公開日が2000年4月20日であり、本願の出願日前に頒布された刊行物である。 (2)引用文献の記載事項 a.「【請求項1】実質的に水不溶性の常温常圧で液体の物質からなる粒子が分散した乳化液を調製する工程および該乳化液中で少なくとも1種の含フッ素エチレン性不飽和モノマーを重合する工程からなる含フッ素ポリマーの製造法であって、該乳化液中の実質的に水不溶性の液体粒子が、重合反応性モノマーまたは重合反応性モノマーと連鎖移動剤との混合物であり、該乳化液中の実質的に水不溶性の液体粒子の重量が乳化液中の水性媒体の重量に対して4分の1以上であり、かつ該含フッ素エチレン性不飽和モノマーの少なくとも1種が常温常圧で気体であることを特徴とする含フッ素ポリマーの製造法。 【請求項9】前記常温常圧で気体の含フッ素エチレン性不飽和モノマーがテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレンまたはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の少なくとも1種であり、前記水不溶性の重合反応性モノマーが一般式(I): CF_(2)=CFOR_(f) (I) (式中、R_(f)は炭素数1?5のパーフルオロアルキル基、または酸素原子を1?3個含む炭素数3?12のパーフルオロアルキル(ポリ)ビニルエーテル基である)で示される常温常圧で液体のパーフルオロビニルエーテルの少なくとも1種である請求の範囲第1項?第8項のいずれかに記載の製造法。 【請求項12】前記乳化液中の乳化剤がパーフルオロオクタン酸塩である請求の範囲第1項?第11項のいずれかに記載の製造法。」(特許請求の範囲の請求項1、9、12) b.「実施例1 5リットルのPFA製ビーカーに、純水を2540g、乳化剤を(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)114g、CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(2)CF=CF_(2)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)を2284g、ICH_(2)CF_(2)CF_(2)OCF=CF_(2)を22.7g、pH調整剤(炭酸アンモニウム)を12.7g、1,4-ジヨードパーフルオロブタンを3.5g入れ、乳化機(ヤマト化学(株)製のULTRA-DISPERSER MODEL LK-41)を用いて、60秒間混合し、体積平均粒子径2μmに乳化させた予備乳化液を得た。予備乳化時の体積平均粒子径は日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計HRA9320-X100を用いて測定した。 得られた予備乳化液を、直ちに、強制乳化機(マイクロフルーイディクス インターナショナル コーポレーション(Microfluidics International Corporation)社製のMicrofluidizer Models M-210E/H)を用い、乳化圧力1000kgf/cm^(2)Gで乳化し、乳化液を得た。 ここで、乳化液中の水不溶性液体粒子の体積平均粒子径を日機装(株)製のマイクロトラックUPA150粒度分布計MODELNo.9340を用いて測定したところ、体積平均粒子径は181nmであった。また、体積平均粒子径と乳化液中に含まれるPAVEの量とから計算できる水1ml当たりの粒子数は1.65×10^(14)個であり、乳化液中の水不溶性液体粒子10^(5)個あたりの乳化剤量は2.73×10^(-8)mgであった。乳化液のpHは8.9であった。 内容量6000mlのステンレススチール製の耐圧反応槽に得られた乳化液4350gと亜硫酸アンモニウム(水和物)6.6gを入れ、内部空間をチッ素ガスで充分置換したのち、撹拌下、15℃にして真空引きし、含フッ素モノマー(TFE)のガスで4.7kgf/cm^(2)Gまで加圧した。重合開始剤(APS)の0.88重量%水溶液5.4mlを圧入すると、直ちに重合反応が始まって圧力降下が起こった。3.0kgf/cm^(2)Gまで圧力が降下したとき、3.0kgf/cm^(2)Gの圧力を維持すべくTFEガスを59g追加仕込みした。追加仕込みを終えると圧力降下が起こり、2.0kgf/cm^(2)Gまで圧力降下したところで2.0kgf/cm^(2)Gの圧力を維持すべくTFEガスを95g追加仕込みした。この追加仕込みを終えると圧力降下が起こり、1.0kgf/cm^(2)Gまで圧力降下したところで1.0kgf/cm^(2)Gの圧力を維持すべくTFEガスをさらに98g追加仕込みした。この追加仕込みを終えた時点で放圧し、重合を停止させた。なお、重合中には3時間ごとにAPSの0.88重量%水溶液を5.4mlずつ圧入した。この結果として4849gの含フッ素ポリマーの水性分散液を得た。 重合時間は17時間7分であった。また、得られた水性分散液の固形分濃度は23.2重量%で、pHは8.3であり含フッ素ポリマー粒子の体積平均粒子径は191nm、水1ml当たりの粒子数は1.62×10^(14)個であった。 含フッ素ポリマーはエラストマーであり、その組成(モル%比)はTFE/PAVE=77.5/22.5であった。」(第12頁第8行?第14頁第2行) (3)引用文献に記載された発明 引用文献には、摘示事項aの記載からみて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「実質的に水不溶性の常温常圧で液体の物質からなる粒子が分散した乳化液を調製する工程および該乳化液中で少なくとも1種の含フッ素エチレン性不飽和モノマーを重合する工程からなる含フッ素ポリマーの製造法であって、該乳化液中の実質的に水不溶性の液体粒子が、重合反応性モノマーまたは重合反応性モノマーと連鎖移動剤との混合物であり、該乳化液中の実質的に水不溶性の液体粒子の重量が乳化液中の水性媒体の重量に対して4分の1以上であり、かつ該含フッ素エチレン性不飽和モノマーの少なくとも1種が常温常圧で気体であって、 前記常温常圧で気体の含フッ素エチレン性不飽和モノマーがテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレンまたはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の少なくとも1種であり、前記水不溶性の重合反応性モノマーが一般式(I): CF_(2)=CFOR_(f) (I) (式中、R_(f)は炭素数1?5のパーフルオロアルキル基、または酸素原子を1?3個含む炭素数3?12のパーフルオロアルキル(ポリ)ビニルエーテル基である)で示される常温常圧で液体のパーフルオロビニルエーテルの少なくとも1種であり、 前記乳化液中の乳化剤がパーフルオロオクタン酸塩である、 含フッ素ポリマーの製造法。」 (4)対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「水不溶性の重合反応性モノマーが一般式(I): CF_(2)=CFOR_(f) (I) (式中、R_(f)は・・・酸素原子を1?3個含む炭素数3?12のパーフルオロアルキル(ポリ)ビニルエーテル基である)で示される常温常圧で液体のパーフルオロビニルエーテル」は、本願発明の「加水分解においてイオン性の基を生じる加水分解性の基を含有しないフッ素化オレフィン、フッ素化アリルエーテル及びフッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される液体状のフッ素化モノマー」に相当し、引用発明の「パーフルオロオクタン酸塩」は、本願発明の「フッ素化乳化剤」に相当し、引用発明の「実質的に水不溶性の常温常圧で液体の物質からなる粒子が分散した乳化液を調製する工程」は、本願発明の「水中で前記液体状のフッ素化モノマーを予備乳化して前記フッ素化モノマーの水性エマルジョンを得る工程」に相当し、引用発明の「乳化液中で少なくとも1種の含フッ素エチレン性不飽和モノマーを重合する工程」は、本願発明の「乳化された液体状のフッ素化モノマーを重合する工程」に相当し、引用発明の「含フッ素ポリマーの製造法」は、本願発明の「フッ素化ポリマー調整方法」に相当する。 そうすると、両発明は、「加水分解においてイオン性の基を生じる加水分解性の基を含有しないフッ素化オレフィン、フッ素化アリルエーテル及びフッ素化ビニルエーテルからなる群から選択される液体状のフッ素化モノマーから誘導された繰り返し単位を包含するフッ素化ポリマーの調整方法であって、 フッ素化乳化剤を用いて水中で前記液体状のフッ素化モノマーを予備乳化して前記フッ素化モノマーの水性エマルジョンを得る工程、及び そのようにして得られた、乳化された液体状のフッ素化モノマーを重合する工程を含む、フッ素化ポリマー調整方法。」の点で一致し、次の点で一応相違する。 相違点1:本願発明の液体状のフッ素化モノマーは、「少なくとも50℃の沸点を有」するのに対して、引用発明には、そのような規定はない点 相違点2:本願発明の水性エマルジョンは、「少なくとも1時間のポットライフを有する」のに対して、引用発明には、そのような規定はない点 相違点3:本願発明のフッ素化ポリマーは、液体状のフッ素化モノマーから誘導された繰り返し単位を包含するのに対して、引用発明のフッ素化ポリマーは、液体状のフッ素化モノマーに加えて、「常温常圧で気体の含フッ素エチレン性不飽和モノマー」を必須の構成モノマーとする点 上記相違点1?3について検討する。 ・相違点1について 引用発明の液体状のフッ素化モノマーは、「一般式(I): CF_(2)=CFOR_(f)」で表される化学構造を有するものであって、その置換基R_(f)は、「酸素原子を1?3個含む炭素数3?12のパーフルオロアルキル(ポリ)ビニルエーテル基」と定義されるものであるところ、本願の実施例に記載されている液体状のフッ素化モノマー「PPVE-2:CF_(2)=CF-O-CF_(2)-CF(CF_(3))-O-CF_(2)-CF_(2)-CF_(3) 沸点103℃」(本願明細書の段落【0042】)を下位概念の化合物として包含しているから、「少なくとも50℃の沸点を有」する液体状のフッ素化モノマーを含んでいることは明らかである(必要であれば、引用文献の実施例を参照されたい。引用文献の実施例には、液体状のフッ素化モノマーとして、「CF_(3)CF_(2)CF_(2)O(CF(CF_(3))CF_(2)O)_(2)CF=CF_(2)」(摘示事項b)が記載されており、当該化合物は、本願の実施例に記載されている「PPVE-2:CF_(2)=CF-O-CF_(2)-CF(CF_(3))-O-CF_(2)-CF_(2)-CF_(3)」よりも分子量の大きな化合物であるから、「PPVE-2」の「103℃」という沸点よりも高い沸点を有していると考えられる)。したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 ・相違点2について 引用発明の水性エマルジョンは、本願発明と同様のフッ素化ポリマーとフッ素化乳化剤を用いて、本願発明と同様の予備乳化工程を経て得られたものであるから、その性状についても本願発明と同様のもの、すなわち、「少なくとも1時間のポットライフを有する」ものである蓋然性が高い。したがって、相違点2も実質的な相違点ではない。 ・相違点3について 本願明細書には、「本発明のプロセスによりフルオロポリマー及び好ましくはペルフルオロポリマーを製造するために、液体状のフッ素化モノマーは一般的に気体フッ素化モノマー、特に気体フッ素化オレフィンと共重合される。液体状のフッ素化モノマーとの共重合のための気体フッ素化モノマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(VDF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びそれらの混合物が含まれる。」(段落【0038】)と記載されていることからみて、本願発明のフッ素化ポリマーは、引用発明の「常温常圧で気体の含フッ素エチレン性不飽和モノマー」を構成モノマーとして許容しているから、相違点3も実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明である。 5.請求人の主張 請求人は、平成24年11月7日提出の回答書において、次のように主張している。 「【本願発明が特許されるべき理由】 拒絶査定によれば、「優先権書類は、国内書面提出期間が満了する時の属する日後二月以内に特許庁長官に対して提出されていないので、1999年12月30日付のドイツ国特許出願に基づく優先権の主張は認められない。」と述べられています。 しかしながら、特許協力条約に基づく規則17.1(d)によれば、「指定官庁は、(a)に規定する先の出願が国内官庁としての当該指定官庁に出願されている場合又は当該指定官庁が実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合は、(c)の規定により優先権の主張を無視することはできない。」と規定しています。 一方、本件出願の優先権書類は、WIPOのホームページ(電子図書館)の下記タブから入手可能です。 http://www.wipo.int/patentscope/search/en/detail.jsf?docId=WO2001049752&recNum=1 &docAn=US2000035105&queryString=49752&maxRec=1 当該電子図書館から入手した本件国際出願の書誌的事項の頁、書類の頁、そこから入手できる本件出願の優先権書類(DE199 64 004.1)の写しを、審判請求書に添付しました。 また、この優先権書類(DE199 64 004.1)は、WIPOのホームページ(電子図書館)において、2001年7月12日の時点から入手可能でした。 したがって、本件の優先権書類は、当該指定官庁が優先権書類を電子図書館から入手可能なものでありますので、本件優先権主張は認められるべきものと考えます。」 しかしながら、PCT規則17.1(c)の例外規定として、同17.1(d)が設けられているものの、当該規則は、その施行日が2004年1月1日であって、出願人が優先権書類を提出すべき期間を経過した後に施行されたものであるから、当該規則を援用することはできない。 したがって、PCT規則17.1(d)を根拠として優先権の主張を認めることはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-12 |
結審通知日 | 2013-02-19 |
審決日 | 2013-03-04 |
出願番号 | 特願2001-550292(P2001-550292) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松元 洋 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 近藤 政克 |
発明の名称 | フッ素化ポリマーの調整方法 |
代理人 | 永坂 友康 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 小林 良博 |
代理人 | 蛯谷 厚志 |