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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1277050
審判番号 不服2010-22096  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2013-02-27 
事件の表示 特願2004-563644「偏光子及びアイソレータ並びに製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日国際公開、WO2004/058655、平成18年 4月 6日国内公表、特表2006-511834〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2003年12月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2002年12月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月28日付けの拒絶査定に対して、同年10月1日付けで審判請求がなされたもので、当審において、平成24年2月29日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年9月6日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものである。

本願の請求項1?10に係る発明は、平成24年9月6日付けの手続補正書により補正された特許明細書の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項5】
ファラデー回転子層を挟み込む2つの偏光ガラス層を有する材料の積層を含むアライメントがとられた光アイソレータにおいて、前記アイソレータのコントラスト比が40dBより高いことを特徴とする光アイソレータ。」
なお、請求項5は、独立請求項であり、また、上記手続補正書による変更はされていない。


2.引用例
これに対して、当審における上記拒絶理由の通知において引用された、
刊行物2:特開2002-182155号公報、
刊行物3:特開平6-250123号公報、
刊行物4:特開平7-151998号公報
は、いずれも、本願の優先日前に頒布されたものであり、それぞれ、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)刊行物2
「【0003】図6は従来の小型化された光アイソレータ41の構成を示す図である。
【0004】図6に示すように、光アイソレータ41はファラデー回転子3と偏光子2、偏光子4を互いに接着一体化した光アイソレータ用素子42と、ファラデー回転子3に飽和磁界を印可するための磁石27を、基板5上に固定した構成となっている。
【0005】ここで偏光子2、4は透過する光の一方向の偏波成分を吸収し、その偏波成分に直交する偏波成分を透過する機能を有し、また、ファラデー回転子3は飽和磁界強度において所定波長の光の偏波面を約45度回転する機能を有する。また2つの偏光子2、4は、それぞれの吸収あるいは透過偏波方向が約45度ずれるように配置されている。図中の矢印は透過偏波方向を表し、偏光子2の透過偏波方向は横方向であり、これに対し偏光子4の透過偏波方向は約45度傾いている。
【0006】図7は従来の光アイソレータ用素子42の製造方法を示す図である。
【0007】まず図7(a)に示すように、15mm角程度の偏光子基板22とファラデー回転子基板23と偏光子基板24を接着一体化する。ここで偏光子22と偏光子24の透過偏波方向は、ある1辺に平行な方向に設定されている。各光学基板の固定は、偏光子22とファラデー回転子23は互いの1辺が平行になるよう接着され、また偏光子24は偏光子22の一辺に対し約45度回転した状態で接着される。ここで、光アイソレータに高いアイソレーションが要求される場合は、ファラデー回転子の偏波回転角度45+α度に対し、偏光子22と偏光子24の回転ズレを45-α度に精密に調整する必要がある。具体的には光を逆方向から(偏光子基板24側から)入射し、透過してくる光が最も小さくなるように偏光子22と偏光子24を回転調整する。
【0008】次に図7(b)(c)に示すように、光アイソレータ用素子基板43を小さなチップ状の多数の光アイソレータ用素子42に加工する。
【0009】図8は光アイソレータに用いられる偏光子の製造方法を示す図である。
【0010】一般に偏光子は、ガラス基板51内に金属粒子52を分散させたガラス偏光子が用いられる。その製造方法は、ガラス基板51を加熱し、延伸ロール53によりガラス基板51を延伸すると同時に金属粒子52を楕円体形に延伸させる。この楕円体形の金属粒子52が偏光特性を有し、楕円体の短軸方向に平行な偏波は透過し、楕円体の長軸方向に平行な偏波は吸収される。
【0011】このように偏光子は通常延伸によって作製されるため、ガラス基板の一辺に対して、その透過偏波方向は平行となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら図6、図7に示す従来の小型化された光アイソレータとその製造方法においては、図7(b)に示すその製造工程において、偏光子基板22と偏光子基板24の1辺が45度ずれて接着固定されているために、互いが重なる面積(図中白抜きで示す)でしか光アイソレータ用素子42がとれない。従って非常に製造効率が悪いという問題点があった。
【0013】また、偏光子とファラデー回転子は非常に高価であるために、光アイソレータ用素子の取り数が少ないことは、すなわち光アイソレータのコストアップにつながるという問題点があった。」

「【0048】
【実施例】本発明の光アイソレータの実施例として図1、図2に示した光アイソレータの試作を行った。製造方法とその構成について以下に説明する。
【0049】大型の偏光子基板22、24とファラデー回転子基板23はいずれも15mm角の大きさのものを使用し、偏光子基板22、24の厚みは約0.5mm、ファラデー回転子基板23は約0.4mmであった。偏光子基板22、24はいずれも、ある1辺に平行な方向に透過偏波を有するガラス偏光子を使用した。ファラデー回転子基板23はビスマス置換ガーネットを用い、飽和磁界強度中における偏波回転角は45.0度であった。
【0050】偏光子基板22とファラデー回転子基板23の接着は、光学的に透明なエポキシ系の熱硬化型樹脂を用いて固定し、複合基板25を作製した。その後、複合基板25をダイシング加工機で1辺に平行方向に切削加工し、1.25mm角のチップ化された複合素子6を100個切り出した。
【0051】次に偏光子基板24の加工を、複合基板25と同じく、ダイシング加工機を用いて行った。切り出し方向は1辺に対し45度の方向に切削加工し、1.25mm角のチップ化された偏光子4を98個切り出した。
【0052】次にチップ化された複合素子6と偏光子4を基板5の上に実装した。基板5はサイズ1.5×1.8mmで厚み0.5mmのガラス板を用いた。また基板上への複合素子6と偏光子4の固定は、作業性の良い光硬化型の接着剤を用いた。以上の手順により、15mm角の偏光子2個とファラデー回転子1個で、98個の光アイソレータ1を作製することができた。
【0053】これに対し従来の構成の光アイソレータでは、15mm角の素子から1.25mm角の光アイソレータを76個しかとれず、本発明により大幅に製造数量のアップと、それに伴うコストダウンが実現した。
【0054】また、作製した光アイソレータ1に飽和磁界を印可し、98個の特性を測定した。その結果、すべての光アイソレータは、挿入損失が0.2dB以下、アイソレーションが40dB以上の、良好で均一な特性を有することを確認した。」

(2)刊行物3
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 偏光子、ファラデー回転子および検光子とファラデー回転子に磁界を印加するための磁石からなる光アイソレータにおいて、前記磁石は前記ファラデー回転子の光軸方向に平行な面に形成された薄膜磁石であることを特徴とする光アイソレータ。
【請求項2】 請求項1記載の薄膜磁石はスパッタリング法などの物理的蒸着法で前記偏光子と前記ファラデー回転子と前記検光子とが接着によって一体化された光学素子の光軸方向に平行な面に形成されることを特徴とする光アイソレータの作製方法。」

「【0004】このような光アイソレータを作製する場合、従来は図3に示すような構造をとる。小型化を達成するために偏光子には薄型化が可能なポーラコア(コーニング社製偏光ガラス)を用い、永久磁石にはプラスチックマグネットなどを用いている。また、これらを組み立てる場合、図4に示すように、偏光子、ファラデー回転子および検光子からなる光学素子が数十?数百組分採取可能な大型の偏光子、ファラデー回転子および検光子を必要磁界中で所定の角度に合わせて有機接着剤で貼り合わせたものを切断面Bで2×2mmに切断することにより、一単位の光学素子とし、量産性を高めている。その後、磁石をファラデー回転子にはめ込み接着することでアイソレータが出来上がる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4で示したように、大きな光学素子同士を貼り合わせて切断することにより量産効果は得られるが、磁石の接着は1個ずつ行なわなければならず、量産性悪化の原因の1つである。また、磁石を小さくして小型化を計ると、小さな磁石は作製コストが高くなるという問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は上記した欠点を一挙に解決する為に磁石材をスパッタリング法等によりファラデー回転子に直接成膜して、ファラデー回転素子に印加する磁界を形成することにより、小型で量産性の高いアイソレータとその作製方法とを供する。
【0007】
【作用】一般に、GdBiガーネット系のファラデー回転子は半硬磁性を有し、100Oe程度の弱い磁界で飽和する。従って、非常に薄い磁石でも十分飽和するが、小さな磁石は加工が困難な為、切断による小型磁石の作製は不可能である。
【0008】また、工程上小さな磁石をファラデー回転子に接着することは、作業効率が悪く生産性を著しく低下させる。
【0009】そこで、ファラデー回転子としてのGdBiガーネットの側面に磁石を磁石材料の薄膜で形成することにより、偏光子、ファラデー回転子および検光子を接着して形成した光学素子に小型磁石を1個ずつ接着する必要がなくなり1バッチで数十?数百個の磁石装着が一度に可能となる。」

「【0010】
【実施例】本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
【0011】(実施例1)図1に本発明によるアイソレータの構成図を示す。ファラデー回転子には、GdBiガーネット、偏光子および検光子には、ポーラコア(コーニング社偏光ガラス)を用いた。ガーネットおよびポーラコアは、11×11mmに加工してある。偏光子、GdBiガーネット、検光子を所定の角度で合わせ接着し、その後、2×2mmに切断した。この素子にRFスパッタリング法によりSmCo系磁石材料を1μm成膜し、光アイソレータを作製した。
【0012】(実施例2)実施例1において、SmCoの膜厚を5μmとした以外は実施例1と同様にして、光アイソレータを作製した。
【0013】(実施例3)実施例1において、SmCoの膜厚を10μmとした以外は実施例1と同様にして、光アイソレータを作製した。
【0014】(実施例4)実施例1において、SmCoの膜厚を50μmとした以外は実施例1と同様にして、光アイソレータを作製した。
【0015】(実施例5)実施例1において、SmCoの膜厚を100μmとした以外は実施例1と同様にして、光アイソレータを作製した。
【0016】以上の実施例について、SmCoの膜厚、アイソレーション特性を表1に示す。表1よりSmCo膜厚が10μmより薄い場合には、アイソレーションが著しく劣化している。これは、SmCoの膜厚が薄く、形成する磁界が弱いため、偏波面の回転が45°に満たないことによる劣化である。従って、SmCoの膜厚が10μm以上であればファラデー回転子であるGdBiガーネットは十分飽和し、アイソレーションは40dBと良好な結果を得た。」

(3)刊行物4
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光アイソレータに関し、更に詳しくは、光通信及び光伝送で用いられる偏光依存型光アイソレータに関する。
【0002】
【従来の技術】・・・(中略)・・・【0003】図2(a)及び(b)は、代表的な光アイソレータとして知られる偏光依存型アイソレータの構成を、夫々、その順方向及び逆方向における光の偏光面方向と共に示す模式的斜視図である。この光アイソレータは、中間に配設されるファラデー回転子22と、ファラデー回転子22に関し光源側に配設される偏光子21(順方向側偏光素子)、及び、光源と逆側に配設される検光子(逆方向側偏光素子)23からなる2個の偏光素子とをその主な構成部品として備える。
【0004】図2(a)に示すように、光源側から順方向に入射する光は、一般的に偏光していないが、偏光子21を通過すると偏光子21の作用により特定の偏光面を有する直線偏光成分のみとなる。この直線偏光24は、ファラデー回転子22を通過し、その偏光面が45度回転した後に検光子23に入射する。偏光子21及び検光子23の光軸回りの回転角度位置は、ファラデー回転子22を通過した直線偏光25が検光子23を通過するような角度関係に定めてあるので、偏光子21を通過した光はほぼ無損失で検光子23を通過する。
【0005】この光アイソレータを半導体レーザと一体で使用するときには、偏光子21の光軸回りの回転角度位置を予め調整しておくことにより、偏光子21を通過できる光の偏光面方向を半導体レーザからのレーザ光の偏光面方向に一致させておく。
【0006】一方、図2(b)に示すように、検光子23に逆方向から入射する戻り光26は、検光子23を通過できる偏光成分のみであるから、そのまま検光子23を通過する。検光子23を通過した戻り光は、ファラデー回転子22により先の回転と同じ方向に更に45度回転する。従って、ファラデー回転子22を通過した戻り光27は、先に順方向に偏光子1を通過したレーザ光24とは90度異なる偏光面を有する直線偏光となる。偏光子21がガラス偏光板により構成されている場合には、この戻り光27は偏光子21に吸収され、また、偏光子21が偏光ビームスプリッタにより構成されている場合には、この戻り光27は偏光子21により直角方向に反射されるので、何れの場合にも光源側には戻らず、従って、高品質な光伝送を可能とする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の光アイソレータでは、2個の偏光素子として偏光ビームスプリッタ又は偏光ガラスの何れかを採用している。ところが、偏光ビームスプリッタを偏光素子として備える光アイソレータでは、その光学長が長くなること、また、光の入射角度によってはアイソレーション性能が低下すること等の問題がある。他方、2個のガラス偏光板を偏光素子として備える光アイソレータはその製作費用が高価であるという問題がある。
【0008】本発明は、上記に鑑み、光学長が短く、且つ、入射角度によるアイソレーション性能の低下が生じない低価格の光アイソレータを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明の光アイソレータはその第1の視点において、各1個の複屈折結晶板、ファラデー回転子及びガラス偏光板から基本的に構成されることを特徴とする。
【0010】また、本発明の光アイソレータはその第2の視点において、光源からの光の照射方向に沿って、複屈折結晶板、ファラデー回転子及びガラス偏光板がこの順に光軸上に配列されたことを特徴とする。
【0011】ここで、本発明の光アイソレータにおいて採用されるファラデー回転子は、その形状又は磁性材料の如何を問わず、いかなるファラデー回転子も採用できる。
【0012】複屈折結晶板としては、例えば、ルチル複屈折結晶板或いは方解石複屈折結晶板が用いられる。
【0013】
【作用】本発明の光アイソレータでは、高価なガラス偏光板を唯1個備えるのみであるので、2個のガラス偏光板を備える従来の光アイソレータよりも安価に製作できる一方、偏光ビームスプリッタを備える光アイソレータとは異なり、光学長が短く製作でき、且つ、レーザ光の入射角度によりアイソレーション性能が低下することもない。」

「【0014】
【実施例】図面を参照して本発明を更に詳しく説明する。図1(a)及び(b)は夫々、本発明の一実施態様の光アイソレータの構成を示す模式的斜視図であり、併せて、同図(a)は順方向の光について、また、同図(b)は逆方向の光について、夫々その偏光面を模式的に示している。本実施態様の光アイソレータは、その主な構成部品として、順方向側偏光素子を成す複屈折結晶板11と、ファラデー回転子12と、逆方向側偏光素子を成すガラス偏光板13とを備えており、その他に、ファラデー回転子12に飽和磁界を供給する円筒磁石及び全体を囲う外枠(図示せず)を備えている。また、図面左下方向には光源を成す半導体レーザが、図面右上方向末端には送信されるレーザ光を受光する受光素子が、夫々配置される。」

「【0021】実施例1
実施例1の光アイソレータでは、順方向側偏光素子に厚さ1mmのルチル複屈折結晶板、ファラデー回転子にビスマス置換鉄ガーネット、逆方向側偏光素子にガラス偏光板を採用した。サイズは、直径が3mm、全光学長が3.2mmであった。偏波保持ファイバー、2μmのピンホール、レンズ、実施例1の光アイソレータ、10μmコアのシングルモードファイバーをこの順に配置して光結合させた後に、シングルモードファイバー側から波長1.3μmの光を送り、アイソレーションを測定した。測定されたアイソレーションは40dBであった。
【0022】なお、アイソレーションは、光アイソレータの順方向挿入損失(デシベル)から逆方向挿入損失(デシベル)を減じたものとして定義される。挿入損失は、偏波保持ファイバー側から波長1.3μmの光を送り、光アイソレータがあるときと、無いときの光結合損失の差から求めた。」

「【0025】比較例2
比較例2のアイソレータでは、偏光子及び検光子にガラス偏光板、ファラデー回転子にビスマス置換鉄ガーネットを採用した。サイズは、直径が3mm、光学長が3mmであった。実施例1と同様に配置し測定を行なった結果、測定されたアイソレーションは44dBであった。」

これら記載事項を含め、刊行物4の全記載を総合すると、刊行物4には、次の発明(以下、「刊行物4記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、比較例2を中心に認定したが、比較例であっても、技術事項が把握でき、測定値も信頼できるものである。

「偏光子(順方向側偏光素子)にガラス偏光板、ファラデー回転子にビスマス置換鉄ガーネット、検光子(逆方向側偏光素子)にガラス偏光板を採用した、サイズは直径が3mm、光学長が3mmである、光アイソレータであって、
偏波保持ファイバー、2μmのピンホール、レンズ、当該光アイソレータ、10μmコアのシングルモードファイバーをこの順に配置して光結合させた後に、シングルモードファイバー側から波長1.3μmの光を送り、アイソレーションを測定したところ、測定されたアイソレーションは44dBであった、
光アイソレータ。」


3.対比・判断
本願発明と刊行物4記載の発明とを対比すると、
刊行物4記載の発明の「ガラス偏光板」「ファラデー回転子」と、本願発明の「偏光ガラス層」「ファラデー回転子層」とは、それぞれ「偏光ガラス」「ファラデー回転子」の点で共通する。

そして、刊行物4記載の発明の「偏光子(順方向側偏光素子)にガラス偏光板、ファラデー回転子にビスマス置換鉄ガーネット、検光子(逆方向側偏光素子)にガラス偏光板を採用した」光アイソレータと、本願発明の「ファラデー回転子層を挟み込む2つの偏光ガラス層を有する材料の積層を含むアライメントがとられた光アイソレータ」とは、「2つの偏光ガラスの間にファラデー回転子を配置した光アイソレータ」の点で共通する。

また、刊行物4記載の発明における方法により「測定されたアイソレーションは44dBであった」は、本願発明の「前記アイソレータのコントラスト比が40dBより高い」に相当する。

そうすると、両発明の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「2つの偏光ガラスの間にファラデー回転子を配置した光アイソレータにおいて、前記アイソレータのコントラスト比が40dBより高い、光アイソレータ。」

[相違点]
本願発明は、ファラデー回転子層を挟み込む2つの偏光ガラス層を有する材料の積層となっており、また、アライメントがとられた光アイソレータとされるのに対して、
刊行物4記載の発明は、2つの偏光ガラスとファラデー回転子について、配置の順番は本願発明と同じであるが、積層になっているとは明記されておらず、また、アライメントについても明記がない点。

そこで、相違点について検討する。
ファラデー回転子層を挟み込むように2つの偏光ガラス層を有する材料の積層により、光アイソレータを形成することは、本願優先日前に周知の技術であり(必要であれば、刊行物2,3を参照)、また、アライメントがとられることも普通のことである。
そうすると、刊行物4記載の発明において、相違点に係る本願発明のごとくなすことは、当業者が容易になし得ることである。

なお、請求人は、意見書で、「本願発明は、偏光ガラスに含まれる細長い金属粒子の偏光軸が、ガラスシートまたはガラス層の面内で一様に配向されていないことを発見し、その偏光軸の角度の変化を低減することにより、高性能の偏光ガラスおよびそれを使った光アイソレータを製造することができることを見出したものであります。また、2つの偏光子を光アイソレータに使用する場合に、特に、回転子と2つの偏光子が固定されていて、お互いの位置関係を調整できない場合には、偏光子が完全に位置合わせされている場合に、最大の光アイソレーションを達成することができますが、金属粒子の偏光軸が一様に配向されていない場合、そのような最大のアイソレーションは達成されません。即ち、本願発明は、粒子の一様な面内の配向が光アイソレータの性能を改善する重要な要因であることを見出すことにより、特に、偏光子の配置を調節できないアイソレータについて、光アイソレータの性能を改善するために、粒子の配向をより一様にする方法を開発したものであります。」、
「また、刊行物2乃至4には、既存の偏光子を組み合わせて光アイソレータを製造することが記載されておりますが、その偏光子において、偏光粒子の偏光軸およびそのばらつきについての記載は全く無く、したがって、偏光軸のばらつきを小さくすること、特に0.0375°/mmより小さくすることについては、全く認識されておらず、偏光軸のばらつきを小さくすることにより、偏光ガラスおよびそれを使ったアイソレータの性能を向上することについて、当業者が刊行物2乃至4の記載に基づいて容易に想到しうるはずもありません。」
と主張する。
しかし、本願発明、すなわち請求項5に係る発明には、請求人が主張するような「偏光軸のばらつきを小さくすること、特に0.0375°/mmより小さくすること」について、何ら構成要件として規定されていないので、請求人の主張は、請求項5の記載事項、すなわち発明特定事項に基づかないものであり、これを採用することはできない。

(まとめ)
したがって、本願発明は、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-26 
結審通知日 2012-10-02 
審決日 2012-10-15 
出願番号 特願2004-563644(P2004-563644)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 理弘  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 金高 敏康
住田 秀弘
発明の名称 偏光子及びアイソレータ並びに製造方法  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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