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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1276910
審判番号 不服2011-6053  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-18 
確定日 2013-07-16 
事件の表示 特願2005-56846「くすみ改善用皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成18年9月14日出願公開、特開2006-241033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年3月2日の出願であって、平成21年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成22年1月12日に手続補正がなされるとともに同日受付けで意見書が提出されたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年6月15日受付けで審判請求理由の手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月12日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
下記の(A)?(D)を含有することを特徴とするくすみ改善用皮膚外用剤。
(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物を、更に、合成吸着体ダイヤイオンHP-20(登録商標)を充填したカラムにより処理した抽出物
(B)細胞賦活剤として、デオキシリボ核酸塩、アデノシン三リン酸ニナトリウム、酵母抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上
(C)活性酸素消去剤として、ワレモコウ抽出物、茶抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物から選ばれる1種以上
(D)エストロゲン様作用剤として、ダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物から選ばれる1種以上」

なお、本願発明の「アデノシン三リン酸ニナトリウム」における「ニ」はカタカナ表記であるが、技術常識からみて漢数字の「二」の誤記であることは明らかなので、以下、統一して漢数字の「二」で表記する。

第3 引用例、周知例、及びそれらの記載事項
1 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成16年2月5日に頒布された「特開2004-35440号公報」(原査定の引用文献5。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下、下線は当審で付与した。

(1a)「【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とするくすみ抑制剤。
(A)ウヤク、オリーブ、カッコン、カワラヨモギ、クララ、セイヨウスノキ、ダイズ、チョウジ、ツキミソウ、ツルドクダミ、トルメンチラ、ブドウ、ボタン、ホップ、ミチヤナギ、ヤシャ、ユキノシタよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物を含有するメラニン生成抑制剤。
(B)アロエベラ、アーモンド、ゴマ、サンヤク、セイヨウタンポポ、セイヨウニワトコ、センキュウ、ソウハクヒ、トウニン、ドクダミ、ナメコ、バクモンドウ、ムクゲ、ヨクイニン、クロレラよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物、酵母抽出物及びアデノシン及びその誘導体、から選ばれる少なくとも1種以上を含有する線維芽細胞増殖促進剤。
(C)センブリ、ダイオウ、トウガラシ、トウキ、ニンニク、ニンジンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物及びビタミンP及びその誘導体、から選ばれる少なくとも1種以上を含有する血行促進剤。
【請求項2】
請求項1記載のくすみ抑制剤を配合することを特徴とする肌質改善用皮膚外用剤。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線や乾燥等の外的要因、又は加齢的老化等の内的要因が原因となって発生する角質層の変化、メラニン色素の増加、血流量低下により誘発される皮膚のくすみを抑制するくすみ抑制剤及び皮膚外用剤への応用に関するものである。更に詳しくはメラニン色素の生成を有意に抑制する作用、線維芽細胞増殖促進作用及び血流を促進する作用の3種の有益な作用を有する活性成分を統括的に利用することにより、新規で且つ安全なくすみ抑制剤と、それを配合した肌質改善用皮膚外用剤を提供するものである。」

(1c)「【0003】
くすみを感じさせる大きな要因の1つに、皮膚の色が関係していると考えられている。人の皮膚色を決定する最も重要な因子としてメラニン色素の沈着が挙げられる。肝斑(シミ)、雀卵斑(ソバカス)、日焼け後の皮膚の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞の活性化によりメラニン色素の生成が著しく亢進することにより生じる。従って、くすみを防止又は改善するためには、メラニンの生成過程の進行を阻害すること、あるいは既に生成されたメラニンを淡色化させることが有効であると考えられている。そこで、これらの考えに基づき、皮膚のくすみを改善するために、従来から種々の美白成分が提案されている。例えば、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、グルタチオン、ハイドロキノン及びその誘導体、プラセンターエキス又は様々な植物抽出物等が知られている。
【0004】
又、くすみは皮膚表面の質感の変化が大きく関係していると言われている。何らかの要因で角質層が正常に剥離せず肥厚化した場合、結果的に皮膚の透明度が低下して、肌にきめや艶がなくなる。又、角質層が正常に構成されていない場合、角質層の水分量が低下する現象も観察されている。この皮膚表面の質感を改善するためには皮膚の新陳代謝を活性化し角質層を正常化していくことが重要であると考えらている。従って、角質層を正常化するためには、角質層を構成する細胞すなわち線維芽細胞の増殖を促進させ、古い細胞の蓄積を抑制することが有効であると考えられている。そこで、これらの考えに基づき、現在までに細胞増殖を促進する作用を有する細胞賦活剤の探索が数多く行われ、既に細胞賦活剤として種々の細胞増殖因子が確認されている。例えば本出願人による結合組織加水分解物(特開昭62-84024)、胸線・脾臓等の臓器由来水溶性蛋白(特開昭63-188697、63-188698)、或いは牛胎盤エキス(特開平03-141299)や更には牛脳や牛脳下垂体・鶏冠の抽出物(特開平01-175998)等が報告されており、これらは既に医薬部外品や化粧品に利用されている。
【0005】
更にくすみには皮膚の血流量も大きく関係していると言われている。加齢や、極端な疲労で真皮中の血管運動が衰えて、皮膚表面の毛細血管の血流量が低下すると言われている。結果的に皮膚の赤みが減少し、色の良くない還元型ヘモグロビンが静脈に停滞することより、肌が青黒く見えくすんだ感じになると言われている。皮膚の血流量を向上させるために、マッサージによる物理的刺激、入浴による皮膚温を高める方法や、温泉の様々なミネラルを適用することが効果的とされ、現在まで利用されてきている。更に医薬品、医薬部外品、化粧品の分野においては、皮膚の血流量を向上させるために、様々な血流促進剤が利用されている。
【0006】
しかしながら、メラニン生成阻害作用による色素色素沈着の抑制、線維芽細胞増殖促進作用による皮膚新陳代謝の活性化及び血流促進作用による肌の色調の正常化といった3種の作用を有する活性成分を統括的に利用することにより、相乗的にくすみを抑制するくすみ抑制剤、又はくすみ抑制剤を配合することによる肌質を改善する肌質改善用皮膚外用剤について、より有効性の高いものは未だ報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
こうした事情に鑑み、本発明者らは、メラニン生成抑制作用、線維芽細胞増殖作用及び血行促進作用の3種の作用が統括的に働くことにより実現する、くすみを抑制する作用を有するくすみ抑制剤、及びくすみ抑制剤を配合することにより肌質を効果的に改善する作用を有する皮膚外用剤を完成するに至った。」

(1d)「【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(A)は以下のものが挙げられる。
・・・
【0011】
又、本発明で使用する「オリーブ」とは、モクセイ科(Oleaceae)、オリーブ属(Olea)の植物オリーブ(O.europaeaL.)の葉及び枝、枝葉、果実、種子、全草を用いる。
【0012】
又、本発明で使用する「カッコン(別名:葛根)」とは、マメ科(Leguminosae)、クズ属(Pueraria)の植物:クズ(P.lobata(Willd.)Ohwi)の周皮を除いた根又は根茎、根皮を用いる。
・・・
【0016】
又、本発明で使用する「ダイズ(別名:大豆)」とは、マメ科(Leguminosae)、ダイズ属(Glycine)の植物ダイズ「G.max L.Merrill(=G.hirsta Maxim.)」の種子を用いる。
・・・
【0022】
又、本発明で使用する「ボタン(別名:牡丹皮)」とは、ボタン科(Paeoniaceae)、ボタン属(Paeonia)の植物:ボタン「P.moutan Sims(=P.suffruticosa Andrews)」の根又は根皮・根茎を用いる。
・・・
【0027】
本発明で使用する(B)は以下のものが挙げられる。
・・・
【0035】
又、本発明で使用する「ソウハクヒ(別名:桑白皮)」とは、クワ科(Moraceae)クワ属(Morus)の植物:クワ(M.bombycis Koidzumi)、マグワ(M.alba L.)又はその他同属植物の根又は根茎、根皮を用いる。例えば、シマグワ(M.australis Poir.)、ログワ(M.latifolia(Bur.)Poir.)、モウコグワ(M.mongolica(Bur.)Schneid.)、クロミグワ(M.nigra L.)アカミグワ(M.rubra L.)等を用いることもできる。
・・・
【0042】
又、本発明で使用する「クロレラ」とは緑色植物門(Chlorophyta),緑藻網(Chlorophyceae),クロロコッカス目(Chlorococcales),オオシスティス科(Oocystaceae),クロレラ属(Chlorella)に分類される、直径3ー10ミクロンの単細胞緑藻類を指し、例えば、クロレラ・ブルガリス(C.Vulgaris)、クロレラ・ピレノイドサ(C.Pyrenoidosa)、クロレラ・エリプソイデイア(C.Ellipsoidea)等の全草を用いることができる。
【0043】
又、本発明で使用する「酵母抽出物」とは、サッカロマイセス(Saccharomyces)属酵母(例えば、ビール酵母,清酒酵母,ワイン酵母,パン酵母等)より単に水性溶媒を用いて得られた抽出物をはじめ、酵母を自己消化させることによって得られる消化物より水性溶媒を用いて得られる抽出物、酵母を蛋白分解酵素にて消化させることによって得られる消化物より水性溶媒を用いて得られる抽出物、酵母を酸で加水分解することによって得られる分解物より水性溶媒を用いて得られる抽出物を使用することができる。尚、抽出に使用する水性溶媒とは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、又はこれらの任意な混液である。酵母抽出物は、溶媒を含んだ抽出液であっても、溶媒を除去したペースト又は粉末の何れの形態でも使用可能である。成分としては、各種酵素、タンパク質、RNA、ヌクレオシド、ヌクレオチド等の核酸関連物質、補酵素類、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、イノシトール等のビタミン類、各種アミノ酸、グルタチオン、脂質、ミネラル等の成分が含まれる。
【0044】
又、本発明で使用する「アデノシン及びその誘導体」とは、現在市場で流通しているアデノシン及びその誘導体、化粧品、医薬品及び医薬部外品の製造において通常使用されているアデノシン及びその誘導体、及び一般公開されている文献等に記載されているアデノシン及びその誘導体等の群から任意に選択し使用することができる。本発明で任意に選択され使用されるアデノシン及びその誘導体としては、例えば、アデノシン、アデノシン-5’-モノリン酸又はこの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、アデノシン-5’-ジリン酸又はこの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、アデノシン-5’-トリリン酸又はこの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、・・・等が挙げられる。本発明において、期待できる効能の強さ及び物質の入手の容易性の点から、特にアデノシン、アデノシン-5’-モノリン酸又はこの塩(ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩)、アデノシン-5’-ジリン酸又はこの塩(ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩)、アデノシン-5’-トリリン酸又はこの塩(ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩)の使用が好ましい。
【0045】
本発明で使用する(C)は以下のものが挙げられる。
・・・
【0050】
又、本発明で使用する「ニンニク(別名:大蒜)」とは、ユリ科(Liliaceae)の植物:ニンニク(Allium sativum L.)の鱗茎を用いる。
【0051】
又、本発明で使用する「ニンジン(別名:人参、朝鮮人参)」とは、ウコギ科(Araliaceae)オタネニンジン(トチバニンジン)属(Panax)の植物:オタネニンジン「P.ginseng C.A.Meyer(=P.schinseng Nees)」の根又は根茎、根皮を蒸して乾燥したものを用いる。」

(1e)「【0056】
本発明で使用する植物抽出物は、溶媒抽出後、更に適宜精製操作を施すことが可能で、精製操作としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)添加による分解、微生物による発酵又は代謝変換、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、種々の分離モード(イオン交換、親水性吸着、疎水性吸着、サイズ排除、配位子交換、アフィニティー等)を有するクロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた濾過、加圧又は減圧、加温又は冷却、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等が例示でき、これらを任意に選択し組合わせた処理を行うことが可能である。」

(1f)「【0061】
尚、本発明のくすみ抑制剤及び肌質改善用皮膚外用剤には、前記の必須成分に加え、更に下記に例示する色素沈着抑制剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラノサイトメラニン生成抑制剤、メラニン生成促進剤、保湿剤、細胞賦活剤/代謝活性化剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤/ラジカル生成抑制剤、脂肪代謝促進剤、紫外線防御剤/紫外線吸収促進剤、収斂剤、抗炎症剤/インターロイキン産生抑制剤/ヒスタミン遊離抑制剤、抗脂漏剤、抗菌剤/抗ウイルス剤、血流促進剤/血管刺激剤、抗アンドロゲン剤、構造タンパク質分解酵素(エラスターゼ、コラゲナーゼ、ケラチンプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、インテグリン分解酵素、インボルクリン分解酵素、フィラグリン分解酵素、ラミニン分解酵素、フィブロネクチン分解酵素、プロテオグリカン分解酵素等)活性阻害剤、構造タンパク質合成促進剤、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)分解酵素阻害剤、ムコ多糖類合成促進剤、細胞間脂質生成促進剤/細胞間脂質状態改善剤、角質溶解剤/角層剥離促進剤、プラスミノーゲンアクチベーター拮抗阻害剤、メイラード反応阻害剤、テストステロン5αレダクターゼ活性阻害剤、毛母細胞増殖抑制剤/発毛抑制剤、有臭物質消去剤等の有効成分や、その他、くすみ抑制剤及び肌質改善用皮膚外用剤の形態を形成する上で使用が好まれる植物系原料、動物系原料、微生物系原料、その他天然物原料等を由来とするエキスや代謝物等成分、又は種々の化合物を添加剤として任意に選択・併用することにより、くすみ抑制作用に加え、更に多種の機能性を有する優れた化粧料組成物を提供できる。製剤中への含有量は、特に規定しないが、通常、0.0001?50質量%の濃度範囲が有効である。
【0062】
(1)色素沈着抑制剤
・・・マグワ(桑白皮)エキス、・・・、ワレモコウ(地楡)エキス、・・・等。
【0063】
(2)チロシナーゼ活性阻害剤
・・・ワレモコウエキス、・・・、牡丹皮エキス、・・・、葛根エキス、・・・、緑茶エキス、紅茶エキス、阿仙薬エキス等。
・・・
【0066】
(5)保湿剤
・・・、アカツメクサエキス、・・・等。
【0067】
(6)細胞賦活作剤/代謝活性化剤
・・・、酵母エキス、酵母培養液エキス、酵母発酵エキス、・・・等。
【0068】
(7)抗酸化剤
・・・、緑茶エキス、クローブエキス等。
【0069】
(8)活性酸素消去剤/ラジカル消去剤
・・・、紅茶エキス、緑茶エキス、ツワブキエキス、テンチャ(甜茶)エキス、・・・等。
・・・
【0077】
(16)抗アンドロゲン剤
・・・、イソフラボン、・・・等。
・・・
【0091】
有効成分又は添加剤として用いる動物系原料由来の成分としては、・・・核酸関連物質(リボ核酸、デオキシリボ核酸)等。」

(1g)「【0105】
(製造例1)
クロレラ・ブルガリスの全草1.0kgに12kgの精製水を加えて3時間80℃以上で加熱抽出した。その後、2.5kgの活性炭を添加して十分撹拌した後に濾過し、得られた濾液に1,3-ブチレングリコールを終濃度30%w/wになるよう添加し、0?5℃にて10日間静置した。静置後、その濾液を再度φ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、10kgのクロレラ抽出液を得た。又、ボタンの根皮1.0kgに15Lの50%v/vエタノール水溶液を加えて、撹拌しながら約25℃にて7日間浸漬して抽出した。抽出後の抽出液を濾過して不溶物を除去した後冷凍し、冷凍後に解凍した濾液を再度φ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、11kgのボタンピ抽出液を得た。又、ニンニクの鱗茎1.0kgに10Lの精製水を加え、約90℃にて2時間加熱した。加熱後鱗茎を圧搾し、冷却した後濾過して抽出液を得た。その後抽出液に無水エタノールを終濃度10%w/wになるよう添加し、再度φ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、11kgのニンニク抽出液を得た。そして、上記で得られたクロレラ抽出液:終濃度50.0%w/w,ボタンピ抽出液:終濃度1.0%w/w,ニンニク抽出液:終濃度0.5%w/w,アデノシン三リン酸二ナトリウム:終濃度0.005%w/w,となるよう精製水を加えて混合し、製造例1のくすみ抑制剤を得た。
【0106】
(製造例2)
ダイズの種子1.0kgに10kgの精製水を加えて24時間、70?90℃で加熱抽出した。その後、濾過して得られた濾液に1,3-ブチレングリコールを終濃度30%w/wになるよう添加し、再度φ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、10kgのダイズ抽出液を得た。又、アロエの葉の液汁からアロインを除去した後、乾燥することで1.0kgのアロエ液汁粉末を得た。その後、得られた粉末に10kgの精製水を加えて溶解させ、エタノールを終濃度10%w/wになるよう添加し、再度φ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、10kgのアロエ抽出液を得た。又、ドクダミの地上部1.0kgに10Lの40%v/vエタノール水溶液を加えて、7日間浸漬し抽出した。その後、得られた抽出液をφ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、10kgのドクダミ抽出液を得た。又、トウキの根1.0kgに20Lの50%v/vエタノール水溶液を加えて、7日間浸漬し抽出した。その後、得られた抽出液をφ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、20kgのトウキ抽出液を得た。そして、上記で得られたダイズ抽出液:終濃度20.0%w/w,アロエ抽出液:終濃度20.0%w/w,ドクダミ抽出液:終濃度5.0%w/w,トウキ抽出液:終濃度5.0%w/w,となるよう精製水を加えて混合し、製造例2のくすみ抑制剤を得た。
【0107】
(製造例3)
ユキノシタの全草1.0kgに10Lの30%v/vエタノール水溶液を加えて、7日間浸漬し抽出した。その後、得られた抽出液をφ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、10kgのユキノシタ抽出液を得た。又、クワの根皮1.0kgを乾燥し細切りしたものに10Lの50%v/vエタノール水溶液を加えて、7日間浸漬し抽出した後濾過することで濾液を得た。その後、得られた濾液に1,3-ブチレングリコールを終濃度20%v/vになるよう添加し、精製水をエタノールの終濃度が30%v/vになるよう加え、得られた濾液をφ0.45μmのメンブランフィルターにて濾過することで、9.0kgのソウハクヒ抽出液を得た。そして、上記で得られたユキノシタ抽出液:終濃度10.0%w/w,ソウハクヒ抽出液:終濃度15.0%w/w,ヘスペリジン:終濃度0.01%w/w,ルチン:終濃度0.01%w/w,となるよう精製水を加えて混合し、製造例3のくすみ抑制剤を得た。」

(1h)「【0108】
(試験例1)メラニン生成抑制作用試験
・・・
【0109】
「試料」
試料は製造例1?3で得られた本発明のくすみ抑制剤と、Controlとしてアスコルビン酸を、培養液中固形分濃度10μg/mLとなるように精製水にて調整し、試験に供した。盲検用試料としてはエタノールを用いた。
・・・
【0111】
(試験例1の結果)
製造例1?3及びControlであるアスコルビン酸のメラニン生成抑制作用を試験した結果、図1で示されるように、全ての系でメラニン生成抑制作用が認められた。特に、製造例1はControlであるアスコルビン酸に近いメラニン生成抑制作用を示した。従って、製造例1?3に代表される本発明のくすみ抑制剤は、くすみの原因の1つである、皮膚での色素沈着を抑制する作用を有するものである。
【0112】
(試験例2)皮膚の分光反射率改善試験
製造例4及び製造例5に示した化粧水及びクリーム、及び比較対照として製造例4及び製造例5の組成から本発明のくすみ抑制剤を除いた化粧水及びクリームを、5名の被験者(年齢22?29の女性、事前調査でくすみ肌の自覚症状があると回答)に60日間毎日継続して、目元に片側ずつ使用させた。60日後、各被験者の目元における分光反射率を測定した。・・・
【0113】
(製造例4)化粧水 質量%
・・・
製造例1のくすみ抑制剤 10.0
・・・
【0114】
(製造例5)クリーム 質量%
・・・
製造例1のくすみ抑制剤 10.0
・・・
【0115】
(試験例2の結果)
・・・従って、製造例4及び製造例5に代表される本発明のくすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤は、分光反射率の低下及びバランスの欠如を抑制し、くすみのない肌が示す分光反射率曲線に近づける効果があると認められた。
【0116】
(試験例3)皮膚の明度及び彩度改善試験
製造例4及び製造例5に示した化粧水及びクリーム、及び比較対照として製造例4及び製造例5の組成から本発明のくすみ抑制剤を除いた化粧水及びクリームを、5名の被験者(年齢22?29の女性、事前調査でくすみ肌の自覚症状があると回答)に60日間毎日継続して、目元に片側ずつ使用させた。・・・
・・・
【0118】
(試験例3の結果)
・・・従って、製造例4及び製造例5に代表される本発明のくすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤は、くすみの原因の1つである皮膚表面の明度の低下及び彩度の低下を抑制するものであり、肌の色の明るさ及び鮮やかさを改善する効果が認められた。
【0119】
(試験例4)経表皮水分喪失(TEWL)抑制試験
製造例4及び製造例5に示した化粧水及びクリーム、及び比較対照として製造例4及び製造例5の組成から本発明のくすみ抑制剤を除いた化粧水及びクリームを、5名の被験者(年齢22?29の女性、事前調査でくすみ肌の自覚症状があると回答)に60日間毎日継続して、目元に片側ずつ使用させた。・・・
【0120】
(試験例4の結果)
・・・従って、製造例4及び製造例5に代表される本発明のくすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤は経表皮水分の喪失を抑制するものであり、くすみの原因の1つである角質層の水分含量の低下を抑制する効果が認められた。
【0121】
(試験例5)皮膚弾力性改善試験
製造例4及び製造例5に示した化粧水及びクリーム、及び比較対照として製造例4及び製造例5の組成から本発明のくすみ抑制剤を除いた化粧水及びクリームを、5名の被験者(年齢22?29の女性、事前調査でくすみ肌の自覚症状があると回答)に60日間毎日継続して、目元に片側ずつ使用させた。・・・
・・・
【0124】
(試験例5の結果)
・・・従って、製造例4及び製造例5に代表される本発明のくすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤は、皮膚の弾力性の低下を抑制又は改善するものであり、肌のはりの低下を抑制又は改善する効果があると認められた。
【0125】
(試験例6)肌質改善試験
製造例4及び製造例5に示した化粧水及びクリーム、及び比較対照として製造例4及び製造例5の組成から本発明のくすみ抑制剤を除いた化粧水及びクリームを、製造例4及び5を使用する被験者20名、比較対照を使用する被験者20名の合計40名の被験者(年齢20?35の女性)に、60日間毎日継続して片腕の前腕部に使用させた。・・・
・・・
【0128】
(試験例6の結果)
・・・従って、製造例4及び製造例5に代表される本発明のくすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤は、肌荒れ及び肌の透明感の悪化等の肌質の衰えを抑制又は改善する効果が認められた。
【0129】
(試験例7)安全性試験
(1)皮膚一次刺激性試験
製造例1?3によって得られた本発明のくすみ抑制剤を乾燥固形分濃度が約1.0%となるように精製水にて調整し、背部を剪毛した日本白色家兎(雌性,1群3匹,体重2.3kg前後)の皮膚に適用した。・・・その結果は、すべての動物において、何など、紅斑及び浮腫を認めず陰性と判定された。
【0130】
(試験例8)安全性試験
(2)皮膚累積刺激性試験
同様に製造例1?3によって得られた本発明のくすみ抑制剤を乾燥固形分濃度が約1.0%となるように精製水にて調整し、側腹部を剪毛したハートレー系モルモット(雌性,1群3匹,体重320g前後)の皮膚に1日1回、週5回,0.5mL/匹を塗布した。塗布は2週に渡って行い、剪毛は各週の最終塗布日に行った。・・・その結果は、すべての動物において、2週間に渡って何等、紅斑及び浮腫を認めず陰性と判定された。
【0131】
(試験例9)安全性試験
(3)急性毒性試験
同様に製造例1?3によって得られた本発明のくすみ抑制剤を減圧濃縮・乾燥して得られた粉末を試験前、4時間絶食させたddy系マウス(雄性及び雌性,1群5匹,5週齢)に2,000mg/kg量経口投与し、毒性症状の発現、程度などを経時的に観察した。その結果、すべてのマウスにおいて14日間何等異状を認めず、又、解剖の結果も異状がなかった。よって、LD50は2,000mg/kg以上と判定された。
【0132】
(試験例7?9の結果)
試験例7?9の結果、製造例1?3に代表される本発明のくすみ抑制剤は、生体に対し非常に安全なものであることが確認できた。」

2 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成12年8月22日に頒布された「特開2000-229835号公報」(原査定の引用文献2。以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上とメラニン産生抑制剤とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
・・・
【請求項3】メラニン産生抑制剤がソウハクヒのエッセンス、シラカバのエッセンス、アルブチンとその誘導体から選ばれる1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】くすみ改善用であることを特徴とする、1?3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。」

(2b)「【0002】
【従来の技術】色白であった肌も、加齢変化に伴い三十歳を過ぎると形態的に皮膚状態が悪化しシワなとが形成され、更には紫外線などによりメラニン産生が亢進し、しみ、そばかすやくすみにより従来の肌が変貌を遂げていく。ここで、くすみとは、見た目に肌の色が彩度が落ちて、黒っぽく見える現象であるが、この現象はメラニンなどの色素異常のみが原因ではないことは知られているものの、その原因は定かではない。・・・」

(2c)「【0006】
【発明の実施の形態】(1)本発明の必須成分である硫酸基を有するムコ多糖類
本発明の皮膚外用剤は、硫酸基を有するムコ多糖類から選ばれる1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。・・・このものは、既に優れた保湿作用有していることが知られている。本発明の皮膚外用剤に於いては、これら硫酸基を有するムコ多糖類は、メラニン産生抑制剤の活性を向上させる作用を有する。・・・
【0007】(2)本発明の必須成分であるメラニン産生抑制剤
本発明で言うメラニン産生抑制剤とは、大きな細胞毒性を有さず、メラニンの産生を抑制する物質のことを意味し、好ましくは、メラノーマB16細胞を用いたスクリーニングに於いて、検体の濃度が0.1%以下に於いて、対照と有意差がない程度に細胞毒性が低く、有意にメラニンの産生を抑制する物質を意味する。例えば、ソウハクヒのエッセンス、シラカバのエッセンス、タンニン、アルブチン等のハイドロキノン類やフェノール性物質とその誘導体が好ましく例示できる。これらの中では、ソウハクヒのエッセンス、シラカバのエッセンス、アルブチンが特に好ましい。・・・」

(2d)「【0020】<実施例16>下記に示す方法に従って乳液を作成した。イ、ロのそれぞれの成分を70℃に加熱し、イにハを徐々に加え乳化し、冷却撹拌し、乳液を得た。

スクワラン 10重量部
・・・

1、3ブチレングリコール 3重量部
ヘパリノイド 0.5重量部
ソウハクヒのエッセンス 0.5重量部
シラカバのエッセンス 0.5重量部
水 73.7重量部
【0021】<実施例17>下記に示す方法に従って乳液を作成した。イ、ロのそれぞれの成分を70℃に加熱し、イにハを徐々に加え乳化し、冷却撹拌し、乳液を得た。

スクワラン 10重量部
・・・

1、3ブチレングリコール 3重量部
コンドロイチンポリ硫酸 0.5重量部
ケタランポリ硫酸 0.5重量部
ソウハクヒのエッセンス 0.5重量部
シラカバのエッセンス 0.5重量部
水 73.2重量部」

(2e)「【0025】
【発明の効果】本発明によれば、優れたくすみ改善作用を有し、加齢変化に対して有効である、化粧料等の皮膚外用剤を提供することが出来る。」

3 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成12年4月18日に頒布された「特開2000-109417号公報」(原査定の引用文献3。以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】エラスターゼ活性阻害剤とメラニン産生抑制剤とを含有する、皮膚外用組成物。
・・・
【請求項3】メラニン産生抑制剤が、アルブチン、ビタミンC、ビタミンCの誘導体、ロイヤルゼリーのエッセンス及びソウハクヒのエッセンスから選ばれる1種乃至は2種以上である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
・・・
【請求項5】くすみ改善用であることを特徴とする、請求項1?4の何れか一項に記載の皮膚外用組成物。」

(3b)「【0002】
【従来の技術】肌の美しさは、年と共に変化するものであり、中年を過ぎると年と共にシワが増加したり、くすみが増加したりして昔の美しさは面影もなくなってしまう。この内、くすみは、その要因としてはメラニンの過剰生産と皮膚の形態変化の相乗的な結果であると言われている。・・・即ち、更なる、優れたくすみ改善作用を有し、かかる加齢変化を抑制する組成物の開発が望まれていた。」

(3c)「【0007】(2)本発明の必須成分であるメラニン産生抑制剤本発明で言うメラニン産生抑制剤とは、・・・。この様な物質としては、例えば、アルブチン、配糖体、塩などのその誘導体、ビタミンC、エステル、エーテル、配糖体、塩等のその誘導体、ロイヤルゼリーのエッセンス及びソウハクヒのエッセンス、シラカバのエッセンス、タンニン、レゾルシン等のフェノール性物質とその誘導体等が例示できる。これらの内、特に好ましいものは、アルブチン、ビタミンC、ビタミンCの誘導体、ロイヤルゼリーのエッセンス及びソウハクヒのエッセンスから選ばれる1種乃至は2種以上である。これは、この様な物質が、特にくすみなどに関与するメラニン産生を良く抑制するからである。・・・」

(3d)実施例1、2で、ソウハクヒのエッセンスを配合した化粧水を作成し、実施例7で、くすみモデルによりくすみ改善効果を確認したこと、実施例8で、ソウハクヒのエッセンスを配合した化粧水を作成し、実施例9でパネラーによりくすみ改善効果を確認したことが記載されている(段落【0010】?【0016】参照)。

4 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成15年10月21日に頒布された「特開2003-300859号公報」(原査定の引用文献4。以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。

(4a)「【請求項1】(A)下記一般式(1):
・・・で表される化合物の1種又は2種以上と、(B)アスパラガス抽出物、トウキ抽出物、ソウハクヒ抽出物、・・・、茶抽出物、・・・、ボタン抽出物、・・・、大豆抽出物、ニンジン抽出物、・・・、酵母抽出物、・・・からなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含有する皮膚外用剤。
【請求項2】美白用皮膚外用剤である請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】老化防止用皮膚外用剤である請求項1に記載の皮膚外用剤。」

(4b)「【0014】本発明の皮膚外用剤は、美肌用皮膚外用剤、特に、美白用皮膚外用剤及び/又は老化防止用皮膚外用剤として優れている。なお、本明細書において「美肌」の用語は、例えば、色素沈着の抑制、肌のくすみ、日やけなどによる皮膚の黒化、シミ、ソバカスの防止及び改善、しわの防止及び改善などを含めて最も広義に解釈する必要があり、「美白」及び「老化防止」がその範囲に含まれることを理解すべきである。」

(4c)「【0030】前記(B)成分中、アスパラガス抽出物、トウキ抽出物、ソウハクヒ抽出物、・・・、茶抽出物(緑茶、紅茶、ウーロン茶等の抽出物)、・・・及び海藻抽出物(これら(C)成分という)は、単独でも主に美白剤としての薬効を示すが、前記(A)成分と併用することで、各々単独で用いたときには得られない、優れた美白及び/又は老化防止効果を奏する。より好ましいものとしては、小麦胚芽抽出物、シラユリ抽出物、ソウハクヒ抽出物、茶抽出物(緑茶、紅茶、ウーロン茶等の抽出物)、ブドウ抽出物、オウゴン抽出物、ならびに海藻抽出物が挙げられる。」

(4d)「【0032】前記(B)成分中、・・・、ボタン抽出物、・・・(これらを(E)成分という)は、単独でも主に抗炎症剤としての薬効を示すが、(A)成分と併用することで、各々単独で用いたときには得られない、優れた美白及び/又は老化防止効果を奏する。・・・
【0033】前記(B)成分中、・・・、大豆抽出物、ニンジン抽出物、・・・、酵母抽出物、乳酸菌抽出物ならびにビフィズス菌抽出物(これらを(F)成分という)は、単独でも主に細胞賦活剤としての薬効を示すが、(A)成分と併用することで、各々単独で用いたときには得られない、優れた美白及び/又は老化防止効果を奏する。より好ましいものとしては、ビタミンA及びその誘導体、ヒドロキシプロリン、ニンジン抽出物、大麦抽出物、ブナの芽抽出物、イチョウ抽出物、ツボクサ抽出物ならびに酵母抽出物が挙げられる。」

(4e)「【0054】活性酸素除去剤は、紫外線による過酸化脂質の生成等を抑制する目的で用いられ、スーパーオキサイドディスムターゼ、カテキン及びその誘導体、・・・等が挙げられる。これらの活性酸素除去剤を配合することによって、くすみを抑制し、より高い美白及び/又は美肌効果、及び老化防止効果を発揮することができる。」

(4f)「【0101】例8?21で得られた各種化粧料は、いずれも経時安定性に優れ、皮膚に適用することにより、日焼け等による肌のくすみ、シミ及びソバカス、ならびに加齢によるしわ及びたるみの、防止及び改善効果に優れ、透明感のある美しい肌にする各種化粧料であった。」
そして、[例15:美容液]に、ソウハクヒ抽出物、[例16:日焼け止め乳液]に、ソウハクヒ抽出物と緑茶抽出物、[例19:クリーム]に、ニンジン抽出物と大豆抽出物、[例21:リキッドファンデーション」に、ボタン抽出物を配合した化粧料が記載されている(段落【0094】?【0100】参照)。

5 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成15年9月10日に頒布された「特開2003-252742号公報」(原査定の引用文献9。以下、「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。

(5a)「【請求項1】酵母抽出物を有効成分とすることを特徴とするメラノサイト樹状突起形成抑制剤。
・・・
【請求項3】請求項1または2に記載のメラノサイト樹状突起形成抑制剤を含有することを特徴とするメラノサイト樹状突起形成抑制用皮膚外用剤。
【請求項4】次の成分(A)及び(B) (A)請求項1又は2に記載のメラノサイト樹状突起形成抑制剤 (B)美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤及び紫外線防止剤から選ばれる薬効剤の一種又は二種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。」

(5b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メラノサイト樹状突起形成抑制剤及びそれを含有する皮膚外用剤に関する。更に詳細には、酵母抽出物を有効成分とすることを特徴とするメラノサイト樹状突起形成抑制剤に関するものであり、このメラノサイト樹状突起形成抑制剤を含有することにより、皮膚のくすみ、シミ、ソバカス、老人性色素斑又は肝斑等の色素沈着を予防、改善し、肌の透明感を改善する美白効果や美肌効果に優れる皮膚外用剤に関するものである。」

(5c)「【0013】(美白剤)美白剤としては、ビタミンC及びその誘導体・・・、海藻抽出物(・・・;クロレラ、・・・)、・・・、クワ(ソウハクヒ)抽出物、・・・、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、霊芝抽出物、大豆抽出物、・・・等が挙げられる。
【0014】これらの美白剤のうち、特に好ましいものとしては、ビタミンC及びその誘導体、・・・、クワ(ソウハクヒ)抽出物、海藻抽出物、茶抽出物が挙げられる。
【0015】(抗酸化剤)抗酸化剤としては、・・・、ニンジン抽出物、・・・、ボタン(ボタンピ)抽出物、・・・、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、・・・等が挙げられる。
・・・
【0017】(抗炎症剤)抗炎症剤としては、・・・、ワレモコウ(ジユ)抽出物、・・・等が挙げられる。
・・・
【0019】(細胞賦活剤)細胞賦活剤としては、・・・、デオキシリボ核酸及びその塩、・・・、ダイズ抽出物、・・・、ニンニク抽出物、ニンジン抽出物、・・・等が挙げられる。」

(5d)「【0064】
実施例8 美容液
(成分) (%)
・・・
(16)大豆抽出物*6 0.1
・・・
(21)ソウハクヒ抽出物*11 0.1
・・・
(24)酵母抽出物*12 1.0
(25)精製水 残量
・・・
*6 丸善製薬社製
・・・
*11 丸善製薬社製
*12 参考例1で製造したもの」

(5e)「【0070】実施例3?10の各種形態の皮膚外用剤は、いずれも経時安定性に優れ、皮膚に適用すると優れた美白及び/又は美肌効果を発揮するものであった。
【0071】
【発明の効果】以上の如く、本発明の酵母抽出物は、メラノサイト樹状突起形成抑制作用に優れており、それを含有する皮膚外用剤は色素沈着に対し高い抑制効果を発揮し、肌のくすみ、日焼け等による皮膚の黒化、シミ、ソバカスの防止及び改善等に有効なものである。又、本発明の酵母抽出物と、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防止剤等の他の薬効成分を併用して配合した本発明の皮膚外用剤は、前記酵母抽出物や他の薬効成分を単独で配合した場合に比べてより優れた美白及び/又は美肌効果を有するものである。従って、本発明のメラノサイト樹状突起形成抑制剤及びこれを含有する皮膚外用剤は、美白及び/又は美肌を目的とする化粧品や外用医薬品等として有利に利用することができるものである。」

6 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成12年5月9日に頒布された「特開2000-128762号公報」(原査定の引用文献10。以下、「引用例6」という。)には、次の事項が記載されている。

(6a)「【請求項1】下記一般式(1)・・・で表されるトコフェロ-ル誘導体を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
【請求項2】請求項1記載のメラニン生成抑制剤を含有する美白用皮膚外用剤。
【請求項3】さらに、美白剤、活性酸素除去剤、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線防止剤よりなる群から選ばれる薬効成分の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項2記載の美白用皮膚外用剤。
【請求項4】美白剤が、・・・、ソウハクヒ抽出物、・・・よりなる群から選ばれた一種または二種以上である請求項3記載の美白用皮膚外用剤。
【請求項5】活性酸素除去剤が、・・・、ボタンピ抽出物、・・・よりなる群から選ばれた一種または二種以上である請求項3記載の美白用皮膚外用剤。」

(6b)「【0034】参考例1
ソウハクヒ抽出物、クジン抽出物の製造:ソウハクヒ(日局)、クジン(日局)各10gに、含水濃度50%(v/v)のエチルアルコール100mlを加え、室温にて3日間抽出を行ったのち濾過してソウハクヒ抽出物及びクジン抽出物を得た。このとき乾燥固形分は、ソウハクヒ抽出物が1.8%、クジン抽出物が2.8%であった。
【0035】試験例1
チロシナーゼ活性阻害試験:下記方法により、製造例1で得たdl-α-トコフェリルグルコシド、製造例2で得たdl-α-トコフェリルマルトシド、比較例としてすでにチロシナーゼ活性阻害作用のあることが知られている参考例1のソウハクヒ抽出物について、チロシナーゼ活性阻害率を調べた。・・・」

(6c)「【0046】実施例1
美白効果試験:表4に示す組成及び下記製法でクリームを調製し、その美白効果を調べた。
・・・
【0049】(試験方法)被験クリーム1品につき28?55才の女性15名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間にわたって洗顔後に被験クリームの適量を顔面に塗布した。塗布による美白効果を以下の基準によって評価した。その結果を表5に示す。
【0050】(評価基準)
<評価> <内 容>
有 効:肌のくすみが目立たなくなった。
やや有効:肌のくすみがあまり目立たなくなった。
無 効:使用前と変化なし。
・・・
【0052】表5の結果に示される如く、本発明品1?6のクリームは、これらを皮膚に適用することにより、肌の「くすみ」等の発生を防止、改善することができ、美しい肌とすることが明らかとなった。」
そして、表4には「本発明品1」として「ソウハクヒ抽出物」を含有する組成物が示されており、表5には、「本発明品1」の評価として「有効14、やや有効1、無効0」が示されている(段落【0047】、【0051】参照)。

7 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成9年6月3日に頒布された「特開平9-143063号公報」(原査定の引用文献6。以下、「引用例7」という。)には、次の事項が記載されている。

(7a)「【請求項1】次の成分(A)及び(B)
(A)アスタキサンチン類
(B)活性酸素除去剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、チロシナーゼ活性阻害剤及び保湿剤から選ばれる薬効剤の一種又は二種以上
を含有することを特徴とする組成物。
・・・
【請求項6】薬効剤が細胞賦活剤である請求項第1項記載の組成物。
【請求項7】細胞賦活剤が、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩・・・などの核酸関連物質;・・・などの動物由来の抽出物;酵母抽出物、・・・などの微生物由来の抽出物;ニンジン抽出物、・・・、ニンニク抽出物、・・・などの植物由来の抽出物;・・・などのα-ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩から選ばれたものである請求項第6項記載の組成物。
・・・
【請求項10】薬効剤がチロシナーゼ活性阻害剤である請求項第1項記載の組成物。
【請求項11】チロシナーゼ活性阻害剤が、・・・、ソウハクヒ抽出物、・・・から選ばれたものである請求項第10項記載の組成物。
・・・
【請求項16】皮膚外用剤である請求項第1項ないし第15項のいずれかの項記載の組成物。」

(7b)「【0015】(細胞賦活剤)細胞賦活剤としては、例えば、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、・・・などの核酸関連物質;・・・などの動物由来の抽出物;酵母抽出物、・・・などの微生物由来の抽出物;ニンジン抽出物、・・・、ニンニク抽出物、・・・などの植物由来の抽出物;・・・などのα-ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩等を挙げることができる。
【0016】これら細胞賦活剤のうち、特に好ましいものとしては、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸及びその塩、・・・、酵母抽出物、ニンジン抽出物、・・・が挙げられる。
・・・
【0019】(チロシナーゼ活性阻害剤)チロシナーゼ活性阻害剤としては、・・・、ソウハクヒ抽出物、・・・等が挙げられる。」

8 本出願当時に既に知られていた事項を示す、「蔵多淑子他編、『化粧品ハンドブック』、日光ケミカルズ株式会社他、平成8年11月1日、331、339、448、455?459、468頁」(以下、「周知例ア」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア1)「1.植物抽出物
・・・
植物から抽出される有効成分は,タンニン,フラボノイド,カロチノイド,サポニン,精油などであるが,そのほかに微量成分として,アルカロイド,キノン誘導体,アミノ酸なども含まれており,抽出技術の進歩により現在では,同一の植物より種々の活性成分を分離することも可能になっている.
・・・
1995年現在の化粧品種別許可基準に記載されている植物抽出物を中心に,植物名,起源,抽出方法,主成分,効果を表14・1にまとめた.」(331頁左欄1?27行)

(ア2)表14・1には、
“クワ(桑)エキス(Mulberry bark extract),ソウハクヒ(桑白皮)エキス”の“主成分”として“モルシン(フラボノイド)およびアンベリフェロン,スコポレチン,アデニン,ベタイン,α,β-アミリン,ベタチンなどのクマリン”、“効果”として“消炎,発毛促進,ふけ・かゆみの防止,美白”が記載されている(339頁)。

(ア3)「7(審決注:○の中に数字の7)動植物抽出物
非常に多くの種類の動物や植物の部位からの抽出物が,保湿,抗炎症,抗アレルギー,創傷治癒促進などの作用をもつことが知られており,化粧品に使用されている.また,最近では,抽出物に含まれている有効成分が同定され,また単離され,より高い効果をもつ成分として使用され始めている.詳細は,I.化粧品原料の14.動植物抽出物の項(審決注:上記(ア1)、(ア2))を参照されたい.」(448頁左欄25?33行)

(ア4)「2.皮膚の老化とは
・・・
皮膚は体の最外部であるためにさまざまな刺激を常に受けており,老化は進行しやすく,老化の徴候も観察されやすい.これらの皮膚の老化の変化の中で,美容上の観点からみた場合,『しわ』,『しみ』,『くすみ(調色の変化)』,『皮膚の乾燥』が,重要な老化現象であるといえる.
・・・
3.皮膚の老化の防止
皮膚の老化を止めてしまうことは不可能であるが,老化を遅らせたり,老化の徴候を緩和することはある程度可能であろう.「紫外線」と「酸化」と「乾燥」という外部環境条件からの防御を考慮することが特に重要である.
(1)紫外線からの防御
・・・
(2)酸化からの防御
紫外線のほか,過度の運動,過度のストレスなどにより,活性酸素は体内に生成される.この活性酸素の生成を抑え,生成した活性酸素を消去し,損傷を受けた細胞を修復する防御システムが体内にはある.老化によりこの防御システムの能力が低下するため,抗酸化剤による脂質の過酸化の抑制が重要になってくる.・・・
(3)乾燥からの防御
老化により皮表の皮脂量が減少し,また細胞間脂質も減少し,角質層の水分保持機能が低下する.皮膚はうるおいを失い,かさかさした状態,すなわちドライスキンとなる.また水分保持はしわとも関係があり,水分不足はしわの原因ともなる.保湿剤を使用することにより,乾燥から皮膚を守ることができる.
そのほか,『皮膚細胞の賦活』,『血行促進』,『表皮ターンオーバー速度の促進』,『色素沈着の抑制』などにより老化を防止することができると考えられている.
4.老化防止のための原料
・・・
(1)紫外線防止剤
・・・
(2)酸化防止剤
生体内の活性酸素や過酸化脂質の生成を抑制することにより,しわの形成が抑制される.紫外線照射により生じる日焼け細胞の数がSODを投与することにより減少することも認められている.酸化防止剤としては,ビタミン(B_(2),C,E),カロチノイド(α-カロチン,β-カロチン,リコピン),各種植物抽出物(表2・3,2・4)のほか,補酵素Q,ラクトフェリン(母乳成分)などがある.
・・・
(3)保湿剤
保湿効果のある化粧品を皮膚に塗布すると,角化の異常が回復し,角質層の保湿機能が正常になり,小じわが減少する.
・・・
(4)細胞賦活剤
働きの衰えた細胞に作用し,その機能を活性化させることにより,皮膚の状態を回復させる.細胞賦活剤は,皮膚のターンオーバーを改善し,細胞外のマトリックスの代謝を高める.・・・最近,しわ防止化粧品の原料として注目されているα-ヒドロキシ酸およびビタミンA関連原料も細胞賦活剤の一種である.
(5)血流促進剤
末梢循環を改善し,老廃物の排出を促進し,細胞への栄養を補給することにより健康な肌を保つことができる.」(455頁右欄4行?457頁左欄17行)

(ア5)表3・4には、メラニン抑制作用をもつ植物抽出物として
“クワエキス,桑白皮エキス(Mulberry bark extract)”の“主成分”として“オキシレスベラトール(2,3’,4,5’-テトラヒドロキシスチルベン)”、“特徴”として“チロシナーゼ活性抑制,抗炎症作用”が記載されている(468頁)。

9 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成17年2月3日に頒布された「特開2005-29493号公報」(以下、「周知例イ」という。)には、次の事項が記載されている。

(イ1)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
皮膚に対するエストロゲンの作用低下は、表皮の新陳代謝低下や真皮の弾力性低下を引き起こし、くすみ、シワ等、皮膚の老化につながると考えられる。また、全身的には更年期障害の症状につながる。エストロゲンの減少による作用低下に対しては、エストロゲンの投与やその分泌を促進することが有効であるが、エストロゲンレセプターの傷害による作用低下についてはその傷害を抑制することが重要であり、それが皮膚老化あるいは更年期障害の症状の予防、改善策のひとつになると考えられる。」

10 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成16年6月10日に頒布された「特表2004-517110号公報」(以下、「周知例ウ」という。)には、次の事項が記載されている。

(ウ1)「【0003】
・・・エストロゲン及びエストロゲンと同様に作用する合成化合物は、皮膚層の厚みを増し、加齢皮膚のしわの形成を抑制することが知られている。閉経後に生じる皮膚の乾燥、皮膚の弾力性の喪失及び肥満などはエストロゲン産生低下が原因であると考えられている。エストロゲン治療は、加齢皮膚に付随する変化の多くを予防または減速させる・・・」

11 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成17年1月20日に頒布された「特開2005-15445号公報」(拒絶査定の参考文献。以下、「周知例エ」という。)には、次の事項が記載されている。

(エ1)「【0017】
[火棘抽出物の製造方法]
火棘の乾燥果実5.00gを90℃の熱水50mLに浸漬し、3時間煮沸の後に濾過し、得られた抽出液をダイヤイオンHP-20(三菱化成工業社製)のカラム(φ3cm×11cm,Vt=80mL)に負荷後、800mLの10%エタノール水溶液で洗浄した。次いで、400mLの40%エタノール水溶液で溶出し、溶出液を減圧濃縮した後、凍結乾燥して固形物1.04gを得た.
これを実施例において火棘抽出物として用いた。」

12 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成16年11月25日に頒布された「特開2004-331543号公報」(拒絶査定の参考文献。以下、「周知例オ」という。)には、次の事項が記載されている。

(オ1)「【0053】
(製造例1)
-オニイチゴ抽出物の製造-
バラ科キイチゴ属のオニイチゴ(Rubus ellipticus)の根を粉砕した粗砕物400gに50質量%含水エタノールを4000mL加え、80℃にて2時間ゆるく攪拌しながら抽出処理した後、濾紙を用いて濾過し、抽出液を得た。また、抽出残渣に再び50質量%含水エタノールを4000mL加え、同様の操作を行い、抽出液を得た。
前記両抽出液を合わせて40℃で減圧濃縮した後、減圧乾燥機で乾燥させてオニイチゴ根の抽出乾燥物67.6gを得た。
【0054】
(製造例2)
-カジイチゴサイドF1の製造-
前記製造例1で得られたオニイチゴ抽出物60gをダイヤイオンHP-20(三菱化学社製)カラムクロマトグラフィーで精製した。溶出は(1)水、(2)40質量%含水メタノール、(3)80質量%含水メタノール、及び(4)メタノールの順にそれぞれ行い、4つの画分を得た。
得られた(3)80質量%含水メタノール画分8.24g中の4.3gを、逆相カラムクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分画及び精製を行って精製物211mgを単離した。この精製物について^(13)C-NMRにより分析した結果を以下に示す。」

13 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成16年11月11日に頒布された「特開2004-315492号公報」(拒絶査定の参考文献。以下、「周知例カ」という。)には、次の事項が記載されている。

(カ1)「【0015】
(抽出物製造例3)
ベルゲニア・リグラータの根茎の乾燥物200gに50vol%エタノール溶液3000gを加え、50℃にて8時間抽出した。冷後ろ過した後、濃縮し、合成吸着体ダイヤイオンHP-20を充填したカラムに通液した。水洗後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を減圧乾固後、50%エタノール溶液500gに溶解し、抽出物を製した。製品の蒸発残留物は、3.17%であった。」

14 本出願当時に既に知られていた事項を示す、本出願日前である平成16年3月18日に頒布された「特開2004-83442号公報」(拒絶査定の参考文献。以下、「周知例キ」という。)には、次の事項が記載されている。

(キ1)「【0016】
【実験例1】原料からの分画単離
沖縄県宮古島で自生するBidens pilosa L.var.radiata(和名タチアワユキセンダングサ)を圃場で無農薬栽培し、刈り取った地上部を洗浄、裁断、蒸煮、圧潰、揉解、乾燥工程を経たものを原料とした。原料500gを3.5Lの水で3回、還流下に抽出し、600mLのダイヤイオンHP-20カラムに通して水で洗浄、吸着されなかった画分と洗液を併せて画分Pとした。カラムは50%メタノール、次いでメタノールで溶出した。溶出液(画分A)の半分を70gのODSカラムに吸着、10%及び20%メタノール(画分A1)、30%メタノール(画分A2)、40%メタノール(画分A3)、50%メタノール(画分A4),及びメタノール(画分A5)で段階的にクロマト溶出してそれぞれ分画した。」

第4 引用例に記載された発明
引用例1の上記(1a)の請求項1?2の記載からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。
ここで、引用例1で使われている成分の「(A)」、「(B)」、「(C)」という符号は、本願発明で使われている成分の「(A)」、「(B)」、「(C)」と同じなので、以下、混乱を避けるため、引用例1の「(A)」、「(B)」、「(C)」は、それぞれ「(A’)」、「(B’)」、「(C’)」と表記することとする。

「下記(A’)、(B’)及び(C’)を含有するくすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤。
(A’)ウヤク、オリーブ、カッコン、カワラヨモギ、クララ、セイヨウスノキ、ダイズ、チョウジ、ツキミソウ、ツルドクダミ、トルメンチラ、ブドウ、ボタン、ホップ、ミチヤナギ、ヤシャ、ユキノシタよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物を含有するメラニン生成抑制剤。
(B’)アロエベラ、アーモンド、ゴマ、サンヤク、セイヨウタンポポ、セイヨウニワトコ、センキュウ、ソウハクヒ、トウニン、ドクダミ、ナメコ、バクモンドウ、ムクゲ、ヨクイニン、クロレラよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物、酵母抽出物及びアデノシン及びその誘導体、から選ばれる少なくとも1種以上を含有する線維芽細胞増殖促進剤。
(C’)センブリ、ダイオウ、トウガラシ、トウキ、ニンニク、ニンジンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の植物の抽出物及びビタミンP及びその誘導体、から選ばれる少なくとも1種以上を含有する血行促進剤。」

第5 対比
そこで、本願発明と引用例1発明を対比する。

1 引用例1発明の「くすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤」は、くすみ抑制剤が配合されているから、肌質の改善としてくすみの改善も含まれていることは明らかである。
よって、引用例1発明の「くすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤」は、本願発明の「くすみ改善用皮膚外用剤」に相当する。

2 引用例1の製造例1には、引用例1発明に用いられるくすみ抑制剤として、クロレラ抽出液、ボタンピ抽出液、ニンニク抽出液、及びアデノシン三リン酸二ナトリウムを配合したくすみ抑制剤を製造したことが記載されている(上記(1g)の【0105】参照)。

そこで、引用例1発明の各成分と前記製造例1で使用されている各成分の対応関係を検討しつつ、引用例1発明の各成分と本願発明の各成分とを対比する。

(1)引用例1発明の(A’)成分の植物の抽出物の植物の選択肢である「ボタン」は、引用例1において「本発明で使用する『ボタン(別名:牡丹皮)』」(上記(1d)の【0022】参照)と説明されているところ、上記製造例1で使用される「ボタンピ抽出液」がそれに該当する。
したがって、引用例1発明の(A’)成分における抽出対象の植物として「ボタン」を選択した場合は、本願発明の「(C)活性酸素消去剤として、ワレモコウ抽出物、茶抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物から選ばれる1種以上」とは、「ボタンピ抽出物」である点で共通する。

(2)引用例1発明の(B’)成分の選択肢である「アデノシン及びその誘導体」は、引用例1においてその具体例として「アデノシン-5’-トリリン酸又はこの塩(ナトリウム、・・・)」(上記(1d)の【0044】参照)が例示されているところ、上記製造例1で使用される「アデノシン三リン酸二ナトリウム」がそれに該当する。
したがって、引用例1発明の(B’)成分として「アデノシン及びその誘導体」を選択した場合は、本願発明の「(B)細胞賦活剤として、デオキシリボ核酸塩、アデノシン三リン酸ニナトリウム、酵母抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上」とは、「アデノシン三リン酸ニナトリウム」である点で共通する。

(3)引用例1発明の(B’)成分の選択肢である植物の抽出物の植物の選択肢である「クロレラ」と(C’)成分の選択肢である植物の抽出物の植物の選択肢である「ニンニク」は、上記製造例1で使用される「クロレラ抽出物」と「ニンニク抽出物」がそれに該当する。
したがって、引用例1発明の(B’)成分の抽出対象の植物として「クロレラ」と(C’)成分の抽出対象の植物として「ニンニク」を選択した場合は、本願発明の「(B)細胞賦活剤として、デオキシリボ核酸塩、アデノシン三リン酸ニナトリウム、酵母抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上」とは、「クロレラ抽出物」と「ニンニク抽出物」である点で共通する。

(4)上記(1)?(3)の判断をあわせると、製造例1として具体的な組み合わせが示されていることから、引用例1発明で用いられる具体的なくすみ抑制剤を配合した、「下記(A’)、(B’)及び(C’)を含有するくすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤。(A’)ボタン抽出物。(B’)クロレラ抽出物、及びアデノシン及びその誘導体。(C’)ニンニク抽出物。」と、本願発明の「下記の(A)?(D)を含有することを特徴とするくすみ改善用皮膚外用剤。(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物を、更に、合成吸着体ダイヤイオンHP-20(登録商標)を充填したカラムにより処理した抽出物(B)細胞賦活剤として、デオキシリボ核酸塩、アデノシン三リン酸二ナトリウム、酵母抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上(C)活性酸素消去剤として、ワレモコウ抽出物、茶抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物から選ばれる1種以上(D)エストロゲン様作用剤として、ダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物から選ばれる1種以上」(下線は当審による)とは、「下記の(B)、(C)を含有するくすみ改善用皮膚外用剤。(B)アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上(C)ボタンピ抽出物」(用語と記号は、本願発明の表現を借用)である点で共通する。

3 次に、引用例1発明の(A’)成分の植物の抽出物の選択肢である「ダイズ」は、「ダイズ抽出物」といえる(上記(1a)、(1d)の【0016】、(1g)の【0106】参照)。したがって、引用例1発明の(A’)成分における抽出対象の植物として「ダイズ」を選択した場合は、本願発明の「(D)エストロゲン様作用剤として、ダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物から選ばれる1種以上」とは、「ダイズ抽出物」である点で共通する。

4 また、引用例1発明の(B’)成分の選択肢である植物の抽出物の植物の選択肢である「ソウハクヒ」は、「ソウハクヒ抽出物」といえる(上記(1a)、(1d)の【0035】、(1g)の【0107】参照)。したがって、引用例1発明の(B’)成分における抽出対象の植物として「ソウハクヒ」を選択肢した場合は、本願発明の「(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物を、更に、合成吸着体ダイヤイオンHP-20(登録商標)を充填したカラムにより処理した抽出物」とは、「ソウハクヒ抽出物」である点で共通する。

5 以上のことから、両発明は、本願発明の表現を借りて表すと、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「下記の(B)、(C)を含有するくすみ改善用皮膚外用剤。
(B)アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上
(C)ボタンピ抽出物」

(相違点1)
くすみ改善用皮膚外用剤に含有される成分について、本願発明では、(A)のソウハクヒ抽出物、(B)のデオキシリボ核酸塩、アデノシン三リン酸二ナトリウム、酵母抽出物、ニンジン抽出物、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上、(C)のワレモコウ抽出物、茶抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物から選ばれる1種以上、及び(D)のダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物から選ばれる1種以上を含有するとしているのに対し、引用例1発明では、(B)のアデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上と、(C)のボタンピ抽出物の組み合わせは示されているものの、残りの(A)のソウハクヒ抽出物、(D)のダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物から選ばれる1種以上については、ソウハクヒ抽出物、ダイズ抽出物が選択肢として記載されており、これらをも同時に含むとまでは言及していな点

(相違点2)
くすみ改善用皮膚外用剤に含有される(A)?(D)の成分について、本願発明では、それぞれ「(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有する」もの、「(B)細胞賦活剤」、「(C)活性酸素消去剤」、及び「(D)エストロゲン様作用剤」と、各成分の作用を特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点

(相違点3)
くすみ改善用皮膚外用剤に含有される(A)成分について、本願発明では、「更に、合成吸着体ダイヤイオンHP-20(登録商標)を充填したカラムにより処理した抽出物」であると特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点

第6 判断
そこで、上記相違点1?3について検討する。

1 相違点1について
(1)引用例1には、(A’)?(C’)成分の「メラニン色素の生成を有意に抑制する作用、線維芽細胞増殖促進作用及び血流を促進する作用の3種の有益な作用を有する活性成分を統括的に利用することにより、新規で且つ安全なくすみ抑制剤と、それを配合した肌質改善用皮膚外用剤を提供するものである」と記載されている(上記(1b)の【0001】)。
そして、引用例1の製造例1では、既に示したとおり、引用例1の(A’)成分であるボタンピ抽出液、(B’)成分であるクロレラ抽出液とアデノシン三リン酸二ナトリウム、及び(C’)成分であるニンニク抽出液を配合したくすみ抑制剤が記載されている(上記(1g)の【0105】参照)。
また、引用例1発明には、(A’)成分のメラニン生成抑制剤としてダイズ抽出物が、(B’)成分の繊維芽細胞増殖促進剤としてソウハクヒ抽出物が、それぞれ記載されている。

(2)さらに、引用例1には、くすみ抑制剤及びそれを配合した肌質改善用皮膚外用剤には、(A’)?(C’)成分に加えて、色素沈着抑制剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラノサイトメラニン生成抑制剤、メラニン生成促進剤、保湿剤、細胞賦活剤/代謝活性化剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤/ラジカル生成抑制剤などの有効成分を配合してよいことが記載されている(上記(1f)の【0061】参照)。

(3)そして、引用例1には、色素沈着抑制剤の例として「マグワ(桑白皮)エキス」(すなわち、ソウハクヒ抽出物)があげられている(上記(1f)の【0062】参照)。ここで、引用例1に記載のような、くすみ改善を目的として植物抽出物などを組み合わせて配合した皮膚外用剤は多数知られており、それらにソウハクヒ抽出物を、くすみ改善に有効と考えられている美白剤、すなわちメラニン生成抑制作用やチロシナーゼ活性阻害作用を有する物質として配合することも、引用例2?6(上記(2a)?(2e)、(3a)?(3d)、(4a)?(4c)、(4f)、(5a)?(5e)、(6a)?(6c)参照)に記載されているように、本出願前から広く採用されていることである。

(4)また、引用例1や引用例2?5及び周知例Aにあるとおり、くすみの原因は色素沈着のみではなく、くすみ改善のために、くすみの原因の一つと考えられている老化を防止すること、そのために細胞賦活剤を用いることも検討されている(上記(1b)、(1c)、(2b)、(3b)、(4b)、(5b)、(ア4)参照)。そして、老化を防止するために細胞賦活剤を用いることや、その細胞賦活剤としてダイズ抽出物があげられることも、引用例4、5に記載されているように、本出願前から知られていることである(上記(4a)、(4b)、(4d)、(5a)?(5c)参照)。

(5)ところで、引用例1には、くすみ抑制剤の製造例として、前記製造例1に加えて、製造例2として、(A’)成分であるダイズ抽出液、(B’)成分であるアロエ抽出液(アロエベラ)とドクダミ抽出液、(C’)成分であるトウキ抽出液を配合したくすみ抑制剤(上記(1g)の【0106】参照)、製造例3として、(A’)成分であるユキノシタ抽出液、(B’)成分であるソウハクヒ抽出液、(C’)成分であるヘスペリジンとルチン(いずれもビタミンP及びその誘導体)を配合したくすみ抑制剤が記載されている(上記(1g)の【0107】参照)。

(6)上記(3)、(4)で示したとおり、ソウハクヒ抽出物とダイズ抽出物がくすみ改善のために有効であるとされるチロシナーゼ活性阻害剤や細胞賦活剤として知られ、くすみ改善用の化粧料に用いられてもいること、上記(5)で示したとおり、引用例1でも、ソウハクヒ抽出物やダイズ抽出物がくすみ抑制剤に使用されていること、上記(2)で示したとおり、引用例1には、(A’)成分のメラニン生成抑制、(B’)成分の繊維芽細胞増殖促進剤、及び(C’)成分の血行促進剤以外の、他の有効成分を配合してもよいことが記載されている。
これらのことから、引用例1発明において、肌質改善用皮膚外用剤に配合するくすみ抑制剤として、製造例1に具体的な組み合わせで使用されている、クロレラ抽出物、ボタンピ抽出物、ニンニク抽出物、アデノシン三リン酸二ナトリウムに加えて、引用例1のくすみ抑制剤の製造例2、製造例3に使用されている成分の一つでもあり、チロシナーゼ活性阻害剤や細胞賦活剤として知られている、ソウハクヒ抽出物とダイズ抽出物について、前記(A’)?(C’)の作用に加え、これらの作用をも期待して、さらに選択して配合すること、すなわち、ソウハクヒ抽出物、アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物、ボタンピ抽出物、及びダイズ抽出物を含有するくすみ抑制剤を配合した肌質改善用皮膚外用剤(本願発明の(A)?(D)成分に該当する成分をすべて含有するくすみ改善用皮膚外用剤)とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2について
(1)引用例1には、くすみの原因として、皮膚の色、皮膚表面の質感の変化、皮膚の血流量が関係していると言われていること、既にこれらに対処すべく美白成分、細胞賦活剤、血流促進剤が利用されていることが記載されており、引用例1発明においては、メラニン生成抑制作用、線維芽細胞増殖作用及び血行促進作用の3種の作用が統括的に働くことにより実現する、くすみ抑制剤を配合した皮膚外用剤を提供したことが記載されている(上記(1b)、(1c)参照)。

(2)また、上記「1 相違点1について」で検討したとおり、くすみの原因は色素沈着や皮膚の老化が関与していることも知られており、様々な作用を有する物質を配合することで、くすみを改善する試みが検討されている。
これ以外にも、活性酸素除去剤を配合することでくすみを抑制することも、引用例4に記載されている(上記(4e)参照)。また、くすみの原因の一つとされる老化を防止するためにも、酸化防止剤や保湿剤を用いることも、周知例アに記載されている(上記(ア4)参照)。

(3)ところで、植物抽出物は、一つの作用のみならず、複数の作用を有することも知られている。すなわち、
ア 引用例1発明に用いられるソウハクヒ抽出物は、引用例1に記載されているメラニン生成抑制、色素沈着抑制作用の他(上記(1a)、(1f)の【0062】参照)、引用例6、7、周知例アに記載されているように、チロシナーゼ活性阻害作用を有する物質であることが知られている(上記(6b)、(7a)、(7b)、(ア5)参照)。
イ 引用例1発明に用いられるアデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物は、引用例1に記載されている繊維芽細胞増殖促進や血行促進作用の他(上記(1a)参照)、引用例5、7に記載されているように、細胞賦活作用や美白作用を有する物質であることが知られている(上記(5c)の【0013】、【0019】、(7a)、(7b)参照)。
ウ 引用例1発明に用いられるボタンピ抽出物は、引用例1に記載されているメラニン抑制作用、チロシナーゼ活性阻害作用の他(上記(1a)、(1f)の【0063】参照)、引用例6に記載されているように、活性酸素消去作用を有する物質であることが知られている(上記(6a)参照)。
エ また、引用例1発明に用いられるダイズ抽出物は、引用例1に記載されているメラニン抑制作用の他(上記(1a)参照)、引用例4、5に記載されているように、細胞賦活作用、美白作用を有する物質であることが知られている(上記(4d)、(5c)の【0013】参照)。そして、ダイズ抽出物にエストロゲン様作用を有するイソフラボン類が含まれることは、本願明細書段落【0029】にもあるとおり、証拠を示すまでもなく広く知られたことである。そのうえ、エストロゲン作用の低下がくすみの原因となることや、エストロゲンと同様に作用する物質が、皮膚層の厚みを増加し、加齢皮膚のしわの形成を抑制すること、皮膚の乾燥などはエストロゲン産生低下が原因であると考えられていることも、周知例イ、ウに記載されている(上記(イ1)、(ウ1)参照)。

(4)そうしてみると、引用例1発明において、くすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤に具体的に配合する成分について、上記「1 相違点1について」で検討したとおり、ソウハクヒ抽出物、アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物、ボタンピ抽出物、及びダイズ抽出物を選択した際に、それぞれの成分について、くすみ改善に効果があることが知られている作用について、各成分に複数知られている作用から適宜選択して、ソウハクヒ抽出物はチロシナーゼ活性阻害作用、アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、及びクロレラ抽出物は、細胞賦活作用、ボタンピ抽出物は活性酸素消去作用、ダイズ抽出物はエストロゲン様作用の如く、既に公知の作用を特定して示すことは、当業者が容易になし得たことである。
そもそも、ソウハクヒ抽出物、アデノシン三リン酸二ナトリウム、ニンニク抽出物、クロレラ抽出物、及びダイズ抽出物を、それぞれチロシナーゼ活性阻害作用、細胞賦活作用、活性酸素消去作用、エストロゲン様作用を有するものとして配合したこと、すなわち、各成分に対してそのような作用を有することを明示したことによって、引用例1発明のくすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤(くすみ改善用皮膚外用剤)に対して、格別新たな用途を提供したともいえない。

3 相違点3について
(1)引用例1には、ソウハクヒ抽出物の製造方法について、製造例3に、クワの根皮を乾燥し細切りしたものに50%v/vエタノール水溶液を加えて7日間浸漬し抽出した後濾過することで濾液を得、得られた濾液に1,3-ブチレングリコールを添加し、精製水を加え、得られた濾液を濾過することでソウハクヒ抽出液を得たことが記載されており(上記(1g)の【0107】参照)、抽出液をろ過したものをそのまま用いたことが示されているに留まる。
しかしながら、引用例1には、使用する植物抽出物は、溶媒抽出後、更に適宜精製操作を施すことが可能で、イオン交換樹脂などによる処理が例示されている(上記(1e)参照)。

(2)また、植物抽出物を化粧料に配合するにあたり、抽出液を濃縮して抽出成分の濃度を高めることは普通に行うことであり、抽出された成分中の有効成分がわかっている場合、適宜公知の精製処理を施して有効成分を高度に濃縮することも当業者が適宜行うことである(上記(ア1)、(ア3)参照)。
そして、ソウハクヒから抽出される成分は公知であるうえに(上記(ア2)参照)、チロシナーゼ活性阻害に寄与する成分も特定されている(上記(ア5)参照)。また、化粧料に配合する植物抽出物の処理に、ダイヤイオンHP-20を使用することも、上記(エ1)、(オ1)、(カ1)、(キ1)に記載されているように、本出願前周知の事項である。

(3)そうしてみると、引用例1発明において、くすみ抑制剤を配合する肌質改善用皮膚外用剤に配合する成分としてチロシナーゼ活性阻害作用を有することが公知のソウハクヒ抽出物を選択するに際し、ソウハクヒ抽出物のチロシナーゼ活性阻害作用の有効成分が既に知られているのだから、化粧料組成物に配合する植物抽出物の処理に多く使用されているダイヤイオンHP-20を用いて精製処理して濃度を高めたものを用いることは、当業者が容易になし得たことであり、それによって格別予想外な技術的意義をもたらしているともいえない。

4 本願発明の効果について
(1)本願明細書段落【0011】には、「本発明の必須成分である、ソウハクヒ抽出物、細胞賦活剤、活性酸素消去剤及びエストロゲン様作用剤の4者を配合することにより、これらの相乗作用により、くすみ等の加齢変化に伴う皮膚トラブルを改善するのに有用な皮膚外用剤を提供することができるという効果を有する。」と記載されており、ソウハクヒ抽出物については、段落【0015】に「なお、前記製造例1のカラム処理を行わないソウハクヒ抽出物とカラム処理したソウハクヒ抽出物では、約10倍の阻害活性の差が現われた。」と記載されている。
そして、実施例1?2及び比較例1?7で、各成分を併用したことによる効果を示している。

なるほど、本願明細書記載の実施例と比較例では、いずれも本願明細書段落【0042】に示された処方の「化粧水」を基準として、成分中の「(3)必須成分及び比較成分 5.0%」の配合を表2の記載のとおりに、比較例1では(A)成分のみ、比較例2?4では(A)成分+(B)、(C)、(D)成分のいずれかの合計2成分、比較例5?7では(A)成分+(B)、(C)、(D)成分のいずれか二種の合計3成分、実施例1?2では、(A)?(D)成分のすべてである合計4成分と、有効成分の合計量を5.0%に統一して、使用後のくすみ改善効果を比較している。
そして、実施例3、4で、茶色モルモットを用いたくすみモデルと、40歳以上の女性で、肌のくすみに悩むパネラー(審決注:40歳以上の助成で、羽田のくすみに悩むパネラーは誤記と認める。)によって、くすみ改善作用の評価を行い、いずれも4成分を配合したことにより、改善効果が優れていることが示されている。

しかしながら、前記「1 相違点1について」及び「2 相違点2について」で既に検討したとおり、本願発明で配合されている各成分は、いずれもくすみ改善剤に配合されている成分であって、それぞれ、チロシナーゼ活性阻害作用、細胞賦活作用、血行促進作用、活性酸素消去作用など様々な作用があることが知られているとともに、それぞれの成分に複数の作用があることも知られている。
そうしてみると、できるだけ複数の作用を有するように、これらの成分を順次種類を増やして配合することによって、それぞれの有する作用が、くすみの原因と考えられている異なる様々な因子に影響して、これらを併用したことによる相乗効果を奏するであろうことは、当業者が予測し得たことであって、格別予想外なものとはいえない。

また、カラム処理により活性が向上することも、有効成分を濃縮した当然の結果であり、予想外の効果を奏したものとはいえない。

(2)審判請求人は、平成22年1月12日受付けの意見書及び平成23年6月15日受付けの審判請求理由の手続補正書(方式)において次の旨も主張している。
ア 本願発明は、チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物のエタノール溶液抽出物を、合成吸着体ダイヤイオンHP-20を充填したカラムにより処理することにより、ソウハクヒに含まれるチロシナーゼ活性阻害作用を有する物質を高濃度で抽出(分画)することに初めて成功したものである。
イ 前記分画物を用い、くすみ等の加齢変化に伴う皮膚トラブルを改善するのに有用な皮膚外用剤を提供可能にするものである。
ウ 植物中の有効成分を高濃度に濃縮するに際し、有効なカラム充填剤と溶媒を選択することは、決して容易ではなく、引用文献の記載から容易に想到することができるものではない。
エ 本願発明は、植物の成分を実際のくすみ改善用皮膚外用剤に適用するに当たり、数多の試行錯誤を繰り返して、その相乗効果を確かめ、実用化したものであるのに対し、引用文献に記載されているものは、単なる植物名の羅列に過ぎず、実際にその効果を試験した結果を記載したものでも、本願のように個々の効果を確かめ、これらを配合し、その配合物のくすみ改善用皮膚外用剤としての効果まで確認したものは存在せず、全く防衛的な記載の域を出ていないし、なんら実証的な事実を伴うものではない。このような引用文献の記載にのみ基づいて、本願のような地道な試験を繰り返して到達した発明の進歩性を否定すべきではない。

しかし、以下の理由で、審判請求人の前記主張は採用できない。
(アについて)
前記「3 相違点3について」で既に検討したとおり、ソウハクヒ抽出物中のチロシナーゼ活性阻害作用を有する成分は知られているのであるから(上記(ア5)参照)、それを植物抽出物の処理に多く使用されている合成吸着体ダイヤイオンHP-20を用いて高濃度で抽出することは格別なこととはいえず(上記(エ1)、(オ1)、(カ1)、(キ1)参照)、また、合成吸着体ダイヤイオンHP-20を用いたことにより、未知の物質を抽出単離したことが示されているものでもない。
(イについて)
本願明細書段落【0015】にカラム処理したことにより約10倍の阻害活性の差が現れたことが記載されているが、実施例で具体的に比較はされておらず、上記(1)で既に検討したとおり、カラム処理により有効成分を高濃度に濃縮したものを用いたことにより予測される効果の範囲を超えるものとはいえない。
(ウについて)
引用例1には、ソウハクヒ抽出物を乾燥植物から、50%v/vエタノール水溶液で抽出したことが記載されている(上記(1g)の【0107】参照)。また、周知例エでは、熱水抽出物をカラムに負荷した後、10%エタノール水溶液で洗浄し、40%エタノール水溶液で溶出したこと(上記(エ1)参照)、周知例オには、50質量%含水エタノールで抽出処理した抽出物のカラムからの溶出に、水、40質量%含水メタノール、80質量%含水メタノール、及びメタノールを順に使用し、80質量%含水メタノール画分をさらに精製単離したこと(上記(オ1)参照)、周知例カには、50vol%エタノール溶液で抽出した抽出物をカラムに通液し、水洗した後、50vol%エタノール溶液で溶出したこと(上記(カ1)参照)、周知例キには、水で還流下に抽出し、抽出物をカラムに通して水洗した後、様々な濃度のメタノール溶液で溶出したことが記載されている(上記(キ1)参照)。
以上のとおり、植物抽出物を合成吸着体ダイヤイオンHP-20で処理することは、当業者が広く採用していることであり、抽出溶媒としても溶出液としても、メタノールやエタノールのようなアルコール水溶液が普通に採用されているものである。
それに対し、本願明細書段落【0013】のソウハクヒ抽出物の製造例でも、30vol%エタノール溶液で抽出し、カラムに通液後、30vol%エタノール溶液で洗浄後、50vol%エタノール溶液で溶出したことが記載されており、いずれも当業者が普通に検討する抽出溶媒、溶出液を採用しているものである。
よって、当業者であれば、ソウハクヒ抽出物を多く採用されている抽出溶媒で得て、植物抽出物の処理に多く使用されている公知のカラムを用い、これまた多く採用されている溶出溶媒から選択される溶媒を用いて溶出して高濃度に濃縮した画分を得るのに、格別困難を要することとはいえず、本願発明の処理が、当業者に予想外のものともいえない。
(エについて)
引用例1には、引用例1発明に記載されている各成分について、製造例1?製造例3で示すくすみ抑制剤を製造し、メラニン生成抑制作用試験などを行ったことが記載されている(上記(1h)参照)。
そのうえ、本願発明の各配合成分は、本願明細書にも記載されているとおり、それぞれ各作用が公知のものを集めたのであるから、各成分の効果は自明であるし、上記(1)で既に検討したとおり、本願明細書に記載の効果は、各成分を併用して配合したことによる予測可能な効果といえる。

5 まとめ
以上のとおりであり、引用例1発明において、上記相違点1?3に係る本願発明の発明特定事項を併せ採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められず、併せ採用したことによって格別に予想外の作用効果を奏しているとも認められない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用例2?7及び周知事項を勘案して引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-01 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-08 
出願番号 特願2005-56846(P2005-56846)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川合 理恵  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 関 美祝
菅野 智子
発明の名称 くすみ改善用皮膚外用剤  
代理人 伊藤 將夫  

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