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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04H
管理番号 1276863
審判番号 不服2011-27200  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-16 
確定日 2013-07-17 
事件の表示 特願2010-513358「ラジオ番組を向上させる装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月24日国際公開、WO2008/157549、平成22年 9月16日国内公表、特表2010-531113〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年6月17日(パリ条約による優先権主張 2007年6月18日(US)アメリカ合衆国、2008年6月16日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.本願発明
平成23年12月16日付けの手続補正は、補正前の請求項2-45を削除する適法なものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年12月16日付けの手続補正書の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その記載は以下のとおりである。

「通信デバイスにおいてブロードキャストラジオ送信を受信することと、なお、前記ブロードキャストラジオ送信は、プライマリコンテンツと、前記プライマリコンテンツとの関係を有する補足コンテンツとを備えており、前記プライマリコンテンツは、第1のオーディオデータを備えており、前記補足コンテンツは、テキスト、グラフィック、イメージ、ビデオ等のノンオー
ディオデータを備えている;
前記補足コンテンツを、前記プライマリコンテンツとの前記関係を有する変換された補足コンテンツへ変換することと、なお、前記変換された補足コンテンツは、前記ノンオーディオデータから変換された第2のオーディオ
データを備えている;
を備えている、ラジオデータシステム(RDS)プロトコルに基づくラジオ
番組を向上させる方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-51511号公報(以下、
「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【請求項2】 映像信号から文字多重放送の信号を検出して復号する文字信号処理部と、文字信号処理部で復号された文字多重信号の文字データ部分を文節または単語の形態要素に分割する文字分割部と、分割された形態要素を音声信号に変換する音声変換部と、音声を出力する音声出力部とを備えたことを特徴とする文字多重放送受信機。」

(2)「【0010】本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、文字多重放送の文字データ部分を文節や単語の形態要素に分割して、文字多重放送を音声に変換して出力する文字多重放送受信機、および受信した文字多重放送のデータに誤りがあっても、誤りを補正して表示できるような文字多重受信機を得ることを目的とする。」

(3)「【0033】実施の形態3.実施の形態2では文字多重放送のデータの文字データを音声に変換する文字多重放送受信機を示したが、テレビ受像機と一体形の文字多重放送受信機では同時に文字多重放送の画面表示を
行ってもよい。
【0034】図4は実施の形態3である文字多重放送受信機の構成を示すブロック図である。図において、9はディスプレイ、10は映像信号処理部、11は音声信号処理部、12、13は切り換えスイッチである。他は図2の場合と同じであり、説明を省略する。
【0035】次に、動作について説明する。チューナ1により適当なチャンネルが選択され、アンテナ4からそのチャンネルの映像信号が受信される。文字信号処理部2では、受信された映像信号から文字多重放送の信号が抽出され、ディジタルの文字多重信号に復号される。復号された文字多重信号は文字図形処理部3において、ディスプレイ9で画面表示できるような信号体系に変換される。映像信号処理部10では、映像信号を画面表示できるように処理し、音声信号処理部11では、映像信号に含まれる音声信号を処理する。
【0036】なお、図9に示したデータユニットの先頭に送信される2バイトのデータユニット識別パラメータによって、そのデータユニットが文字
データであるのか図形データであるのか、付加音であるのかを識別できる。文字分割部5では、データユニット識別パラメータによって文字データであると識別されたデータユニットの、文字データに対応する部分のみが抽出される。抽出された文字データ部分には文字を表す符号の他に文字の大きさ、スペース等の符号も当然含まれている。このような文字の大きさ、スペース等の符号が途中に存在した場合、その符号までを1文節とみなす。その他の部分は辞書部6に記憶されている文節や単語の情報をもとに文節および単語に分割される。
【0037】そして、実施の形態2と同様に音声変換部7において文字データ部分が音声変換され、音声信号処理部11の出力とともに切り換えスイッチ13へ入力される。切り換えスイッチ13の出力によってスピーカ6から音声が出力される。
【0038】また、文字図形処理部3の出力は映像信号処理部10の出力とともに、切り換えスイッチ12に入力される。切り換えスイッチ12の出力はディスプレイ9に入力され、画面の表示が行われる。切り換えスイッチ12、13の設定によって、映像と音声は4種類の組合せが選択できるようになる。例えば、映像信号を見ながら、文字多重放送の情報を音声で聞いたりできる。
【0039】なお、ここでは、映像信号と文字放送の画面および映像信号の音声と文字放送の音声を切り換えて表示するようにしたが、映像を画面を分割して同時に表示したり、2重音声等により音声を同時に出力したりしてもよい。
【0040】また、文字多重放送規格を利用した他のデータ放送の受信機であっても、そのデータ放送がデータとして文字コードを伝送していればよ
く、同様の効果を発揮する。」

したがって、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「テレビ受像機と一体形の文字多重放送受信機で、
チューナ1により適当なチャンネルが選択され、アンテナ4からそのチャンネルの映像信号が受信され、
文字信号処理部2では、受信された映像信号から文字多重放送の信号が抽出され、ディジタルの文字多重信号に復号され、
映像信号処理部10では、映像信号を画面表示できるように処理し、音声信号処理部11では、映像信号に含まれる音声信号を処理し、
文字分割部5では、文字データに対応する部分のみが抽出され
音声変換部7において文字データ部分が音声変換され、
映像信号と文字放送の画面および映像信号の音声と文字放送の音声を切り換えて表示するか、映像を画面を分割して同時に表示したり、2重音声等により音声を同時に出力したりする方法。」

4.対比
引用発明で「テレビ受像機と一体形の文字多重放送受信機で、
チューナ1により適当なチャンネルが選択され、アンテナ4からそのチャンネルの映像信号が受信され」とすることは、
本願発明の「通信デバイスにおいてブロードキャストラジオ送信を受信すること」と、
「通信デバイスにおいてブロードキャスト送信を受信すること」で共通す
る。
引用発明の普通のテレビ信号である「映像信号」及び「音声信号」からなる部分を第1のコンテンツとすれば、「文字多重放送の信号」は第2のコンテンツといえ、テキストといえる文字データを含んでいるから、
本願発明の「プライマリコンテンツ」及び「補足コンテンツ」とは、
「ブロードキャスト送信は、第1のコンテンツと、第2のコンテンツとを備えており、前記第1のコンテンツは、第1のオーディオデータを備えてお
り、前記第2のコンテンツは、テキストのノンオーディオデータを備えている」ことで共通する。
引用発明は、文字多重放送の文字データ部分が音声変換されるので、
本願発明の「前記補足コンテンツを、前記プライマリコンテンツとの前記関係を有する変換された補足コンテンツへ変換することと、なお、前記変換された補足コンテンツは、前記ノンオーディオデータから変換された第2の
オーディオデータを備えている」とすることと、
「第2のコンテンツを、変換された第2のコンテンツへ変換することと、なお、変換された第2のコンテンツは、ノンオーディオデータから変換された第2のオーディオデータを備えている」ことで共通する。
引用発明は、普通にテレビ番組を視聴するだけではなく、「映像信号と文字放送の画面および映像信号の音声と文字放送の音声を切り換えて表示するか、映像を画面を分割して同時に表示したり、2重音声等により音声を同時に出力したりする」のであるから、本願発明と同様に番組を向上させる方法といえる。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

「通信デバイスにおいてブロードキャスト送信を受信することと、なお、前記ブロードキャスト送信は、第1のコンテンツと、第2のコンテンツとを備えており、前記第1のコンテンツは、第1のオーディオデータを備えてお
り、前記第2のコンテンツは、テキストのノンオーディオデータを備えている;
前記第2のコンテンツを、変換された第2のコンテンツへ変換すること
と、なお、前記変換された第2のコンテンツは、前記ノンオーディオデータから変換された第2のオーディオデータを備えている;
を備えている、番組を向上させる方法」

また次の点で相違する。

相違点1
本願発明はブロードキャスト送信が「ブロードキャストラジオ送信」で、「ラジオデータシステム(RDS)プロトコルに基づく」ものであるのに対し
て、引用発明は「テレビ受像機と一体形の文字多重放送受信機で、
チューナ1により適当なチャンネルが選択され、アンテナ4からそのチャンネルの映像信号が受信され、
文字信号処理部2では、受信された映像信号から文字多重放送の信号が抽出され、」とあるように、文字多重放送が多重されたテレビ放送を受信するものである点。

相違点2
本願発明は「第1のコンテンツ」が「プライマリコンテンツ」であり、
「第2のコンテンツ」が「前記プライマリコンテンツとの関係を有する補足コンテンツ」で「テキスト、グラフィック、イメージ、ビデオ等のノンオーディオデータを備えている」のに対して、引用発明は「第1のコンテンツ」と「第2のコンテンツ」との関係についての特定がなく、「第2のコンテンツ」はテキストといえる文字データを含んでいるが、「テキスト、グラ
フィック、イメージ、ビデオ等のノンオーディオデータを備えている」と
いった特定はなされていない点。

5.相違点に対する判断
相違点1について
ラジオデータシステム(RDS)プロトコルに基づくラジオ放送は周知のも
のであり、引用発明はテレビ放送の受信に関するものであるが、これをラジオ放送の受信に適用することに困難な点はない。

相違点2について
文字多重放送はテレビ番組とは独立した内容の放送を行うこともできる
が、関連した内容の放送も可能なことは明らかであり、テレビ番組の音声信号の字幕情報の放送も行われてきた。
したがって、引用発明の「第1のコンテンツ」と「第2のコンテンツ」とを、「プライマリコンテンツ」と「前記プライマリコンテンツとの関係を有する補足コンテンツ」とすることに困難な点はない。
また、本願発明の「前記補足コンテンツは、テキスト、グラフィック、イメージ、ビデオ等のノンオーディオデータを備えている」との記載において「テキスト、グラフィック、イメージ、ビデオ等の」とあるのは「ノンオーディオデータ」の単なる例示にすぎず、「ノンオーディオデータ」を限定するものとは解釈できないし、明細書及び図面には、本願発明の、グラフィック、イメージ、またはビデオの場合の具体的な実施例が示されていない。
したがって、引用発明の「ノンオーディオデータ」と、本願発明の「ノンオーディオデータ」とに実質的な相違はない。
なお、平成23年4月6日付けの意見書において、「第四に、引用文献1
の文字多重信号は、文字データを含むものですが、本件発明の補足コンテンツは、ノンオーディオ信号であって、これは、文字情報だけではなく、テキスト、グラフィック、イメージ、ビデオなどを含むことができるもので
す。」との主張がなされているので、仮にグラフィック、イメージ、ビデオのような画像情報に限定されている場合についても、一応の検討を以下に示す。
画像情報の認識技術は当業者に知られており、その認識結果を音声信号として出力することも格別のこととはいえない。
したがって、仮に本願発明の「ノンオーディオデータ」がグラフィック、イメージ、ビデオのような画像情報を含むものに限定されているとしても、相違点2を本願発明のようにすることに困難な点はない。

上記のように各相違点を本願発明のようにすることに困難な点はないの
で、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-13 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-05 
出願番号 特願2010-513358(P2010-513358)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉村 博之
近藤 聡
発明の名称 ラジオ番組を向上させる装置及び方法  
代理人 佐藤 立志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 井関 守三  
代理人 白根 俊郎  
代理人 岡田 貴志  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
代理人 村松 貞男  
代理人 竹内 将訓  
代理人 河野 哲  
代理人 砂川 克  
代理人 中村 誠  
代理人 堀内 美保子  
代理人 高倉 成男  

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