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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
管理番号 1276866
審判番号 不服2012-398  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-10 
確定日 2013-07-17 
事件の表示 特願2007-537930号「LNG施設のための垂直熱交換器構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月 4日国際公開、WO2006/047097、平成20年 5月29日国内公表、特表2008-518187号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年10月14日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年10月25日 米国)を国際出願日とする出願であって 、平成23年9月7日付けで拒絶査定がなされ(発送:9月13日)、これに対し、平成24年1月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正書が提出されたものであり、さらに、平成24年10月24日付けで当審において拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され(発送:10月30日)、これに対して、平成25年1月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項29に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年1月30日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。

「【請求項29】
内部容積を定めるシェルと、
前記内部容積内に配置される少なくとも1つのコアとを含み、
前記シェルは、実質的に円筒形の側壁と、普通は上方にあるエンドキャップと、普通は下方にあるエンドキャップとを含み、前記普通は上方及び下方にあるエンドキャップは、前記側壁の概ね両端部に配置され、
前記側壁は、前記内部容積内へシェル側流体を受容するための流体入口を定め、
前記普通は上方にあるエンドキャップは、前記内部容積からの気相シェル側流体を排出するための蒸気出口を定め、
前記普通は下方にあるエンドキャップは、前記内部容積からの液相シェル側流体を排出するための液体出口を定める、
前記シェルは、入口と、第一出口と、第二出口とを含み、各々は、前記シェルの前記内部容積と連絡し、
前記第一出口及び前記第二出口は、前記シェルの中心側壁軸に沿って互いに離間し、
前記第一出口及び前記第二出口は、前記シェルの概ね対向する端部に配置され、
前記第二出口は、前記普通は下方にあるエンドキャップ内に定められる、
熱交換器。」

3.刊行物とその記載事項
当審拒絶理由にて引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特許第2621841号公報(以下「刊行物1」という。)には、第1、2図と共に、次の記載がある。

ア.「(実施例)
第1図に示す装置は、第6図に示す従来装置における窒素冷却器90と、この窒素冷却器90に窒素循環サイクルによって液体N_(2)を供給するための設備、すなわち圧縮機14、第1窒素熱交換器15、第2窒素熱交換器16、膨脹機16a、真空ブロワ17などを省略し、これらの代りに内部の液体COにH_(2)ガスを吹込むようにしたCO蒸発器9を精溜塔6と関係付けて設けたものである。
第1図において、精溜塔6には下部に高圧部61、上部に低圧部62がそれぞれ形成され、これらの間にはコンデンサ63が設けられている。またCO蒸発器9は、多管式の熱交換器91を有するサーモサイフォン型蒸発器に対して、この熱交換器91の下方にH2ガスヘッダ92が設けられて構成されている。
このH_(2)ガスヘッダ92は、パイプを平面視で例えば同心円状、渦巻き状もしくは並列配置となるように屈曲形成したもので、このH_(2)ガスヘッダ92の上半部分には第2図に示すようにH_(2)ガスの吹き出し孔である多数の細孔921が貫通形成されている。このH_(2)ガスヘッダ92は、その上面が伝熱管911の下部入口912に臨むように配置されるとともに、CO蒸発器9の底面から液体COを抜出す導管49の開口(抜出し口)491とは十分に離れた位置(例えば導管49の開口から15?20cm程度の上方位置)であって上記下部入口912寄りに配置されている。
これによってH_(2)ガスヘッダ92から吹出されるH_(2)ガスがチューブ側(伝熱管911の内側)を循環する液体CO中に均一に分散して混入するようにされるとともに、導管49から精溜塔6に還流させる液体CO中にH_(2)ガスの気泡が巻込まれないようにしている。
このCO蒸発器9と精溜塔6とは、第1図および第2図に示すように導管43によってコンデンサ63の蒸発側からCO蒸発器9のシェル側(伝熱管911の外側)にH_(2)リッチガス、導管45によってコンデンサ63の凝縮側からCO蒸発器9のチューブ側に液体COがそれぞれ供給されるように接続され、また導管49によってCO蒸発器9の底部から精溜塔6の低圧部62に液体COが還流液として供給されるように接続されている。
上記CO蒸発器9には気液分離器10が接続され、シェル側を通ったH_(2)リッチガスが導管46によって気液分離器10に導かれ、気液分離器10で分離された液体COが導管47によってCO蒸発器9のチューブ側に戻されるように構成されている。またこの気液分離器10で分離されたH_(2)ガスは、その一部が導管55を通してH_(2)ガスヘッダ92に供給され、残部が導管48によって排出されるようにしている。」(第5欄第31行?第6欄第24行、下線は当審にて付与以下同じ。)

イ.「またコンデンサ63で液化されたCOの残留は減圧されて導管45を通してCO蒸発器9に供給される。この液体COがCO蒸発器9のチューブ側でほぼ大気圧(0.2Kg/cm2G程度)下で蒸発することによって、導管43を通してシェル側に供給された高圧のH_(2)リッチガス(原料ガスの圧力によって変化するがH_(2)分が概略40?70%含有)は冷却されてガス中のCOはさらに液化する。」(第6欄第50行?第7欄第6行)

ウ.「CO蒸発器9の頂部からはH_(2)を含むCOガスが導管51を通して排出され、このガスは途中で気液分離器8から排出されるガスと合流して液体CO過冷却器5、主熱交換器3を通って加熱され、そして導管52を通して気体圧縮機1の吸込み側に原料ガスとしてリサイクルされる。
CO蒸発器9に対して導管45と導管47とによって供給された液体COのうち蒸発しなかった余剰の液体COは導管49を通して精溜塔6の低圧部62に還流液として供給される。この際、導管49の抜出し口とH_(2)ガスヘッダ92とは十分に離され、しかもH_(2)ガスの吹出し口は上半部分だけに形成されているので、還流する液体COにH_(2)ガスの気泡がまき込まれることはない。」(第7欄第31行?第42行)

エ.第2図には、次の事項が図示されている。
・熱交換器91がシェル(蒸発器9の筐体)の内部空間に配置されていること、及び、該シェルが両端にドーム状部材を有していること
・蒸発器9のシェルには、液体CO供給導管45と、COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49が接続されていること
・COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49は蒸発器9のシェルの中心軸に沿って互いに離間していること
・COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49は蒸発器9のシェルの対向する端部のドーム状部材に設けられていること

オ.シェルの中央部分は、第2図の記載形状及びシェルが「パイプを平面視で例えば同心円状、渦巻き状もしくは並列配置となるように屈曲形成した」H_(2)ガスヘッダ9並びに対応する熱交換器91を収容するものであることから、円筒形の側壁部材であると認められる。

以上の記載事項ア?ウ、図示事項エ、認定事項オを総合すると、刊行物1には第2図に対応して、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という)が記載されているものと認められる。

「シェルの内部空間に配置される熱交換器91を含み、
前記シェルは円筒形の側壁と、上方ドーム状部材と、下方ドーム状部材を含み、両ドーム状部材は前記側壁の両端部に配置され、
前記上方ドーム状部材にCOガス排出導管51が接続され、
前記下方ドーム状部材には上部に液体CO供給導管45、47が、下部に余剰の液体CO抜出導管49が接続され、
前記シェルの内部空間には、液体CO供給導管45、47と、COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49が接続され、
前記COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49は蒸発器9のシェルの中心軸に沿って互いに離間し、
前記COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49は蒸発器9のシェルの対向する端部に配置され、
前記液体CO抜出導管49は前記蒸発器9のシェルの下方のドーム状部材に接続された、
蒸発器9。」

4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「内部空間」は本願発明の「内部容積」に相当し、以下同様に、「熱交換器91」は「コア」に、「COガス排出導管51が接続され」は「気相シェル側流体を排出するための蒸気出口を定め」に、「余剰の液体CO抜出導管49が接続され」は「液相シェル側流体を排出するための液体出口を定める」に、「液体CO供給導管45、47」は「入口」に、「COガス排出導管51」は「第一出口」に、「液体CO抜出導管49」は「第二出口」に、「前記シェルの内部空間には、液体CO供給導管45、47と、COガス排出導管51と、液体CO抜出導管49が接続され、」は「前記シェルは、入口と、第一出口と、第二出口とを含み、各々は、前記シェルの前記内部容積と連絡し、」に、「中心軸」は「中心側壁軸」に、「蒸発器9」は「熱交換器」に、各々相当する。

また、「シェル」が「コア(熱交換器91)」が配置される「内部容積(内部空間)」を定めるものであることは、明らかである。

さらに、刊行物1記載の発明における「上方ドーム状部材」も本願発明における「普通は上方にあるエンドキャップ」も共に「上端部材」といえ、以下同様に、「下方ドーム状部材」も「普通は下方にあるエンドキャップと」も共に「下端部材」といえ、「下方ドーム状部材には上部に液体CO供給導管45、47が接続され」も「側壁は、前記内部容積内へシェル側流体を受容するための流体入口を定め」も共に「シェルは内部容積内へシェル側流体を受容するための流体入口を定め」といえる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
内部容積を定めるシェルと、
前記内部容積内に配置されるコアとを含み、
前記シェルは、実質的に円筒形の側壁と、上端部材と、下端部材とを含み、前記上端、下端部材は、前記側壁の両端部に配置され、
前記シェルは、前記内部容積内へシェル側流体を受容するための流体入口を定め、
前記上端部材は、前記内部容積からの気相シェル側流体を排出するための蒸気出口を定め、
前記下端部材は、前記内部容積からの液相シェル側流体を排出するための液体出口を定める、
前記シェルは、入口と、第一出口と、第二出口とを含み、各々は、前記シェルの前記内部容積と連絡し、
前記第一出口及び前記第二出口は、前記シェルの中心側壁軸に沿って互いに離間し、
前記第一出口及び前記第二出口は、前記シェルの概ね対向する端部に配置され、
前記第二出口は、前記下端部材内に定められる、
熱交換器。」

(相違点1)
内部容積内へシェル側流体を受容する流体入口(液体CO供給導管45、47 )が、本願発明においては「側壁」に定められているのに対し、刊行物1記載の発明(第2図)においては「下方ドーム状部材の上部」に定められている点。

(相違点2)
両端のドーム状部材が、本願発明においては「普通は上方にあるエンドキャップ」及び「普通は下方にあるエンドキャップ」と特定されているのに対し、刊行物1記載の発明においてはエンドキャップであるか否かが不明な点。

5.判断
次いで、各相違点につき検討する。

(相違点1について)
刊行物1の第1図に「液体CO供給導管45、47が蒸発器9のシェルの側壁に接続した」構成が記載され、また、当審拒絶理由で引用した特開2003-21458号公報(図1、液体酸素ドラム9における液体酸素ポンプ10接続部参照)にも「内部容積内へシェル側流体を受容する流体入口を側壁に設けた」構成が記載されているように、内部容積内へシェル側流体を受容する流体入口を「側壁に定める(設ける)」ことは周知の技術手段である。

よって、刊行物1記載の発明において、シェル内にシェル側流体を供給できる部位の一つである「側壁」に流体入口を定めることは、上記周知の技術手段を参酌して、当業者が、容易になしえた事項である。

(相違点2について)
中央円筒部材及び両端エンドキャップによって熱交換器のシェル(筐体)を構成することは、例えば、特許第3025617号公報(エンドキャップ26、30参照)、特開2003-192641号公報(図2参照)記載のように、周知の技術手段である。

よって、刊行物1記載の発明における「ドーム状部材」を周知の「エンドキャップ」により構成することは、上記周知の技術手段に倣って、当業者が容易になしえた事項である。

そして、本願発明により得られる効果も、刊行物1記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。

6.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-18 
結審通知日 2013-02-19 
審決日 2013-03-04 
出願番号 特願2007-537930(P2007-537930)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司千壽 哲郎  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 前田 仁
森川 元嗣
発明の名称 LNG施設のための垂直熱交換器構造  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  

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